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66話、海にまみれた空の旅
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ファートから伸びている縄を括り付けた箒に跨り、家を飛び出してから三十分以上が経過した頃。高い山々の波打つ景色が終わりを迎え、かつてゴーレム達を救出した花畑地帯が現れた。
一面は純白の大地。風の軌跡を教えてくれる、健気に舞い踊る白い花びら。そして昔とは違い、今ではゴーレム達の姿が点々と見えて、各々が花の世話に勤しんでいる。
「ゴーレムさん達がいるっ」
「今日は、誰も穴には落ちてないようだな」
ゴーレム達を全員救出してから、もう三年以上は経っているものの、元々この地帯の地盤が緩いのか。それとも、ゴーレム達が重すぎるせいなのかまでは知らないが、穴に落ちる奴が後を絶たない。
たぶん原因は両方共だろう。これは気を付けても解決出来る問題ではないので、その内花畑地帯に『奥の手』を使い、地盤を固めてしまおうか。
未だにゴーレム達を救出しているので、その手間が省ける様になるのであれば、そちらの方が断然いい。『奥の手』を使用した時のサニーの反応も見てみたいので、今年中にやってしまおう。
そういえば、今日は精霊の泉には、例の精霊は居るのだろうか? クロフライムとアルビスが隠している、私に最上級の水のマナの結晶体を二つもくれた、多大なる恩がある精霊は―――。
「……あ、そういえば『水鏡の扉』があるんだったな。すっかり忘れてた」
「あーっ! 私も忘れてた!」
サニーも海に意識が向いていたせいで、後悔先に立たずと言わんばかりの声を上げる。
『水鏡の扉』は、私の家の近くにある、精霊の森に直接通じている扉だ。これも二人が隠している精霊が開通させた物である。
私達も主に、精霊の泉で昼食を食べる時とか。穴に落ちたゴーレムを助ける際に使わせてもらっている。
心がふわりと安らぐ花の匂いを堪能しつつ、一色単ながらも飽きが来ない景色を楽しみ、更に奥へと飛んで行く。
少しすると花畑地帯の端まで来たらしく。今度は深い緑色が延々とどこまでも続いている、『樹海地帯』が遠目に見えてきた。
「うわぁ~、今度はずっと森がある」
「あそこは樹海地帯と言うんだ。ここからは、サニーは初めて来るんだったな」
「うんっ、初めて来た。樹海って、森よりも広いんだっけ?」
「そうだな。一度入って迷い込んでしまったら、二度と外には出れなくなるぞ」
「へぇ~、まるで迷路だね」
おまけに、ここから先は“迫害の地”本来の牙が、そこら中にひしめいている。針葉樹林地帯、かつての沼地帯、砂漠地帯なんて可愛いものだ。
樹海地帯に生えている木々達の栄養源は、魔物や獣の血と言っても過言ではない程、争いや殺戮が絶えず起こっている。
今はまだそうでもないが……。少し奥に進んだ途端、耳底にこびりつく断末魔や、思わずその場から逃げ出したくなるような命乞いが聞こえてくるはずだ。
サニーの教育や精神面上よろしくないので、声が届かない高高度まで上ってしまおう。
風の金切り音しか聞こえない高さまで来ると、下は無尽蔵に広がる緑。上は、どこまでも青に埋め尽くされた空。……また二色の景色に挟まれてしまった。
よくよく思えば、迫害の地は代わり映えしない景色ばかりじゃないか。今までサニーと行った事ある地帯は、花畑、砂漠、そしてこれから行く海。
色は白、茶、そして、海は青。目的地に着けば、ある程度の変化や話の種になる物はあるけども、ただ色が変わっただけに過ぎない。
実際、砂漠地帯にてファートが住んでいる神殿に向かっている最中、サニーは単色の景色に飽きてしまっている。
