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107話、三つ目の夢、それは
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「最初は、ごく普通に話してたんだ。マナの結晶体がどうとか。謙らなくてもいいだとか。で、話を進めてく内に、ウンディーネ様から質問が始まったんだ」
「質問?」
「ああ。世界に旅立ってはどうですか? とな」
「世界へ? またいきなりな提案だな。なんで、そんな突拍子もない提案を?」
「内容は頑なに教えてくれなかった。けど、大体の予想はついてる。おそらく、ピースの事についでだ」
「ピース殿? 貴様とウンディーネ様は、この前が初対面のはずだろ? 何故、ウンディーネ様がピース殿を知ってるんだ?」
「それは―――」
……そういえば、この話、アルビスにしてもいいのだろうか? あの時ウンディーネ様は、大事な話があると言って、わざわざアルビスを外させたんだ。
という事は、話したら駄目な気がする。しかし私は、アルビスに全てを語ると言ってしまった。ここは、一度ウンディーネ様に聞いてみた方がいいな。
「アルビス、ちょっと待っててくれ」
アルビスに断りを入れた私は、昨日ウンディーネ様から貰った首飾りに手に当て、六角柱の形をした紺碧色の『水の証』に魔力を流し込む。
すると『水の証』が、呼応するかのように淡く光り出した。……確か、これでいいんだよな? けど、ここからどうすればいいんだ?
『アカシックさん、どうなされましたか?』
「ひぇあっ!?」
「うおっ!?」
いきなりウンディーネ様の柔らかな声が、頭の中に響いてきたせいで、変な声を出しながら辺りをひっきりなしに見渡す私。
なんだ、今の感覚は!? 頭と体が、内側から撫でられた様にぞわぞわしたぞ!? ……未だに背筋がゾクゾクする。なんだか、急に不可解な視線も感じ始めた。この機能、慣れるまでが大変そうだな。
「えと……、ウンディーネ様?」
『直接喋らなくても大丈夫です。心の中や、頭の中で独り言を呟く要領で喋って頂けましたら、私にだけ聞こえます』
心や頭の中で独り言。要は、思案するような感じでいいのだろうか? 意識してやるとなると、結構難しそうだ。
『こ、こうでしょうか……?』
『はい、そうです。とてもお上手ですよ』
『よかった……、ありがとうございます。それで、ウンディーネ様。一つ、ご質問がありまして』
『お恥ずかしながら、全て見ていました。アルビスさんについてですよね?』
『あ、見てたのですね……。そうです。先の出来事の流れを、アルビスに伝えても大丈夫でしょうか?』
『アルビスさんにだけでしたら、構いません。それ以外は、他言無用でお願い致します』
『分かりました。ありがとうございます』
ウンディーネ様から許可を得られたので、『水の証』に流していた魔力を止めた途端、不可解な視線と体中を走っていたゾワゾワが無くなった。が、まだ背筋に気色悪い名残がある。早く取れてほしい……。
首飾りに当てていた手を垂らし、アルビスに視線を戻す。そのアルビスはと言うと、龍眼を大きく見開いていて、驚愕した様子で半歩後退っていた。
「き、貴様の女々しい声、初めて聞いたぞ……」
「うっ……! は、恥ずかしいから、とっとと忘れろ。それよりもっ、話を続けるぞ」
「あ、ああっ、うむ。そうしてくれ」
なんだか、一気に気まずい空気になってしまった。今度、首飾りを使ってウンディーネ様と会話をする時は、周りに誰も居ない場所でやろう。
「えっとだ。ウンディーネ様はずっと、私とサニーを見守ってくれてたらしいんだ。それで、私とピースの生い立ちを知ってる人も居るらしくてな。だからウンディーネ様が、ピースを知ってたらしい」
「ふむ……。貴様の話を真面目に聞いてると、謎が深まっていくばかりだな」
