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242話、完全復活
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「出て来い、“火”、“風”、“水”、“土”、“氷”、“光”」
サニーから距離を取りつつ、六属性の杖を召喚し、まず火の杖を掴む。数歩進んでから歩みを止め、みんなが居る方へ振り向いた。
「ルシル、ノーム。すまないが、手伝ってくれないか?」
「おっ、やっと俺達の出番だな」
「何すりゃあいいんだあ?」
長時間待たせてしまったが、やる気を見せてくれた二人が問い返してきてくれた。
「えっとだな。ノーム、お前は上空に巨大な岩石を召喚してくれ。それでルシル。お前は、その岩石を風魔法でその場に留めて、空中に固定して欲しいんだ」
「岩石、ねえ。要は、的を出してくれって事かあ?」
「そうだ。破壊出来る対象物があると、魔法の威力がどれほどのものか、見てる人に伝わりやすくなると思ってな」
「なるほどな。まあここだったら、『タート』から観測される心配はねえだろう。よし、アカシック。サニーちゃんが喜ぶよう、派手にやっちまえ」
そことなく乗り気なルシルが、ニッと笑いながら親指を立ててくれた。そうだ、タートの事をすっかり忘れていた。
ルシルの言う通り、沼地帯とタートの距離は、それなりに離れている。箒で移動すると、片道で約二、三十分弱といった所。
なので、魔法を真上に放たなければ大丈夫だろう。たぶん。
「分かった、ありがとう。それじゃあ、二人共。早速やってくれ」
「なんだか面白そうじゃねえかあ。いいぜえ、何個でもくれてやらあ」
ルシルよりも、胸を躍らせていそうなノームも協力してくれて、右手て軽く掲げて『バチィン』と指を鳴らす。
すると、軽く仰いだ先の青空を遮る形で、土色をした巨大な魔法陣が展開し。『土の瞑想場』で空から降り注いでいた物より、更に一回り大きな岩石が召喚され。
完全に召喚されたと同時、もう一度『パチン』という軽い音が鳴り響き。岩石全体が、薄白い膜みたいな物に覆われ始め、地面へ落ちる事無くその場に留まった。
「想像してたより、何倍も大きいな……」
「うわーっ! 空に大きな岩が出てきたーーっ!!」
私の独り言を、サニーの弾けた大声が掻き消していく。一応、あの岩石を魔法で砕いたとしても、ルシルがなんとかしてくれるはずだが……。
流石に、大き過ぎじゃないか? 岩石の真下は、太陽光が一切届いておらず。
何事かと思ったゴーレムが、空を見上げては驚愕し。蜘蛛の子を散らすように、あちらこちらに逃げ惑っていっている。
「ほれ。魔女の嬢ちゃん、出してやったぞお。うんと硬くしたから、本気でやってくれえ」
「え? 硬くした?」
「とんでもない密度になってるから、たぶん鋼鉄より断然硬いぞ。あれ」
「ああ、そうなのか……。分かった、ありがとう」
協力はしてくれるけど、忖度まではしてくれないと。まあいい、私も本気を出すつもりでいたし。実力は出し惜しみするなという、激励だと思って受け取っておこう。
「さて、やるか」
緊張していなければ、高揚もしていない。不思議と落ち着いている。うん、良い気分だ。これなら、サニーに最高の魔法を見せられるぞ。
「サニー、しっかり見てろよ?」
「うんっ!」
期待に満ち溢れた返事を認め、サニーに合わせていた視線を外し、岩石へ移していく。その岩石に火の杖先をかざし、息を大きく吸い込み、口から吐き出した。
さあ、やるぞ。サニー、しっかり見ていろよ? 絵本よりも壮大で、現実から掛け離れた最高威力の魔法を!
