【R-18】異世界で開拓?

甘い肉

文字の大きさ
上 下
2 / 55
一章:開拓編

1話:塔攻略開始

しおりを挟む
「ちょっちょちょちょちょっとーーー!!!何よあれ?何なのよあれ!馬っ鹿じゃないの?!」


 俺はゴスロリ少女に脳を激しく揺さぶられていた。


「やりすぎですよーエリスさーん」
「ふむ、そろそろ落ち着け」
「モガッモガー!」


 エリスがマイアに羽交い締めにされ、ようやく解放された


「馬鹿やろ!殺す気か?」
「馬鹿は貴方でしょう!あ・れ・の!何処が練習なのよ!?」
「俺が用意したんじゃねー!」


 扉を開けた俺たちを迎え討つのは広大な広間を埋め尽くすようや魔物だった
 ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、角の生えた兎に、見るとゾワっとする模様のデッカい蝶々
 等等


「ふむ、どうするべきだ?あれは?」
「そうですねー、あの数の暴力はあんまりです」
「そうよ!私の魔法でもあれは無理よ!どうすんのよ!」

「どうするったって、武器と防具しか無いんだから戦うしかないだろ?」

「「「……」」」


 いや、三人揃ってこの脳筋が!って顔でみんなよ!


「あのな?さっき扉を開いた時、エリスだけ一歩踏み込んだだろ?
 その時、こっちに反応した魔物…1匹だけだったと思うんだよ」

「つまり………各個撃破できるという事でしょうか?」
「ふむ、あり得るとは思う、だが確認するべきだ」
「……本当でしょうね?」


 エリスだけが訝しげにこちらを睨む


「…今度は俺が開けるから、中には入らないでちゃんと見てみようぜ?」

「分かったわ…それじゃあ、さっさと開けなさいよっ」


 憎まれ口を叩くが杖を用意してフォローの準備に入るエリスは、案外良い奴なのかも知れないって思った

 もう一度扉を開けて、今度は中に入らず様子を見ると視界を埋め尽くすような魔物の数だったが………こっちに気が付いた様子がない


「………本当に来ませんね?」
「ふっふふふ、それなら魔法でぇ!」
「ふむ、だが待つべきだ」
「何でよ!」

「…この階層は練習でやり直しが効かない、それぞれのスキルや魔法
 戦い方、ここで覚えないと多分この先進めないって、言いたいんじゃないか?マイアは」


「…………そっそんなの分かってるわよ!当たり前でしょう!」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 それから四人のスキルや戦い方を一緒に考えながら俺たちは少しずつ魔物の大群を削っていった、

基本的な戦い方は、
剣士の俺が前衛、中衛にマイアとエリスで火力頼りに殲滅、アリアが後衛で補助魔法や回復を担当を務める、オーソドックスな戦い方が一番しっくり来たみたいだ

 それからしばらくして…


「やっと終わったみたいね」
「ふむ、どうやらその様だ」
「はい、皆さんお疲れ様でした。」
「ふうぅ、もうクタクタだ」

 ////////////
 第一階層の魔物は全て駆除されました、これにより以後この階層はセーフティゾーンとなります。
 ////////////

 管理者のとは違う機械じみた声が響き戦闘の終了を知らせてくれた


「で、全部倒したらなんか起こるんじゃなかったのかしら?」

「あれ?何かあそこに……え?っえぇ?」


 アリアが示す方向を見ると、ログハウス?のような物が目の前で組み立てられていくという、それはとても奇妙な光景で

 
 流石に全員その様子を絶句して見守るしかできず
 やがて、完成したログハウス風の建物はそこそこの大きさ屋敷となった。

「……なんか家できたみたいよ」
「だっ大丈夫でしょうか?」
「これが解放された設備って奴か?…ってマイア?!」


 マイアがなんの躊躇なく屋敷に進み扉を開け中の様子を見る


「ふむ?扉に何も書いて無いようだし、とりあえず中の様子を見るべき、と思ったんだが…
 特に異常は無いようだ」


 ログハウスの中に入ると最初に広間があり両脇には二階へ続く階段があった、
 階段は登って見ると踊り場の右側には更に上に続く階段があるが、どう見ても次の階層へと続く様子なので、ひとまず登るのは後にした