途中で砂塵の上を飛んでいたが、結局色はほとんど変わっていない。ずっと茶色だった。
今の樹海もそう。たまに高さが秀でた木があるだけで、色の違いはほんの僅かなものでしかない。樹の海と書いて樹海、か。さながらここも海になるな。
ならば花畑地帯は花海。砂漠地帯は砂海か? まずい、もう全てが海だ。頭が混乱してきたから、これ以上考えるのはやめにしておこう……。
「お母さん、あそこに何か見えるよ」
「む?」
樹の海に何か変化を見つけたのか、サニーがとある方角に指を差したので、私も目線を滑らせていく。
指先が示している所には、明らかに自然の物ではない四角い灰色の建造物らしき石が、緑色の天井から飛び出していた。
「あれは確か……、エルフの祭壇か?」
「エルフっ。耳が尖がってて長い人達だよね!」
「そうだ。今はあそこに住んでないが、昔は住んでたらしいぞ」
「そうなんだ。見てみたいな~」
かつて、ここが迫害の地となる前の遥か太古の昔。樹海は清らかな魔力に満ちていて、様々なエルフが住んでいたとか。あのエルフの祭壇は、その名残という訳である。
祭壇の近辺には里の痕跡があり、エルフの加護が施されていて魔物や獣は一切近寄れず、祭壇と里の周辺は未だに平和が保たれている。血の匂いも弾かれているはずなので、空気も清潔だろう。
今度、あそこへ行くのも悪くないな。既に廃墟と化しているが、絵を描くには好都合な条件が全て揃っている。何事もなく描けるに違いない。
「サニー。来年か再来年にでも、あそこに行くか?」
「あそこに? うん、行きたいっ!」
私の質問に即答し、弾けた笑顔になるサニー。
「分かった。なら覚えておこう」
「わーいっ! あそこって、何か描ける物はある?」
「かなりあるはずだ。もしかしたら何日かに分けて行かないと、全て描き切れないかもな」
「そんなにっ! じゃあじゃあ、いっぱい行こっ!」
「安心しろ。お前が満足するまで何回でも行ってやるさ」
「やったーっ! ありがとっ、お母さん!」
満面の笑みでお礼を言ってきたサニーが、前方に顔を向け、嬉しさが混じった鼻歌を歌い出した。
サニーのこの笑顔よ。私の心をくすぐってくるから、何回見ても好きだ。なんならもっと見せてほしい。四六時中でも構わない。
次回は渓谷地帯に行き、ハルピュイアの長である『ピピラダ』に会せようかと思っていたが、それは先延ばしにしておこう。
エルフの祭壇が視界に映らなくなり、三百六十度見渡しても緑の海しか見えなくなったので、飛んでいる速度を速め、縄に括り付けられているファートの体をくの字にしつつ、次の地帯を目指していく。
次の地帯は湿地帯なのだが……。景観は、かつての沼地帯より濃霧が濃く、なおかつ残虐性を足した感じになるので、サニーにはあまり見せたくない。
それに、空を我が物顔で飛び回っている『スカルドラゴン』も居るし、もっと高度を上げてしまうか。こいつが非常に厄介なんだ。
生きていた時は高い知性を有していたが、死に戻りしてからは知性は無に等しく、目に入る物を所構わず襲い掛かってくる。
地底、洞穴、高台、空。そして、湿地の中までも全力で追いかけて来ては、毒性の強いブレスを連続で放ってくる。おまけに、それなりに数が多い。
が、新薬を作る時には、かなりお世話になっていた。スカルドラゴンの骨には、どの材料よりも優れた解毒作用があるのだ。もちろん、秘薬の材料にも含まれている。
その秘薬はというと、残り半分ぐらいになってしまった。量にして、約二十五kg。五十kg分作った時は、一生掛かっても使い切れないだろうと踏んでいたのだが……。あと五年も持ちそうにない。
今後、どうやって秘薬を節制していくか考えていると。緑色の海を成していた樹海が途切れ、おどろおどろしい湿地帯へと差し掛かった。