『魂をも焼き尽くすは、不老不死の爆ぜる颶風! 生死の概念から解き放たれし者に、思考をも許されない永遠の眠りを! 『不死鳥の息吹』!』「……あれ?」
「わぁああーーーーっ!! すっごーーーーいっ!!」
「やっば……、なにあれ? アルビス師匠のブレスと、おんなじぐらいの威力がありそう」
柔らかな色を保っていた周りの景色が、鮮烈な緋色に等しく塗り潰されていく。……待て、ちょっと待て。
私の前に展開した、魔法陣の大きさもそうなのだが。視界一杯を覆い尽くす、灼熱の大熱線。木々を激しく右往左往させる、連鎖を伴う爆発の嵐。
威力、射程、大熱線の幅が、物理と魔法の攻撃力を底上げするレナの魔法、『緋月』を掛けてもらった時よりも、遥かに向上している。
しかし、全身を吹き飛ばしかねない強烈な反動が無ければ、熱もあまり感じず。腕や足に力を込めずとも、私はごく普通に立てている。
『……おいおい、魔女の嬢ちゃん。俺様は悲しいぜえ。俺様と戦ってた時に、手を抜いてただなんてよお』
どこか悲しさとやるせなさを含んだノームの声が、頭の中から響いてきた。まずい。私も訳が分かっていないのに、なにか勘違いされている!
『ち、違うんだノーム! 私も、なんで急にこんな威力が向上したのか、原因が分かってなくて困ってるんだ!』
『あ? そうなのか?』
『そうだ! だから、お前と『土の瞑想場』で戦ってた時は、一切手を抜いてない。常に全力を出して戦ってたぞ!』
『はあ、ならいいんだけどよお。今出した『不死鳥の息吹』だっけか? エルフの嬢ちゃんの『一番星』より威力があんぞ。俺様が出した岩石のほとんどが、一瞬で蒸発しちまったぜえ』
そうだ。確かに『不死鳥の息吹』を通して、何か一瞬だけ手応えを感じた。そう、一瞬だけだ。たぶん、『不死鳥の息吹』が岩石に当たった瞬間、貫通したのかもしれない。
対象物が無くなってしまったので、『不死鳥の息吹』の威力を徐々に弱めていく。完全に止め、魔法陣の姿が細かな粒子状に変わり、ゆっくりと視界から流れていった。
そして、色が戻った視界の先。巨大な岩石の姿は、縁をギリギリ目視出来る程度に残した、輪っか状の物体に変わっていた。
「あんなに大きかった岩が、ほとんど無くなっちゃった!!」
元々『不死鳥の息吹』は、何度か左右に薙ぎ払えば、小さな村や町なんて、あっという間に蒸発してしまう威力を持っていたが……。
今放った威力だと、数分あれば大国だって半壊してしまうぞ。
「お母さんっ、お母さんっ! 早くもっと見せてっ!!」
が、サニーの興奮は天井知らずな状態で、おぞましい威力なぞ眼中に無く、ただひたすら無邪気な声で催促されてしまった。
「あ、ああ、分かった。ノーム、ルシル。次を頼む」
二人の了承を待たずして、火の杖から氷の杖に持ち替える。数秒すると、『パチン』という音が一回だけ鳴り、新しい岩石を召喚するのかと思いきや。
空中に浮かんでいた、輪っか状の物体が外側から再生を始め。三度瞬きをした頃には、岩石が綺麗に再生していた。
なるほど。新たに召喚するよりも、消滅しかけていた岩石を再生させる方が、色々と手間が省ける訳か。
「よし、行くぞ!」
「うんっ!」
サニーに合図を出しながら、氷の杖先を岩石へかざす。
『吹雪く夜空を凍結させるは、怪狼の哮り! 儚き熱を携え抗う者を、銷魂の極点に誘いたまえ! 『古怪狼の凍咆!』』
「うわぁーーーっ!! すごい吹雪ーー!!」
「ああ~、なるほど? これは、流石に師匠ほどじゃないなー」
やっぱり、『古怪狼の凍咆』の威力も段違いに上がっている。
爪斬撃の氷晶は、メリューゼさん本体、ノームが召喚した『大地の覇者』の腕を、抉るぐらいしか出来なかったものの。
今では、一つ一つの爪斬撃が巨大化していて、岩石を軽く貫通してしまっているし。暴風雪自体も、岩石を悠々と凍らせては着実に削っていっている。
なぜこうも、各魔法の威力が凶悪なまでに上がっているんだ?