 左には分厚そうな壁が遮りどこにも行けなかった

 階段の下にはそれぞれ別の部屋へと繋がっており、左手の部屋を確認すると、十人ぐらい入れそうな風呂と洗い場があり

 反対側の右手の部屋に入ってみると…


「これは…ギルドかしら?」
 エリスが呟く

「言われて見れば…」
 アリアが同意する

「ふむ?ギルドとはなんだ?」
 マイアが問う

 アリアがマイアに説明してくれた

 確かにラノベとかアニメのイメージで言う所のギルドっぽい雰囲気だ
 しかし誰も居ない

 左の壁に掲示板を見ると
 現在の人口:4人
 現在の資金10000G

 右の壁を見ると
 現在の解放された施設
 ・管理施設(ここ)
 ・ポイント交換所(ここ)
 ・大浴場(ここ)

 何故だか四人とも見た事もない字だが、
 それぞれが内容を理解する事が出来た。


「ポイント交換所っていうのは奥のカウンターっぽい所かしら?」


 それぞれ奥のカウンターに進むと、カウンターには、バックのような物が四つ並んでおり、
 カウンターの奥にある掲示板に大きな字で、

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 この場所でシステムウインドウを開くと取り引き出来ます。
 取り引きで得た品物はバッグに格納されますが、
 生物は施設外に転送されます。
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ふむ、これはマジックバッグという奴か?」
「容量はどれくらいなのかしら?」
「マジックバッグ…初めて見ました」

 そこは異世界共通なんだな

 システムウインドウを見ると
 名前の下に
 
 >>>>
 
 という表示が増えていて、そこをタップすると
 保有ポイントと、商品の名前が並んでいた。

 階層ポイント:1000(共有)
 個人獲得ポイント:200

 階層ポイントで交換可能な物
 ・木材500
 ・馬400
 ・農具100

 個人獲得ポイントで交換可能なアイテム
 ・テント(1-2人用)100
 ・簡単調理器具50
 ・食材調味セット50

「個人で交換できる商品は、必須な物しか無さそうだけどな?」
 

 どうみても差し当たって今必要最低限な物しか用意されていなかったのでそう呟くと
  

「「「どうやって交換するの?」」」


 三人ともまだシステムウインドウに慣れていない様子なので、
 表示を変更する方法を説明しついでに、表示している内容についても
 予想も含めて説明する

 交換出来るアイテムを見て一番に膝を折ったのは、エリスだった。


「とりあえず、今日の所は個人ポイントで交換出来る物を交換しませんか?」

「ふむ、流石にこのまま二層に挑戦する体力は残っていないし、賛成だ」

「じゃあ、俺が皆の分のテントを用意するから、食事の用意をお願いしても良いかな?」

「では役割を分担してやりましょう」


 食材は魔物を倒した時のドロップ品で、オーク肉や、角付きウサギの肉などが潤沢にあった。

 アリア、マイア、エリスが三人で食事を用意、
 俺がテントの用意になったが、程なくしてエリスがやって来た。


「エリス?どうしたんだ?」
「貴方の監視が仕事よ!」


 監視って何だよ……


「お前、もしかして料理出来ないのか?」
「出来るわよ!!!ただ…私が使える食材がなかっただけ…」


 エリスは段々と小さな声で言い訳をしている、あまり突っ込まない方が良さそうなので、
 テント作りを再開すると、
 つまんなそうにこちらを見ているゴスロリ少女を見て


「なぁ、エリスにテント張るの手伝って貰えると凄ーく助かるんだけどなぁ」

「え?っそっそう? 仕方ないわねぇ、ホント使えないんだから」


 憎まれ口を叩くがその顔は嬉しそうで、こいつ意外にチョロインだなと俺の中ではほぼ確定した

 テントの用意が終わる頃、マイアとアリアがやって来て
 もうすぐ料理も終わるので、先に風呂をと勧めて来たが…


 「カイの後に入るのは絶対嫌!」


 とエリスが騒ぐので、先に三人に入って貰う事になった

 最初から譲るつもりだったけど、何となく溜め息が漏れそうだった。

 風呂から上がると夕食の用意が出来たので、四人での初めての食事が始まった。


「おぉ、この肉入りスープ上手いね!」
「それはマイアさんが作ってくれたんです」
「ふむ、味付けは薄くなかっただろうか?」
「こっちのロースト肉も美味しいわ!」


 四人で沢山の魔物と戦い、他に頼る仲間のいない状況は
 思った以上に互いの距離を近づけていた。

 アリアはレベルが上がる事で補助魔法を覚え、戦力の底上げを、
 エリスは単体魔法の他に範囲魔法も覚え、威力も回数も伸ばした、
 マイアも弓での早撃ちと飛んでもない射程を誇るようになった、
 そして俺は………

