白く優しいモノ【R15】

みつか

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白く見守るもの 【R15】性表現、暴力あり

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ユリは喫茶店で働いていた。
ユリの兄、朔(さく)は会社員で妹が大好きだった。  

妹のユリ一筋に見える程ユリにべったりだったのだが、ユリの働いている喫茶店に新しく働き始めた女性に一目惚れした。
奥手の兄は、話しかけられずに見守っていた。
妹のユリに対してもだったが、ストーカーに近い見守り方だった。

そんなある日、不穏な話を居酒屋で聴いてしまった。
『喫茶店で働く女の子とヤル』
耳を疑った。不快で居酒屋を出ようと考えていた時、ふと耳に入ってきた文言。
(妹?イヤ、新しく入った子だ!!大変だ!ユリに知らせなきゃ!"ぼたん"の二の舞にはさせない!!)

急いで居酒屋を後にし、喫茶店へと向かう。
ちょうど閉店間際だった。
お店が閉まるのを待っていると、店長とイチャイチャしながら出てくる妹を見てしまう。

(ユ、ユリその男は既婚者だぞ?不倫か?阻止しないと!ユリが不幸になってしまう!!)

物陰から見ていたが、我慢ならずに飛び出す。

「ユリ!!」

呼びかけられて驚き離れる2人。

「お、お兄ちゃん……どうしたの?今日は来ないんじゃなかったの?」

慌てている2人。

「お、お兄さん来たなら大丈夫だね。また、明日!」

店長は先に帰ることを伝え逃げるように行ってしまった。
兄は店長を睨み付けている。

「あの男とはどういう関係なんだ!!ユリ!」

つい声を荒げてしまった。驚いた表情のユリがゆっくりと話しだす。

「あのね……お兄ちゃん、店長来月には離婚が成立するんだって。……前々から私、店長に憧れてたの。片想いで、それでも良いって見てるだけで良いって思ってたの。でも、欲が出ちゃって……新しく入った子も恋愛してるし、他の子達だってみんな彼氏がいる。辛かったの!だから、思い切って店長に『好きです』って言ったら、最初戸惑ってたんだけど、段々店長も思いに応えてくれるようになって……夫婦中はこじれてたし、別居状態でなんだったら奥さんの浮気だし!私のせいでも無いし……お兄ちゃんに言ったら絶対反対するだろうと思って……内緒にしてたの。」

急な展開に頭がついていかない兄。
ハッと正気に戻ると、妹と働いている新人の子の身の危険を伝える。

「お前の事は後でじっくり聴くとしてだ、あの可愛い新人の女性"ぼたん"の二の舞にしたくないんだ!連絡とれないか?あの男に惚れ込んでるみたいだし……どうすれば、信じてくれるのか……」

心配でたまらないが、打つ手がない。
ユリも悩んでいる。

「とりあえず、彼女に今日の事をユリお前から伝えてみてくれないか?時間がない……水曜日!そうだ!あの男、毎週水曜日に女性とホテルに行って、サナエとその後いつも落ち合ってる!早めに彼女にその事伝えて!!水曜日に向かいの喫茶店で見せつけたらどうかな?……ショックだろうけど……。」

閃いた兄の朔(さく)妹のユリに提案する。
一刻を争う事態だ。
うんうん、と2人で頷く。

「店長にシフト調整してもらうね。」

妹のユリが話す。

「……そうだな!……ユリ!!店長とは、どこまでヤッたんだ!兄ちゃん認めないからな!不倫だぞ!うっかり忘れる所だった。しっかり離婚成立してからじゃないと、兄ちゃん付け回すからな!」

過保護発言にうんざりした表情のユリだった。
ユリを送り、自分の住むマンションへ帰り着くとシャワーを浴びソファーでくつろぐ。

彼女の事も心配だが、妹の不倫疑惑も気になる。
(どうすればいいんだ……)
頭を抱えていると、耳元で

「大丈夫……大丈夫……」

驚く朔(さく)だが、誰もいない。
(気の所為だよな)
妹の写真を手に取り、ぼんやりと眺める。
(ぼたん……ユリ大丈夫だよな?あの子も心配だけど、ユリも危なっかしくて……本当にあの店長大丈夫なのか……?不幸にしたらぶん殴ってやる!)

ふわりと首すじを風が通る様な気がした。
甘い香りと共に
「だ……大丈夫……心配な……い」

白く透き通る何かが話しかけてくる。身動きできずにじっとするしかなかった。
怖い感じはしない。ただ何だか変な気分になってくる。『大丈夫』と言われると何もかも大丈夫な気になってくる。不思議な感覚だった。その後妙にぐっすり眠れた。身体も軽い。
(なんだったんだろう?)

