【R-18】異世界で開拓?

甘い肉

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二章:領土拡張編

53話:スタンピード(陸を目指す魔物達)

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【迫る黒の大軍】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カイは海岸に居る冒険者達を砦に向かわせる為にピンフィを全速で駆けた
普通の馬の4倍の大きさを誇るピンフィはその歩幅もスピードも倍じゃきかない

瞬く間に海岸に着いたカイは

「嵐が来る!一旦砦まで……」

ゴオオオオオオと地鳴りのような音が海の向こうから近づいてくる事に気がついた

「ちっ!…タイミングよく来やがって…冒険者は砦に戻って報告してくれ!スタンピード開戦だ!」
ピンフィを降りてそう伝えると

「はっはい!りょっ領主さまは?」

「ここに残る!スキューラ、アスピケドロンは防衛線で待機だ!…ピンフィも下がっとけ」


ブルルルルル!ブルル!

ピンフィは下がらない、もう一度乗れと身体を降ろす

「お前………馬相手に負けられないか?」

ブルル

「分かった、頼むぞピンフィ!」

ヒヒヒーーン!!!

グワァっと前足を上げて地響きを立てて地面に巨大なクレーターを作る

陸の森の王が海の魔物に本気になった

巨大な身体を更に大きくさせ、およそ馬のではあり得ない高さのピンフィの頭の上から、下を見下ろすカイは
視線の先に黒い馬の大軍を捕らえる

押し寄せる馬の大軍に向かって刀を鞘から抜き、腰を落として水平に構える

「ピンフィ…本気でやるぞ、ビビんなよ?」
カイの周囲に陽炎が発生し空気が変わる

ピンフィが嘶く

「…ぉぉぉっおおおおあ”あ”あ”あ”!!!」

気合いと共に横薙ぎに放たれた巨大なナニかが押し寄せる大軍に接触する

斜め上からの斬撃は猛スピードで空気を裂き、数百の馬を分断、そのまま海面を割り、海面を走る馬が足場無くして落ちいった

同じフィールドにいた香織達が突然レベルアップが止まらない事に気が付き、知らせが届くより早く戦闘が開始されたことを察知し、砦の外を見るとそこには巨大な馬がいた

その大きさはビルの高さで6階に相当し、砦からも見える程だった

「あれ…ピンフィだよね?トロイの木馬じゃ無いよね?」
思わず香織が呟くが、知ってる日本人はそばに誰も居ない

「なんじゃそれは?」

リディアが冷静に聞く

「…何でもないわ、それどころじゃ無いわね……大軍が一方に集中し過ぎてる……
セイレンさん、ミセイレさん、カイの反対側の様子を見て来て!カイが居るところより遠くには行かないでね!」


「「分かったわ!」」
セイレン達が羽根を羽ばたかせて飛んで行く

香織が未だ止まらないレベルアップに気が付きカイを見ると
カイの方を確認すると…大軍が止まっていた…というか止められていた…

香織の横に並び見た景色は
「おぉぉぉ…あれは凄いのお…ワシが敵ならとっくに逃げ出しておる」


巨大な発射台となったピンフィの上からカイが斬撃を繰り出す度に、数百のモンスターが
散っていく

近くで見た冒険者はピンフィの腰も震えていた事に気がつく

10万を超える大軍は一旦止まると横長に陣形を整えると2km近くに広がり、割れた海面が戻るのを待つ
、海が元の姿に戻ると同時に、奥の方から巨大な嘶きに呼応して一斉に走り始める

「広過ぎるな、あれは止められない…」

///////////////
マスター♪ARGOSは初勝利を納めました♪
褒めて褒めちぎって下さい♪
///////////////

(よくやった!がこっちもそれどころじゃないんだ……)

アイからのメッセージで嵐が来ない事を知ったカイは

「ピンフィ、砦まで一旦引くから身体を元の大きさに戻してくれ」

ヒヒヒーン!!
水平線を埋め尽くして進む大軍を背に走り出すピンフィは風のように走り抜け
直ぐに砦に到着すると、城壁の上に香織を見つけて叫ぶ

「香織!嵐は来ない、ARGOSが初陣を収めた!防衛線を機能させよう!」

「分かった!今セイレン達に索敵して貰ってる、戻るまでカイは其処にいて!