「ああ、私も頭の整理が出来てない状態だ。今まで精霊とは、『フローガンズ』ぐらいとしか喋った事がないし。それにしたって、あいつと初めて会ったのは迫害の地に来てからだし。これについても、分からない事だらけだ」
これについては、ウンディーネ様から真実を聞かない限り、永遠に分からないだろう。いくら私達が考えようとも、絶対にたどり着けない答えだ。手がかりが少なすぎる。皆無に等しい。
「なるほど。これ以上は質問を続けても無駄なようだな。なら、本題に入ってくれ」
「分かった。それでなんだが……。私には今、三つの夢がある。けど、もし世界へ旅立つと、一つの夢が叶えられなくなってしまうんだ。だから、ウンディーネ様の提案を断るべく、三つの夢を明かした。そうしたら、ウンディーネ様の態度や言動が豹変して、あんな流れになってしまったんだ」
「そういえば、鬼気迫る表情で何かを言ってたな。あの時は余も錯乱してたから、ほとんどが聞き取れなかったが」
やはり、アルビスもそんな状態に陥っていたのか。まあ、無理もない。いきなりウンディーネ様に召喚されたかと思えば、訳も分からぬまま殺されそうになったのだから。
ここからが、例の流れに至った原因だ。私の心臓の鼓動が、柄にもなくだんだんと早まっていく。呼吸も、やや大きくなってきた。今の私は、かなり緊張しているようだ。
「で、その三つの夢とやらは?」
「ああ……。まず、一つ目。一つ目の夢は、ピースを生き返らせる事。が、これは旅をしながらでも出来ると判断してるから、これじゃない」
「ふむ。二つ目は?」
「二つ目の夢。それは、サニーを幸せにし続ける事。この夢も、旅をしながらでも可能だ。だから、これでもない」
「となると、三つ目の夢か」
「そう、だな……」
途端に、私の語る口が重くなった。たぶんここが、人生の分岐点になるかもしれない。無数に枝分かれしている先の道へ、一歩足を進めてしまえば、もう引き下がる事は出来ない。
せめて、後悔だけはしたくない。嘘偽りを交えず、確かなる真実だけを、私の想っている事を全て、アルビスに伝えよう。
「三つ目の夢。それは、お前が関係してる」
「余が? 一体、どういう事だ?」
まだ迷いがあるのか、私の視線が勝手に落ちていった。おい、未練がましいぞ、私の心よ。もう決めた事なんだ。アルビスを待たせるんじゃない。
「私の三つ目の夢。それはな、アルビス。お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力する事。そして……」
一呼吸置き、小さく息を吐く私。
「お前に、約五百年の幸せを与えてやる事だ」
―――言った。言い切った。言い切ってしまった。返答を待てども、アルビスは次の言葉を発してくれない。
表情は、ほぼ真顔。小刻みに泳いでる龍眼の瞬きの回数が、やたらと早い。どうやら呆然としているようだ。
「……余に、なんだと?」
「お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力する事。そして、お前に約五百年分の幸せを与えてやる事だ」
二度目を滑らかに言ってしまえば、アルビスの龍眼はみるみる見開いていく。けれども、アルビスは信じられないと言わんばかりに、首を左右に振った。
「……そうか。三つ目の夢は、余にも明かせん夢だというのが、よく分かった。貴様、その場凌ぎで分かりやすい嘘をつくんじゃない。貴様が、余に幸せを与えるだと? そんな、心にも無い嘘を―――」
「嘘じゃない、私の目を良く見てみろ。この目が、嘘をついてるように見えるか?」
私が割って入ると、アルビスの瞳孔が開き、口を噤んだ。その龍眼は、私一点を見据えている。
僅かなブレもない。少しすると龍眼は細まり、普段の鋭い眼差しへと戻った。
「ほ、ほう? 嘘をつくのが上手くなったじゃないか。余の眼をもってしても、本心を語ってるようにしか見えん」
