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24話、最後の一体
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「やっと着いたか……。こいつが最後の一体だな」
一体目のゴーレムを助けてから、七日は経過しただろうか。途中で日数を数えるのをやめてしまったから、間違えているかもしれないが。
あれから花畑地帯と森の間を、何十往復もした。一体助ければ森へと戻り。助けたゴーレムが蘇ったのを確認すれば、また花畑地帯に戻る作業の繰り返し。
助け始めた頃は数も少なく、作業効率はあまりにも酷かった。しかし、一体助ける毎に作業効率は微力ながらも増加。
五日目以降になると、私はほとんど森に戻らなくなり、地中に居るゴーレムを地上に出しては、道へと運んでいっていた。
一日目は作業人数も少なく、助けた数は四体。二日目は九体となったので作業効率が三倍になるも、だんだんと森と墓標の距離が遠くなっていったので、助けた数は七体。
三日目、四日目は、道からかなり遠くに離れた墓標を集中的に攻め、合計で二十三体。ここで初めて気が付いたが、一本しか無いと思っていた道は、実は等間隔で複数存在していた。
が、徐々にゴーレムの数が減っていったせいで、管理が行き届かなくなった花が道を浸食し、ゴーレムの通り道にも群生していったようだ。
十年以上前に一度だけ来た事はあったが、当時の花畑地帯の風景を忘れていたなんて。過去の私は、よっぽど周りが見えていなかったらしい。
五日目、六日目は、三十九体ものゴーレムが総出で助け合い、合計で二十五体のゴーレムを救出。この二日間私は、作業を一旦終えて家に戻る際にしか、森に寄る事はなかった。
その時の森の中は、再会を分かち合っているかの様に、六十四体のゴーレムでぎゅうぎゅう詰め状態。誰も言葉を発する事もなく、表情も代わり映えしないが、そことなく全員が全員、喜んでいる様に見えた。
そして七日目。私達は最後の一体を助ける為に、森から一番離れた場所に来た。そこは、樹海地帯が目前に迫る程の距離にある場所。
マナの泉がある森からここまで来るのに、おおよそ六時間以上が経っている。これは、ゴーレムの行進に合わせて飛んでいたせいもあるが。
「こいつだけ、やたらとでかそうだな」
「すごくおっきいね」
最後の墓標だけ普通の枝ではなく、巨大な丸太が使われていたせいで、率直な感想を漏らす私とサニー。
地面の隆起もそう。普通のゴーレム達に比べると、二倍も三倍も大きく膨れ上がっている。ここに埋まっている奴だけ、他の奴らと何か違うのだろうか?
「そういえば、一体だけ大きくて喋る奴が居たな。と言う事は、ここに埋まってるのがそいつか」
十年前の記憶を断片的に思い出し、確信しながら言う。今まで助けたゴーレムの数は、六十四体。その中に、大きくて喋る奴は居なかった。
唯一印象に残るゴーレムだったので、朧気に思い出せば、当時の記憶を一気に思い出していく。
確かこいつと軽い交渉をし、体の一部を分けてもらい。許可を得てから、花を数本だけ採り。無作為な採取をしないまま、私は家に帰って行ったはず。たぶん。
「核が壊れてなければいいが。出てこい、“土”」
最後の懸念を頭に過らせつつ、かざした右手の先に土の杖を召喚。今回は道の果てにあったので、風の杖は必要ない。
宙に浮いている土の杖を握り締め、一度だけ深呼吸をする。深呼吸を終えると同時に、肩が下がっていくのを感じ取った。
今の私の気持ちは、充分に落ち着いているようだ。別に緊張する瞬間でもなければ、不安を煽られる場面でもないが。
私はただ土の杖を、上に向かって強めに振り上げるだけでいい。それをやってしまえば、長かった救出もようやく終わりを迎える。
「これで最後だ」
「ままっ、がんばってっ」
足元に居るサニーが声援を送ってきたので、私はサニーに顔を合わせてから頷き、土の杖の先端を地面に向ける。
そのまま下から上に向かい、杖を強めに振り上げた。すると、同時に地面が大きく揺れ始め、辺りに轟音を響かせていく。
遅れて地面が隆起し出し、刺さっていた丸太が力無く倒れ、後ろにある樹海地帯に転がっていく。