【防衛線での攻防】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
香織の用意した防衛線は馬房作だ
残り敵から考えて第一に突撃して来るだろうと
約半年掛けて海岸線に沿って用意されていた

嵐が来ないと別ればその効果は絶大になる

水平線を埋め尽くす大軍も陸に上がるルートは限られる
正面の海岸はARGOSが抑えてる、

香織の予想は的中した

スキューラとセイレーンの部隊が押し寄せる大軍を手ぐすね引いて待つ
馬房柵の影に隠れたスキューラとセイレーンは息を潜めてその時を待っていた

ケルピー達はカイが引いた事を見て、
荒れ狂いながら突撃を始める

通常の馬より倍は高い巨躯が波飛沫を立てながら海面を進み、
巨大な大潮を呼び寄せて駆け寄る

目の前の海岸にある障害物など簡単に飛び越えられる

全てを蹂躙しろ、

そう後ろからケルピー達の代表の嘶く声が届き、馬力を上げて駆けていく

猛烈なスピードで跳ね上がる巨躯は何なく馬房柵を飛び超え

高い視点から砦を見据える

あれを壊せば勝ち、ケルピーの大軍は嘶いた
……それが最後の嘶きとなる事を知らずに

馬房作を飛び越えた先にあったのは巨大な黒い穴だった

事前に情報を聞いていた香織の策が嵌る
身体の大きさを変えられるピンフィに走らせる正確な着地点に合わせて作られた落とし穴だ、

深さは50メートル(アスピケドロンとカイがかなり頑張った)
幅は5メートルの落とし穴は普段の大きさのピンフィなら飛び抜けるが、

ケルピー達に不可能だ、
大軍相手に馬房作では直ぐに決壊する横幅に広く作り上げられた落とし穴は目印を上手くカモフラージュされた橋を通るしかないが、それもケルピーが乗れば当然壊れる

横一斉に広がったケルピー達の突撃は仇となり飛んだ端から落ちて消えていくが
高めに設計された馬房作がそれに気が付かない

あっという間に3分の2近くまで配下を失ったケルピー達は流石に異変に気づき足を止める

幾ら飛び越えても向こう側で蹄の音が聞こえない
小高い丘に向かう味方の背が見えない

取り返しのつかないダメージを受けた事に気がついた時には
既に軍と言える姿は無くなっていた

馬房作手前でケルピー達が止まってゆく

其処にスキューラ隊が一気に襲い掛かった

機動力はケルピーに遥かに劣るがスキューラの種族は下半身に9匹の僕《しもべ》を持つ強力な魔物だ
1対1でスキューラ隊と互角で戦えるのはそうはいない
浮き足立つケルピー軍に、
アスピケドロンの眷属である大亀に乗った
スキューラの操る僕達が凶悪な攻撃でケルピー達を穴だらけにして止めを刺していく
ケルピー軍はまともに戦う事なく勝敗を決したように見えた


【クラーケン軍強襲】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
香織に頼まれたミセイレとセイレンは
カイとは反対側の海岸の方へ飛んでいった2人は
身の毛を逆立てるような光景に震える

10万の大王イカの群れが直ぐそこまで辿り着き海岸の防衛線にある馬房作を破壊しながら進んでいた

「ひぃー!気色悪いわっミセイレ!」

「せっセイレンは急いで砦に戻って報告してきて下さい!」

「ミセイレは?どうするつもりなの?」

「私は遠距離で足止めします!はやくいって!」

「…気をつけてね!無理しちゃだめよ?絶対だからね!」

セイレンは全力でカイの待つ砦に飛んで行った

1人残ったミセイレは先程のカイの戦闘でレベルを上げていた

その為…魔力を練り上げたミセイレが、魔法の射撃態勢を整えると、
周囲に放つ氷の槍が以前より巨大に、そして数も前より多く、早く生成する

「貫き凍れ!アイスジャベリン!」

数十の氷の槍がクラーケンの眷属を貫き、新たな馬房作として大地に杭を撃ち始める

馬房作に取り憑いた大王イカ達が反撃にイカ墨?のような黒い塊をミセイレに発射していくが海の中ならともかく、空の上で戦うミセイレには当たらない

その間も氷の刃と槍で前衛となった魔物達を屠り続ける

それでも数の暴力を止められないミセイレは焦りはじめる

「あれはセイレーン族のミセイレか?!リヴァイアサンを裏切ったかああ!!」
一際大きな大王イカが怒声を上げ、眉間の噴出口を空飛ぶミセイレに向ける

「ブラックカーテン!!」

塊ではなく黒い濃霧のようなイカ墨を周囲に撒き散らして視界を遮る

それを真似し始める他の隊長格のイカ達

海岸は瞬く間に黒い影に包まれていく

「くそ…これじゃあ…止められない!」
下手に撃てば馬房作まで破壊してしまう可能性もあるミセイレは馬房作が無さそうな場所に氷の槍を撃ち続けていた


【カイと竜】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
セイレンからの報告を待つカイは砦の上で待つ香織と並んで居た

