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設定集①

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・『迫害の地』

 罪から逃れるべく逃げ出した罪人や、血に飢えた魔物や獣が蔓延はびこる、ならず者の終着地。世界で共有されている情報なので、まともな神経がある者は、まず近寄ろうとはしない。
 今では物騒な名前が付いているものの。昔はごく普通の大地であり、エルフや精霊など希少な種族がひっそりと暮らしていた。(『66話、海にまみれた空の旅』にて、樹海地帯でその痕跡をアカシックが見つけている)
 その種族らを狙う為に、ならず者が集まり出し。蜂合わせて血を流す戦闘をしたり、結託して希少な種族を襲い続けた結果、今の無法地帯が出来上がったのが全ての始まりだとされている。

 『タート』と他国を繋ぐ街道の雑木林の先にあり、針葉樹林地帯が主な入口。
 方角は東。そこからどの方角に行ってもアカシックが住んでいる沼地帯とぶつかり、次に山岳地帯が行く手を阻んでいる。
 やや南に行けば、花畑地帯を挟んで渓谷地帯。西に行けば、樹海地帯、湿地帯、海へ続き。北へ行けば、山岳地帯を超えてから砂漠地帯に出る。
 後は全て海にぶつかり、海を超えれば凍原地帯、雪山地帯、火山地帯に行き着く。更に奥には、誰も知らない人類未踏の地が……?



・『タート』

 教会から自立したアカシックとピースが、少しの間だけ住んでいた国。法令は厳しいものの、数多の種族が分け隔てなく暮らしている。
 アカシック達が住んでいた時は、整備はそれほどされていなかった。現在では、地面は全面クリーム色のレンガが敷き詰められていて、種類が豊富な売店などが連なっている。
 七階層で構成されており、階層毎に売店や居住区が増え、城に近づいて行くと裕福層の居住区が増えていく。アカシックが主に居る場所は、二階層目か三階層部分。
 ほぼ毎日店に訪れているせいか、大体の人に顔を覚えられていて、店の人には『アカシックちゃん』などと愛称で呼ばれている。その時のアカシックは、大人しく無難に接している模様。
 アカシックが出入りする入口を真っ直ぐ行くと、別の国や街に続く街道へ出る。そこを二十分以上歩くと、昔アカシックとピースが住んでいた教会跡地がある。



・アカシック・ファーストレディ

 レムに拾われてから『タート』へ移り住む頃の間は、特に秀でた能力は無く、どこにでも居る平凡な魔女であった。
 才能を発揮し始めたのは、迫害の地に来てから『アルビス』と戦い始めた頃。最初はすぐ惨敗して逃走していたが、一年、二年と時を重ねる度に強くなり。
 『奥の手』である『語り』を覚えた頃から強さの優劣が埋まり、今度はアルビスが徐々に押されるようになっていった。
 その頃からアカシックに畏怖する様になった知性のある魔物達が、アカシックに二つ名を勝手に付けていったらしい。
 現在出ている二つ名は、『ファーストレディ』『無機物の代弁者』『大自然の処刑人』。ヴェルインいわく、まだまだありそうである。
 
 持っている六属性の杖の正体は、各属性のマナを圧縮して物体化させた物。杖の魔力が凄まじいので、杖を持つとその魔力に引っ張られて目の色が変わる。
 得意な魔法は光属性。時点で氷、火。アカシックの真骨頂は、無詠唱で魔法を放てる事。指を鳴らせば下級程度の魔法を使えて、杖を出せば上級魔法が放てるようになる。
 が、無詠唱だと本来の威力は出せないらしい。召喚魔法もそうで、ちゃんと詠唱を唱えないと召喚が出来ない。
 最強の威力を誇る魔法は、『奥の手』を使用している時にのみ使える『終焉』。現在、この魔法を止める事が出来るのは、アルビスが使用した闇の召喚魔法“暴食王”のみ。
 アカシックが使える中で一番強い召喚魔法は、光属性の“天翔ける極光鳥”。耐久性はそこら辺を飛んでいる鳥と大差なし。
 しかし、光芒と化してしまえば、触れられる者は居なくなり、気が付いた時には体を貫かれている。

 サニーを拾うまでは、心が闇に堕ちていて全ての感情が死んでいた。そこから約八年の時を経て、“喜”以外の感情は取り戻しており、喋っている時や表情にも出せるようになっている。
 笑う事はまだ出来ていないが、『103話、曰く、天使』にて勝ちを確信した時、人知れず口角を大きく広げているので、そこで初めて笑ったのかもしれない。
 今では昔の心を持ち合わせており、困っている人を見つけたら率先して助けている。サニーを溺愛していて、傍から見ても恥ずかしいほどベタベタしている事もしばしば。

 得意な事は料理、箒での飛行。特にシチューは極めており、ヴェルイン、アルビスの胃袋を鷲掴んでいる。箒で飛ぶ速度は魔女にしては異常に速く、アルビスでさえ追い付けない。
 他にも、ポーション作り。魔法を精密に操り、鉄鋼類などの細工。アルビスに強制されていく内に覚えた、掃除の仕方などなど。

