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34話-5、心を打たれる信頼の言葉
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雪女に変化したせいか、いつもより暑さを感じる秋の陽気の中。
花梨は体から放出している冷気を強め、全身から白い湯気を昇らせつつ、厨房で雹華の説明を受けていた。
アイスの原液が入っている容器の場所。その他材料の保管場所。食器類の場所や返却の仕方。注文を受けた際の厨房でのやりとり。接客する際、体温を下げ過ぎると客が凍えてしまうので注意する事など。
雪女になり、現在の気温にまったく慣れていない花梨は、体温をマイナスまで下げて強い冷気を発しており、そのせいで近くにあった食べ物を凍らせてしまい雹華に注意された。
メモ帳や筆記類を持っていなかったので、説明された事を全て頭に叩き込み、教えられた事を頭の中で何度も復唱した。
復唱中の花梨をよそに、体温を上げ、気だるそうにしている雹華が店の入口に目を向ける。
「……それじゃあ花梨ちゃん……。……まだ開店前だけど、外のテーブル席にお客さんが来ているから接客してきてちょうだい……」
「あっ、はい。分かりました」
指示を受けた花梨は体温を上げ、両手で顔を仰いで「あっつぅ~……」と呟きつつ、入口にあるテーブル席へと向かっていく。
外に出る前に背筋をピンと伸ばし、一度気を落ち着かせる為に深呼吸をし、注文を受けた際に記入する伝票を片手に持つ。
肌が焼けるように暑い秋の日差しが照らす店の外に出ると、白いテーブル席には、メニュー表を眺めて暇を潰しているゴーニャの姿があった
「あっ、お客さんってゴーニャの事だったんだ。雹華さんも粋な計らいをするなぁ」
「花梨っ! ずっと待ってたんだからねっ」
ゴーニャが頬をプクッと膨らませると、その表情を見た花梨はニコリと笑う。そして、小さく手を振りながらゴーニャの元に歩みより、軽くお辞儀をした。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「えっと、バニラアイスが食べたいわっ!」
「バニラアイスですね~、分かりました。少々お待ちください」
嬉々に注文を承った花梨は、伝票にバニラアイスと記入してから厨房へと戻り、バニラアイスの原液が入っている容器と透明の皿、銀色のスプーンを木のお盆に乗せ、再びゴーニャの元へと戻っていく。
持ってきた物をテーブルの上に並べ、バニラアイスを作り始めると、その様子をじっと見ていたゴーニャが口を開いた。
「確か、花梨がここに来て初めて食べたのが、バニラアイスだったわよね」
「そうだねぇ。あの時からもうずいぶん経つけど、まさか自分が作る側になるなんて夢にも思わなかったよ。はいお客様、バニラアイスでございます」
作り終えた薄い氷に包まれているバニラアイスを皿に置くと、花梨は得意げに指をパチンと鳴らし、バニラアイスを包んでいる氷を弾き飛ばした。
待っていましたと言わんばかりに目を輝かせたゴーニャは、すぐさまスプーンを片手に持ち、出来立てのバニラアイスを口に運び、にんまりと笑みを浮かべた。
「おいひい~っ! じゃあ私が花梨で、花梨が雹華ねっ!」
「あっははは。……初めまして、ここの店長をやっている雪女の雹華と申します……。なーんてね」
「すごいっ、ソックリよ!」
「えへっ、そう?」
まだ開店前で他の客がいないせいで、気が緩んでいた花梨は、本来なら客であるゴーニャと普段通りの会話を楽しんでいると、不意に背後から不気味な視線を感じ、全身にゾクッとした悪寒が走る。