既にスカルドラゴンの姿も複数見えるが、かなりの高高度を保っているので、ここまでは来れないだろう。
「あれ? 下が沼になっちゃった」
「いや、あれは湿地帯という場所だ。と言っても、沼と違いはさほど無いがな」
「へぇ~。見た目は沼だけど、沼じゃないんだね」
「そうだな」
そう、違いは泥が大量にあるか無いかだけ。元を辿れば、両方共ほぼ同じである。大量の泥を有していれば沼地。無ければ湿地。沼地も湿地の一種なので、呼び方が違うだけだ。
ここはあまり長居をしたくないので、低い空を飛んでいるスカルドラゴンに目を配りつつ、速度を限界まで速めて先を急ぐ。
サニーも、昔の沼地帯に似ている湿地帯に、特に感想が浮かばなかったのだろうか。スカルドラゴンや、浸水した森林などを静かに眺めているだけで、それほどはしゃいだ様子を見せなかった。
そこから二十分以上が経過した頃。サニーが突然「あれ?」と声を発し、鼻をすんすんと鳴らす。
「どうした?」
「なんか、初めての匂いがする」
「初めて?」
たぶん潮の香りだと予想しつつも、私も匂いの正体を探ってみる。鼻ですんっと嗅いでみると、やはり海独特の潮の香りがした。
まだ視界に海は映り込んでいないが、湿った風に乗ってきたのだろう。
「海の香りだな。そろそろ見えてくるはずだ」
「海の香りっ! これがそうなんだ」
「……むにゃ。海に着いたんれすかぁ……?」
暴風に煽られ続け、体がくの字から一文字になりつつあるファートが、海に対してまどろんだ反応を示してきた。
「もう少しで着くぞ。よく今まで寝れてたな」
「普段はぁ、まだ寝てるからなぁ……。すみませんが、海に着いたら、起こしてぐぅ……」
もう少しで着くと言ったのに、睡魔に負けてまた寝てしまったか。海に着いても起こさないまま帰宅したら、やはり怒るだろうな。仕方ない、ちゃんと起こしてやるか。
潮の香りが強くなってきたので、後五分も飛んでいれば湿地帯は終わりを迎え。岩肌が目立つ草原を越えれば、海に着く。さて、サニーはどんな反応をするだろうか? 楽しみだな。
一面は純白の大地。風の軌跡を教えてくれる、健気に舞い踊る白い花びら。そして昔とは違い、今ではゴーレム達の姿が点々と見えて、各々が花の世話に勤しんでいる。
「ゴーレムさん達がいるっ」
「今日は、誰も穴には落ちてないようだな」
ゴーレム達を全員救出してから、もう三年以上は経っているものの、元々この地帯の地盤が緩いのか。それとも、ゴーレム達が重すぎるせいなのかまでは知らないが、穴に落ちる奴が後を絶たない。
たぶん原因は両方共だろう。これは気を付けても解決出来る問題ではないので、その内花畑地帯に『奥の手』を使い、地盤を固めてしまおうか。
未だにゴーレム達を救出しているので、その手間が省ける様になるのであれば、そちらの方が断然いい。『奥の手』を使用した時のサニーの反応も見てみたいので、今年中にやってしまおう。
そういえば、今日は精霊の泉には、例の精霊は居るのだろうか? クロフライムとアルビスが隠している、私に最上級の水のマナの結晶体を二つもくれた、多大なる恩がある精霊は―――。
「……あ、そういえば『水鏡の扉』があるんだったな。すっかり忘れてた」
「あーっ! 私も忘れてた!」
サニーも海に意識が向いていたせいで、後悔先に立たずと言わんばかりの声を上げる。
『水鏡の扉』は、私の家の近くにある、精霊の森に直接通じている扉だ。これも二人が隠している精霊が開通させた物である。
私達も主に、精霊の泉で昼食を食べる時とか。穴に落ちたゴーレムを助ける際に使わせてもらっている。
心がふわりと安らぐ花の匂いを堪能しつつ、一色単ながらも飽きが来ない景色を楽しみ、更に奥へと飛んで行く。
