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62話、強き母を導くは、光の道標
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『夜空、大地よ。眠りに就く前に聞いてほしい。偉大なる尊い魂が、これからあるべき場所へ還る。なので、少しの間だけ手を貸してほしいんだ』
今から発動させるのは、私が長年掛けて開発した奥の手。名前は特に付けていないが、『語り』と呼んでいる。
この世には、空気と等しい量の魔力が満ちている。空、大地、海、大気、山、街、村など、ありとあらゆる場所に満ちているのだ。その満ち溢れている魔力に、私の魔力を大量に流し込んでいく。
そうして互いの魔力を馴染ませて掌握し、私の手中に収める事が可能。名指しで指定すれば、そこに魔力が集中的に流れて行くので、手早く掌握する事が出来る。
有機物と、どこに居るのかすら分からない、時の流れ以外はな。
『夜空、大地、聞いているんだろう? 寝るにはまだ早い。寝てるのであれば、一旦起きてくれ』
語る内容は何でもいい。ただ頭に浮かんできた言葉を、そのまま対象物に語り掛けるだけでいいのだ。なので、適当な事を言っても問題無い。それらが全て前準備になり、詠唱となる。
が、一抹の不安を感じていない訳でもない。元々『語り』は、私対大多数の大規模戦闘。もしくは対アルビス戦に使うべくして開発した物なので、人助けで使うのはこれで初めてになるのだ。
『この偉大なる尊い魂は、先に還った夫さんの元へ行きたいんだ。本来であれば、離れるべき存在ではない。心置きなく安らげるよう、助けてやりたいとは思わないか?』
三回目を語り終えた直後。脈を打つかの様に、夜空と大地が一度だけ力強く光を瞬かせた。
目に見える範囲の夜空と大地に、私の魔力が馴染んだ証である。よし、丁度いい区切りで準備が整った。あとは、最高の形でエリィさんを夫さんの元へ還すのみ。
「夜空と大地が、光った……?」
「今この瞬間だけ、夜空と大地を私の仲間に加えました」
「な、仲間に……? そんな事が、出来るんですか?」
「ええ、天使ですからね」
驚いて青い瞳を丸くさせたエリィさんに対し、何の恥ずかし気もなく返す私。やや調子に乗ってしまった。流れるがままに言ってしまったが、やはり少々恥ずかしい……。
その恥ずかしさを隠した返答に、エリィさんは呆気に取られたため息を漏らし、潤んだ瞳を微笑ました。
「アカシックさんって、本物の天使様だったんですね。天使様に弔われるなんて……。幸せ者だなぁ、私」
「初めて出会った時は堕天していたので、悪態を吐いてしまいましたがね。そう言って下さるだけで、私の心が救われました。そして、必ずやサニーも、幸せにしてみせます」
「アカシックさん……」
そう断言すれば、エリィさんの右目から再び、大粒の涙が頬を伝っていった。
「アカシックさんになら、安心してサニーを任せられます。もう、思い残す事は何もありません」
「そうですか、よかった。それでは、最後の仕上げをします」
最後の仕上げは二つある。一つ目、掌握した物に対して的確な指示を出し。二つ目は主に頭の中で、正確無比にやりたい事を思い描く。
今回は一つ目を夜空に、夫さんの魂の在り方を探ってもらい。二つ目は、大地にその場所までの道を開拓してもらう。
逆でやるのは不可能だ。私では、夫さんの魂を探し出す事が出来ない。どう必死になって足掻こうとも。まずは夫さんの魂の在処を探るべく、夜空に光の杖をかざす。
『数多の魂を抱擁する夜空よ。願わくば、エリィさんの夫さんの魂がどこに居るか探し出し、私に分かりやすく教えてくれ』
不可能に近い手掛かりを夜空へ投げ掛けては、ほんの僅かな変化が無いか見逃さない様、星々が瞬く夜空を一望する。