『……もしかして、私がアカシックお姉ちゃんを、治療したからかな?』
『え?』
『プネラ。それ、どういう意味だ?』
憶測気味な声量で、頭の中から湧いてきたプネラの『伝心』を追う、シルフの『伝心』。
『あの、ですね。子供になったアカシックお姉ちゃんを、私が治療したじゃないですか? その時、アカシックお姉ちゃんの体内を隅々まで見て回ったんですけど……。不純物がすごくあったり、塞がってる血管がいくつもあったり。ちゃんと処理されて無害化してたんですが、変異し掛けてた毒も相当あって、かなり酷い状態になってたんです。だからそれらを残さず、全部綺麗に取り除いたんです』
『ああ。そういや、そんな事言ってたな』
『はい。それで、アカシックお姉ちゃんの体調が、たぶん万全になったじゃないですか。それで魔法の威力も、いつも通りに戻ったんじゃないかなって、思いまして』
プネラに治療された事により、私の魔法の威力が元に戻った? それだと今までの私は、全力を出せていなかった事になってしまうが……。
『えっと? つまりだ。今までアカシックは、常々絶不調の状態だったけど。プネラが治療した事により、通常の状態、じゃねえな。絶好調になったと言いたいんだな?』
『はい、そうです』
『な、なるほどぉ? じゃあ、今アカシックが放ってる魔法の威力が、本来の威力になるって事か……』
『こ、これが……、私本来の、力?』
突然、魔法の威力が向上した訳ではなく。今放っている魔法の威力こそが、本来出せているはずだった私の本気?
私の心が闇に堕ちていた頃。魔物や獣の部位を剥ぎ取っては調合し、どんな効果が出るのか分からないまま飲み、己の体で試していた時期が、おおよそ四、五十年以上あったけれども。
その間に、私の体に不純物や毒が大量に蓄積していき、体が壊れてしまわない程度に蝕んでいて、本来の実力をほとんど出せていなかったいう訳なのか?
「……ははっ、なんだそりゃ」
つまり私は、今まで本当に弱体化していた事になる。自業自得が招いた、実に馬鹿らしい弱体化をな。今放っている魔法こそ、私本来の力。
……サニーについた嘘が、嘘じゃ無くなってしまった。私は本当に弱体化していて、プネラに治してもらっていたんだ。
本当、プネラには感謝してもし切れないな。ありがとう、プネラ。私の体を治療して、本調子まで戻してくれて。
さて、ここからはちょっと羽目を外して、少しだけ大暴れしてしまおう。私本来の力は、私自身知らないからな。
サニーから距離を取りつつ、六属性の杖を召喚し、まず火の杖を掴む。数歩進んでから歩みを止め、みんなが居る方へ振り向いた。
「ルシル、ノーム。すまないが、手伝ってくれないか?」
「おっ、やっと俺達の出番だな」
「何すりゃあいいんだあ?」
長時間待たせてしまったが、やる気を見せてくれた二人が問い返してきてくれた。
「えっとだな。ノーム、お前は上空に巨大な岩石を召喚してくれ。それでルシル。お前は、その岩石を風魔法でその場に留めて、空中に固定して欲しいんだ」
「岩石、ねえ。要は、的を出してくれって事かあ?」
「そうだ。破壊出来る対象物があると、魔法の威力がどれほどのものか、見てる人に伝わりやすくなると思ってな」
「なるほどな。まあここだったら、『タート』から観測される心配はねえだろう。よし、アカシック。サニーちゃんが喜ぶよう、派手にやっちまえ」
そことなく乗り気なルシルが、ニッと笑いながら親指を立ててくれた。そうだ、タートの事をすっかり忘れていた。
ルシルの言う通り、沼地帯とタートの距離は、それなりに離れている。箒で移動すると、片道で約二、三十分弱といった所。
なので、魔法を真上に放たなければ大丈夫だろう。たぶん。
「分かった、ありがとう。それじゃあ、二人共。早速やってくれ」
「なんだか面白そうじゃねえかあ。いいぜえ、何個でもくれてやらあ」
ルシルよりも、胸を躍らせていそうなノームも協力してくれて、右手て軽く掲げて『バチィン』と指を鳴らす。
すると、軽く仰いだ先の青空を遮る形で、土色をした巨大な魔法陣が展開し。『土の瞑想場』で空から降り注いでいた物より、更に一回り大きな岩石が召喚され。