恐る恐る振り向いてみると、店の入口でコソコソ隠れながら喘いでいる雹華の姿あり、いつの間にか持っていたビデオカメラで、二人の事を隠し撮りしていた。
「……あら花梨ちゃん、私の事は気にしないで続けてちょうだい……」
「いやっ、ねっとりとした視線を感じてすごい気になるんですよ……。雹華さんもそろそろ仕事に集中しましょ?」
「……ええ~、仕事するのイヤだわ……。ずっと撮っていたいから、今から有休でも取ろうかしら……」
「店長、しっかりしてくださいよ……」
一日店員である花梨に、喝を入れられた店長である雹華は、諦めのこもったため息を小さくつき、哀愁漂う背中を見せつけながら店の奥へと消えていった。
ビデオカメラを片付けて来たのか手ぶらで帰ってくると、また花梨に叱られないよう開店の準備を始める為に、店内にあるテーブルを湿った布巾で綺麗に拭き始める。
その姿を目にした花梨も、バニラアイスに舌鼓を打っているゴーニャに「それじゃあ仕事に戻るから、何かあったらすぐに言ってね」と、言い残しつつテーブルに伝票を置き、店内の掃き掃除を始めた。
そこから会話を交えつつ掃き掃除をしていると、白銀の長髪をなびかせ、純白の着物を身に纏った雪女達が続々と店内に入ってきて、雹華と花梨に挨拶をして店の奥へと進んでいく。
そして開店時間である十時になったのか、花梨は他の店員達と顔合わせをして自己紹介をしていると、ポツポツと店内に客である妖怪達が入り込んできた。
店員達はすぐさま各々の担当である配置に就き、花梨も慌ててテーブルに腰を下ろした客の対応を始めたる。
注文を受けると厨房に行き、頼まれた品を作るよう担当の者に伝票を渡し、また店内へと戻っていく。
時折、アイスの注文を受けては自分で作り、かき氷の注文を受ければ、他の店員や雹華にお願いして対応を代わってもらい、空いている他の接客へと当たった。
それから、開店して一時間以上が経過した頃。客が増えて慌ただしくなってきている中、花梨が外のテーブル席にいる化け狸親子の接客をしていると、化け狸の子供が椅子の上で飛び跳ねながら花梨に質問を投げかけた。
「ねぇねぇ雪女のお姉ちゃん! 星の形をしたアイスって作れる?」
「えっ? 星の形、ですか?」
「コラ、店員さんが困ってるでしょ。ごめんなさいね、普通のでお願いします」
そう断りを入れた化け狸の母親に対し、花梨はすぐに「いえ、大丈夫。少々お待ちください」と言い残し、店内で食器類を下げている雹華の元へと駆け寄っていく。
「すみません、雹華さん。ちょっと質問いいですか?」
「……なにかしら……」
「たった今、星の形をしたアイスを作ってくれないかって質問があったんですが、作っても大丈夫ですかね?」
その質問に雹華は、思案するかのように視線を天井に向け、「……んー……」と喉を鳴らし後。その視線を花梨へと戻す。
「……花梨ちゃん、それを作れるの……?」
「はい、形が分かる物でしたら作れると思います」
「……そう、ならいいわ……。他にも色んな形の物を指定されたら、その通りに作っていいわよ……」
「他のもいいんですか?」
花梨がキョトンとしながら言葉を返すと、雹華はコクンと頷き、ふわっと微笑んだ。
「……花梨ちゃんの事を信頼しているからね……。……どんどんやっちゃいなさい……」
「信頼……、分かりましたっ! ありがとうございます!」
許可を貰えた花梨は、深々とお辞儀をしてから雹華の元を離れ、雹華さん、私の事を信頼してくれているんだっ! 嬉しいなぁ。と、満面の笑みになりつつ、先ほどの親子の元へと戻っていった。
「お待たせしてすみません。星の形でも大丈夫ですよ」
「ほんと!? じゃあ、星のバナナアイスを一つ下さい!」
「はい、星の形をしたバナナ味のアイスを一つ……」