川を彷彿とさせる、星が群を成している箇所。逆に散開していて、黒が一層目立つ箇所。赤や黄、青の色といった星光の個性が強い箇所。
夜空から合図が一向に来ない中。視線を左にやると、他の星々とは違う、異色の光を放っている星が視界に入った。
場所は月の真下。どう見ても、星とは言い難い光を放っている星。目を凝らしてよく見てみれば、その光は星ではなく、逆光を帯びている扉の形を成した入口の様に見えた。
「間違いない、あそこだな」
分かりやすい合図は無かったものの、エリィさんの夫さんはあの入口の先に居る。確証は無いが確信を得た私は、持っていた杖の先を地面に向け、滑らせる様に入口へかざした。
『深き慈愛に満ちた母なる大地よ。偉大なる尊い魂を、夜空が開けた光の入口へ誘う為に、光の道標を架けてくれ』
あたかも大地に指示を出したかのように聞こえるが、ここからは私自らもやる。光の入口への距離が測れないので、まず初めにエリィさんの足元に横目を送る。
そこから星の瞬きに似た光を生成し、隙間なく敷き詰めていく。それを幾度となく繰り返し、後は光の入口に続く限り目一杯生成し、光の道標を架けていった。
おまけとして乗り物を用意する為に、指を素早く二回鳴らし、詠唱を省いた光と風属性の魔法を同時に発動。
ゴーレムを助けた時にも出した風の渦を出現させ、それに回復効果がある光の粒子を混ぜ込めば、星の渡り船の完成だ。
全ての行程を終えた私は、光の入口にかざしていた杖を下ろし、呆然と立ち尽くしているエリィさんに体を向け、空いている左手を星の渡り船にかざす。
「さあ、エリィさん。これに乗って下さい。この光の渦が、夫さんの元へ運んでくれます」
「……え? あっ、はぁ……」
催促してみるも、エリィさんは心ここに在らずの様子で、星の渡り船に顔を移してから私に戻してきた後。華奢な肩をストンと落とした。
「アカシックさん……。あなたは一体、何者なんですか?」
「何者って。エリィさんはもう、知ってるじゃないですか」
場の空気に飲まれて滑り倒している口を止め、一呼吸置く。
「魔女であり、あなたの天使です」
改めて天使と口にしてみれば、エリィさんの呆然としている顔がハッとし、穏やかで優しさのある苦笑いに変わった。
「そうでしたね。なんかもう、色々と凄すぎたので、本当は神様なんじゃないかって思っちゃいました」
「とうとう神様にまでされちゃいましたか」
『語り』は、元を辿れば魔法とそれほど差異は無い。詠唱を省いた魔法の延長線とも言える。
簡単に言ってしまえば、魔力が続く限り、魔法陣と化した夜空と大地から六属性の魔法を無尽蔵にかつ、無詠唱で延々と放てる状態にしたまでの事。
それと技量次第では、指示を出して遂行させる事も可能になる。今回は私が未熟だったせいで、夜空から分かりやすい合図がなかったけれども。
「なら、この場にもっと華を咲かせましょう」
現在、周りは闇夜に染まっている。偉大なる強き母の魂を送るには、あまりにも場違いで寂しい風景だ。なので、もっと煌びやかにせねば。
そのまま私は左手を夜空にかざし、指をパチンと鳴らす。すると見える範囲の夜空から、光輝く雨が降り始めた。
「うわぁ~っ……!」
星が降り注いでいるような光景を目にし、無邪気な声を出すエリィさん。使用した魔法は『ヒーリング・レイン』。もちろん光属性の魔法だ。
広範囲に回復効果のある光を降らせる魔法だが、今回は『語り』と併用しているので、たぶん沼地帯中に降り注いでいる事だろう。
「すごいっ! 綺麗……」
「喜んでくれたようで、なによりです」
「はいっ! アカシックさんには、なんとお礼をすればいいのやら……」
「エリィさん程の母親を天国へ送るんです。これでも足りないぐらいですよ。さあ、エリィさん。乗って下さい」