「ああ、嘘はついてないからな。本心なんだよ。私は、お前と接していく内に、お前の過去を断片的に知っていった。人間が天敵だとか。執事をしてたとか。五百年以上もの間、常に追われ身で、心身共に安らげる時がなかっただとかな」
語るは、私が知っているアルビスの過去。今のこいつは、私を一切信用していない。だから、アルビスが私を信用してくれるまで、果敢に攻め続けてやる。
「最後の件を聞いた時、私は決心したんだ。アルビスにだって、平和に満ちた日常を送る権利があるはずだと。それで、もしその権利を持たずに生まれてきてしまったのであれば、私が作ってやろうと強く思ったんだ。だから、この想いは本心であり、私の本音であり、私の夢なんだ。お前を幸せにしてやりたいという、三つ目のな」
一応、全ての想いは伝えた。けど、アルビスはまだ信じていなさそうだ。落ち着きなくそわそわしていて、目線を私に合わせては、すぐに逸らしていっている。
どこか、粗を探している様にも見える。それか、ボロを出させる会話の流れを模索しているか。もしくは、ただ困惑しているだけなのか。
「……分かったぞ。貴様、心がまだ罪悪感に蝕まれてるんだろ? 余を長年襲い続けてきたという、白紙に戻したはずの罪悪感に! その罪滅ぼしの為だな!? そうなんだろ!?」
声を張り上げ、私に向かって指を差すアルビス。一番懸念していた流れになってしまった。しかし、そう思われるのも仕方ない。いや、アルビスにとって、そういう考えに行き着くのが自然だ。
が、アルビスを幸せにしたいという、この想い。決して罪滅ぼしの為ではない。次は、それについて伝えないと。
「違う。確かに、罪悪感は残ってる。とても根深く、一生モノの罪悪感がな。けど、罪滅ぼしの為じゃない。もし罪滅ぼしをするなら、別の形でやる。三つ目の夢。これは、私が幼少期の頃に決めた決心から来る想いだ」
「け、決心……?」
私を差しているアルビスの指先が、すぅっと下へ落ちていく。
「そうだ。先にも話した通り、私は自分を魔女だと自覚した頃、一つの決心をしたんだ。『光属性の魔法や私が作った薬で、私達と同じような立場に居る人達を少しでも癒してあげて、幸せにする』という、決心をな。お前を幸せにしてやりたいという想いは、その決心からくる想いだ」
アルビスの小さく開いていた口が、浅く閉じた。
「そしてその想いを、私の三つ目の夢にしたんだ。『お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力し、約五百年分の幸せを与える』、というな」
浅く閉じた口に、力が入っているのか。整った唇が、左右横に広がっていく。紫が濃い龍眼の様子もおかしい。ほんのりと潤んでいるようだ。
顔全体は、何かを我慢しているかのように強張っている。そして、アルビスの上がっていた両肩が、ストンと落ちた。
「……貴様が、貴様が嘘をついてない事なぞ、最初から分かってた。その想いも、本物なのだと見抜いてたさ。けど、まだ、完全には信用し切れてないんだ……。貴様に、過去の貴様が居たように。余にも、過去の余が、今の余に囁いてきてるんだ。その言葉は罠だ、信用するな。近づけば、隙を突かれて殺されるぞ、と。今の貴様が、そんなふざけた真似をしないのは分かってる。分かってるけども……! 過去の余が、今の余を執拗に邪魔してくるんだよ……」
アルビスの強張っていた表情が、だんだんと緩んでいく。その表情から垣間見えるのは、血の匂いすら感じる葛藤。
きっと心の中で、私に根強い恨みを持った過去のアルビスと、私達と何気ない日常を歩んで来た今のアルビスが、戦っているんだろうな。
「……アカシック・ファーストレディ。余も、過去の余を殺して、過去の出来事を全て忘れたい。だから、何個か質問をさせてくれ。頼むから、正直に答えてくれよ……?」
縋る想いがひしひしと伝わって来るアルビスの言葉に対し、黙って頷く私。