少しすると花畑地帯の端まで来たらしく。今度は深い緑色が延々とどこまでも続いている、『樹海地帯』が遠目に見えてきた。
「うわぁ~、今度はずっと森がある」
「あそこは樹海地帯と言うんだ。ここからは、サニーは初めて来るんだったな」
「うんっ、初めて来た。樹海って、森よりも広いんだっけ?」
「そうだな。一度入って迷い込んでしまったら、二度と外には出れなくなるぞ」
「へぇ~、まるで迷路だね」
おまけに、ここから先は“迫害の地”本来の牙が、そこら中にひしめいている。針葉樹林地帯、かつての沼地帯、砂漠地帯なんて可愛いものだ。
樹海地帯に生えている木々達の栄養源は、魔物や獣の血と言っても過言ではない程、争いや殺戮が絶えず起こっている。
今はまだそうでもないが……。少し奥に進んだ途端、耳底にこびりつく断末魔や、思わずその場から逃げ出したくなるような命乞いが聞こえてくるはずだ。
サニーの教育や精神面上よろしくないので、声が届かない高高度まで上ってしまおう。
風の金切り音しか聞こえない高さまで来ると、下は無尽蔵に広がる緑。上は、どこまでも青に埋め尽くされた空。……また二色の景色に挟まれてしまった。
よくよく思えば、迫害の地は代わり映えしない景色ばかりじゃないか。今までサニーと行った事ある地帯は、花畑、砂漠、そしてこれから行く海。
色は白、茶、そして、海は青。目的地に着けば、ある程度の変化や話の種になる物はあるけども、ただ色が変わっただけに過ぎない。
実際、砂漠地帯にてファートが住んでいる神殿に向かっている最中、サニーは単色の景色に飽きてしまっている。
途中で砂塵の上を飛んでいたが、結局色はほとんど変わっていない。ずっと茶色だった。
今の樹海もそう。たまに高さが秀でた木があるだけで、色の違いはほんの僅かなものでしかない。樹の海と書いて樹海、か。さながらここも海になるな。
ならば花畑地帯は花海。砂漠地帯は砂海か? まずい、もう全てが海だ。頭が混乱してきたから、これ以上考えるのはやめにしておこう……。
「お母さん、あそこに何か見えるよ」
「む?」
樹の海に何か変化を見つけたのか、サニーがとある方角に指を差したので、私も目線を滑らせていく。
指先が示している所には、明らかに自然の物ではない四角い灰色の建造物らしき石が、緑色の天井から飛び出していた。
「あれは確か……、エルフの祭壇か?」
「エルフっ。耳が尖がってて長い人達だよね!」
「そうだ。今はあそこに住んでないが、昔は住んでたらしいぞ」
「そうなんだ。見てみたいな~」
かつて、ここが迫害の地となる前の遥か太古の昔。樹海は清らかな魔力に満ちていて、様々なエルフが住んでいたとか。あのエルフの祭壇は、その名残という訳である。
祭壇の近辺には里の痕跡があり、エルフの加護が施されていて魔物や獣は一切近寄れず、祭壇と里の周辺は未だに平和が保たれている。血の匂いも弾かれているはずなので、空気も清潔だろう。
今度、あそこへ行くのも悪くないな。既に廃墟と化しているが、絵を描くには好都合な条件が全て揃っている。何事もなく描けるに違いない。
「サニー。来年か再来年にでも、あそこに行くか?」
「あそこに? うん、行きたいっ!」
私の質問に即答し、弾けた笑顔になるサニー。
「分かった。なら覚えておこう」
「わーいっ! あそこって、何か描ける物はある?」
「かなりあるはずだ。もしかしたら何日かに分けて行かないと、全て描き切れないかもな」
「そんなにっ! じゃあじゃあ、いっぱい行こっ!」
「安心しろ。お前が満足するまで何回でも行ってやるさ」
「やったーっ! ありがとっ、お母さん!」
満面の笑みでお礼を言ってきたサニーが、前方に顔を向け、嬉しさが混じった鼻歌を歌い出した。
サニーのこの笑顔よ。私の心をくすぐってくるから、何回見ても好きだ。なんならもっと見せてほしい。四六時中でも構わない。