左手を再び光の渦にかざすも、エリィさんは何を思っているのか。光の渦に移した顔を私に向け、何か言いたそうな素振りを見せている。
しかし思い留まり、右手を胸に当て、別れを惜しむかのように頭を下げた。そして何も言わぬまま、光の渦に乗り、ペタンと座り込んだ。
仕草からして女座りをしたのだろうが、エリィさんの下半身は全て消えていて、生きている私には視認する事が出来なかった。
「ではエリィさん。天国でも、夫さんと末永く幸せにお過ごし下さい」
「アカシックさん……」
私の名前を呼ぶエリィさんの青い瞳は、また涙で滲んでいる。やはり本当の親子ともあってか、サニーと重なって見えるな。
エリィさんの体が、どんどん光の粒子に変わって消えていっている。時間がない、早く光の入口まで運んであげないと。
そう焦った私は、杖先を光の入口へ向ける。それと呼応するかのように、エリィさんが乗っている光の渦が、光の道標に沿って動き出した。
速度は早く、みるみる内にエリィさんの姿が遠ざかっていく。その中で、エリィさんは一度深くお辞儀をして、手を大きく振り出した。
「アカシックさんっ! 私はあなたとの出会いを! あなたの事を一生忘れませんっ! 本当にありがとうございましたっ!!」
「私もです! 私もエリィさんに出会えて光栄に思っています! あなたの事は、たとえ死んだとしても一生忘れません! お元気で!!」
……何十年振りに叫んだ私の言葉は、エリィさんにちゃんと届いただろうか? 私の視界も霞んできていて、もうエリィさんの姿を視認する事が出来ない。
今だけ泣くのは我慢してくれ、私よ。最後までしっかりと、エリィさんの事を見送りたいんだ。頼む、泣かないでくれ。
どうやら、私の願いは叶わなかったようで。視界はもう、水の中に飛び込んだかの様にずぶ濡れ状態だ。全ての光がごちゃ混ぜになって、何がなんだか分からない。
せめて、この手だけはずっと振り続けておこう。そこにもう、エリィさんが居なかったとしても。
今から発動させるのは、私が長年掛けて開発した奥の手。名前は特に付けていないが、『語り』と呼んでいる。
この世には、空気と等しい量の魔力が満ちている。空、大地、海、大気、山、街、村など、ありとあらゆる場所に満ちているのだ。その満ち溢れている魔力に、私の魔力を大量に流し込んでいく。
そうして互いの魔力を馴染ませて掌握し、私の手中に収める事が可能。名指しで指定すれば、そこに魔力が集中的に流れて行くので、手早く掌握する事が出来る。
有機物と、どこに居るのかすら分からない、時の流れ以外はな。
『夜空、大地、聞いているんだろう? 寝るにはまだ早い。寝てるのであれば、一旦起きてくれ』
語る内容は何でもいい。ただ頭に浮かんできた言葉を、そのまま対象物に語り掛けるだけでいいのだ。なので、適当な事を言っても問題無い。それらが全て前準備になり、詠唱となる。
が、一抹の不安を感じていない訳でもない。元々『語り』は、私対大多数の大規模戦闘。もしくは対アルビス戦に使うべくして開発した物なので、人助けで使うのはこれで初めてになるのだ。
『この偉大なる尊い魂は、先に還った夫さんの元へ行きたいんだ。本来であれば、離れるべき存在ではない。心置きなく安らげるよう、助けてやりたいとは思わないか?』
三回目を語り終えた直後。脈を打つかの様に、夜空と大地が一度だけ力強く光を瞬かせた。
目に見える範囲の夜空と大地に、私の魔力が馴染んだ証である。よし、丁度いい区切りで準備が整った。あとは、最高の形でエリィさんを夫さんの元へ還すのみ。
「夜空と大地が、光った……?」
「今この瞬間だけ、夜空と大地を私の仲間に加えました」
「な、仲間に……? そんな事が、出来るんですか?」
