【R-18】異世界で開拓?

甘い肉

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一章:開拓編

10話:エリスとアリアとメリウスと

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  ミキとサキを俺の女に加えた数日後、リビングルームでメリウスと塔の外の状況について話していると、ヤヨイがスススと入って来て、俺の隣にちょこんと腰を下ろす


「あら、おはようございます、ヤヨイさん?」


 メリウスが訝しげに、ヤヨイに挨拶をする


「おはようございます…メリウスさん」

「今はちょっと真面目な話をしているのですが、急用ですか?」

「……はい」

「…そうですか…わかりました、それではカイさま、また後でおねがいします」

「わかった、ありがとう」


 メリウスが部屋を出るが、ヤヨイは下を向いたままだ


「………たかしの事か?悪いがしばらくは戻せない」

「え?あっそれは良いの、この家にはカイの女しか居ないんだし、無理があるのは分かってる」

「他に心配事が?」

「………」


 再び顔を下げるヤヨイ、どうしたものか


「ヤヨイ、俺はお前の何だ?」

「…私は……カイの女」

「そうだ、お前になにがあっても、お前が俺を嫌いになっても俺はお前を守る、心配事があるなら遠慮せず言ってくれ」

「…うん、ありがとう」


 顔を上げるが、しばらく目が泳ぐ


「……あのね、赤ちゃんできたの」


 思わずズッコケそうになるが、ヤヨイは元々普通の日本人、産めよ増やせよと言われる中世時代の文化に近い他の女と同じ感性である筈がないか

 ソファの上で膝を抱え、俯くヤヨイを俺は、お姫様だっこで抱き起こす


「きゃぁ!」

「嬉しいよヤヨイ!なんにも不安になる事はない、ちゃんと子供が生まれるまで側にいる、今日は皆んなでお祝いしよう!」

「カイ…ホントに?嬉しい…嬉しいよぅ……」


 俺の胸にすがりつき涙を零して笑うヤヨイは今まで見た中で一番輝いて見えた




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「「ヤヨイちゃん妊娠おめでとう!」」


 ミキとサキが花束をプレゼントし
 
 3人は抱きしめあい、喜びを分かち合う


「ありがとう! ミキもサキもおめでとうだよ!」

「「え?」」


 驚く2人にヤヨイはこっそり用意しておいた花束を2人にプレゼントした


「確認してみて」

「「いや、いくらなんでもそんな簡単には」」

 2人はシステムウインドウを確認し

 ペタンと腰が抜けて落ちる

「「うそぉ?」」


 2人とも子を授かったようだ

 どうやら今まで全く妊娠しないので、自分達はしないのだと諦めていたそうだ


「ほらね?カイのは凄いんだから♡」


 ヤヨイの言葉に2人は顔を赤く染めてる


「ヤヨイ、それとミキにサキ、私達は貴女達を歓迎するわ」


 臨月を迎えマタニティドレスを着たエリスとアリア、それに続く4人と妊婦達が3人を囲む
 6人の妊婦、それも全員が自分と同じ1人の男の嫁という状況に圧倒されつつも、同じ男の子を孕んでいるという仲間意識から、安心感に包まれていた。

 まだ、身体的に子供が産めないマイアは少し拗ねたが、サッキュンとクルスとチュラ美に慰められ気を取り直し、メリウスはいつもと変わらぬ微笑みで歓談をしていた。


 新たな3人を迎え、エリスとアリアがいつものようにカイの両脇に腰を下ろす


「人、いっぱい増えたわね」
「最初は4人だったのにあっという間ですね」
「あぁ…この世界に転移した時の事を思い出す、まだ三カ月しか経っていないが、濃密な時間だった」

「あら?私たちは待ちぼうけの時間が多くてそうでもなかったわよ?」


 腕を抓られる


「ごめんよ……あれは本当に反省しているんだ」


 俺は、女達に、塔の中での事をモンスター娘と遊んでいる事にしてしまっていた、
別のフロンティアメンバーと2人でいた事を付け加えると色んな意味で不味いことになりそうだし、心配させずに上手く説明する方法が全く思いつかなかった


「ずっと不安で、心配でどうにかなりそうだったのよ」


 そう言われると、慰める以外の何が出来ようか?