メニュー表に無い物の注文を受け、伝票に記入をしていると、化け狸の母親が「あのぉ……」と、申し訳なさそうにしつつ、毛皮を纏っている手を小さく挙げる。
「はい?」
「私も、ハート型のイチゴアイスをお願いしても、いいかしら?」
子供の無茶ぶりな注文が通って羨ましく思ったのか、母親の方もメニュー表には無い品物を注文をしてきて、花梨は一度目を丸くするも、ニコッと笑った。
「ハート型でイチゴ味のアイスですね、大丈夫ですよ!」
「あら、嬉しい。それじゃあ一つお願いします」
「分かりました! 少々お待ちください」
メニュー表には無い注文を受けた花梨は、駆け足で厨房へと向かう。
バナナ味とイチゴ味のアイスの原液が入っている容器と皿を二つ、スプーン二つを木のお盆に乗せ、再びテーブル席へと戻っていく。
そして、持ってきた物をテーブルに並べ、角が丸い星型の黄色いバナナアイスを子供に。赤いハート型のイチゴアイスを母親に差し出した。
「うわぁ~、カッコイイ星だ! ありがとう雪女のお姉ちゃん!」
「あら、可愛いハート型。すみませんね、ワガママ言っちゃって」
「いえっ。他にも形の指定があったら、気兼ねなく言ってください! それでは、ごゆっくりどうぞ!」
客の要望にちゃんと答えられた花梨は、二つの容器をお盆に乗せて店内に戻ると、その様子を静かに見守っていた雹華と目が合う。
花梨は両手で持っていたお盆を片手に持ち変え、無邪気な笑みを零しつつ親指を立てると、雹華も微笑みながら親指を立て返してきた。
「……上出来よ花梨ちゃん、お客さんとても喜んでいたわね……」
「はい! 上手く出来てよかったです」
「……それじゃあ、一旦スタッフルームで休憩してきなさい……。……適度に体を冷やさないと、暑さでバテて倒れちゃうかもしれないからね……」
「そうなん、ですね。分かりました、少し休憩してきます」
雹華から褒められつつ、休憩するよう指示を出された花梨は、持っていた物を全て元の場所へと戻し、雪女には天国であろう氷点下が支配するスタッフルームへと向かっていった。
花梨は体から放出している冷気を強め、全身から白い湯気を昇らせつつ、厨房で雹華の説明を受けていた。
アイスの原液が入っている容器の場所。その他材料の保管場所。食器類の場所や返却の仕方。注文を受けた際の厨房でのやりとり。接客する際、体温を下げ過ぎると客が凍えてしまうので注意する事など。
雪女になり、現在の気温にまったく慣れていない花梨は、体温をマイナスまで下げて強い冷気を発しており、そのせいで近くにあった食べ物を凍らせてしまい雹華に注意された。
メモ帳や筆記類を持っていなかったので、説明された事を全て頭に叩き込み、教えられた事を頭の中で何度も復唱した。
復唱中の花梨をよそに、体温を上げ、気だるそうにしている雹華が店の入口に目を向ける。
「……それじゃあ花梨ちゃん……。……まだ開店前だけど、外のテーブル席にお客さんが来ているから接客してきてちょうだい……」
「あっ、はい。分かりました」
指示を受けた花梨は体温を上げ、両手で顔を仰いで「あっつぅ~……」と呟きつつ、入口にあるテーブル席へと向かっていく。
外に出る前に背筋をピンと伸ばし、一度気を落ち着かせる為に深呼吸をし、注文を受けた際に記入する伝票を片手に持つ。
肌が焼けるように暑い秋の日差しが照らす店の外に出ると、白いテーブル席には、メニュー表を眺めて暇を潰しているゴーニャの姿があった
「あっ、お客さんってゴーニャの事だったんだ。雹華さんも粋な計らいをするなぁ」
「花梨っ! ずっと待ってたんだからねっ」
ゴーニャが頬をプクッと膨らませると、その表情を見た花梨はニコリと笑う。そして、小さく手を振りながらゴーニャの元に歩みより、軽くお辞儀をした。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「えっと、バニラアイスが食べたいわっ!」