土がせり出していくと、周りに土を広げていっている山の中から、他のゴーレムに比べると二倍以上も大きなゴーレムが姿を現した。
「でてきたっ! おっきい!」
サニーの声を耳にしつつ、見上げる程までに高い位置に行った顔を確認してみれば、やはりこいつが唯一喋れるゴーレムだと分かった。
最後のゴーレムが姿を現した途端、背後から無言の歓声が上がった様な圧を感じたが、私はそれを無視し、地上に出したゴーレムの元へ歩み寄っていく。
悔いが残っているのか、志半ばで死んでいった雰囲気のある面立ち。流石に鼻は無いものの、固く噤んでいる口がある。
後ろに回ってみれば、ガタイがいい背中の一部分が、少しだけ欠けていた。間違いない。十年前以上の私が風魔法で削り取った箇所だ。
他に外傷や劣化が無いか確認してみるも、まったく無さそうだ。これなら核も傷付いてないだろう。後は森まで運び、マナが溶け込んだ水に浸すだけだ。
「よし、全員で運べ。決して落とすなよ?」
道を完全に塞いでる六十四体ものゴーレム達に言い聞かせれば、さも当然の如く、一斉に呼吸を揃えて頷いた。
この場所に来るだけで、約六時間以上が経過している。運んで帰るとなると、更に遅くなるだろう。森に着く頃には、夜がとっくに更けていそうだ。
そう予想した私は、木のカゴから遅めの昼食を取り出し、最後のゴーレムを見上げているサニーに差し出した。
「サニー、腹がへっただろ? 食え」
「ありがとっ!」
やはり腹がへっていたのか、手に持った瞬間に食べ始めるサニー。渡したのは、柔らかいパンに複数の野菜を挟んだ物。持ち運びが容易なので、今後もお世話になるだろう。
無我夢中で昼食を食べているサニーをよそに、私は土の杖を消しつつ漆黒色の箒を左手に召喚。先端に木のカゴをぶら下げ、サニーに『ふわふわ』をかけて箒に跨らせる。
私も箒に跨ると、片手でサニーの体を支えて宙に浮き、最後のゴーレムを運び始めたゴーレムの行進の後を、ゆっくりと付いていった。
一体目のゴーレムを助けてから、七日は経過しただろうか。途中で日数を数えるのをやめてしまったから、間違えているかもしれないが。
あれから花畑地帯と森の間を、何十往復もした。一体助ければ森へと戻り。助けたゴーレムが蘇ったのを確認すれば、また花畑地帯に戻る作業の繰り返し。
助け始めた頃は数も少なく、作業効率はあまりにも酷かった。しかし、一体助ける毎に作業効率は微力ながらも増加。
五日目以降になると、私はほとんど森に戻らなくなり、地中に居るゴーレムを地上に出しては、道へと運んでいっていた。
一日目は作業人数も少なく、助けた数は四体。二日目は九体となったので作業効率が三倍になるも、だんだんと森と墓標の距離が遠くなっていったので、助けた数は七体。
三日目、四日目は、道からかなり遠くに離れた墓標を集中的に攻め、合計で二十三体。ここで初めて気が付いたが、一本しか無いと思っていた道は、実は等間隔で複数存在していた。
が、徐々にゴーレムの数が減っていったせいで、管理が行き届かなくなった花が道を浸食し、ゴーレムの通り道にも群生していったようだ。
十年以上前に一度だけ来た事はあったが、当時の花畑地帯の風景を忘れていたなんて。過去の私は、よっぽど周りが見えていなかったらしい。
五日目、六日目は、三十九体ものゴーレムが総出で助け合い、合計で二十五体のゴーレムを救出。この二日間私は、作業を一旦終えて家に戻る際にしか、森に寄る事はなかった。
その時の森の中は、再会を分かち合っているかの様に、六十四体のゴーレムでぎゅうぎゅう詰め状態。誰も言葉を発する事もなく、表情も代わり映えしないが、そことなく全員が全員、喜んでいる様に見えた。
そして七日目。私達は最後の一体を助ける為に、森から一番離れた場所に来た。そこは、樹海地帯が目前に迫る程の距離にある場所。
マナの泉がある森からここまで来るのに、おおよそ六時間以上が経っている。これは、ゴーレムの行進に合わせて飛んでいたせいもあるが。
「こいつだけ、やたらとでかそうだな」
「すごくおっきいね」
最後の墓標だけ普通の枝ではなく、巨大な丸太が使われていたせいで、率直な感想を漏らす私とサニー。
地面の隆起もそう。普通のゴーレム達に比べると、二倍も三倍も大きく膨れ上がっている。ここに埋まっている奴だけ、他の奴らと何か違うのだろうか?