「もし、もしだ。傷だらけの余が、過去、貴様らが住んでた教会に逃げ込んで来たとしよう。その時、貴様らなら、余をどうしていた?」
アルビスは質問したつもりなのだろうけど、私には、遠回しに『助けてくれ』としか聞こえなかった。
これは質問なんかじゃない。救いの手を差し伸べてくれという、透明な答えが殴り書きされている問題だ。
その時の私達は、どうしていただって? そんなの決まっている。レムさんとピースは、ここには居ないけれども、私とまったく同じ答えを言っているだろう。
「神父様は、お前に『大丈夫ですか?』と言いながら手を差し伸べて。ピースと私は、お前の傷付いた体を癒し。そしてその日の内に、教会がお前の新しい家になるだろうな」
恥ずかしげも無く言い切ると、アルビスの唇が小刻みに震え出した。
「……その教会で、余の立場は、どうなってる?」
「どうなってる? そんなの、決まってるじゃないか」
一旦口を閉じ、あいつの心を救う言葉を口に溜める。
「お前は、私達の新たな家族になってるだろう」
直後。アルビスの龍眼が丸くなり、口をポカンとさせる。数秒後、アルビスの顔が項垂れていった。
「……家族、かぁ。久しい言葉だなぁ……。家族、家族……」
アルビスから聞こえてくるのは、詰まった咽び声。泣いているようで、表情が窺えない顔から、水滴がポタポタと地面に落ちていっている。
そして、顔を私に合わせてきたアルビスの右頬には、太い涙の線が伝っていた。
「アカシック・ファーストレディ……。余の右眼から零れているのは、なんだと思う?」
「涙、だな」
「そう、涙だ。だが、ただの涙じゃない。“感涙”だ。過去の余に打ち勝った、今の余の感涙だよ。……そうか。貴様らともっと早く出会えてたら、余は家族になれてたのか……」
左眼からも感涙を流し始めたアルビスの顔が、再び地面へ落ちていく。
「運命に組み込まれた出会いのタイミングは、なんとこうも残酷なんだ……。貴様とは、もっと早く出会いたかったぞ……」
掠れた声で、おそらく本音を漏らしたアルビスが、とうとう本格的に泣き出した。あの冷静沈着で、常に凛とした態度を保っているアルビスが、火が付いたように泣いている。
きっとアルビスも、寂しい思いを相当していたはずだ。その負の感情を表には決して出さず、心の内に留めて押し殺し、ずっと我慢していたんだろう。
そんなアルビスが、私に一部の本音を曝け出し、剥き出しの感情まで見せてくれたんだ。なら私は、その気持ちに応えてやらなければならない。
「アルビス」
黙って私に向けてきたアルビスの顔は、涙の洪水でくしゃくしゃになっている。私はその顔を意に介さず、両手を広げた。
「一人で泣いてたら寂しいだろ? 来い、私の体を貸してやる」
「……え? いい、のか?」
「ああ、この場には私達だけしか居ないからな。私の体の中で、思いっ切り泣いてろ」
そう催促するも、涙の洪水に沈んでいる表情に、分かりやすい困惑が宿った。そのみずみずしい困惑顔が、私の体を確かめるように上下に何度も動いていく。
二度、三度往復し、私の顔に合わせると、おぼつかない足取りで私の方へ歩き出してきた。距離感が分かっていなかったのか、そのまま私の体とぶつかり、背中に手を回してきた。
「……これが、人の温もりというヤツか。生まれて初めて感じた……。太陽よりも暖かくて、長く凍てついてた心を溶かしてくれるような、なんとも優しい温もりよ……。……すまん、アカシック・ファーストレディ。今だけ、貴様に甘えさせてくれ……」
「ああ、どんどん甘えてこい」
右から聞こえてくる、なんともか細いアルビスの声。私を抱きしめているアルビスの手に、ゆっくりと力が入っていく。私の右肩に顔を置いたようで、じわりと濡れたような感覚がしてきた。
今聞こえてくるのは、何百年も我慢し続けてきたであろう、アルビスの悲痛な嗚咽だけ。なんとも悲しくて、心が痛んでくる儚い声なんだ。
