白く優しいモノ【R15】

みつか

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白く微笑むもの 【R15】拘束、暴力表現あり 

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数ヶ月そんな風に進展する事なくデートする。朔は段々ともどかしく、苛立つようになる。その原因は朔にあるのだが……
いつも、朔の部屋でデートしたことはない。正確にはリビング迄は入れるが、その気になると
「ホテルに行こう!僕の部屋物が沢山あるから。」

と、いい雰囲気台無しだった。サヤは、それでも良かったが、たまに冷めるし、あの幽霊の言葉が気になってもいた。(あの男は……か)
なにかを隠しているのは薄々感じていた。

妹達の写真が沢山飾ってある。家族写真ではなく、妹限定だ。
ユリ先輩の様子も少しおかしい。

そんなある日のデート中。ホテルに行くといつもよりイライラした感じの朔さん。
(デート)「今日は辞めとく?」
と、話すと、もっと怒らせてしまった。

ホテルに入ると、シャワー後強引にセックスされそうになる。怖かった。が、ユリ先輩の事もあるからだろうと自分に言い聞かせ、しばらく会わない宣言をする。

ユリ先輩から、朔さんの所からユリ先輩の荷物を取ってきて欲しいと鍵を預かる。
ユリ先輩も朔さんと喧嘩中らしく、逢いたくないらしい。店長の事で朔さんキレているとのこと……。

朔さんに見られるとヤバい物も入っているらしく、代わりに私に荷物を取ってきて欲しいと懇願されてしまった。
(仲違い中なのだが仕方ない。)

朔さんの家に意を決して立ち寄る。
インターホンを鳴らすが留守らしい。返事はない。
(良かった)
少し安心する。
鍵を開けると、開けたつもりが閉まってしまった。……どうやら開いていたようだ。不用心な……。
「お邪魔します……」
そっと入る。

玄関から、リビングに進む。たまに来ていた場所。キョロキョロ探すが見当たらない。
(朔さんのお部屋かな?……)
ドアをノックして部屋に入る。寝室だった。

一歩寝室に入って衝撃を受ける。
そこには『妹の顔そっくりな人形』が2体。
他にも手足をもぎ取った等身大の人形に、刃物を突き立てられた人形……。
ベットには、添い寝する様に裸の人間そっくりな女性の人形が横たわっている。
「なに……コレ……。」
固まるサヤ。
ハッとし
(ユリ先輩の荷物!)
ベットの横に女性用のバック。聴いていたバックだった。ピンク色の可愛いバック。
バックを持って部屋を出ようとしたその時!
『キィィィィィィ』
ドアの開く音がする。
そっと覗くと、ブツブツ独り言を言いながらナイフを持ってふらふらと歩いている朔が居た。
(どうしよう……)

寝室のドア横に隠れて様子を伺っていると
「ユリ~。あんな男許さない。お兄ちゃんがちゃんと見てなかったからだよな……僕が女にうつつを抜かしてたから……ユリ~。今から助けに行くからな!」
ふらふらと、玄関の方へ歩いていく。
女性用の靴に気づくと、踵(きびす)を返し

「サヤ~?勝手に入ったのぉ?ユリの靴でも、ぼたんの靴でもない……ヤラしてもくれないサヤ~?居るんだろぉ~。隠れてないで出てこいよぉ~。楽しもうぜぇ~。今からユリ助けに行くんだぁ~。なぁ~出てこいよ~。」

狂気に満ちている表情。ナイフをキッチンカウンターに置くと、あちこちのドアを開け確認している。
サヤは咄嗟にクローゼットの中に紛れた。そこにも生身の女性そっくりな人形が入っていた。

「ここかなぁ~?ベットの下かな?違うなぁ~じゃあ、中かな?」
バサっと布団を投げる音がする。
段々と近づく足音。息を必死に潜める。
クローゼットのドアが勢いよく開く。バンッ!
「ここだ!!……違うかぁ~サ~ヤ~怒らないから出てきて~。何処にも居ない……裸足で帰ったのかなぁ~。」
スタスタと、離れる足音。


緊張で息が荒くなる。朔が離れたことで少し安心してしまった。クローゼットに暫く留まる事にした。

が、その時

バン!!