「そういえば、一体だけ大きくて喋る奴が居たな。と言う事は、ここに埋まってるのがそいつか」
十年前の記憶を断片的に思い出し、確信しながら言う。今まで助けたゴーレムの数は、六十四体。その中に、大きくて喋る奴は居なかった。
唯一印象に残るゴーレムだったので、朧気に思い出せば、当時の記憶を一気に思い出していく。
確かこいつと軽い交渉をし、体の一部を分けてもらい。許可を得てから、花を数本だけ採り。無作為な採取をしないまま、私は家に帰って行ったはず。たぶん。
「核が壊れてなければいいが。出てこい、“土”」
最後の懸念を頭に過らせつつ、かざした右手の先に土の杖を召喚。今回は道の果てにあったので、風の杖は必要ない。
宙に浮いている土の杖を握り締め、一度だけ深呼吸をする。深呼吸を終えると同時に、肩が下がっていくのを感じ取った。
今の私の気持ちは、充分に落ち着いているようだ。別に緊張する瞬間でもなければ、不安を煽られる場面でもないが。
私はただ土の杖を、上に向かって強めに振り上げるだけでいい。それをやってしまえば、長かった救出もようやく終わりを迎える。
「これで最後だ」
「ままっ、がんばってっ」
足元に居るサニーが声援を送ってきたので、私はサニーに顔を合わせてから頷き、土の杖の先端を地面に向ける。
そのまま下から上に向かい、杖を強めに振り上げた。すると、同時に地面が大きく揺れ始め、辺りに轟音を響かせていく。
遅れて地面が隆起し出し、刺さっていた丸太が力無く倒れ、後ろにある樹海地帯に転がっていく。
土がせり出していくと、周りに土を広げていっている山の中から、他のゴーレムに比べると二倍以上も大きなゴーレムが姿を現した。
「でてきたっ! おっきい!」
サニーの声を耳にしつつ、見上げる程までに高い位置に行った顔を確認してみれば、やはりこいつが唯一喋れるゴーレムだと分かった。
最後のゴーレムが姿を現した途端、背後から無言の歓声が上がった様な圧を感じたが、私はそれを無視し、地上に出したゴーレムの元へ歩み寄っていく。
悔いが残っているのか、志半ばで死んでいった雰囲気のある面立ち。流石に鼻は無いものの、固く噤んでいる口がある。
後ろに回ってみれば、ガタイがいい背中の一部分が、少しだけ欠けていた。間違いない。十年前以上の私が風魔法で削り取った箇所だ。
他に外傷や劣化が無いか確認してみるも、まったく無さそうだ。これなら核も傷付いてないだろう。後は森まで運び、マナが溶け込んだ水に浸すだけだ。
「よし、全員で運べ。決して落とすなよ?」
道を完全に塞いでる六十四体ものゴーレム達に言い聞かせれば、さも当然の如く、一斉に呼吸を揃えて頷いた。
この場所に来るだけで、約六時間以上が経過している。運んで帰るとなると、更に遅くなるだろう。森に着く頃には、夜がとっくに更けていそうだ。
そう予想した私は、木のカゴから遅めの昼食を取り出し、最後のゴーレムを見上げているサニーに差し出した。
「サニー、腹がへっただろ? 食え」
「ありがとっ!」
やはり腹がへっていたのか、手に持った瞬間に食べ始めるサニー。渡したのは、柔らかいパンに複数の野菜を挟んだ物。持ち運びが容易なので、今後もお世話になるだろう。
無我夢中で昼食を食べているサニーをよそに、私は土の杖を消しつつ漆黒色の箒を左手に召喚。先端に木のカゴをぶら下げ、サニーに『ふわふわ』をかけて箒に跨らせる。
私も箒に跨ると、片手でサニーの体を支えて宙に浮き、最後のゴーレムを運び始めたゴーレムの行進の後を、ゆっくりと付いていった。
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