小さな町の不思議・怖い話

みつか

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呪いの家

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ある中学校教諭が田舎へと引っ越してきた。
集落の少し離れた場所にある教員住宅。
向かいの家2軒は、空き家。
裏手側の塀のむこうには、老夫婦が住んでいた。
『住宅』といっても、一軒家。入り口以外は塀でぐるりと囲まれている。
玄関入って、すぐに6畳の部屋が1部屋。トイレとキッチン、お風呂場完備。奥の方に6畳の部屋がもう1部屋と押入れ、小さな小部屋4畳まである。
一人で住むには、広いくらいの部屋だった。
奥の6畳の部屋は、外に面しているが塀に囲まれていて外は見えない。大きな窓の戸があり、すりガラス調で立ち上がればそこから塀越しに外が見える。
その窓を開けると、塀の向こう側に大きな石碑の頭が見える。
「何の石碑だろう?引っ越し片付け終わったら見てみよう。」
あちこちの窓を開け放ち、引っ越しの荷解きと掃除を終え、裏手側の老夫婦に引っ越しの挨拶にお菓子を持って伺う。

ニコニコと優しそうな夫婦で、励ましの言葉とおかずまで貰ってしまった。集落の道のりや、隣人の紹介までしてくれた。なんていい人達だと思った。石碑の事を聞くが、何故か言葉を濁されてしまった。
(暇になったら石碑を見てみよう隣だし)
軽く考えていた。
奥の6畳の部屋を寝室に決め、その日は早々と就寝した。

朝になり、沢山寝たはずなのに何だかダルい。引っ越しの疲れが出たのかと……
休日だし今日はゆっくりしよう。ゴロゴロと気怠く寝転がる。
ふと、入り口近くの6畳に目をやる。
寝転がりながら廊下越しに見つめる。
(あんなに暗い部屋だったか?)
昼間なのに、何故か夕暮れ位部屋の中が暗く感じたのだ。外は上天気なのに……
(気の所為だ!)
と自分に言い聞かせる。

数日経過し、学校が始まる。何かと忙しい日々に色々と忙殺していった。石碑の事もすっかり忘れていた。
それと同じく段々と、身体の異変を感じてくる。
裏手側の老婆が、帰宅時間に合わせてよく尋ねて来る。男1人だからか?心配らしい。なんだか落ち着かない。ずっと誰かが家に居る気配がする。イライラする。

老婆のせいでは無いのは頭の中で理解しているが、とにかくこの住宅は居心地が悪い。四六時中見られてる。寝ている時も……時々酷い悪夢を見て起きる事も最近増えてきた。
イライラが止まらない。身だしなみを気にする気も無くなってきた。目の下のクマも酷く、同じ学校の教師達からも心配され始めている。
校長に相談して、教員住宅を変えてもらおうか実家に暫く帰省するか考えていた。
担任じゃないから、多少の融通は利くだろう。
校長に相談すると、近くに空きが無いことと、酷い状態なので暫く休暇を取る事を勧められた。

早退する。すぐに休みたい。身体を休めたい。
ふらふらと、住宅へ歩く。
玄関に入ると倒れ込んで、記憶がなくなる。
鍵もかけずに倒れ込んだ。
老婆が発見した時には、意識不明の状態。救急車で運ばれ、即入院。
健康だけが取り柄だった、健康診断でも何も引っかかったことはなかったのに……
末期癌を宣告され、余命宣告。教師を辞めて地元へ帰った。


2年が経ち、新しく若い夫婦が教員住宅へ引っ越してきた。
周りは空き家、後ろ側の老夫婦と少し離れた所に何軒か住んでいる。
若い夫婦は、近くの人達に挨拶して回った。中でも老夫婦が一番仲良くしてくれた。
若い夫は、昼間中学校へ。若い妻は日中家に居る生活だった。

