1 / 36
不思議なチカラ
しおりを挟む
父方の曾祖母が亡くなった。
スマホやケータイのない時代。
自宅の黒電話がジリリリリリと呼び出し音を鳴らしていた。
「はいはい、もしもしどなた様ですか?」
電話口にいつも早口で喋る私。
聴き取れなかったようで、しばらく返事が返ってこない。
「?もしも~し?」
再度声をかける。
「もしもし、お母さんだけど。おばあちゃんが亡くなったみたいなの。ちょっと帰りが遅くなるから、出来るだけ早く帰るから、お姉ちゃんと何でもあるの食べてて。夕ご飯遅くなるから。」
少し心配そうな声の母。
「分かった~。」
残念そうに私は答え、姉に報告する。
すると姉が
「ふ~ん。元気そうだったのにね……意外にぽっくりだったね。」
曾祖母には暫く会っていないのでイメージが無いのだが、身体つきはふくよかで、よぼよぼした動きをするけどパワフルなおばあちゃんって感じで直ぐには死にそうにはない感じの人だった。急な話に少し驚いた。
『黒いナニか』が見えて以来私は怖くて曾祖母が在宅時には近づかなかった。父と一緒に行っても車で待っていたり、出来るだけ会わないようにしていた。
姉とテレビを観ながら、お菓子を食べ両親の帰りを待っていると20時頃に帰宅した。
お線香の香りがふわっと漂う。
お葬式に皆で出席するのかと思っていたが、父から子供2人は家での留守を命じられた。
幼い私は、お葬式の事等分からなかった。
父から言われた理由は、
”干支の人間とお葬式の日に干支の人間は立ち会ってはいけない。”
普通の人なら問題ないらしい(諸説ある)が、曾祖母が『ユタ神様』だからなのか色々と決まり事があるらしい。
【『ユタ神様』とは、霊的な能力を持ち、悩みごとの相談を受けるなど身近な存在である。】
幼い私と姉にはよく分からない話であった。
数年が経ち母がそういえばと話してくれた。
「曾祖母は、ユタ神様だから生前から土葬(火葬せずにそのままお墓に埋める)してほしいって叔父さん達にお願いしてたみたい。生きている内は土葬にするって約束してたけどねぇ~。土葬したら後からが大変でしょ?……亡くなって、火葬するって話になったのね。いざ自宅から葬儀場に行こうとしたら霊柩車がちっとも動かなくなったのね。車は故障してないし、エンジンはかかってるんだけど、1ミリも進まないの……」
聴いてて背筋がゾクリとした。
母は続ける。
「叔父さんが一言『土葬にするから!』って言ったら不思議と動いたのよね~。見てた皆びっくりよ。けどね、まだあるの」
身振り手振りをつけ話す。
真剣に聴く私をからかうように、母は面白がっている様だ。
「結局、葬儀場に行ったけど親族でやっぱり後々の事を考えるとねぇ~子供がするならまだ良いけど、孫とかひ孫に嫌な仕事させる事になるでしょ?」
意味がわからず、話の腰を折った。
「どういう意味?」
と私が問う。
「知らなかったんだ……昔、浜であんた見たみたいだったから知ってると思ってたわ~。土葬したら、何十年か経ったらお墓開けて、浜でトタン敷いて、その上で火焚いてお骨を焼いて、洗って、綺麗にして、改めて骨壺に納めてお墓に戻すの。」
……
「言われてみたら、海の近くで遊んでたら浜の奥で人が沢山居て火燃やしてたから何してるのかなって皆で行こうとしたら、お年寄りに子供達~行くなよ~危ないからって止められた事があったわ~。それって……焼き直ししてたのね……。」
あの時、見に行かなくて良かったと思った。
母がニヤリとしながら
「あんたなんかが、今度はやらないといけなくなってたかもよ?ふふっ叔父さん達に感謝しないとね。で、お葬式の前に”火葬“にする事を決定したんだけどお葬式終わって、出棺しようとしたら、ま~た車がうんともすんとも。何回やっても動かないのね。お坊さんが念仏唱えたら不思議と動いたの!でもね……お坊さんがボソリと近くにいた私に言うの『仏さん火葬場に行かせまいと車にしがみついてる』って!やだぁ~怖いでしょ」
なんと言っていいのやら……ちょっと想像すると面白いというか、怖いと捉えるべきか
白い着物を着けた老婆が、車を後ろから引っ張っているって……想像の仕方によっては笑える。
「でもね、それだけで終わらなかったの!火葬場の近くで3回もエンジンストップ。なんとか火葬場に入って火葬出来たんだけど、お坊さん途中で帰っちゃって、変な空気になって……火葬終わった後、地元に帰ってる途中に先頭のお骨を持ってる車がま~た止まったの!暫くしたら動いたんだけど、お墓に入れる前お坊さん呼んでしっかりお経あげてもらったけど。お父さんがあんた達を通夜にもお葬式にも連れなかった意味がその時よく分かったわ~。」
?