「バニラアイスですね~、分かりました。少々お待ちください」
嬉々に注文を承った花梨は、伝票にバニラアイスと記入してから厨房へと戻り、バニラアイスの原液が入っている容器と透明の皿、銀色のスプーンを木のお盆に乗せ、再びゴーニャの元へと戻っていく。
持ってきた物をテーブルの上に並べ、バニラアイスを作り始めると、その様子をじっと見ていたゴーニャが口を開いた。
「確か、花梨がここに来て初めて食べたのが、バニラアイスだったわよね」
「そうだねぇ。あの時からもうずいぶん経つけど、まさか自分が作る側になるなんて夢にも思わなかったよ。はいお客様、バニラアイスでございます」
作り終えた薄い氷に包まれているバニラアイスを皿に置くと、花梨は得意げに指をパチンと鳴らし、バニラアイスを包んでいる氷を弾き飛ばした。
待っていましたと言わんばかりに目を輝かせたゴーニャは、すぐさまスプーンを片手に持ち、出来立てのバニラアイスを口に運び、にんまりと笑みを浮かべた。
「おいひい~っ! じゃあ私が花梨で、花梨が雹華ねっ!」
「あっははは。……初めまして、ここの店長をやっている雪女の雹華と申します……。なーんてね」
「すごいっ、ソックリよ!」
「えへっ、そう?」
まだ開店前で他の客がいないせいで、気が緩んでいた花梨は、本来なら客であるゴーニャと普段通りの会話を楽しんでいると、不意に背後から不気味な視線を感じ、全身にゾクッとした悪寒が走る。
恐る恐る振り向いてみると、店の入口でコソコソ隠れながら喘いでいる雹華の姿あり、いつの間にか持っていたビデオカメラで、二人の事を隠し撮りしていた。
「……あら花梨ちゃん、私の事は気にしないで続けてちょうだい……」
「いやっ、ねっとりとした視線を感じてすごい気になるんですよ……。雹華さんもそろそろ仕事に集中しましょ?」
「……ええ~、仕事するのイヤだわ……。ずっと撮っていたいから、今から有休でも取ろうかしら……」
「店長、しっかりしてくださいよ……」
一日店員である花梨に、喝を入れられた店長である雹華は、諦めのこもったため息を小さくつき、哀愁漂う背中を見せつけながら店の奥へと消えていった。
ビデオカメラを片付けて来たのか手ぶらで帰ってくると、また花梨に叱られないよう開店の準備を始める為に、店内にあるテーブルを湿った布巾で綺麗に拭き始める。
その姿を目にした花梨も、バニラアイスに舌鼓を打っているゴーニャに「それじゃあ仕事に戻るから、何かあったらすぐに言ってね」と、言い残しつつテーブルに伝票を置き、店内の掃き掃除を始めた。
そこから会話を交えつつ掃き掃除をしていると、白銀の長髪をなびかせ、純白の着物を身に纏った雪女達が続々と店内に入ってきて、雹華と花梨に挨拶をして店の奥へと進んでいく。
そして開店時間である十時になったのか、花梨は他の店員達と顔合わせをして自己紹介をしていると、ポツポツと店内に客である妖怪達が入り込んできた。
店員達はすぐさま各々の担当である配置に就き、花梨も慌ててテーブルに腰を下ろした客の対応を始めたる。
注文を受けると厨房に行き、頼まれた品を作るよう担当の者に伝票を渡し、また店内へと戻っていく。
時折、アイスの注文を受けては自分で作り、かき氷の注文を受ければ、他の店員や雹華にお願いして対応を代わってもらい、空いている他の接客へと当たった。
それから、開店して一時間以上が経過した頃。客が増えて慌ただしくなってきている中、花梨が外のテーブル席にいる化け狸親子の接客をしていると、化け狸の子供が椅子の上で飛び跳ねながら花梨に質問を投げかけた。
「ねぇねぇ雪女のお姉ちゃん! 星の形をしたアイスって作れる?」