ユリとは頻繁に連絡を取り、新人の彼女に被害がいかないように阻止、心のケアを妹に任せた。

水曜日に現実を見てショックを受けた彼女を妹はしっかりとケアしたようで安心した。だが、これからが大変だ、別れ話がもつれて逆上したあの男に悪い事されないか心配だった。

ユリの事も心配なので、頻繁に喫茶店に通い詰めていた。木曜と金曜日は、新人の彼女は体調不良で休んでいた。サナエも気にしているようで、喫茶店へやって来ていた。悪だくみを考えているに違いない。あちこちに目を光らせないといけない……(目が足りない)
そうこうしている内に、新人の彼女が日曜日に和也の家に行くと言う。妹のユリは止めたらしいが、「ケジメを付ける」と、行ってしまったようだ。
(心配だ……)

当日、ユリから聴いた時間に駅の近くで張り込んでいた。
案の定、泣きながら歩いてくる彼女。偶然を装い話しかける。

「あ、あの。大丈夫ですか?」

さり気なく。

「……大丈夫です。」

涙を拭いながら、あっさり歩いていかれてしまった。(うんっ!)

「ナンパじゃなくて……泣いてる女性ほっとけないよ。この辺治安悪いし……ユリと働いてる子でしょ?ユリが心配してたから。」

(ハッ余計なひとことを言ってしまったか?)
立ち止まるサヤ。

「ユ……ユリ先輩の?お兄さんですか?」

急な問いに一瞬戸惑うが取り繕ってカッコよく

「そ、そぅ。仕事帰り。ユリから色々聴いてて……ユリの姉……ぼたんも酷い目に遭わされたから、和也と付き合ってるって聴いててちょっと心配だったんだ。……買い物沢山しちゃって、ユリと食べようと思ってたんだけど……君も来る?落ち込んでる時は沢山食べたら、次の日は元気になる!!家の母さんの押し売りなんだけどね!ははは……」

(失敗だったかな?)
少し落ち込む。しかし、サヤの反応は意外だった。

「ふふ。ユリ先輩のお兄さん面白いですね。誰かとお話したい気分です。」

(ヤバい笑顔破壊的!!)
「ユリに連絡するね。後輩ちゃんも来るからって……えっと名前聴いても?いい?えっと、サヤちゃん?だっけ?あ、僕は朔(さく)よろしくね。」

「あ、サヤです。ふふ。」

「泣いたり笑ったり忙しいねふふ。あ、ユリ僕今向かってる。すぐ着くから。」

ユリの家で、食事会をしてその後ユリとサヤは女子トークしていた。酷いやつだと認識していたようだった。

落ち着くように、特製のハーブティーを淹れると2人はとても喜んで飲んでいた。
そのままサヤちゃんは、妹の家にお止まりした。

(はぁ~、良かった……サヤちゃん可愛かったな。もっと仲良くなりたいな~)

そんな風に思っていると、ユリの勧めもあってサヤちゃんとお付き合いする事になった。
 
和也の行方不明や、最近まで付き合ってたという事もあって、サヤちゃんは割と酷い目に遭った。心のケアをしながら付き合い続けた。

付き合って数ヶ月、サヤちゃんの方からキスをしてくれた。最初は驚いたが、話を聴くと自分からは初めての行為だと言う。元彼には酷い目に遭わされて……キス止まり。そういう行為は、落ち着いてからで大丈夫と話していたのだが、僕に気を使っての事だろうか?僕も男だ、とても彼女に触れたくてたまらないのだが、初めては大事にしてあげたいし、トラウマになってしまったらと……慎重になっていた。

彼女と深く付き合い始め、お互いにお互いを求め始めた。ホテルに入り、緊張した面持ちの彼女に

「嫌ならすぐ辞めるから遠慮なく言ってね。」

そう彼女に伝えると、小さく頷いた。
彼女は、セックス自体が初めてだった。
お互いにシャワーを浴びベットに彼女を座らせ優しくキスをする。2人で見つめ合う。恥ずかしそうにする彼女にときめいている僕。
キスしながら、ガウンをはだけさせていく。緊張で強張る彼女。声をかける
「大丈夫?」

コクリと頷く彼女

「嫌なら跳ね除けて良いからね。ゆっくり慣れていこう。」
コクンと頷くも、顔を両手で覆う。

「かわいい。ふふ、顔見せて。」
真っ赤になったサヤはかわいい。
「好きだよ。」

ディープキスしながらゆっくりと乳房を触る。震えている。

「怖くないよ?思い出す?怖い?」
ふるふると首を振る。無理している……すっとはだけさせたガウンの前を閉じる。

「今日はここまで!」

驚く彼女。

「頑張ってここまで来たし、サヤのおっばい見れて、触れたからここまでにしよう!」
ゴロンとサヤの隣に寝転ぶ。

「触って……大丈夫だから、私の経験がないから?」
少し落ち込んでいる。

「違うよ!!君を大切にしたいからだよ!男の人に馴れてもらいたい!勿論僕に!……怖がらないで……欲しいけど、初めてはやっぱり女性の方に負担かけるし、ゆっくりしよう。それに……」
そっとガウンを脱いでそそり立つ男のモノをサヤに見せる。