「ええ、天使ですからね」
驚いて青い瞳を丸くさせたエリィさんに対し、何の恥ずかし気もなく返す私。やや調子に乗ってしまった。流れるがままに言ってしまったが、やはり少々恥ずかしい……。
その恥ずかしさを隠した返答に、エリィさんは呆気に取られたため息を漏らし、潤んだ瞳を微笑ました。
「アカシックさんって、本物の天使様だったんですね。天使様に弔われるなんて……。幸せ者だなぁ、私」
「初めて出会った時は堕天していたので、悪態を吐いてしまいましたがね。そう言って下さるだけで、私の心が救われました。そして、必ずやサニーも、幸せにしてみせます」
「アカシックさん……」
そう断言すれば、エリィさんの右目から再び、大粒の涙が頬を伝っていった。
「アカシックさんになら、安心してサニーを任せられます。もう、思い残す事は何もありません」
「そうですか、よかった。それでは、最後の仕上げをします」
最後の仕上げは二つある。一つ目、掌握した物に対して的確な指示を出し。二つ目は主に頭の中で、正確無比にやりたい事を思い描く。
今回は一つ目を夜空に、夫さんの魂の在り方を探ってもらい。二つ目は、大地にその場所までの道を開拓してもらう。
逆でやるのは不可能だ。私では、夫さんの魂を探し出す事が出来ない。どう必死になって足掻こうとも。まずは夫さんの魂の在処を探るべく、夜空に光の杖をかざす。
『数多の魂を抱擁する夜空よ。願わくば、エリィさんの夫さんの魂がどこに居るか探し出し、私に分かりやすく教えてくれ』
不可能に近い手掛かりを夜空へ投げ掛けては、ほんの僅かな変化が無いか見逃さない様、星々が瞬く夜空を一望する。
川を彷彿とさせる、星が群を成している箇所。逆に散開していて、黒が一層目立つ箇所。赤や黄、青の色といった星光の個性が強い箇所。
夜空から合図が一向に来ない中。視線を左にやると、他の星々とは違う、異色の光を放っている星が視界に入った。
場所は月の真下。どう見ても、星とは言い難い光を放っている星。目を凝らしてよく見てみれば、その光は星ではなく、逆光を帯びている扉の形を成した入口の様に見えた。
「間違いない、あそこだな」
分かりやすい合図は無かったものの、エリィさんの夫さんはあの入口の先に居る。確証は無いが確信を得た私は、持っていた杖の先を地面に向け、滑らせる様に入口へかざした。
『深き慈愛に満ちた母なる大地よ。偉大なる尊い魂を、夜空が開けた光の入口へ誘う為に、光の道標を架けてくれ』
あたかも大地に指示を出したかのように聞こえるが、ここからは私自らもやる。光の入口への距離が測れないので、まず初めにエリィさんの足元に横目を送る。
そこから星の瞬きに似た光を生成し、隙間なく敷き詰めていく。それを幾度となく繰り返し、後は光の入口に続く限り目一杯生成し、光の道標を架けていった。
おまけとして乗り物を用意する為に、指を素早く二回鳴らし、詠唱を省いた光と風属性の魔法を同時に発動。
ゴーレムを助けた時にも出した風の渦を出現させ、それに回復効果がある光の粒子を混ぜ込めば、星の渡り船の完成だ。
全ての行程を終えた私は、光の入口にかざしていた杖を下ろし、呆然と立ち尽くしているエリィさんに体を向け、空いている左手を星の渡り船にかざす。
「さあ、エリィさん。これに乗って下さい。この光の渦が、夫さんの元へ運んでくれます」
「……え? あっ、はぁ……」
催促してみるも、エリィさんは心ここに在らずの様子で、星の渡り船に顔を移してから私に戻してきた後。華奢な肩をストンと落とした。
「アカシックさん……。あなたは一体、何者なんですか?」
「何者って。エリィさんはもう、知ってるじゃないですか」
場の空気に飲まれて滑り倒している口を止め、一呼吸置く。
「魔女であり、あなたの天使です」