ここからはアルビスが満足するまで、ずっとこうしててやろう。そう決めた私も、アルビスの背中に回していた両手に力を込め、もっと強く抱き締めてやった。
「質問?」
「ああ。世界に旅立ってはどうですか? とな」
「世界へ? またいきなりな提案だな。なんで、そんな突拍子もない提案を?」
「内容は頑なに教えてくれなかった。けど、大体の予想はついてる。おそらく、ピースの事についでだ」
「ピース殿? 貴様とウンディーネ様は、この前が初対面のはずだろ? 何故、ウンディーネ様がピース殿を知ってるんだ?」
「それは―――」
……そういえば、この話、アルビスにしてもいいのだろうか? あの時ウンディーネ様は、大事な話があると言って、わざわざアルビスを外させたんだ。
という事は、話したら駄目な気がする。しかし私は、アルビスに全てを語ると言ってしまった。ここは、一度ウンディーネ様に聞いてみた方がいいな。
「アルビス、ちょっと待っててくれ」
アルビスに断りを入れた私は、昨日ウンディーネ様から貰った首飾りに手に当て、六角柱の形をした紺碧色の『水の証』に魔力を流し込む。
すると『水の証』が、呼応するかのように淡く光り出した。……確か、これでいいんだよな? けど、ここからどうすればいいんだ?
『アカシックさん、どうなされましたか?』
「ひぇあっ!?」
「うおっ!?」
いきなりウンディーネ様の柔らかな声が、頭の中に響いてきたせいで、変な声を出しながら辺りをひっきりなしに見渡す私。
なんだ、今の感覚は!? 頭と体が、内側から撫でられた様にぞわぞわしたぞ!? ……未だに背筋がゾクゾクする。なんだか、急に不可解な視線も感じ始めた。この機能、慣れるまでが大変そうだな。
「えと……、ウンディーネ様?」
『直接喋らなくても大丈夫です。心の中や、頭の中で独り言を呟く要領で喋って頂けましたら、私にだけ聞こえます』
心や頭の中で独り言。要は、思案するような感じでいいのだろうか? 意識してやるとなると、結構難しそうだ。
『こ、こうでしょうか……?』
『はい、そうです。とてもお上手ですよ』
『よかった……、ありがとうございます。それで、ウンディーネ様。一つ、ご質問がありまして』
『お恥ずかしながら、全て見ていました。アルビスさんについてですよね?』
『あ、見てたのですね……。そうです。先の出来事の流れを、アルビスに伝えても大丈夫でしょうか?』
『アルビスさんにだけでしたら、構いません。それ以外は、他言無用でお願い致します』
『分かりました。ありがとうございます』
ウンディーネ様から許可を得られたので、『水の証』に流していた魔力を止めた途端、不可解な視線と体中を走っていたゾワゾワが無くなった。が、まだ背筋に気色悪い名残がある。早く取れてほしい……。
首飾りに当てていた手を垂らし、アルビスに視線を戻す。そのアルビスはと言うと、龍眼を大きく見開いていて、驚愕した様子で半歩後退っていた。
「き、貴様の女々しい声、初めて聞いたぞ……」
「うっ……! は、恥ずかしいから、とっとと忘れろ。それよりもっ、話を続けるぞ」
「あ、ああっ、うむ。そうしてくれ」
なんだか、一気に気まずい空気になってしまった。今度、首飾りを使ってウンディーネ様と会話をする時は、周りに誰も居ない場所でやろう。
「えっとだ。ウンディーネ様はずっと、私とサニーを見守ってくれてたらしいんだ。それで、私とピースの生い立ちを知ってる人も居るらしくてな。だからウンディーネ様が、ピースを知ってたらしい」
「ふむ……。貴様の話を真面目に聞いてると、謎が深まっていくばかりだな」
「ああ、私も頭の整理が出来てない状態だ。今まで精霊とは、『フローガンズ』ぐらいとしか喋った事がないし。それにしたって、あいつと初めて会ったのは迫害の地に来てからだし。これについても、分からない事だらけだ」