「カイはあれだけ倒したのにあんまり強くなった感じしないわね?」

「ぐっ」


 エリスの無神経なセリフが突き刺さる


「ふむ、確かに新しいスキルとか覚えた様子はないな」
「でっでも、パリイとソードバッシュは強力でしたよ?」


 そう…俺は何故かレベルが上がらなかった


「ありがとうアリア……先に休ませて貰うよ」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 テントに戻ったカイ

 一階層をクリアした時点で。アリアも、エリスもマイアもレベルは10まで上がっていた
 殆ど攻撃に参加してなかったアリアも同じレベルという事は、
 経験値はパーティ分配されているんだろう
 また、交換ポイントも平等に分配されていたって事は俺もパーティとして認識されていると考えて問題無いはずだ、幸いな事に、パリイは物理攻撃に対して殆ど万能に近く、
 アリアの補助魔法によって火力についても問題はない……が、

 俺だけレベルアップに必要な条件が設定されている?

「はぁ…わからん…寝よ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 翌日

「さぁ、今日は次の階層にチャレンジするわよ!」


 朝食を済ませ、ログハウスの二階の踊り場から伸びる階段を進んだ俺たちは
 また、一つの部屋にたどり着き、前回と同じような扉の前に居た。


「ふむ、又しても読めない文字で何か書いてある」
「何て書いてあるのでしょうか?」
「早く教えなさい」


 扉に書いてあるのは、
 己れの肉体のみで戦え、知力は封じられるだろう、自らの技を磨くべし


「って書いてある」
「…それってつまり魔法使えないって事でしょうか?」
「ふむ、という事は今回はエリスは入らない方が良いだろう」
「何でよ!杖術で少しぐらい戦えるわよ!レベルだって上がってる、だからいくわよ!」


 エリスは置いて行かれるのを嫌うもんな


「まあ、一緒行かないとエリスのレベルが上がらない可能性もある、
 それは今後の事を考えると避けたい、とりあえず昨日みたいに様子を見つつ慎重に進もうか?」


 二階層は、一階層とは違いダンジョン風だった
 基本的には前回同様で、剣士である俺が前衛でソードバッシュで敵のヘイトを集め、
 パリィで攻撃をいなしつつ、後衛のマイアが止めを刺して行き、アリアが俺の回復と、補助魔法でサポートしてくれていた。

 そしてエリスを見ると


「ふん!なによ!」


 自分が戦えないため、イライラしていた





◆◇◆◇◆エリスの過ち◇◆◇◆◇◆◇

「私が斥候役をやるわ!」

「「「は?」」」

 「魔法が使えなくて、戦えなくたってこれぐらいの役に立つ事ぐらいできるわっ」

 エリスはそう言うと、杖を構えながらダンジョンを先行して進み始め、確かにレベルの上がったエリスはそれなりの動きを見せてくれていたが……


 正面の突き当たりまで、真っ直ぐの通路だと思い込んでいたエリスは横から唸る魔物の存在を気づかなかった

 足手まといになるのが許せないエリス、そこまでなんの問題もなく、斥候役を買って出たエリスがほんの僅かに油断し……ダンジョンというのは自然出来ているわけじゃない……独特な嫌らしさに見事にハマっただけに過ぎなかった…

カイ達の前を進むエリスには、大きな岩が邪魔になり、左側に小さな通路が完全に死角になっていた、そこに居たフェンウルフがエリスに向かって牙を向いていると気が付いたのは、すでにエリスに向かって飛び込んできた後だった。


「ヒッ!」
「ガァァ」


 フェンウルフが牙をむき出しにして飛びかかって来た、回避する?駄目、身体が動かない

 あぁ………役立たずが嫌だからってスキルもないのに勝手に空回りして、

 あいつに負けたく無いからって……これで死んだら本当に足手まといだ………

 ピシャっと
 顔に暖かい血が飛び散った






 それは…私の血じゃなかった…





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 

「ふう…流石にしんどいな」
「大丈夫ですか?無理はしないでください」
「ふむ、前衛が抜けるとどうにもなくなる、エリスが斥候してくれるのは助かる」
「あぁ、数が減るだけ楽になる」