と、大きな音と共にクローゼットのドアが勢いよく開く。足音は、聞こえなかった。

「さ~や~。いたぁ~。かくれんぼ?み~つけたぁ~。」
ニヤリと笑い、サヤの手を強く引っ張りベットへと投げ飛ばす。
「きゃっ!!」

人形の横に倒れ込む。すぐに起き上がろうとすると両手を掴まれベットに押さえ込まれる。朔は人形を床へ落とし、暴れるサヤの上にまたがる。
「サヤ~。寂しかった……。」
冷たい表情。
ベットの横に置いてある棚から、ガチャガチャと何かを取り出すとサヤの腕をベットに固定する。
「えっ!?ヤダ、ヤダ、朔さん何これ?勝手に入ったのはごめんなさい。ね、離して?」

サヤの手を固定したのは、手錠だった。
「サヤ……不法侵入だよ?捕まえた!ず~っとこうしたかったんだ~我慢してた。縛られるキミは綺麗だよ……」

サヤにまたがったまま、見下げる朔。
「イイねぇ~その怯えた顔。ふふ。SMって知ってる?……知らないか。セックス知らない子が知る訳ないか……。僕さぁ~相手が痛がる事するの本当は好きなんだよね!焦らされ過ぎなんだよサヤ!!いつもいつもいつも!はぁ~……。早くこうするべきだったんだ!慣れてからじゃないと、すぐにこういうことすると、皆逃げちゃうからさ……でも、ここまで入って来たのは君だけだよ?サヤ~。僕の事本当に好きだったんだねぇ~。」

無理やりディープキスしてくる。
怯え震えるサヤ。
「朔さん……す、少しおかしいよ?こんなこと。ね、乱暴しないで、優しい朔さんが好きなの。お願い!ユリ先輩に会わなきゃいけないし。」

朔は、自分の頭をくしゃくしゃっとかきむしると
「そぅだ、ユリ……ユリを助けなきゃ……あの男ユリと子供作ってた……許せない!僕は、君との子供作れずにいるのに!!そうか、ユリのバック取りに来たの?……あの中にはね、エコー写真。ユリの子供の写真入ってたんだ~。サヤ!僕らも負けないように早く作ろうね!」

目の焦点が合っていない朔。
思い出したかのように
「……ユリ……ユリを先に助けなきゃ!!待ってて、あの男の子供なんかすぐに取り出して……ふふ。僕とサヤとユリで仲良くするんだ~。サヤは待ってて、後でゆっくりじっくり楽しもうね♡ずっと3人で一緒にいよう?あの男!ヤッつけて来るから……良い子にしてて。」
サヤの涙をベロリと舐め、スマホをサヤの手に持たせる。

「僕が出かけたら、荷物が分からないってユリに電話して。リビングで待たせてね。少し、手の紐長くしておくから画面見えるでしょ?ほら!暴れんな!!」
逃れようと、動くと怒鳴られる。
手錠が鎖に繋がれ顔の前位まで下げられる様になった。
「こんな事おかしいよ?朔さん!!」
懇願虚しく足も手錠で拘束される。逃げられない状態だった。

「聴き分けない子だな……。」
そう言いながら朔はスマホをいじっている。と、サヤのスマホに着信がくる。
朔は、サヤのスマホを通話状態にする。朔がサヤに電話をかけたのだ。
「ほら、持って、ビデオ通話だよ。君の顔ず~っと見ててあげるからさ、顔見せててよ!あいつの所に着いたら電話切るからさ、そしたらユリに電話かけて!変な気を起こしたら分かるよね?サヤはいい子だから出来るよね?……。はぁ~ムリそうだね。君に頼むのは無理そうだ。口開けて?」

棚から錠剤を取り出している。
「えっ?ヤダ……お願い!何?朔さんヤダ……」

動いて抵抗を試みる。ガチャガチャと金属の音が鳴り響くのみで外れない。
錠剤のシートから一粒薬を取り出すと、サヤに見せながら

「気分が良くなるお薬だよ?……大丈夫。ただの軽い睡眠薬だから。僕さ~君に会ってから時々寝れなくなってさ……君が可愛すぎるからだよ?ほら!おとなしく口開けろよ!!」