「ケルピーの方は問題無いみたいだ、作戦通りになったみたいだね」

「先にカイが敵を平にしてくれたのも良かった……カイ!あれ見て!」

カイの反対側の海岸が黒い霧に包まれ始めるのが砦から見える

「行ってくる!」

カイが動きだすのとセイレンが戻ってきたのはほぼ同時だった

「大変よ!クラーケンの眷属が北側の海岸を埋め尽くしているわ」

「クラーケン…じゃああれはイカ墨か?」

「は?イカ墨?…えっ何あれ!」

全力で砦を目指していたセイレンは後ろの状況を気がつかなかった

「とにかく行くぞ!」

ヒヒヒーーーーン!!!!
突然大人しくしていたピンフィが巨大化して南側の海岸に向かって駆け出していく

「なっおい!ピンフィ!」

巨馬となったピンフィは砂埃を上げながら瞬く間に遠ざかって行く

「向こうに敵が居ると判断したんじゃろう、ワシに乗るかや?」

カイが振り返ると竜と化したリディアが頭を下ろしていた

「頼む!」

「落ちるで無いぞ!」

香織の前で

ブワァァ!と上空に向かって空を舞い上がり、一気に黒い霧へと突っ込んでゆく竜とカイ

「セイレンちゃん…あっちは多分もう大丈夫」

瞬く間に霧が晴れていく恐らくはカイとリディアの活躍だろう

セイレンもそれを見て同意するが向こうにはミセイレが居る

「ミセイレ迎えに行ってくるわ!」

「分かった、合流したら直ぐに戻ってね!」

「わかったわー!」

セイレーン隊はこの戦場には居るが空を飛ぶセイレン達は殆どが情報収集だ
代表の2人を欠く事は今後のタイラントの為にも許されない


【ピンフィVSケルピム】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
南のケルピー軍はその数を1万近くまで減らしていた
普通の戦争なら間違いなく潰走するところだが、リヴァイアサンへの忠誠によって逃げる事が出来ないケルピー達はスキューラ達と戦っていた

アスピケドロンとスキューラ達は徐々にその数を逆転させていく
突破力を欠いたケルピー軍の背後に轟くような声が響く、
遥か遠くの水平線の向こうから届いた声に後方にいた他のケルピー達の数倍はありそうな巨馬が後ろ足で立ち上がり嘶き吠えた

その声にケルピーの眷属達も再び突撃を開始した

巨大な馬が先頭を追い抜き一気に陸に近づいていく

「くっケルピムに抜かれたわ!」
スキューラが悔しそうに叫ぶ
「スピードじゃ誰もアイツに追いつけん、カイに任せるしか無い」

それはケルピーの種族の代表であるケルピムと呼ばれる馬だった

アスピケドロンがそう言ってケルピムをの後を追う眷属達を噛み殺していく

他者を一切寄せ付けない速さで海岸線に辿り着いたケルピムは一気に馬房作を飛び越えようとした時

ブヒヒヒヒーーーン!!!

ケルピーをの頭の大きさと変わらない足が突然ケルピーの目の前に現れた

首を捻って避けるが分厚い胸板にめり込みながら巨大な身体を吹き飛ばす

数十メートル程、後ろに飛ばされるが4本の足で大地を踏みしめ何とか止まる

ケルピムの前に現れたのは森の王ピンヒールだった

生まれて初めて自分よりデカイ馬を見たケルピムは驚くが戦意は全く衰え無い
海の眷属として海辺で陸の馬に負けるなど認められないのだ

ケルピー軍は魔力を操り水の上を走る、
ケルピムの実力はそれを数段上回る

付近の水を吸い上げ、ケルピムの身体に纏わりついていく

水を纏ったケルピムの身体は、ピンフィと変わらない大きさになった

二頭の巨馬が嘶きあい前足を何度も蹴り付ける

先に駆け出したのはピンフィだった頭を下げると同時に後ろ足を蹴り砂浜が大きく抉れる

それに合わせたケルピムが同じく駆け始め、後ろ足で蹴ったの波が高波のようになり、
自然とは逆向きで進み巨大な水飛沫を上げた

二つの白と黒の巨大な馬が全速力で身体をぶつけ合う

ダメージが大きいのは生身の身体でぶつかるピンフィだった
身体のあちこちに斬撃のような傷跡が現れて赤い血が吹き出す

答えは水圧と二頭の速度だった

鎧と化した硬い水に全力でぶつかればそれは巨大な岩にぶつかるのと同じだった

ケルピムが自分の勝ちだと思い止めを刺そうとするが
自分の周りに水が無くなって居る事に気がついた

岩があるなら岩を砕けとピンフィは中に居たケルピム事粉砕するつもりで突撃した

絶対の自信を持つ鎧を剥がされ、目の前には仔馬と親馬程の差がある相手が、
突進に目を眩ませて頭を振っている

だがその目は怒りと殺気が溢れていた

必死に鎧を作り直そうとするケルピムは
……ピンフィによって前足をいきなり潰され
地面に身体を落とす

ピンフィが回復する方が圧倒的に早かった

足下に水が集まり始めるのと同時にピンフィが前足を叩きつけた

ヒヒーン…
高い鳴き声で絶叫する
それは敗北を示す声だ、片足を折ったピンフィは、
ゆっくりと近づき、ケルピムの匂いを嗅いだ後にゆっくりと後ろ足で立ち上がる

ケルピムはもう一歩も動けない

ピンフィの前足が頭にめり込み、地面に身体を倒して崩れ落ちた

ケルピー軍は、代表であるケルピムの敗北を知り、遂に潰走した

ブルルル!ヒヒヒーーーーン!!

ピンフィの雄叫びが南側の海岸線に轟いた
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