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師弟編
第6話 割と片付けは好きです。
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俺達は孤児院から出発し10分程山へ向かって歩く。
「なぁ、ティアドラ……さん、俺達は今からどこに行くんだ……行くんですか?」
俺の言葉に彼女は突然背中に冷たいものを入れられたかのように身震いする。
「お、おぅ……気色悪い。お主に敬語を使われると寒気がするわい。敬称も敬語も不要じゃ」
あ、そうですか。
「じゃあティアドラ、これからどこ行くんだ?もう日が落ちてるし、周り何もないんだけど」
まさか野宿って訳じゃないよな。
「……切り替えが早いのもそれはそれでむかつくの。……まぁ、そろそろか。おいシリウス、弟子になった記念にいいものを見せてやろう」
自慢げな顔でニヤリと笑う。
俺って弟子になったんだ、初めて知った。ってか何をする気なんだ?
ティアドラは手を前に突き出すと何かを呟きだす。すると地面から彼女を中心に半径2メートルほどの円状の淡い光の柱が発生する。
詠唱による魔法だ。
「光の中に入るのじゃ」
言われるがままに光の円の中に入る。……ちょっとおっかなびっくりね。
俺が入ったのを確認すると再度詠唱を始める。
すると淡い光は輝きを増していき……光が収まると俺は見知らぬ森の中に居た。
「フフン、これが世にも珍しい転移魔法じゃ。使える魔法使いは中々おらんぞ?」
先ほどよりも一層自慢げに笑っている。
俺は思った感想をそのまま伝えた。
「なんか……地味っすね」
なんかこう、転移魔法って元の世界のゲームや小説なんかだと、身体が宙に浮いたり身体が引っ張られる感覚とかあるものだと思ってたけどほんとに……何もなかった。身体への負担がないって意味ではこっちのほうが断然優秀なんだけどね。
ティアドラは俺の感想が気にくわなかったのか不貞腐れた顔になり、パシンと頭をしばく。
「このバカ弟子が!その時はお世辞でも師匠をヨイショすべきじゃろ!!」
はいはい、以後気を付けます。
……ちなみに首がへし折れそうでした。身体強化って怖い。
俺は改めて辺りを見渡してみる。
先ほど森の中とはいったがどうやら山の中、それもだいぶ深い山奥のようだ。
少し離れたところに家のようなものがポツンと見える。
俺の視線に気づいたのかティアドラが口を開く。
「あそこがワシの家じゃ。これからお主はあそこで暮らすんじゃぞ」
家には明かりが点いておらず、人気がない。
つまりあの家には彼女しか住んでいないことが分かる。
辺りは日も沈みかけており、薄暗かったが、周りに他の家がないことは分かる。
……つまり
「アンタも……ボッチなんだな」
そういうとティアドラはぎくっとしたように顔をこちらへ向ける。
「ワ、ワシは自ら俗世との関係を断ってだな……。お、おい、その目を止めろ!ワシに憐憫の眼差しを向けるな!!」
焦っているのか恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっている。
俺とおんなじですね、師匠。
「そ、そんなことよりも早く家の中に入るぞ!日が落ちる前に灯りを点けてしまわんと」
ティアドラは気が動転しているのを悟られたくないかのように、家へ向かっていく。
俺は彼女に気を使い、黙ってついていった。
「……本当にここで生活しているんですか?貴女は」
最初に部屋に入った感想であった。
ってかここは部屋、か?
ティアドラに案内されるがままに家の中に入ったがあまりにも物が多く、それらが乱雑に置かれている。
そのほとんどが古めかしい書物であり、部屋の隅の方には薬師らしく薬を調合するための道具のようなものが置かれてある。
奇跡的にその周辺だけは整頓されていた。
彼女に話を聞くとここはリビングであり、隣はキッチン、二階は寝室となっているらしい。
リビングが酷いだけであって他はまだマシ……ですよね?
「いやー……まさかここに人が来るとは思っていなかったのでな……てへっ」
頭に手をあてて苦笑する。
俺は大きくため息をつくのであった。
「そういえばあれはどこだっけ……っと」
彼女はティアドラは何かを探し始める。
しばらく時間が経つとようやく見つかったようで本の山の中から何かを取り出す。
「さてシリウス、お主に最初の仕事を与えよう……」
急に真面目な顔付きとなる。
俺は早速始まるのかと気を引き締め、彼女の次の言葉を待つ。
「お主にはまず……これで部屋の片づけをしてもらおう!」
彼女が手に持っていたのは箒であった。
なんで箒が本の中にあるんだよ。
「ワシはそうじゃな……薬の調合でもやっておる振りをしておるな」
振りなのかよ!
思わず突っ込みそうになるがぐっと我慢。
弟子になったんだし、まぁ仕方ないよね。
黙ってる俺をみて了承したと思ったのか、ティアドラは満足げにうんうんと頷くと近くのソファへ寝転がる。
薬の調合をしている振りをしなくていいんですか?