次回は渓谷地帯に行き、ハルピュイアの長である『ピピラダ』に会せようかと思っていたが、それは先延ばしにしておこう。
エルフの祭壇が視界に映らなくなり、三百六十度見渡しても緑の海しか見えなくなったので、飛んでいる速度を速め、縄に括り付けられているファートの体をくの字にしつつ、次の地帯を目指していく。
次の地帯は湿地帯なのだが……。景観は、かつての沼地帯より濃霧が濃く、なおかつ残虐性を足した感じになるので、サニーにはあまり見せたくない。
それに、空を我が物顔で飛び回っている『スカルドラゴン』も居るし、もっと高度を上げてしまうか。こいつが非常に厄介なんだ。
生きていた時は高い知性を有していたが、死に戻りしてからは知性は無に等しく、目に入る物を所構わず襲い掛かってくる。
地底、洞穴、高台、空。そして、湿地の中までも全力で追いかけて来ては、毒性の強いブレスを連続で放ってくる。おまけに、それなりに数が多い。
が、新薬を作る時には、かなりお世話になっていた。スカルドラゴンの骨には、どの材料よりも優れた解毒作用があるのだ。もちろん、秘薬の材料にも含まれている。
その秘薬はというと、残り半分ぐらいになってしまった。量にして、約二十五kg。五十kg分作った時は、一生掛かっても使い切れないだろうと踏んでいたのだが……。あと五年も持ちそうにない。
今後、どうやって秘薬を節制していくか考えていると。緑色の海を成していた樹海が途切れ、おどろおどろしい湿地帯へと差し掛かった。
既にスカルドラゴンの姿も複数見えるが、かなりの高高度を保っているので、ここまでは来れないだろう。
「あれ? 下が沼になっちゃった」
「いや、あれは湿地帯という場所だ。と言っても、沼と違いはさほど無いがな」
「へぇ~。見た目は沼だけど、沼じゃないんだね」
「そうだな」
そう、違いは泥が大量にあるか無いかだけ。元を辿れば、両方共ほぼ同じである。大量の泥を有していれば沼地。無ければ湿地。沼地も湿地の一種なので、呼び方が違うだけだ。
ここはあまり長居をしたくないので、低い空を飛んでいるスカルドラゴンに目を配りつつ、速度を限界まで速めて先を急ぐ。
サニーも、昔の沼地帯に似ている湿地帯に、特に感想が浮かばなかったのだろうか。スカルドラゴンや、浸水した森林などを静かに眺めているだけで、それほどはしゃいだ様子を見せなかった。
そこから二十分以上が経過した頃。サニーが突然「あれ?」と声を発し、鼻をすんすんと鳴らす。
「どうした?」
「なんか、初めての匂いがする」
「初めて?」
たぶん潮の香りだと予想しつつも、私も匂いの正体を探ってみる。鼻ですんっと嗅いでみると、やはり海独特の潮の香りがした。
まだ視界に海は映り込んでいないが、湿った風に乗ってきたのだろう。
「海の香りだな。そろそろ見えてくるはずだ」
「海の香りっ! これがそうなんだ」
「……むにゃ。海に着いたんれすかぁ……?」
暴風に煽られ続け、体がくの字から一文字になりつつあるファートが、海に対してまどろんだ反応を示してきた。
「もう少しで着くぞ。よく今まで寝れてたな」
「普段はぁ、まだ寝てるからなぁ……。すみませんが、海に着いたら、起こしてぐぅ……」
もう少しで着くと言ったのに、睡魔に負けてまた寝てしまったか。海に着いても起こさないまま帰宅したら、やはり怒るだろうな。仕方ない、ちゃんと起こしてやるか。
潮の香りが強くなってきたので、後五分も飛んでいれば湿地帯は終わりを迎え。岩肌が目立つ草原を越えれば、海に着く。さて、サニーはどんな反応をするだろうか? 楽しみだな。
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