 幼少期時代は、ごく普通の人らしい感情を持ち合わせていた。決して裕福な暮らしではなかったが、よく笑い、よく泣き、よく怒り、よく楽しんでいた。
 大の勉学嫌いで、レムが勉学の準備をしている所を見るや否や。箒を召喚して、とんでもない速さで逃げ出す。アカシックの飛行速度が速い理由は、もしかしたらこれが関係しているのかもしれない。



・アルビス

 産まれた時から追われ身であり、父と母は産まれてから三十年目頃、人間に狩られて他界。今でも二人の体の一部を大事に持っていて、一人で居る時は空を仰ぎ、父と母がどこかに居ないか探している。
 変身魔法を駆使して逃亡生活をしている最中。稀に同種族の仲間と出会うも、その仲間も追われ身で、時には仲間に裏切られ、囮にされた事もある。
 なので、アルビスは自分以外は誰も信用していなく、たとえ同種族であろうと敵だとみなしている。

 唯一心を開いているのは、瀕死の状態で倒れていた所、屋敷に匿ってくれた貴婦人の『ベルラザ』。『107話、三つ目の夢、それは』以降のアカシック、サニーのみ。
 匿ってくれた当初は、ベルラザに牙を剥いて何度か殺そうとしていた。しかし殺意、敵意が一切無く、傷が完治するまで一時も離れずに看病をしてくれた事もあり、一旦殺すのはやめた。
 以後、ベルラザから匿ってくれた理由を聞き、屋敷に住む事を決意。同時に、ベルラザと他に匿われた者を守護するべく、ベルラザの従者となる。

 最初の数年は大人しくしていたが、それだけでは悪いと思い、多大な恩も返したいという気持ちもあり、ベルラザに提案して専属の執事となった。
 そこから五十年以上も執事をやっていたせいか。炊事、洗濯、掃除等の家事は完璧にこなせるようになり、元々の性格ともあって面倒見が非常に良く、程よいお節介焼きと化す。
 洞察力に優れ、アルビスに嘘をつくのは不可能。様子がおかしいベルラザの嘘も見抜き、意識が無くなる前にベルラザから『奥の手』を授かり、『時の穢れ』を恨みながら殺害。唯一あった安住の地を無くす。

 しかし、ベルラザを殺す前に『迫害の地』という場所を教えてもらい、早々にそこへ逃げ込んだ。凍原地帯から入り、洞穴を見つけて中に入ると、氷の精霊である『フローガンズ』と接触。
 詫びながら外へ出ようとするも、『暇だから戦って』というフローガンズのわがままを聞き、仕方なく戦闘を開始。半日で面倒臭くなり、合間を縫って逃亡。
 逃げる様に海を越え、花畑地帯に到着。たまたま穴に落ちていたゴーレムが目に入り、お節介焼きが疼いて救出。
 恩返しにと精霊の泉に連れて行かれ、休息していたウンディーネと出会う。そのまま意気投合し、良き理解者であるウンディーネの会話相手となった。

 その後、山岳地帯の一番高い山の頂上を見つけ、そこを新たな住処にした。ようやく一刻の平和を手にしたが、数年後、アカシックと接敵。
 以後、五十年以上にも渡って戦いに明け暮れる。戦い始めてから数十日後に、この世には安寿の地が無いと絶望し、何度か自殺を図ろうとした。
 どうせ死ぬなら、アカシックを殺してからにしようと心に決めるも、着々と強くなっていくアカシックになかなか決定打を与えられず、互いに疲労する日々が続く。
 約五十年以上が経った頃。一時期アカシックが来なくなり、遊びに来たドレイクと会話をしていると、明らかに様子がおかしいアカシックが訪れてきて『8話、指摘された焦り』に繋がる。

 『42話、唯一の天敵』でも普通に接してきたのは、『8話、指摘された焦り』時に比べると、まるで別人のような雰囲気になっていたせいであり、アルビスの本調子が狂っていた。
 敵意、殺意は微塵も無く、子供と行動しているのであれば襲ってくるはずもないと踏んだアルビスは、アカシックを懐柔させようと試み、話し合いをするべくシチューを出しに使い、アカシックの家へ行く。
 そこでもお節介焼きが疼いてしまい、魔法壁の穴をつらつらと説明。挙句の果てに、出しに使ったシチューの虜になってしまう。
 そして再び懐柔を試みようとするも、アカシックの理想以上の返答と突然の詫びに、逆にアルビスが困惑。
 しかし、二度と襲って来ないと分かると、これをチャンスだと確信し、今までの関係を白紙にするべく、アカシックと友好の印に握手を交わした。

 ちなみに、アカシックの罪滅ぼしの為にシチューを食わせろと言ったのは、単純にアルビスが食べたかったから。
 しかも、毎日来てもいいとアカシックに言われ、何回でもおかわりが可能だと知り、子供のように嬉しがっていた。
 更に『51話、世話焼きな元執事』『52話、折れかけた心と“楽”しみに思える心』でお節介焼きがまた発動。
 『76話、用意周到で真面目過ぎる黒龍』では誰よりも楽しんでいたし、『81話、種明かしを含めた反省会』ではサニーに叱られ、泣く寸前までいっていた。
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