「これから取り戻すよ」


 エリスとアリアの頬にキスをする

 目をトロンとさせるエリスだが、
 アリアの顔色が変わる


「あ…あ…きたかも」


 メリウスの顔が真剣な表情になり、
 産婆を呼ぶように使用人に告げる

 途端に騒がしくなる。


「っ!…わっわたしも」


 そしてエリスがつられるように産気づく
 2人続けて産気づくがメリウスは冷静だった。
 そろそろだろうと既に2人の産婆を用意しており、
 使用人達にもそれぞれに用意を怠って居なかった。

 俺は初めての出産の喧騒に落ち着かなく、ただオロオロするだけだった


「今、貴方ができる事はありませんわ、部屋でお待ちください」


 メリウスに諭され、自室の部屋に戻ったが胸が張り裂けるようで、心の底から湧き上がる嫌な緊張が収える事が出来なかった

 不意にドアが少し開く


「生まれたのか?!」


 人影はなく、ドアの隙間から現れたのはチュラ美だった

 ドアの隙間から顔を出し、心配そうな顔をするチュラ美


「チュラ美…おいで…」

 チュララ♡

 小さいサイズになっているチュラ美はゆっくりと身体を這い上がり、いつものように頭の上でとぐろを巻き、俺の頬に顔をすり寄せる

 大丈夫、大丈夫と言い聞かせてくれてるみたいで、心が落ち着いていくのが分かる


「ありがとうな…もう大丈夫だ」


 チュララー♡

 どれくらいの時間が経っただろうか?

 永遠に続くかと思われたが騒がしい喧騒の中で、赤子の声が俺の耳にはハッキリと聞こえ、
 2人の赤子が俺の腕の中に現れて笑い、そして消えた

 突き動かされるように部屋を出て、エリスとアリアが居る部屋に向かう


「おにぃちゃん?もう少しだから待ってください!」


 マイアが俺を止めるが、俺は構わず部屋に向かう、何故だか確信を持っていた


「いや、生まれたよ」


 扉を開けるのと赤子の叫び声が木霊するのは同時だった

 部屋の中に入ると、へその緒を切り、清められた我が子を抱く
 エリスとアリアが優しく微笑んでいた


「「カイ様?」」


 エリスもアリアも、それ以外の女達もまだ呼んでいない俺がここに居る事に驚いていた


「虫の知らせって奴かな?何となくわかったんだ」


 2人に近づいていいか、メリウスを見ると、頷いてくれたので、
 ゆっくりとエリスとアリアに近づいていく

 それぞれの胸に抱かれる赤子は目を閉じて寝息をたてていた


「よく眠っている、2人ともよくやってくれた、エリスもアリアもその子供達も無事で本当に、本当に嬉しいよ」

 エリスとアリアの2人を抱きしめた時、涙が出そうになった。





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 エリスの子は男の子で、名前を「タケル」と名付けた

 アリアの子は女の子で、名前を「カレン」と名付けた

 その後三日と開けずにルシーダの子とサリーの子が生まれ
 その二日後にフェンとユナの子が生まれた

 それぞれに名前をつけ、街は都市の開発を一時中止しお祭り騒ぎとなっている

 ヤヨイ達の塔を吸収した俺たちの村は500人を超えていて、一つの街のようになっていた。
 街造りは急ピッチで行われ、活躍していたのはメリウスではなく、クルスだった事が意外だった
 ホムンクルスであるクルスは、何故か塔のシステムに詳しく効率的に街を都市に変える計画を立て、
 街の代表達にそれを説明し進めてくれた。
 壁の中は、住民用の地区、商業用の地区、産業用の地区、冒険者用の地区の四つに分けられ、
 それぞれの地区に代表を決め、都市の開発を進める事になった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 ユナの子ども、「クロエ」が生まれた次の日、
 俺はメリウスと2人でお酒を楽しんでいた。

 妊娠した女達の世話は経産婦であるメリウスの助力が大きかった、それを労う為に2人きりの時間が必要だと思ったからだ

 ソファに2人で隣り合い、メリウスのグラスにワインを注ぐと、メリウスもまたそれを口に含んで、俺におすそ分けしてくれる。

 普段の凛とした公爵夫人は、俺の肩に寄りかかり甘々モードになっていて、
細い腰に手を廻すと、俺の胸に頬を当て、エリスやアリア達の妊娠中の愚痴を散々聞かされたが、それ程にストレスの貯まる生活であったのだろうと、皆が無事に出産できたのはメリウスの頑張りがあったからだと、褒め労うと、嬉しそうに機嫌を直してくれる。