乱暴な口調に驚くサヤ。髪の毛を捕まれ、睨まれる。恐る恐る口を開けるしかなかった。
「いい子だね。はい、あ~ん。あっ!お水!お水」

キッチンへ水を取りに行く。
隙をみて、サヤは薬を吐き出すがすぐに見つかってしまう。

「チッ。はぁ~。手間取らせんなよ!」

見たことがない怖い顔の朔に怯える。
「ご、ごめんなさい……。ごめんなさい。」

突然、朔はふふっと笑うと
「苦かったんだね!ごめんね。お水用意してから飲ませたら良かったね。」
朔の情緒は不安定だ。怒らせると何をされるか分からない。

パチンっと錠剤をまた1つ手に取ると
「……ほらっ今度こそ飲んで。はい、あ~ん。」
ペットボトルに指したストローから水を飲ませる。

「いい子いい子。ほら~泣かないよ?ちゃんと飲んだかチェック。口開けて。」
口の中を確認すると急にディープキスしてくる。嫌な気分しかしない。不快だった。
「ンッんんっ……」

「うん!ちゃんと飲めたね!偉い偉い!!ちょっと行ってくるからね!眠るまでスマホ握っててね!君の顔見てたいから……そっか、こうすれば良いんだ!」
閃いた様で、棚の上にサヤのスマホを置き、サヤの顔が映るように設置する。
「ねぇ!朔さんこんな事止めて?ね、私朔さんと居るからユリ先輩の幸せ考えて、ね!」

話しかけるも無視される。聴いていないようだ。

「ヨシ!完璧!!じゃ、待ってて成敗したらすぐ帰ってくるから、帰ってからのおたのしみ~♡沢山子作り頑張ろうね!!」

ディープキスされ、鎖も短い状態に戻される。サヤは万歳の状態で固定された。
泣くしかないサヤ。虚しくドアがパタンと閉まり静寂と薄暗さが訪れる。
しばらくすると、スマホから声が聴こえる。

「サヤ!サヤ!こっち向いてないと駄目だろ!?スマホ!!ほらこっち見て!ふふ。かわいい。いい子だねぇ~。」
泣きながら、ぼんやりスマホを見つめる。
朔は、運転しているようだった。

「ね、ねぇ……朔さ、ん。帰ってきて?外してよ……。」

精一杯演技する。
「かわいいね!かわいいね!ソソられるよサヤ~!!誘ってんの?ダメだよ!ユリを助けるのが先!!サヤは~、その後沢山可愛がってあげるから~すぐだよ!顔逸らさないで!!」

無力さに泣けてくる。どうにかこの状態から抜け出せないかと辺りを見回すも
「サヤ!!何してる!?ここ見て!あ~も~!!悪い子!!帰ったらお仕置きだ!!ちゃんと僕見てて!鍵はここにあるから探しても無駄だよ!僕見て!!」
すぐに朔のチェックが入る。どうすることも出来ない。そのうち、急激な眠気に襲われる。うとうとし始める
「サヤ!眠い?ふふふふ。もうすぐだよ!」
朔の狂気じみた笑い声を聴きながら眠りに落ちる。


サヤは夢の中で、白い幽霊に抱きしめられている。不思議と怖くない。
「大丈夫。大丈夫だよサヤ。怖い事終わるから……泣かないで。」

(優しい声……暖かい。先輩大丈夫かな……)
そんなふうに考えるサヤ。
暖かく、優しい声になんだか癒される。優しく微笑んでいる白い幽霊。安心する。抱きしめ方が優しい……サヤは白い幽霊を抱き返す。このままでも良いかな~と思っていると、

「大丈夫。大丈夫。泣かないで……ほら、サヤ頑張ったからもう、大丈夫だよ。目を開けて……。」

白い幽霊に促される。ゆっくりと目を開けると、心配そうな顔の先輩が居る。

「……せん……ぱい?……ここ?」
白い天井と泣きそうなユリ先輩。
軽く混乱するがまだ頭がしっかりしない。

「ごめんね~~~~!!サヤちゃん!!よがっだ~~目が覚めだ~~!!」
号泣し始めるユリ先輩。
感覚がしっかりしない手で、ユリ先輩の手に触れる。
「せ……んぱい。大丈夫で……すか?ここは?」
話しかけるサヤ。
「ここは病院だよ~~~~!!うちのお兄ちゃんがごめんね~~。」
理解したサヤ。感覚がだいぶ戻ってきた。