これについては、ウンディーネ様から真実を聞かない限り、永遠に分からないだろう。いくら私達が考えようとも、絶対にたどり着けない答えだ。手がかりが少なすぎる。皆無に等しい。
「なるほど。これ以上は質問を続けても無駄なようだな。なら、本題に入ってくれ」
「分かった。それでなんだが……。私には今、三つの夢がある。けど、もし世界へ旅立つと、一つの夢が叶えられなくなってしまうんだ。だから、ウンディーネ様の提案を断るべく、三つの夢を明かした。そうしたら、ウンディーネ様の態度や言動が豹変して、あんな流れになってしまったんだ」
「そういえば、鬼気迫る表情で何かを言ってたな。あの時は余も錯乱してたから、ほとんどが聞き取れなかったが」
やはり、アルビスもそんな状態に陥っていたのか。まあ、無理もない。いきなりウンディーネ様に召喚されたかと思えば、訳も分からぬまま殺されそうになったのだから。
ここからが、例の流れに至った原因だ。私の心臓の鼓動が、柄にもなくだんだんと早まっていく。呼吸も、やや大きくなってきた。今の私は、かなり緊張しているようだ。
「で、その三つの夢とやらは?」
「ああ……。まず、一つ目。一つ目の夢は、ピースを生き返らせる事。が、これは旅をしながらでも出来ると判断してるから、これじゃない」
「ふむ。二つ目は?」
「二つ目の夢。それは、サニーを幸せにし続ける事。この夢も、旅をしながらでも可能だ。だから、これでもない」
「となると、三つ目の夢か」
「そう、だな……」
途端に、私の語る口が重くなった。たぶんここが、人生の分岐点になるかもしれない。無数に枝分かれしている先の道へ、一歩足を進めてしまえば、もう引き下がる事は出来ない。
せめて、後悔だけはしたくない。嘘偽りを交えず、確かなる真実だけを、私の想っている事を全て、アルビスに伝えよう。
「三つ目の夢。それは、お前が関係してる」
「余が? 一体、どういう事だ?」
まだ迷いがあるのか、私の視線が勝手に落ちていった。おい、未練がましいぞ、私の心よ。もう決めた事なんだ。アルビスを待たせるんじゃない。
「私の三つ目の夢。それはな、アルビス。お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力する事。そして……」
一呼吸置き、小さく息を吐く私。
「お前に、約五百年の幸せを与えてやる事だ」
―――言った。言い切った。言い切ってしまった。返答を待てども、アルビスは次の言葉を発してくれない。
表情は、ほぼ真顔。小刻みに泳いでる龍眼の瞬きの回数が、やたらと早い。どうやら呆然としているようだ。
「……余に、なんだと?」
「お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力する事。そして、お前に約五百年分の幸せを与えてやる事だ」
二度目を滑らかに言ってしまえば、アルビスの龍眼はみるみる見開いていく。けれども、アルビスは信じられないと言わんばかりに、首を左右に振った。
「……そうか。三つ目の夢は、余にも明かせん夢だというのが、よく分かった。貴様、その場凌ぎで分かりやすい嘘をつくんじゃない。貴様が、余に幸せを与えるだと? そんな、心にも無い嘘を―――」
「嘘じゃない、私の目を良く見てみろ。この目が、嘘をついてるように見えるか?」
私が割って入ると、アルビスの瞳孔が開き、口を噤んだ。その龍眼は、私一点を見据えている。
僅かなブレもない。少しすると龍眼は細まり、普段の鋭い眼差しへと戻った。
「ほ、ほう? 嘘をつくのが上手くなったじゃないか。余の眼をもってしても、本心を語ってるようにしか見えん」
「ああ、嘘はついてないからな。本心なんだよ。私は、お前と接していく内に、お前の過去を断片的に知っていった。人間が天敵だとか。執事をしてたとか。五百年以上もの間、常に追われ身で、心身共に安らげる時がなかっただとかな」