 エリスがそのまま大人となったようなメリウス、
普段は凛としており、
未亡人という雰囲気は一切なく、公爵家を1人で切り盛りした淑女そのものだったが
2人の時は俺に甘える(夜は母になりたがる事もある)姿は誰よりも可愛い。

 2人だけの空間は空気まで甘く変えてしまうかのようだが、メリウスがいつもは言わないことを呟いた

 ワインをクイっと飲み干し、再び俺の胸に顔を当て呟いた
「…エリスが羨ましい」

 それは、今まで一度も聞いたことが無かった言葉だった

 そして彼女がずっと、何よりも我慢していた言葉かも知れない

 年齢的な問題で産めないマイアと違い、彼女は自ら孕む事を拒否していた
それは彼女と夜する共にする度に、自らを傷付けたのかもしれない

 俺はメリウスのお腹に手を宛て


「作らないか?」

「ぁ………まだ子供も生まれたばかりですから…」


 メリウスの顎を上げ視線を絡み合う、本心では無いと直ぐにわかる


「大丈夫だ、サリーも居る、他の皆もいるんだ、足りない部分は俺が何とかするさ」

「でも…でも…」

「メリウス、お前の子が欲しいんだ」

「あっ……」


 メリウス瞳から涙が溢れ落ちる。

 メリウスの頬を濡らす涙を掬い取り、顎を上げると瞳を閉じた長いまつ毛が印象的で、
 突き出す唇に誘われるままキスを交わす。

 お互いの唇を貪るように重ね合わせ、ワインでいつもより赤い舌が、俺の舌を誘うようになぞる

 クチュリクチュリとお互いと唾液を何度も口の中で咀嚼し交換が終わるとゆっくりと顔色を離す

 恍惚としたメリウスが、涙を滲ませ口を開く


「…私もカイ様の御子が欲しいですわ」

 ///////////////
「欲しいですわ」じゃないでしょう?メリウスさん
 ///////////////

 突然の聞き覚えのある声、そして不意に部屋の空気がが変わる、部屋の景色が白にそまり、
 やがて真っ白な世界に変貌する

 俺はメリウスの肩を抱きながら、管理者に問う

「メリウスに孕ませる事に文句でもあるのか?」

 酷く冷たい声が出ている、自分で内心驚いた。



 ///////////////
 メリウスさん貴女は子供産めない、そうですよね?
 ///////////////


「っ…………」
「子供を産めない?」
「こっ子供は産めます!」
「わかった、なら作ろう」

 メリウスが白と言うなら、例え神が黒と言ってもおれには白だ
 即座に応える俺に微笑むメリウス

 ///////////////
 はぁ……全く…良いでしょう、確かに貴女は子供を産めます。
 但し、貴女の子供は貴女の命と引き換えになる、これは変えられない運命なのですよ?
 ///////////////


 はぁ?子供と引き換え?
 何を言っているんだこいつは?


「それでも!…それでも私はカイ様の子が欲しいのです、自分の命と引き換えにしてでも」

「馬鹿な事を言うな!俺が死ぬ!」


 突拍子も無い俺の言葉にメリウスも管理者も唖然とする


「え?いや、子供の命と引き換えというのは、私の命で…カイ様のじゃありませませんわ??」

「いや無理だ、触ってみろ」

 メリウスの手を握る、そしてもう片方の手を背中に触れさせる

「…これは?!」

 俺の手は震え、背中には滝のような汗が噴き出していた

 頭に浮かんだのは、三週間共に暮らしていたアンギスだった…


「お前が死ぬ、聞いたただけで今こうなった……多分俺は…本当に耐えられない…」


 震える手でメリウスの手を強く握る事も出来ない、真っ青になっている俺の手をメリウスがぎゅっと握りしめ、抱きしめてきた。

「ごめんなさい…私の我儘で……ごべ、ひっぐ…んなざぃ…」


 嗚咽しながら謝罪を繰り返すメリウスを抱きしめながら、未だ目の前に居る管理者を睨む


「管理者、何か方法はないのか?」
 メリウスは泣いたままだ


 ///////////////
 無いですね、これは神託と同じです、私では変えられません
 ///////////////


 俺の首にしがみつく腕に力がこもる

「もう良いんです……カイ様が傍に居てくれるだけで充分ですから」

 メリウスは自分の命と引き換えにしてまで、俺の子を欲しがってくれた。

 それは何より大切な想いだ。

「いーや、あるな?」


 ///////////////
 …無いですって、何度も言わせないで下さい、
 子供を産めば、メリウスさんは亡くなります、この結果は変えられません
 ///////////////