 だけど、少し離れ過ぎてるな


「おいエリス、少し止まれ、おーい」


 離れ過ぎたエリスを止めるため、少し駆け足で近付いて行く時に気がついた。
 一本道と思えた通路の左側、少し大きい岩に隠れてた通路がある事を……


「おい!エリス止まれ!!」


 声をかける俺と、エリスが通路の前に出るのは同時で、

 横を向いたエリスの顔が歪んだ、

 やっぱり何か居たんだ、即死系トラップだけは勘弁しろよ!

 何かがエリスに向かって飛び付いた、

 全力で走った俺は、片手だけを割り込む事に成功した。


「ぐあぁ!」


 飛び付いたのはフェンウルフ、エリスの首元に噛み付く所に手を割り込ませたが
 こっちは派手に噛み付かれてしまった。

 腕に噛み付くフェンウルフの腹に渾身のソードバッシュを叩き込むと

 ギャイン と鳴き消えて行く


「あ…あ…あ」


 顔を血だらけにするエリス、どこか怪我をしたんだろうか?


「エリス、だいじょ…」


 視界が…かす……む?………


「いゃ……いやあああああぁ!!」





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 カイのテント

「傷の治療は終わりましたが…出血の影響でHPが戻りません」


 あの後…放心するしかなかった私の目の前で、アリアがカイを治療してくれて、皆んなでカイを一階層まで連れて戻った


「ふむ、とにかく血となる物を食べさせないといかん、私はスープを作って来るよ」
「私も食べやすい物を作ってきます」
「私は…ここにいる……お願い、私に…カイの世話をさせて欲しいの」
「…わかりました、何か有ればすぐ呼んで下さいね」


 私には何も出来ない、私が原因なのに。

 一人、テントに残ったエリスはカイを見つめるが苦しそうに呻く姿に心が折れそうになっていた





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 マイアに作って貰ったスープを飲ませる為に、カイを抱き起こし
 スープを飲ませようとするが入っていかない。

 身体に全く力が入っていないカイを抱きしめる度に身体が震えてしまう、

 絶対に助けないと行けない、ここには私たち四人しか居ないのだから。

 スープを口に含み、カイの口に重ね合わせ少しずつ流し込む

 ゆっくりとだけど、コクコクと嚥下してくれるカイに気がついて自分が救われたみたいに嬉しかった

 固形物はよく噛んで咀嚼してから、少しずつ喉の奥に流し込んだ、これは私にしか出来ない事だ、自分がカイを助けるんだと微塵も躊躇わなかった

 時間を掛けて、全てを食べさせ終わり、またゆっくりと寝かせる。

 ただひたすらカイを見ていた、まるで其処で死にかけているのは自分だと思える程に

 様子を見ていると汗が沢山出ている事に気がついて、慌てて服を脱がしてタオルで拭いていく

 そうして服を脱がす時、全身から汗を流していると、気がつき、少し恥ずかしかったが、下着も脱がし、全て拭き終わってからそっと毛布をかけ直し

 また、ただひたすらにカイを凝視してた

 今度は心なしかさっきまでの赤い顔が
 青くなっている事に気がついた……私の血の気も引いた。

 額に手を当ててみると冷たくなってきていた。

 どうしたら?オロオロとカイの前を行ったり来たりし、一つ思いついた。

 毛布以上に温める方法…………………自分で温める
 そう思いついた時には服を抜いで、毛布の中に入り込み抱きついていた。

 カイの冷えてしまった身体を自分の身体で感じ、何故もっと早くに気がつかなかったのか?
 私はやっぱりダメな奴で役立たずだと実感し情けなくて涙が溢れそうになる。

 お願いだから、回復して、もう生意気な事、言わないからお願いだから
 震えてしまう身体を必死にしがみ付き、そう祈りながら抱きしめた

 少しずつカイの身体が暖かくなってきてくれた。
 心なしか寝顔も柔らかくなって来た気がする。

 長い長い時間を全身緊張させる事から解放されたエリスは
 心の底から安心し、そのまま意識が薄れていった







第一話 完
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男が少ない世界に転生して

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:636

私以外の女に色目使いってどういうこと?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:4

処理中です...