「どういうこと?」
言葉を濁すように母が言う。
「……だいぶ経ってからの話ね。参列者のほんの数人が凄い形相のおばぁを見たって言うの。具合悪くなって途中で帰ったみたいなのね。その後病気になったり、ちょっと障りがあったみたい。お母さん炊事の手伝いしてたから知らなかったんだけど、お父さんもいつもよりずっと険しい顔してたし……なんでかな~って思ってたんだけど、小さな子供は連れていかれるって思ってたみたい。守りたかったみたいよ。おばぁは、強いユタ神様だったからね。」
父強し!
もし、参列してたら黒いナニかに連れ去られて帰れなくなっていたかもしれないし、もしかしたら黒いナニかを継がないといけない状況になっていたかもしれないと思うとヒンヤリした汗が流れた。
約束は、守りましょう。
スマホやケータイのない時代。
自宅の黒電話がジリリリリリと呼び出し音を鳴らしていた。
「はいはい、もしもしどなた様ですか?」
電話口にいつも早口で喋る私。
聴き取れなかったようで、しばらく返事が返ってこない。
「?もしも~し?」
再度声をかける。
「もしもし、お母さんだけど。おばあちゃんが亡くなったみたいなの。ちょっと帰りが遅くなるから、出来るだけ早く帰るから、お姉ちゃんと何でもあるの食べてて。夕ご飯遅くなるから。」
少し心配そうな声の母。
「分かった~。」
残念そうに私は答え、姉に報告する。
すると姉が
「ふ~ん。元気そうだったのにね……意外にぽっくりだったね。」
曾祖母には暫く会っていないのでイメージが無いのだが、身体つきはふくよかで、よぼよぼした動きをするけどパワフルなおばあちゃんって感じで直ぐには死にそうにはない感じの人だった。急な話に少し驚いた。
『黒いナニか』が見えて以来私は怖くて曾祖母が在宅時には近づかなかった。父と一緒に行っても車で待っていたり、出来るだけ会わないようにしていた。
姉とテレビを観ながら、お菓子を食べ両親の帰りを待っていると20時頃に帰宅した。
お線香の香りがふわっと漂う。
お葬式に皆で出席するのかと思っていたが、父から子供2人は家での留守を命じられた。
幼い私は、お葬式の事等分からなかった。
父から言われた理由は、
”干支の人間とお葬式の日に干支の人間は立ち会ってはいけない。”
普通の人なら問題ないらしい(諸説ある)が、曾祖母が『ユタ神様』だからなのか色々と決まり事があるらしい。
【『ユタ神様』とは、霊的な能力を持ち、悩みごとの相談を受けるなど身近な存在である。】
幼い私と姉にはよく分からない話であった。
数年が経ち母がそういえばと話してくれた。
「曾祖母は、ユタ神様だから生前から土葬(火葬せずにそのままお墓に埋める)してほしいって叔父さん達にお願いしてたみたい。生きている内は土葬にするって約束してたけどねぇ~。土葬したら後からが大変でしょ?……亡くなって、火葬するって話になったのね。いざ自宅から葬儀場に行こうとしたら霊柩車がちっとも動かなくなったのね。車は故障してないし、エンジンはかかってるんだけど、1ミリも進まないの……」
聴いてて背筋がゾクリとした。
母は続ける。
「叔父さんが一言『土葬にするから!』って言ったら不思議と動いたのよね~。見てた皆びっくりよ。けどね、まだあるの」
身振り手振りをつけ話す。