「結果は変えられなくても、結末は変えられるんじゃないのか?」


 ///////////////
 ………
 ///////////////


「その中にはメリウスも子供も生き残る、そんな結末だってあるはずだ


 ///////////////
 何故…そう思うんです?
 ///////////////

「お前がここに居る事だ、よく分からんが、メリウスが無価値なら止めに来たりはしない
 だが、お前は止めに来た。」


 ///////////////
 メリウスさんはこの世界の開拓にとって有能ですから、子供1人と引き換えじゃあ割に合わない、…そう思ったんですよ
 ///////////////


「メリウスは自分の命と引き換えでも、俺の子を産むつもりだった、つまり止めても無駄になるって事だ、……じゃあお前がここに来たのは無駄じゃあないか?」

「要するに別の選択肢が…少なくともその可能性はあるって事だ、あんたは道を示しに来た、違うか?」

 俺の言葉にメリウスは首から腕を離して、俺の腕を抱き、管理者を見る


 ///////////////
 ふぅ、以外に馬鹿じゃないんですね。
 …………ありますよ、結末を変える方法
 ///////////////


「何故先に言わない」


 ///////////////
 言っても普通は無理です、いえ、普通じゃなくても無理だからです
 ///////////////


「どうすれば良い?」


 ///////////////
 本当に無駄ですよ?
 …………………答えは変わりませんか、しかたありませんね、
 答えは塔の攻略です。
 ///////////////


「「塔の攻略?」」


 ///////////////
 先程いったように、メリウスさんの死は神託です、私ではどうにもなりません
 そして、この塔も神によって創りたもうた神物です。
 ここの三十層を攻略できた時、一つだけ、たった一つだけですが、
 蘇生のアイテムが手に入ります。
 ///////////////


「蘇生アイテム?」


 ///////////////
 メリウスさんは死ぬ、その結果は変えられない、けれど蘇生すれば結末は変えられる。
 つまりそういう事です。
 ///////////////

「三十層を攻略だな、ちょっと行ってくる」

 ///////////////
 だから、無理ですって………カイさん貴方、十一層の扉見てないんですね?
 ///////////////


「見てないが、何なんだ?」


 ///////////////
 塔の攻略については何も言えませんが、…まぁこれはギリギリセーフでしょう
 十一層から先は壁の外を開拓を進めないと、扉は開きません、これは扉を見れば分かる事ですから
 ///////////////


「分かった、ならそうしよう、メリウスお前の子供は俺が必ず何とかしてやる、少し待ってて欲しい」

「はい…でも、無理はしないで下さい!貴方の命が無くなっても、私も生きては要られません。
 きっと他の子達も同じでしょう」

「わかっている、お前達と会えないなんて死んでも死にきれない」


 ///////////////
 そんな簡単じゃないって言ってるのに…もう好きにして下さい
 ///////////////


 呆れる管理者の姿と共に白い世界が薄くなり、部屋の中に戻った事を確認した。
 俺は、メリウスを抱きしめながら、この壁の向こうの世界の開拓を始める事を決意した

 ~~~~~~~~~管理者の異次元~~~~~~~~~

「いけませんねー、アンリエールさん
 塔の情報を攻略前に漏らすなんて、管理者としてあるまじき行為ですよー」


 カイと話をしていた管理者の眼前の白い空間が歪み、アンリエールと言われた女性より、
 幾分か若い見た目の少女が現れ、いたずらっ子のような表情で語り始める。


「あんたに言われる筋合いはないわ、ウンリエル」

「ふふふ、なんの事でしょう?まぁそれにしてもアンリエールさんは酷い事をしますねー」

「酷い?どうして?」

「塔の攻略は十階層までがいわば【チュートリアル】、それでさえたどり着けないのが多いと言うのに、三十層攻略なんて、この世界が作り直されてから一度も、というか
その半分もたどり着いていないじゃないですかー!フフフ アハハハ…………」


 ケラケラと笑いながらウンリエルは姿を消していく


 その様子を見てアンリエールは呟く


「……確かに今まではそうでした、でもあの子達はこれまでとは明らかに違う、
 なら目標を立てて導くのは、神の意志に背く事にならないわ」



















第十話 完
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