完全に召喚されたと同時、もう一度『パチン』という軽い音が鳴り響き。岩石全体が、薄白い膜みたいな物に覆われ始め、地面へ落ちる事無くその場に留まった。
「想像してたより、何倍も大きいな……」
「うわーっ! 空に大きな岩が出てきたーーっ!!」
私の独り言を、サニーの弾けた大声が掻き消していく。一応、あの岩石を魔法で砕いたとしても、ルシルがなんとかしてくれるはずだが……。
流石に、大き過ぎじゃないか? 岩石の真下は、太陽光が一切届いておらず。
何事かと思ったゴーレムが、空を見上げては驚愕し。蜘蛛の子を散らすように、あちらこちらに逃げ惑っていっている。
「ほれ。魔女の嬢ちゃん、出してやったぞお。うんと硬くしたから、本気でやってくれえ」
「え? 硬くした?」
「とんでもない密度になってるから、たぶん鋼鉄より断然硬いぞ。あれ」
「ああ、そうなのか……。分かった、ありがとう」
協力はしてくれるけど、忖度まではしてくれないと。まあいい、私も本気を出すつもりでいたし。実力は出し惜しみするなという、激励だと思って受け取っておこう。
「さて、やるか」
緊張していなければ、高揚もしていない。不思議と落ち着いている。うん、良い気分だ。これなら、サニーに最高の魔法を見せられるぞ。
「サニー、しっかり見てろよ?」
「うんっ!」
期待に満ち溢れた返事を認め、サニーに合わせていた視線を外し、岩石へ移していく。その岩石に火の杖先をかざし、息を大きく吸い込み、口から吐き出した。
さあ、やるぞ。サニー、しっかり見ていろよ? 絵本よりも壮大で、現実から掛け離れた最高威力の魔法を!
『魂をも焼き尽くすは、不老不死の爆ぜる颶風! 生死の概念から解き放たれし者に、思考をも許されない永遠の眠りを! 『不死鳥の息吹』!』「……あれ?」
「わぁああーーーーっ!! すっごーーーーいっ!!」
「やっば……、なにあれ? アルビス師匠のブレスと、おんなじぐらいの威力がありそう」
柔らかな色を保っていた周りの景色が、鮮烈な緋色に等しく塗り潰されていく。……待て、ちょっと待て。
私の前に展開した、魔法陣の大きさもそうなのだが。視界一杯を覆い尽くす、灼熱の大熱線。木々を激しく右往左往させる、連鎖を伴う爆発の嵐。
威力、射程、大熱線の幅が、物理と魔法の攻撃力を底上げするレナの魔法、『緋月』を掛けてもらった時よりも、遥かに向上している。
しかし、全身を吹き飛ばしかねない強烈な反動が無ければ、熱もあまり感じず。腕や足に力を込めずとも、私はごく普通に立てている。
『……おいおい、魔女の嬢ちゃん。俺様は悲しいぜえ。俺様と戦ってた時に、手を抜いてただなんてよお』
どこか悲しさとやるせなさを含んだノームの声が、頭の中から響いてきた。まずい。私も訳が分かっていないのに、なにか勘違いされている!
『ち、違うんだノーム! 私も、なんで急にこんな威力が向上したのか、原因が分かってなくて困ってるんだ!』
『あ? そうなのか?』
『そうだ! だから、お前と『土の瞑想場』で戦ってた時は、一切手を抜いてない。常に全力を出して戦ってたぞ!』
『はあ、ならいいんだけどよお。今出した『不死鳥の息吹』だっけか? エルフの嬢ちゃんの『一番星』より威力があんぞ。俺様が出した岩石のほとんどが、一瞬で蒸発しちまったぜえ』
そうだ。確かに『不死鳥の息吹』を通して、何か一瞬だけ手応えを感じた。そう、一瞬だけだ。たぶん、『不死鳥の息吹』が岩石に当たった瞬間、貫通したのかもしれない。
対象物が無くなってしまったので、『不死鳥の息吹』の威力を徐々に弱めていく。完全に止め、魔法陣の姿が細かな粒子状に変わり、ゆっくりと視界から流れていった。
そして、色が戻った視界の先。巨大な岩石の姿は、縁をギリギリ目視出来る程度に残した、輪っか状の物体に変わっていた。
「あんなに大きかった岩が、ほとんど無くなっちゃった!!」
元々『不死鳥の息吹』は、何度か左右に薙ぎ払えば、小さな村や町なんて、あっという間に蒸発してしまう威力を持っていたが……。
今放った威力だと、数分あれば大国だって半壊してしまうぞ。