真剣に聴く私をからかうように、母は面白がっている様だ。
「結局、葬儀場に行ったけど親族でやっぱり後々の事を考えるとねぇ~子供がするならまだ良いけど、孫とかひ孫に嫌な仕事させる事になるでしょ?」
意味がわからず、話の腰を折った。
「どういう意味?」
と私が問う。
「知らなかったんだ……昔、浜であんた見たみたいだったから知ってると思ってたわ~。土葬したら、何十年か経ったらお墓開けて、浜でトタン敷いて、その上で火焚いてお骨を焼いて、洗って、綺麗にして、改めて骨壺に納めてお墓に戻すの。」
……
「言われてみたら、海の近くで遊んでたら浜の奥で人が沢山居て火燃やしてたから何してるのかなって皆で行こうとしたら、お年寄りに子供達~行くなよ~危ないからって止められた事があったわ~。それって……焼き直ししてたのね……。」
あの時、見に行かなくて良かったと思った。
母がニヤリとしながら
「あんたなんかが、今度はやらないといけなくなってたかもよ?ふふっ叔父さん達に感謝しないとね。で、お葬式の前に”火葬“にする事を決定したんだけどお葬式終わって、出棺しようとしたら、ま~た車がうんともすんとも。何回やっても動かないのね。お坊さんが念仏唱えたら不思議と動いたの!でもね……お坊さんがボソリと近くにいた私に言うの『仏さん火葬場に行かせまいと車にしがみついてる』って!やだぁ~怖いでしょ」
なんと言っていいのやら……ちょっと想像すると面白いというか、怖いと捉えるべきか
白い着物を着けた老婆が、車を後ろから引っ張っているって……想像の仕方によっては笑える。
「でもね、それだけで終わらなかったの!火葬場の近くで3回もエンジンストップ。なんとか火葬場に入って火葬出来たんだけど、お坊さん途中で帰っちゃって、変な空気になって……火葬終わった後、地元に帰ってる途中に先頭のお骨を持ってる車がま~た止まったの!暫くしたら動いたんだけど、お墓に入れる前お坊さん呼んでしっかりお経あげてもらったけど。お父さんがあんた達を通夜にもお葬式にも連れなかった意味がその時よく分かったわ~。」
?
「どういうこと?」
言葉を濁すように母が言う。
「……だいぶ経ってからの話ね。参列者のほんの数人が凄い形相のおばぁを見たって言うの。具合悪くなって途中で帰ったみたいなのね。その後病気になったり、ちょっと障りがあったみたい。お母さん炊事の手伝いしてたから知らなかったんだけど、お父さんもいつもよりずっと険しい顔してたし……なんでかな~って思ってたんだけど、小さな子供は連れていかれるって思ってたみたい。守りたかったみたいよ。おばぁは、強いユタ神様だったからね。」
父強し!
もし、参列してたら黒いナニかに連れ去られて帰れなくなっていたかもしれないし、もしかしたら黒いナニかを継がないといけない状況になっていたかもしれないと思うとヒンヤリした汗が流れた。
約束は、守りましょう。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【厳選】意味怖・呟怖
ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。
※考察大歓迎です✨
※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる