ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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104話、お詫びの契約

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 世界が無音の純白に包まれてから、どのぐらい経っただろうか? 思考するのが億劫になり、体が心地良い浮遊感に包まれている中。色を忘れていた世界が、思い出したかのように色付いていった。
 戻ってきた色は、穏やかな緑。場所は、水色の飛光体が空に向かい昇っていっている、精霊の泉。その泉の傍で、静かに横たわっているのは―――。

「アルビス!」

 視界にアルビスが映り込むや否や。私は慌ててアルビスの元へ駆け寄っていき、上体を持ち上げた。

「アルビス! おい、大丈夫か!? しっかりしろ、アルビス!!」

 いくら上体を揺らしながら声を掛けても、アルビスは目を覚ましてくれない。まさか、戦っている間に殺されてしまったのか!? 
 頭の中が酷く錯乱し、回復魔法を使用するか、秘薬を取りに家へ戻ろうかと考えていた矢先。「ん……」という詰まった声が、私の耳に入り込んできた。
 狼狽えている視線の先。目を瞑っていたアルビスの瞼が、一度更に深く瞑る。そしてゆっくりと開き、私に紫色が濃い龍眼を合わせてきた。

「アカシック……、ファーストレディ?」

「アルビスっ!! ……よかったぁ」

 ―――生きていた、アルビスが生きていた! その事実を知った途端、全身の力が空気のように抜けていき、口から全て漏れ出し、視界が自然に空を仰いだ。

「おい、貴様。なんで血塗れになってるんだ?」

「あっ、これは、だな……」

『あ~っ、もう! すっごく悔しいですっ!』

「む?」

 アルビスの疑問に、言葉を濁らせて誤魔化そうとしている最中。突然、聞き慣れた甲高い第三者の声が割って入ってきた。
 歯を食いしばっていそうな声が響いてきたのは、たぶん精霊の泉からだ。アルビスも気が付いたようで、私に合わせていた顔を泉へ移す。それに追って、私も泉に顔を向けた。
 直後。泉から昇っていた水色の飛光体が、意思を持ったかのように集まり出していく。揺らめく球体の大きさにまでなると、目が眩むような光を発しながら弾け飛んだ。
 その光が収まると、中から両腕をぶんぶんと上下に激しく揺らし、涙目になっているウンディーネの姿が現れた。

「アカシックさんの『奥の手』が発動していなければ、私が勝っていましたのにぃ~っ!」

 まるで、癇癪を起こしている子供のように悔しがっているウンディーネ。というか、まだ生きていたのか。
 どこまでしつこい奴なんだ。臨戦態勢に入るべく、素早く立ち上がった私は、アルビスの前に立った。

「本当にしぶとい奴だな。一体何回殺せば、お前は死ぬんだ?」

「さっきまで戦っていたのは、私の分身体ですっ! ですから、何回死んでも死にませんっ!」

「は? ぶんしん、たい……?」

「そうですっ!」

 予想すらしていなかった返しに、言葉を失う私。そういえばよく見ると、今のウンディーネの体は透き通っていない。全身が清らかな紺碧色をしている、ちゃんとした実体だ。
 とどのつまり、今まで戦っていたウンディーネすらも、分身の一つだったという訳なのか? ようやく落ち着いてきたのか。振っていた両腕を垂らしたウンディーネの顔が、一気にしょぼくれていく。

「……はぁ。アカシックさん、もう一度だけ私と戦ってはくれないでしょうか?」

「ふざけるな、やらないに決まってるだろ? ……む? やりま、せん?」

 途中から言葉使いを崩していたけれども、戻した方がいいのだろうか? ウンディーネ……、いや、ウンディーネ様からは、荒々しい敵意や殺意が無くなっている。ならば一旦、さりげなく戻すのが無難だろう。

「ですよね……。まさか、あんな土壇場に『奥の手』が発動するだなんて……。私が作った水の瞑想場に、裏切られた気分です……」

「私も、あの瞬間に発動するとは思ってもみませんでした。もし発動していなければ、私が完全に負けてました」

 そう。あの時の私は、心がすっかりと折れていて、負けの宣言をしている最中だった。あのタイミングで発動してくれたのは、もはや奇跡に近い。

「アカシック・ファーストレディ? 貴様、ウンディーネ様と戦って、勝ったのか?」

 アルビスの前に立ったはずなのに、右側からあいつの声が聞こえてきた。顔を右に持っていくと、目線の先に、唖然として龍眼を丸くさせているアルビスが居た。

「ああ、一回死にかけたがな。なんとか勝てた」

「死にかけたッ!? ……貴様の方こそ、大丈夫なのか?」

「一応、大量の血を吐いてこうなってしまったが……。秘薬を飲んで、事なきを得れた」

「……貴様も大概だが。アカシック・ファーストレディを殺す手前まで持っていったウンディーネ様も、流石といった所か……。そうだ! ウンディーネ様!?」

 何かを思い出したように龍眼を見開いたアルビスが、未だにしゅんとしているウンディーネ様の方へと向く。

「さっきの流れは、一体なんだったんでしょうか? 余を殺すとか、なんとか……」

「さっきの、流れ……? ああっ!!」

 暗雲がかかっているが如く曇らせていた表情が一転、晴れを通り越して驚愕させた口元を、華奢な両手で覆い隠すウンディーネ様。
 もしかして、悔しさのあまりに忘れていたな? 先の行為は、決して忘れてはいけないというのに。その大精霊にはあるまじき行為をしてきたウンディーネ様が、深々と頭を下げた。

「アルビスさんっ! 先ほどのご無礼極まる行為の数々、誠に申し訳ございませんでした!」

 高速でお詫びをし、頭をゆっくり上げたかと思えば。ようやく暗雲が晴れたはずの表情は更に曇り、真紅の瞳は大粒の雨が降りそうなほど潤んでいる。

「あれは、冗談といいますか……。とにかくっ、アルビスさんを殺そうだなんて考えは毛頭ございません! それだけは、ご理解の方を……」

「は、はぁ……」

 あまりにも説明不足な弁解に、ただたじろぐ事しか出来ないアルビス。私を世界に旅立たせようとして、出しに使われたと素直に説明されたとしても、余計に混乱してしまうだろうな。
 しかし、そのアルビスは諦めていない様子で、逃がさないと言わんばかりに細まっている龍眼を、私に合わせてきた。

「アカシック・ファーストレディ、分かってるな?」

「うっ……」

 ……非常にまずい。これは、私が説明しなければならない空気になっている。そりゃそうだ。肝心のウンディーネ様から納得のいく説明が無ければ、私に矛先を向けるのが道理。
 結局、アルビスに私の夢がバレてしまうな……。いや、もう知っているか。ウンディーネ様と戦う前に、ヤケクソになりながら大声で語ってしまったのだから。

「こ、心の整理がついてからで、いいか……?」

「よかろう、絶対に逃げるなよ?」

「分かってる……」

 今すぐにでも逃げたいというのが本音であるが……。たとえ逃げ切ったとしても、家に帰ればアルビスが待っている。
 端から逃げ場なんてないんだ、逃げる前から諦めてしまおう。

「アカシックさんも……。多大なるご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

 アルビスから視線すら逸らせられないでいると、左側から私に向けて謝罪の言葉が聞こえてきたので、慌てて体ごと泉の方へ戻す。

「過ぎた事ですので、もうとやかくは言いません。ですが後日、文句を言いに来る可能性がありますので、それだけはご了承下さい」

「あうっ……。はい、甘んじて全てを受け入れます……」

 文句。それは、アルビスに今日の流れと私の夢を説明した後、あいつが機嫌を損ねて関係が悪くなってしまった場合にだ。
 これについては、たとえ相手が大精霊様であろうとも関係ない。言いたい文句を、余すことなく全て吐き出してやる。

「それと、お詫びになるかは分かりませんが……。アカシックさんに『水の契約』を交わさせて頂きます」

「水の契約?」

「はい。本来であれば、正しき場所以外での『契約』は御法度なのですが。アカシックさんであれば、皆さんも分かってくれるでしょう。では、始めます」

 話を進めていくウンディーネ様が、私に紺碧の三叉槍の槍先を向けた。

『我、水を司るウンディーネが捧ぐ。契約主『アカシック』に、慈悲深きたゆたう水の加護があらん事を』

 詠唱紛いな語りを終えると、紺碧の三叉槍の先に淡い水色の光が集まり出し、集まった光は一筋の線となり、私の視界下に向かって伸びていった。
 退きながら視界を下へ滑らすと、光の筋は私の首元に留まっていて、丸い光と化していく。
 そのまま音も無く弾け飛ぶと、私の首下には、一つの首飾りがぶら下がっていた。

「こ、これは……?」

「大精霊と契約を交わした証となる物です。首飾りに『水の証』がはめ込まれていますので、ご確認下さい」

 流れるがままに指示が飛んできたので、私は首飾りを手に取り、周りに七つの光芒を放っているような、まるで太陽の形を成している装飾を確認してみる。
 光芒を真上から見て、一つ右隣。艶やかな光を乱反射させている、六角柱の形をした紺碧色の宝石がはめ込まれていた。
 穴が六つ空いている所を見ると、他の穴は、別の『証』をはめ込む箇所に違いない。
 しかし、真ん中に勾玉のような流線を描いている、別の二つの穴が存在している。この穴は、一体なんだ? 水、火、風、土、氷、闇、光以外の他に、まだ別属性の魔法があるとでもいうのだろうか?

「確認しました。紺碧色の宝石がはめ込まれてます」

「よかった。無事に契約が結ばれたようで、安心致しました」

 けれども、今はこの契約自体の意味が分からない。それに、首飾りの中央にある二つの穴も気になる。
 湧き出してきたほとばしる探求心に抗えず、首飾りを認めていた視界を、ウンディーネ様へ戻した。

「ウンディーネ様。この中央にある二つの穴には、どの『証』とやらがはめ込まれるんですか?」

「現在では、その情報は開示する事が出来ません。周りにある七つの穴を埋め次第、開示する事が出来ます。そしてアカシックさん。私の願いは、あなたが世界へ旅立ち、全ての穴を埋めて欲しかった事です」

「はあ……」

 特定の条件を満たさないと、開示出来ない情報という訳か。私は世界へは旅立たないので、その情報とやらは一生得られる事が出来ないな。
 きっと、全ての大精霊と契約を結んだその先に、誰も知らず、どの書物にも記されていない何かがある。やや気になるものの、これは無駄な探求心だ。明日にでも忘れてしまおう。

「それで、ウンディーネ様と契約を結んだ事により、何かあるんですか?」

「そうですね。水魔法の効果上昇及び、威力の増加。そして、この私を召喚する事が出来ます」

「はあっ!? ウンディーネ様を、しょ、召喚っ!?」

「はい! もし、強大な敵と対峙した時、何の気兼ねもなく私を召喚して下さい。このウンディーネ、命が続く限り、アカシックさんを全力で御守り致します!」

 ……なんて事だ、呆気に取られて声すら出せない。アルビスの方へ顔を移してみたが、アルビスも私に顔を合わせていて、信じられない様子で龍眼を見開き、口をだらしなく開けている。
 きっと、私も同じ様な顔をしているだろうな。開いた口が塞がらないのを、自分でも分かっている。アルビスに合わせていた顔を、微笑んでいるウンディーネ様の元へ、ぎこちなく戻していく。

「……ほ、本当に、いいんですか? 私が、ウンディーネ様と契約をしてしまって」

「はい。遅かれ早かれ、アカシックさんと契約を結ぶつもりでいましたから。ついでに捕捉しますと、『水の証』に魔力を流し込みますと、離れていても私と会話をする事が可能になります。そちらも、どうぞご活用下さい」

「か、会話も……? すごいな……」

「それと、もう一つだけ。その首飾りは、大精霊と契約を結んでいる者にしか見えません。ですので、いくら自慢をしようとしても全てが戯言になってしまいますので、どうかお気を付け下さい」

「え? じゃあこの首飾りは、私にしか見えてないんですか?」

「はい、そうなります」

 私は確かに、手の平に首飾りを置いている。鉄鉱石のような質感ながらも、非常に軽い。首に掛けているのが分からない程に。
 再びアルビスの方を向いてみるも、私が何かを言う前に、アルビスは呆けている顔を横に振った。たぶん、『この首飾りは見えてない』という訴えなのだろう。
 私も、その質問をアルビスにしようとしていたのだが……。呆けていても、相変わらず鋭いな。

「そして最後に。アルビスさんやクロフライムさんにも、守ってもらっている事なんですが―――」

「大精霊の存在を、他者に明かしてはならないんですよね?」

「あら、知っていましたか」

「はい。アルビスもクロフライムも、決して言おうとはしていませんでしたからね。それについては安心して下さい。たとえサニーであろうとも、絶対に言わないと約束します」

 そう約束を交わせば、ウンディーネ様は何とも麗しい笑みを浮かべ、頭を軽く下げた。

「ありがとうございます、アカシックさん。あと……」

 事あるごとに付け加えてくるウンディーネ様が、頭を上げる。そのあらわになった顔は、どこか寂しくもあり、儚げな表情をしていた。

「たとえ世界の全てが敵になろうとも、生命を宿す者から迫害されようとも。この私を含めた大精霊達は、あなたを見捨てるような真似は決して致しません。永久に、アカシックさん味方です。それに、アルビスさんもです」

「余も、ですか?」

 詰まる返事をしたアルビスに対し、ウンディーネ様は小さくうなずく。

「何かありましたら、この泉へ来て、私の名前を呼んで下さい。私はその声に応え、必ずやアルビスさんの前に現れます。アルビスさんにはアカシックさんが居ますが、もっと私にも頼って下さいね」

「は、はいっ。承知致しました」

 右胸に手を当て、深々と礼をするアルビス。稀に見る丁寧さだ。それに、僅かながら萎縮もしている。
 やはり私もウンディーネ様に対して、もっと言葉を選んで慎んだ方がよさそうだな。

「それでは長くなってしまいましたが、一旦解散致しましょう。アカシックさんのお家が、かなり慌ただしい事になっていますので……」

「慌ただしい? ……あ」

 そういえば、ここへ来た当初の目的は、アルビスを家に呼び戻す為だったはず。まずい、あれから何時間が経過しているんだ……?

「う、ウンディーネ様? 私とウンディーネ様が初めて出会ってから、何時間が経過しています?」

 震えた質問を投げかけると、ウンディーネ様は苦笑いを見せつけ、手前に持ってきた右手に三本の指を立てた。

「あれから、三時間少々が経過しております」

「さ、三時間っ……!? あ、アルビス、みんなが心配しているだろうから急いで帰るぞ!」

「待て、アカシック・ファーストレディ! そんな血塗れの姿で帰ったら、場が余計に荒れるぞ!」

「あ、そうだった。ちょっと待っててくれ、急いで変身魔法をかける!」

 元から立ち止まっているアルビスを制止し、指をパチンと鳴らし、詠唱を省いた変身魔法を発動させる私。
 すると所々に血が点在している黒いローブが、眩い光を放ち始める。光はすぐに収まったので、すぐさまローブを確認。
 変身魔法はちゃんと発動してくれたようで。私が着ているローブは、新品同等のパリッとした物に変わっていた。

「よし。ウンディーネ様。後日、改めてお礼を言いにここへ来ます。それでは!」

「はい、いつでもお待ちしております」

 早口で再度会う約束を交わしいる最中。アルビスは落ち着いた様子で、ウンディーネ様に向かい深々と一礼。直後、瞬時に体の向きを変え、『水鏡の扉』へ走り出した。
 私もアルビスの背中を追うべく、右手に漆黒色の箒を召喚。跨らずに急発進させ、そのまま『水鏡の扉』を目指して飛んでいった。
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