「お母さんっ、お母さんっ! 早くもっと見せてっ!!」
が、サニーの興奮は天井知らずな状態で、おぞましい威力なぞ眼中に無く、ただひたすら無邪気な声で催促されてしまった。
「あ、ああ、分かった。ノーム、ルシル。次を頼む」
二人の了承を待たずして、火の杖から氷の杖に持ち替える。数秒すると、『パチン』という音が一回だけ鳴り、新しい岩石を召喚するのかと思いきや。
空中に浮かんでいた、輪っか状の物体が外側から再生を始め。三度瞬きをした頃には、岩石が綺麗に再生していた。
なるほど。新たに召喚するよりも、消滅しかけていた岩石を再生させる方が、色々と手間が省ける訳か。
「よし、行くぞ!」
「うんっ!」
サニーに合図を出しながら、氷の杖先を岩石へかざす。
『吹雪く夜空を凍結させるは、怪狼の哮り! 儚き熱を携え抗う者を、銷魂の極点に誘いたまえ! 『古怪狼の凍咆!』』
「うわぁーーーっ!! すごい吹雪ーー!!」
「ああ~、なるほど? これは、流石に師匠ほどじゃないなー」
やっぱり、『古怪狼の凍咆』の威力も段違いに上がっている。
爪斬撃の氷晶は、メリューゼさん本体、ノームが召喚した『大地の覇者』の腕を、抉るぐらいしか出来なかったものの。
今では、一つ一つの爪斬撃が巨大化していて、岩石を軽く貫通してしまっているし。暴風雪自体も、岩石を悠々と凍らせては着実に削っていっている。
なぜこうも、各魔法の威力が凶悪なまでに上がっているんだ?
『……もしかして、私がアカシックお姉ちゃんを、治療したからかな?』
『え?』
『プネラ。それ、どういう意味だ?』
憶測気味な声量で、頭の中から湧いてきたプネラの『伝心』を追う、シルフの『伝心』。
『あの、ですね。子供になったアカシックお姉ちゃんを、私が治療したじゃないですか? その時、アカシックお姉ちゃんの体内を隅々まで見て回ったんですけど……。不純物がすごくあったり、塞がってる血管がいくつもあったり。ちゃんと処理されて無害化してたんですが、変異し掛けてた毒も相当あって、かなり酷い状態になってたんです。だからそれらを残さず、全部綺麗に取り除いたんです』
『ああ。そういや、そんな事言ってたな』
『はい。それで、アカシックお姉ちゃんの体調が、たぶん万全になったじゃないですか。それで魔法の威力も、いつも通りに戻ったんじゃないかなって、思いまして』
プネラに治療された事により、私の魔法の威力が元に戻った? それだと今までの私は、全力を出せていなかった事になってしまうが……。
『えっと? つまりだ。今までアカシックは、常々絶不調の状態だったけど。プネラが治療した事により、通常の状態、じゃねえな。絶好調になったと言いたいんだな?』
『はい、そうです』
『な、なるほどぉ? じゃあ、今アカシックが放ってる魔法の威力が、本来の威力になるって事か……』
『こ、これが……、私本来の、力?』
突然、魔法の威力が向上した訳ではなく。今放っている魔法の威力こそが、本来出せているはずだった私の本気?
私の心が闇に堕ちていた頃。魔物や獣の部位を剥ぎ取っては調合し、どんな効果が出るのか分からないまま飲み、己の体で試していた時期が、おおよそ四、五十年以上あったけれども。
その間に、私の体に不純物や毒が大量に蓄積していき、体が壊れてしまわない程度に蝕んでいて、本来の実力をほとんど出せていなかったいう訳なのか?
「……ははっ、なんだそりゃ」
つまり私は、今まで本当に弱体化していた事になる。自業自得が招いた、実に馬鹿らしい弱体化をな。今放っている魔法こそ、私本来の力。
……サニーについた嘘が、嘘じゃ無くなってしまった。私は本当に弱体化していて、プネラに治してもらっていたんだ。
本当、プネラには感謝してもし切れないな。ありがとう、プネラ。私の体を治療して、本調子まで戻してくれて。
さて、ここからはちょっと羽目を外して、少しだけ大暴れしてしまおう。私本来の力は、私自身知らないからな。
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