「ほら、僕のこんなになってる……君とひとつになりたいけど、怖がらせるの嫌だったから我慢してるんだよ?」

真っ赤な顔になりサヤは一瞬目をそらす。自分で言うのもなんだが巨根の部類に入るらしい。
彼女にも前進して欲しかったが。
「僕も、君と同じくらい緊張してるし……恥ずかしい……だから、ゆっくりで良いと思うんだ。ゆっくり慣れていこう。」

コクリと頷くサヤ。治まらない高鳴り。
「トイレ行ってくるね。ゆっくりしてて。」

トイレに駆け込み、自分自身の高まりを静まらせる。緊張のせいかあまり上手くいかない。時間をかけすぎると(彼女に迷惑をかけてしまう!)と必死になっていると、鏡からスルッと白い手?が出てくる。
「えっ?」

驚くが、ゆるゆると僕の勃起したモノを刺激し始める。何が起こっているのか理解出来ないまま、あまりの気持ちよさに果ててしまう。
耳元で
「いって……沢山……サヤ……わ……た……イケ!」

果てたばかりなのに、再度押し寄せる快楽。白い手のような物は容赦しない。まるで、サヤと事を出来ない様に完膚なき迄に果てさせるつもりのような勢いを感じる。

「ふっ……いっく……ハァハァ……。」

足腰がガクガクする。立てないくらい強制的に自慰をしてしまった。
コンコン。と、扉の向こうから心配したサヤから声がかかる。

「大丈夫?私のせい?開けるよ?」
ドアを開けようとしている。急いで返事をする。こんな情けない格好見せたくない。
「だ、大丈夫!ふっ……ふっはっ…いっ」
返事を返すが、白い手は止まらない。

「朔(さく)さん?えっ?何ソレ!!えっ?」

驚いたサヤに、白く透き通る幽霊は
「つぎは……ぼ……くと!」
サヤの耳元で話すと、スッと消えていった。
ポカンとなるサヤ。
腰を揺らして果てる朔(さく)。駆け寄るサヤに
「ごめん……やり過ぎたはは。」

フラフラしながらベットへ潜り込む。サヤも一緒にベットへ入る。
キスをして、サヤの希望で胸を優しく触りながら抱き合ってその日は眠りについた。

順調にサヤとお付き合いしている間に、妹ユリが店長のDVに遭っているようだった。
別れるようにユリに言うが、惚れた弱みか言う事を聴かない。気が気でない日々が続いていたある日また、白い幽霊が現れた。

「ね、い……妹……助けよう!サヤと妹どっちが大切?……サヤは……僕がも……ら……だから……妹助けろ……」

意味が分からなかった。サヤとは順潮。陰部を触りあえる位の中に……その先に進めないだけで、もどかしく思って苛つくが、大事にしている。妹も大事だが、大人だし自分でどうにかできる子だと思っている。

「だ……大丈夫……サヤ傷つけない……約束できるか?」

「順調なんだから!訳わかんね!!お前なんだよ!イライラする!約束するよ!なんだか知らないけど!!傷つけない!」
朔(さく)は、次第にイライラする様になってきた。ヤラせてくれないサヤにも、大事な妹にDVする店長にも。

そんな鬱々とする日々。
デート中つい、苛ついて大事にしていたサヤに無理やり挿入しようとして跳ね除けられてしまった。
謝ったのだが
「最近の朔さん、変だよ?落ち着くまで暫く会わずにいましょう。ユリ先輩の事が落ち着くまで、ホテルデートはやめましょう。」

距離を置かれてしまったし、泣かせてしまった。約束を破った代償は大きく、サヤには心の傷をユリは酷い怪我を負っていた。

妹のユリをちゃんと見てなかったからだ!と、自分を責めた。
「ね……サヤ傷つけた!お前、誰もま……もれ……ない!」

追い打ちのように言葉をかけられ、何かが切れてしまった朔。
ナイフを持ち出し、とうとう店長を切りつけてしまう。
「お前の様な男がいるせいで!!」
怒りに任せて振り上げたナイフ。店長を刺してしまう。
肩や腕、手などを刺され、店長はかなりの大怪我。
朔(さく)はその場で逮捕された。

白い幽霊は、ニヤリと笑いながらその様子を見守っていたのだった。

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