「先輩……大丈夫なんですか?朔さんは?あ……あと、店長は?」

ヒックヒックと、涙を拭きながら
「でんぢょうざざれだの~~。お兄ちゃんに~。命に関わる怪我じゃないけど……ヒック。うぇ"~ん。ひどいの~~お"に"いち"ゃ~ん"~でぃ~ぶい~って勘違い~。」
(店長刺されたの~。DVって勘違い~。)
ギャン泣きする先輩。
少し落ち着くのを、しょぼしょぼしながら待つサヤ。感覚は戻ってきたが、しっかり目が覚めない感じだった。うっかりするとまた寝入りそうだった。

「……ユリ先輩は、大丈夫なんですか?店長の所行かなくて……朔さんは?」
落ち着いたのを見計らって再度聞いてみる。
「えっく……お兄ちゃんは……ヒック。警察に逮捕されたの……ひっく。店長は、面会謝絶中~。意識はあるから大丈夫って……。」

(……良かった。命かあるなら、先輩も怪我していてないし)

「サヤちゃ~ん。ごめんね~私が頼んだばっかりに~!お兄ちゃん、昔、精神を病んだ事があって……姉が自分で命を絶ったあと……参っちゃった事があって、その後から私への執着酷くて……好きな人出来たら束縛緩くなるかなって、サヤちゃんに押し付けちゃったから……ごめ"ん"なざい"~。」
また泣いている。

「私は、大丈夫です。お、驚いたけど……」
ユリをなだめる。

「本当にごめんね~ひっく。急に、おかしくなっちゃったから、止められなかったの……サヤちゃんと順調だったから……兄と喧嘩してたの知らなくて、私も突っぱねちゃってたから、精神崩壊しちゃったみたいで、妄想してしまったみたいなの……DVしてるって思い込み……やんなっちゃう。妊娠は、最近分かって本当だけど……お付き合い許してもらってなかったから、おいおい話そうと思ってたら……店長刺されて、サヤちゃん!!って心配した!警察の人と救急の人が助けてくれたの……まさかあんな人形に囲まれてたなんて……お兄ちゃんは、ずっと病んでたのかも……気づけなかった私の責任。本当にごめんなさい!!」
深々と頭を下げる。

「頭、上げて下さい。支えてあげられなかった私の責任もありますから。求められても、応えてあげられなかったから……きっとストレスになってたのかもしれないです。私のせいです。……店長早く良くなるといいです。」

ガバっと抱きつかれ、驚くサヤ。
「お兄ちゃんの事は本当に許せる事じゃないわ!警察に入って、しっかり治療させる!!サヤちゃんは別の人と幸せになって!サヤちゃんは幸せになるべきよ!!兄とは、別れて下さい。勧めたの私だけど、別れて下さいお願いします!!きっと、またサヤちゃん傷つけちゃうから……」

「せ……先輩。少し……考えさせて下さい。」
考えがまとまらないサヤはすぐには結論を出す事が出来なかった。
様子見で一晩入院し、翌日は警察の呼び出しに応じる。

数ヶ月後、朔の面会に行くと、狂った様に
「サヤーー!!なんでココに居るの!?僕のサヤ!!僕のベットの上に居なきゃダメじゃない!そうか!!足があるからいけないんだ!そぅだぁ~そんな悪い子は、足取ろう!!足要らないね!!サヤ!サヤ!サヤ~!!僕のサヤ、足切ろうね!ずっと一緒に居られるように、悪い子はお仕置きだ!痛くしない様にするからねっ!ねっ!ねぇ~!サヤァ~~~~~~!!」

手、足のもぎ取られた等身大の人形を思い出し、ゾッとするサヤ。

すぐに面会室から連れられていく朔。
きちんと話せずにサヤは困惑するが、朔と別れる決意をする。
回復したら……とも考えていたが狂気に満ちた朔を支え続けられる自信がなかった。
落ち着いた頃に朔の手元に届く様、手紙を警察に託す。
朔の心と身体をサポート、支えられなかった事に罪悪感を抱きながら……立ち去るサヤだった。







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