語るは、私が知っているアルビスの過去。今のこいつは、私を一切信用していない。だから、アルビスが私を信用してくれるまで、果敢に攻め続けてやる。
「最後の件を聞いた時、私は決心したんだ。アルビスにだって、平和に満ちた日常を送る権利があるはずだと。それで、もしその権利を持たずに生まれてきてしまったのであれば、私が作ってやろうと強く思ったんだ。だから、この想いは本心であり、私の本音であり、私の夢なんだ。お前を幸せにしてやりたいという、三つ目のな」
一応、全ての想いは伝えた。けど、アルビスはまだ信じていなさそうだ。落ち着きなくそわそわしていて、目線を私に合わせては、すぐに逸らしていっている。
どこか、粗を探している様にも見える。それか、ボロを出させる会話の流れを模索しているか。もしくは、ただ困惑しているだけなのか。
「……分かったぞ。貴様、心がまだ罪悪感に蝕まれてるんだろ? 余を長年襲い続けてきたという、白紙に戻したはずの罪悪感に! その罪滅ぼしの為だな!? そうなんだろ!?」
声を張り上げ、私に向かって指を差すアルビス。一番懸念していた流れになってしまった。しかし、そう思われるのも仕方ない。いや、アルビスにとって、そういう考えに行き着くのが自然だ。
が、アルビスを幸せにしたいという、この想い。決して罪滅ぼしの為ではない。次は、それについて伝えないと。
「違う。確かに、罪悪感は残ってる。とても根深く、一生モノの罪悪感がな。けど、罪滅ぼしの為じゃない。もし罪滅ぼしをするなら、別の形でやる。三つ目の夢。これは、私が幼少期の頃に決めた決心から来る想いだ」
「け、決心……?」
私を差しているアルビスの指先が、すぅっと下へ落ちていく。
「そうだ。先にも話した通り、私は自分を魔女だと自覚した頃、一つの決心をしたんだ。『光属性の魔法や私が作った薬で、私達と同じような立場に居る人達を少しでも癒してあげて、幸せにする』という、決心をな。お前を幸せにしてやりたいという想いは、その決心からくる想いだ」
アルビスの小さく開いていた口が、浅く閉じた。
「そしてその想いを、私の三つ目の夢にしたんだ。『お前が平和な日常を送れるよう、私が影から全面的に協力し、約五百年分の幸せを与える』、というな」
浅く閉じた口に、力が入っているのか。整った唇が、左右横に広がっていく。紫が濃い龍眼の様子もおかしい。ほんのりと潤んでいるようだ。
顔全体は、何かを我慢しているかのように強張っている。そして、アルビスの上がっていた両肩が、ストンと落ちた。
「……貴様が、貴様が嘘をついてない事なぞ、最初から分かってた。その想いも、本物なのだと見抜いてたさ。けど、まだ、完全には信用し切れてないんだ……。貴様に、過去の貴様が居たように。余にも、過去の余が、今の余に囁いてきてるんだ。その言葉は罠だ、信用するな。近づけば、隙を突かれて殺されるぞ、と。今の貴様が、そんなふざけた真似をしないのは分かってる。分かってるけども……! 過去の余が、今の余を執拗に邪魔してくるんだよ……」
アルビスの強張っていた表情が、だんだんと緩んでいく。その表情から垣間見えるのは、血の匂いすら感じる葛藤。
きっと心の中で、私に根強い恨みを持った過去のアルビスと、私達と何気ない日常を歩んで来た今のアルビスが、戦っているんだろうな。
「……アカシック・ファーストレディ。余も、過去の余を殺して、過去の出来事を全て忘れたい。だから、何個か質問をさせてくれ。頼むから、正直に答えてくれよ……?」
縋る想いがひしひしと伝わって来るアルビスの言葉に対し、黙って頷く私。
「もし、もしだ。傷だらけの余が、過去、貴様らが住んでた教会に逃げ込んで来たとしよう。その時、貴様らなら、余をどうしていた?」
アルビスは質問したつもりなのだろうけど、私には、遠回しに『助けてくれ』としか聞こえなかった。