若い妻はとても綺麗な人で、手先も器用。ハンドメイドで色々な物を作って日中を過ごしていた。
集落の人々とも仲良くやっていたが、若い妻はどうしても気になる事がひとつ。石碑だ。
石碑は住宅と反対側を向いている。
住宅からは、石碑の後ろ側が見えるだけなのに妙に気になる。
石碑の場所には、誰も居ないハズなのに話し声が聴こえたり、人が居る気配がするのである。
外に出て見ても誰も居ない。不思議でしょうがない。(遠くで遊んでいる声が響いているのか?)と考えたりもする。
最初のうちは変わった状態も
(田舎だからしょうがないか。そういう事もあるよね。)
と、楽しもうとしていたが最近は特に人の気配や話し声が酷いのである。見られている気もする。家に居るのが何だか怖くなる。
夫に相談するが、昼間家に居ないので理解してくれない。イライラする。

嫁が日に日に狂ってくる。誰も居ない場所に話しかけたり「子どもの声がする」と、夜中に探し始めたりおかしな行動を仕始める。
子供が欲しいって事なのかと、なだめてハグするが拒否られる。
どうしたら良いのか解らない。昼間独りで家に居てもらうことが心配になり始める。
老婆に相談して、ちょこちょこ見てもらう事にしたが老婆から
「手がつけられなくなる時がある。」
と、言われた時は困惑した。
最初は、誰かと一緒ならおかしな行動する事は無かった。
が、暫くすると奇声を上げたり、見えない誰かと話したり、走り回ったりする様になったのだ。
優しくて、何でも出来て、美人でいつも笑顔だった妻がボロボロになっていく……
話をしていても、あさっての方向を見て笑ったり存在しない誰かと語っている。クマも酷い。子供ができたら変わるのか?
病院で診てもらう事にした。
薬も少しの期間だけしか効果がなく、部屋で暴れたり誰かと話す、眠らない。症状は酷くなる一方だ。
俺自身の仕事にも支障が出てくる。奇声や大きな物音で周りにも迷惑をかけ始めている。

校長と嫁の実家に相談して、嫁の家に引っ越す事にした。中学校は楽しかったが、嫁の方が大事だ。
学生には悪いがスパッと辞めて、都会へと帰ることにした。

1年後新しく、若い男性教諭が住宅へ来た。
引っ越す前に下見に来た若い教諭は逃げ出した。
「その教員住宅へは絶対に住みません。遠くても別の所借りて通います。」
と、校長へ申し出があったとの事。
理由は、部屋の中が『暗すぎる』と申し出てきたらしい。

住宅は空き家になった。
暫くすると教諭が入る。夫婦、独身。
その後も住宅に入る教員は皆
精神が病む者、体調不良、全然元気だった者が急に末期の病で命を脅かされる。
など長く住むと住んだ分だけ重い病気になる者が続出した。
教員住宅に長くて2年、素早く出ていく人で数日。皆、教師を続けられる状態ではなくなる。

教師達の狂う率が増え、異常だと気づいた老夫婦は、集落に相談した。
集落は、所有者である町に相談した。
数年で異動する教師達だから問題無いと思っていたらしいが、深刻な問題になっていた。
なんとなく集落の人達も気付いていたが、町の所有地だし、慣れないせいと、たまたまタイミングがそうなっただけと思っていた。

不敬をしない限り、集落自体には障りが無かったので見知らぬふりをしてやり過ごしていたのだ。
『触らぬ神に祟りなし』
である。

最後に入った若い男性教諭は
「髪の長い白装束の女性が部屋に居る!!」
と、荷物も運び出せない位に腰を抜かして外で動けなくなった。
「あの住宅はヤバいッス」
と言い残し、行方不明となった。

集落の教員住宅に入る教員が居なくなったのと、入る教師に支障が出るので町は建て前状
『老朽化に伴う建て替え』
を理由に教員住宅の解体が決まった。
お祓いをしてもらい、塀は壊さず、住宅一戸建てのみを壊し更地にした。
『建て替え』は行われなかった。

時々、その更地の前を通る事があるが鳥肌が立つので、見ないように早足で通り過ぎる。
今でも更地には何も建てず、ただの土地として存在している。
隣には
『とねや跡地』
の石碑が静かに鎮座している。


読んだ人に障りがない事を祈る。




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