改めて天使と口にしてみれば、エリィさんの呆然としている顔がハッとし、穏やかで優しさのある苦笑いに変わった。
「そうでしたね。なんかもう、色々と凄すぎたので、本当は神様なんじゃないかって思っちゃいました」
「とうとう神様にまでされちゃいましたか」
『語り』は、元を辿れば魔法とそれほど差異は無い。詠唱を省いた魔法の延長線とも言える。
簡単に言ってしまえば、魔力が続く限り、魔法陣と化した夜空と大地から六属性の魔法を無尽蔵にかつ、無詠唱で延々と放てる状態にしたまでの事。
それと技量次第では、指示を出して遂行させる事も可能になる。今回は私が未熟だったせいで、夜空から分かりやすい合図がなかったけれども。
「なら、この場にもっと華を咲かせましょう」
現在、周りは闇夜に染まっている。偉大なる強き母の魂を送るには、あまりにも場違いで寂しい風景だ。なので、もっと煌びやかにせねば。
そのまま私は左手を夜空にかざし、指をパチンと鳴らす。すると見える範囲の夜空から、光輝く雨が降り始めた。
「うわぁ~っ……!」
星が降り注いでいるような光景を目にし、無邪気な声を出すエリィさん。使用した魔法は『ヒーリング・レイン』。もちろん光属性の魔法だ。
広範囲に回復効果のある光を降らせる魔法だが、今回は『語り』と併用しているので、たぶん沼地帯中に降り注いでいる事だろう。
「すごいっ! 綺麗……」
「喜んでくれたようで、なによりです」
「はいっ! アカシックさんには、なんとお礼をすればいいのやら……」
「エリィさん程の母親を天国へ送るんです。これでも足りないぐらいですよ。さあ、エリィさん。乗って下さい」
左手を再び光の渦にかざすも、エリィさんは何を思っているのか。光の渦に移した顔を私に向け、何か言いたそうな素振りを見せている。
しかし思い留まり、右手を胸に当て、別れを惜しむかのように頭を下げた。そして何も言わぬまま、光の渦に乗り、ペタンと座り込んだ。
仕草からして女座りをしたのだろうが、エリィさんの下半身は全て消えていて、生きている私には視認する事が出来なかった。
「ではエリィさん。天国でも、夫さんと末永く幸せにお過ごし下さい」
「アカシックさん……」
私の名前を呼ぶエリィさんの青い瞳は、また涙で滲んでいる。やはり本当の親子ともあってか、サニーと重なって見えるな。
エリィさんの体が、どんどん光の粒子に変わって消えていっている。時間がない、早く光の入口まで運んであげないと。
そう焦った私は、杖先を光の入口へ向ける。それと呼応するかのように、エリィさんが乗っている光の渦が、光の道標に沿って動き出した。
速度は早く、みるみる内にエリィさんの姿が遠ざかっていく。その中で、エリィさんは一度深くお辞儀をして、手を大きく振り出した。
「アカシックさんっ! 私はあなたとの出会いを! あなたの事を一生忘れませんっ! 本当にありがとうございましたっ!!」
「私もです! 私もエリィさんに出会えて光栄に思っています! あなたの事は、たとえ死んだとしても一生忘れません! お元気で!!」
……何十年振りに叫んだ私の言葉は、エリィさんにちゃんと届いただろうか? 私の視界も霞んできていて、もうエリィさんの姿を視認する事が出来ない。
今だけ泣くのは我慢してくれ、私よ。最後までしっかりと、エリィさんの事を見送りたいんだ。頼む、泣かないでくれ。
どうやら、私の願いは叶わなかったようで。視界はもう、水の中に飛び込んだかの様にずぶ濡れ状態だ。全ての光がごちゃ混ぜになって、何がなんだか分からない。
せめて、この手だけはずっと振り続けておこう。そこにもう、エリィさんが居なかったとしても。
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