まぁ何をいっても無駄なんだろうな。
俺はそう理解すると日が暮れる中、黙々と片づけを始めるのであった。
片付けもひと段落し、ティアドラを見ると涎をたらしながらいびきをかいて寝ていた。
全くこの人は……。
俺はその辺にあった毛布を掛ける。
洗濯してんのかなこれ、ノミとか沸いてそうだけど……まぁ風邪ひくよりマシだよな。最近寒いし。
俺は比較的綺麗そうな毛布を探し、ランプの灯りを消す。
そして机脇のソファに寝転がって目を閉じる。
これからの生活に少しだけワクワクしながら、俺は夢へと落ちていった。
おやすみなさい、師匠。
「なぁ、ティアドラ……さん、俺達は今からどこに行くんだ……行くんですか?」
俺の言葉に彼女は突然背中に冷たいものを入れられたかのように身震いする。
「お、おぅ……気色悪い。お主に敬語を使われると寒気がするわい。敬称も敬語も不要じゃ」
あ、そうですか。
「じゃあティアドラ、これからどこ行くんだ?もう日が落ちてるし、周り何もないんだけど」
まさか野宿って訳じゃないよな。
「……切り替えが早いのもそれはそれでむかつくの。……まぁ、そろそろか。おいシリウス、弟子になった記念にいいものを見せてやろう」
自慢げな顔でニヤリと笑う。
俺って弟子になったんだ、初めて知った。ってか何をする気なんだ?
ティアドラは手を前に突き出すと何かを呟きだす。すると地面から彼女を中心に半径2メートルほどの円状の淡い光の柱が発生する。
詠唱による魔法だ。
「光の中に入るのじゃ」
言われるがままに光の円の中に入る。……ちょっとおっかなびっくりね。
俺が入ったのを確認すると再度詠唱を始める。
すると淡い光は輝きを増していき……光が収まると俺は見知らぬ森の中に居た。
「フフン、これが世にも珍しい転移魔法じゃ。使える魔法使いは中々おらんぞ?」
先ほどよりも一層自慢げに笑っている。
俺は思った感想をそのまま伝えた。
「なんか……地味っすね」
なんかこう、転移魔法って元の世界のゲームや小説なんかだと、身体が宙に浮いたり身体が引っ張られる感覚とかあるものだと思ってたけどほんとに……何もなかった。身体への負担がないって意味ではこっちのほうが断然優秀なんだけどね。
ティアドラは俺の感想が気にくわなかったのか不貞腐れた顔になり、パシンと頭をしばく。
「このバカ弟子が!その時はお世辞でも師匠をヨイショすべきじゃろ!!」
はいはい、以後気を付けます。
……ちなみに首がへし折れそうでした。身体強化って怖い。
俺は改めて辺りを見渡してみる。
先ほど森の中とはいったがどうやら山の中、それもだいぶ深い山奥のようだ。
少し離れたところに家のようなものがポツンと見える。
俺の視線に気づいたのかティアドラが口を開く。
「あそこがワシの家じゃ。これからお主はあそこで暮らすんじゃぞ」
家には明かりが点いておらず、人気がない。
つまりあの家には彼女しか住んでいないことが分かる。
辺りは日も沈みかけており、薄暗かったが、周りに他の家がないことは分かる。
……つまり
「アンタも……ボッチなんだな」
そういうとティアドラはぎくっとしたように顔をこちらへ向ける。
「ワ、ワシは自ら俗世との関係を断ってだな……。お、おい、その目を止めろ!ワシに憐憫の眼差しを向けるな!!」
焦っているのか恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっている。
俺とおんなじですね、師匠。
「そ、そんなことよりも早く家の中に入るぞ!日が落ちる前に灯りを点けてしまわんと」
ティアドラは気が動転しているのを悟られたくないかのように、家へ向かっていく。
俺は彼女に気を使い、黙ってついていった。
「……本当にここで生活しているんですか?貴女は」
最初に部屋に入った感想であった。
ってかここは部屋、か?
ティアドラに案内されるがままに家の中に入ったがあまりにも物が多く、それらが乱雑に置かれている。
そのほとんどが古めかしい書物であり、部屋の隅の方には薬師らしく薬を調合するための道具のようなものが置かれてある。
奇跡的にその周辺だけは整頓されていた。
彼女に話を聞くとここはリビングであり、隣はキッチン、二階は寝室となっているらしい。
リビングが酷いだけであって他はまだマシ……ですよね?
「いやー……まさかここに人が来るとは思っていなかったのでな……てへっ」
頭に手をあてて苦笑する。
俺は大きくため息をつくのであった。
「そういえばあれはどこだっけ……っと」
彼女はティアドラは何かを探し始める。
しばらく時間が経つとようやく見つかったようで本の山の中から何かを取り出す。
「さてシリウス、お主に最初の仕事を与えよう……」
急に真面目な顔付きとなる。
俺は早速始まるのかと気を引き締め、彼女の次の言葉を待つ。
「お主にはまず……これで部屋の片づけをしてもらおう!」
彼女が手に持っていたのは箒であった。
なんで箒が本の中にあるんだよ。
「ワシはそうじゃな……薬の調合でもやっておる振りをしておるな」
振りなのかよ!
思わず突っ込みそうになるがぐっと我慢。
弟子になったんだし、まぁ仕方ないよね。
黙ってる俺をみて了承したと思ったのか、ティアドラは満足げにうんうんと頷くと近くのソファへ寝転がる。
薬の調合をしている振りをしなくていいんですか?
まぁ何をいっても無駄なんだろうな。
俺はそう理解すると日が暮れる中、黙々と片づけを始めるのであった。
片付けもひと段落し、ティアドラを見ると涎をたらしながらいびきをかいて寝ていた。
全くこの人は……。
俺はその辺にあった毛布を掛ける。
洗濯してんのかなこれ、ノミとか沸いてそうだけど……まぁ風邪ひくよりマシだよな。最近寒いし。
俺は比較的綺麗そうな毛布を探し、ランプの灯りを消す。
そして机脇のソファに寝転がって目を閉じる。
これからの生活に少しだけワクワクしながら、俺は夢へと落ちていった。
おやすみなさい、師匠。
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