「えっ? 星の形、ですか?」
「コラ、店員さんが困ってるでしょ。ごめんなさいね、普通のでお願いします」
そう断りを入れた化け狸の母親に対し、花梨はすぐに「いえ、大丈夫。少々お待ちください」と言い残し、店内で食器類を下げている雹華の元へと駆け寄っていく。
「すみません、雹華さん。ちょっと質問いいですか?」
「……なにかしら……」
「たった今、星の形をしたアイスを作ってくれないかって質問があったんですが、作っても大丈夫ですかね?」
その質問に雹華は、思案するかのように視線を天井に向け、「……んー……」と喉を鳴らし後。その視線を花梨へと戻す。
「……花梨ちゃん、それを作れるの……?」
「はい、形が分かる物でしたら作れると思います」
「……そう、ならいいわ……。他にも色んな形の物を指定されたら、その通りに作っていいわよ……」
「他のもいいんですか?」
花梨がキョトンとしながら言葉を返すと、雹華はコクンと頷き、ふわっと微笑んだ。
「……花梨ちゃんの事を信頼しているからね……。……どんどんやっちゃいなさい……」
「信頼……、分かりましたっ! ありがとうございます!」
許可を貰えた花梨は、深々とお辞儀をしてから雹華の元を離れ、雹華さん、私の事を信頼してくれているんだっ! 嬉しいなぁ。と、満面の笑みになりつつ、先ほどの親子の元へと戻っていった。
「お待たせしてすみません。星の形でも大丈夫ですよ」
「ほんと!? じゃあ、星のバナナアイスを一つ下さい!」
「はい、星の形をしたバナナ味のアイスを一つ……」
メニュー表に無い物の注文を受け、伝票に記入をしていると、化け狸の母親が「あのぉ……」と、申し訳なさそうにしつつ、毛皮を纏っている手を小さく挙げる。
「はい?」
「私も、ハート型のイチゴアイスをお願いしても、いいかしら?」
子供の無茶ぶりな注文が通って羨ましく思ったのか、母親の方もメニュー表には無い品物を注文をしてきて、花梨は一度目を丸くするも、ニコッと笑った。
「ハート型でイチゴ味のアイスですね、大丈夫ですよ!」
「あら、嬉しい。それじゃあ一つお願いします」
「分かりました! 少々お待ちください」
メニュー表には無い注文を受けた花梨は、駆け足で厨房へと向かう。
バナナ味とイチゴ味のアイスの原液が入っている容器と皿を二つ、スプーン二つを木のお盆に乗せ、再びテーブル席へと戻っていく。
そして、持ってきた物をテーブルに並べ、角が丸い星型の黄色いバナナアイスを子供に。赤いハート型のイチゴアイスを母親に差し出した。
「うわぁ~、カッコイイ星だ! ありがとう雪女のお姉ちゃん!」
「あら、可愛いハート型。すみませんね、ワガママ言っちゃって」
「いえっ。他にも形の指定があったら、気兼ねなく言ってください! それでは、ごゆっくりどうぞ!」
客の要望にちゃんと答えられた花梨は、二つの容器をお盆に乗せて店内に戻ると、その様子を静かに見守っていた雹華と目が合う。
花梨は両手で持っていたお盆を片手に持ち変え、無邪気な笑みを零しつつ親指を立てると、雹華も微笑みながら親指を立て返してきた。
「……上出来よ花梨ちゃん、お客さんとても喜んでいたわね……」
「はい! 上手く出来てよかったです」
「……それじゃあ、一旦スタッフルームで休憩してきなさい……。……適度に体を冷やさないと、暑さでバテて倒れちゃうかもしれないからね……」
「そうなん、ですね。分かりました、少し休憩してきます」
雹華から褒められつつ、休憩するよう指示を出された花梨は、持っていた物を全て元の場所へと戻し、雪女には天国であろう氷点下が支配するスタッフルームへと向かっていった。
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