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その時の私達は、どうしていただって? そんなの決まっている。レムさんとピースは、ここには居ないけれども、私とまったく同じ答えを言っているだろう。
「神父様は、お前に『大丈夫ですか?』と言いながら手を差し伸べて。ピースと私は、お前の傷付いた体を癒し。そしてその日の内に、教会がお前の新しい家になるだろうな」
恥ずかしげも無く言い切ると、アルビスの唇が小刻みに震え出した。
「……その教会で、余の立場は、どうなってる?」
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一旦口を閉じ、あいつの心を救う言葉を口に溜める。
「お前は、私達の新たな家族になってるだろう」
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「……家族、かぁ。久しい言葉だなぁ……。家族、家族……」
アルビスから聞こえてくるのは、詰まった咽び声。泣いているようで、表情が窺えない顔から、水滴がポタポタと地面に落ちていっている。
そして、顔を私に合わせてきたアルビスの右頬には、太い涙の線が伝っていた。
「アカシック・ファーストレディ……。余の右眼から零れているのは、なんだと思う?」
「涙、だな」
「そう、涙だ。だが、ただの涙じゃない。“感涙”だ。過去の余に打ち勝った、今の余の感涙だよ。……そうか。貴様らともっと早く出会えてたら、余は家族になれてたのか……」
左眼からも感涙を流し始めたアルビスの顔が、再び地面へ落ちていく。
「運命に組み込まれた出会いのタイミングは、なんとこうも残酷なんだ……。貴様とは、もっと早く出会いたかったぞ……」
掠れた声で、おそらく本音を漏らしたアルビスが、とうとう本格的に泣き出した。あの冷静沈着で、常に凛とした態度を保っているアルビスが、火が付いたように泣いている。
きっとアルビスも、寂しい思いを相当していたはずだ。その負の感情を表には決して出さず、心の内に留めて押し殺し、ずっと我慢していたんだろう。
そんなアルビスが、私に一部の本音を曝け出し、剥き出しの感情まで見せてくれたんだ。なら私は、その気持ちに応えてやらなければならない。
「アルビス」
黙って私に向けてきたアルビスの顔は、涙の洪水でくしゃくしゃになっている。私はその顔を意に介さず、両手を広げた。
「一人で泣いてたら寂しいだろ? 来い、私の体を貸してやる」
「……え? いい、のか?」
「ああ、この場には私達だけしか居ないからな。私の体の中で、思いっ切り泣いてろ」
そう催促するも、涙の洪水に沈んでいる表情に、分かりやすい困惑が宿った。そのみずみずしい困惑顔が、私の体を確かめるように上下に何度も動いていく。
二度、三度往復し、私の顔に合わせると、おぼつかない足取りで私の方へ歩き出してきた。距離感が分かっていなかったのか、そのまま私の体とぶつかり、背中に手を回してきた。
「……これが、人の温もりというヤツか。生まれて初めて感じた……。太陽よりも暖かくて、長く凍てついてた心を溶かしてくれるような、なんとも優しい温もりよ……。……すまん、アカシック・ファーストレディ。今だけ、貴様に甘えさせてくれ……」
「ああ、どんどん甘えてこい」
右から聞こえてくる、なんともか細いアルビスの声。私を抱きしめているアルビスの手に、ゆっくりと力が入っていく。私の右肩に顔を置いたようで、じわりと濡れたような感覚がしてきた。
今聞こえてくるのは、何百年も我慢し続けてきたであろう、アルビスの悲痛な嗚咽だけ。なんとも悲しくて、心が痛んでくる儚い声なんだ。
ここからはアルビスが満足するまで、ずっとこうしててやろう。そう決めた私も、アルビスの背中に回していた両手に力を込め、もっと強く抱き締めてやった。
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