157 / 199
155話、消化出来ない罪悪感と後悔
しおりを挟む
「あたひぃ……、めりぃしゃん……。今ぁ、お腹が膨れているのぉ……」
『まだ、その状態から立ち直れてないんだ……。一体何があったの?』
「無理ぃ……、言えにゃい……」
言えない、言える訳がない。ハルを元気付ける為に初めて作った、ガチお味噌汁を飲み干してしまっただなんて。
本当に無意識だった。いや、無我夢中だったのかもしれない。三杯目辺りから、風味は安定していたはずなのに。気が付いたら、鍋の中にあったお味噌汁は、根こそぎ消えていた。
飲んだお味噌汁の総量、おおよそ一ℓ。そこに、罪悪感と後悔が未だ膨れ上がっていく。もうダメ。己の愚かさに呆れ返って、食欲は減衰する一方だ。
『メリーさーん、食欲はある?』
「にゃい……」
『マジか、重症じゃん。でも、何か食べた方がいいでしょ。軽い物でいい?』
「うん……、いい」
『オッケー。んじゃ、パパッと作っちゃうね』
いつもの緩い感じで、料理を作るという言葉を最後に通話が切れた。……どうしよう。いつまでも、この状態でいたら、ハルは心配するわよね。
それにきっと、落ち込んだ理由も聞いてくるでしょう。その流れに持っていかれるのだけは、絶対にダメだ。
不幸中の幸いにも、後片付けは完璧に済ませてある。白味噌以外の材料は、全てお駄賃で揃えたので、私がお味噌汁を作っていた事はバレていないはず。
部屋中を漂っていた匂いだって、そう。窓を全部開けて、ハルが帰って来る寸前まで換気をしておいたから、万が一もあり得ないわ。
「メリーさーん。軽くてスッと食べられる夕食が出来たよー」
「ふぇ……。あっ、そうめんだ」
ハルに呼ばれ、テーブルにくっ付きそうな勢いで突っ伏していた体を起こし、顔を前へやってみれば。控えめな量で収まっている、そうめんが視界に映った。
その横には、濃いめのめんつゆが入った容器があり。刻みネギと、ワサビが添えられた小皿もある。
「いえすっ。夏と言えば、やっぱそうめんでしょ。あっ、茹でるのは失敗してないから、そこら辺は安心してちょうだい」
「そういえば、昼に言ってたわね」
私が、レタスチャーハンを作った際に、味見を忘れてミスをしたと報告した後。ハルも赤裸々に、失敗談を教えてくれた。
それが、このそうめんだ。確か、何回か茹でるのに失敗したと言っていたわね。
「ははっ……。今思うと、なんで失敗したのか分からないぐらい、酷い有り様だったよ」
外の空気のように、カラッと乾いたから笑いをするハル。デロンデロンで、喉越しは皆無、食感はぐっちゃぐっちゃのそうめん。字面だけで不味そうだわ。あと───。
「なんか、色違いのそうめんがあるわね」
目に見えるだけで、緑とピンクの色違いがある。全体のほとんどが白いから、異色のそうめんが余計に目立つわ。
「それさ、なんだか最後まで取っておきたくならない?」
「……言われてみれば、そういう気分になってきたかも」
色違いだからこそ、なんだか妙な特別感があるように思えてきた。色が違うって事は、たぶん味も違うのよね?
「ちなみに、あんたは最後まで取っておくの?」
「もちろんっ。間違えて食べないよう、バッチリ端に寄せときますぜ」
「や、やっぱりね」
ならば、私も色違いは端に寄せておこう。そして、なるべくなら、ハルと同じタイミングで食べよっと。
「ちなみに、足らなかった言ってちょうだい。五分ぐらいで茹で上がるから、パパッと作っちゃうよ」
「あら、いいの? じゃあ、足らなくなったら言うわね」
そうめんって、五分ぐらいで完成するんだ。インスタントラーメンは、三分でしょ? うどんは、十分ぐらいだったかしら? ならば、そうめんの茹で時間は、その二つの中間ぐらいになるわね。
けど、今日はたぶん、おかわりはしないと思う。だって、消化出来ない罪悪感と後悔で、お腹はいっぱいになってしまっているのだから。
『まだ、その状態から立ち直れてないんだ……。一体何があったの?』
「無理ぃ……、言えにゃい……」
言えない、言える訳がない。ハルを元気付ける為に初めて作った、ガチお味噌汁を飲み干してしまっただなんて。
本当に無意識だった。いや、無我夢中だったのかもしれない。三杯目辺りから、風味は安定していたはずなのに。気が付いたら、鍋の中にあったお味噌汁は、根こそぎ消えていた。
飲んだお味噌汁の総量、おおよそ一ℓ。そこに、罪悪感と後悔が未だ膨れ上がっていく。もうダメ。己の愚かさに呆れ返って、食欲は減衰する一方だ。
『メリーさーん、食欲はある?』
「にゃい……」
『マジか、重症じゃん。でも、何か食べた方がいいでしょ。軽い物でいい?』
「うん……、いい」
『オッケー。んじゃ、パパッと作っちゃうね』
いつもの緩い感じで、料理を作るという言葉を最後に通話が切れた。……どうしよう。いつまでも、この状態でいたら、ハルは心配するわよね。
それにきっと、落ち込んだ理由も聞いてくるでしょう。その流れに持っていかれるのだけは、絶対にダメだ。
不幸中の幸いにも、後片付けは完璧に済ませてある。白味噌以外の材料は、全てお駄賃で揃えたので、私がお味噌汁を作っていた事はバレていないはず。
部屋中を漂っていた匂いだって、そう。窓を全部開けて、ハルが帰って来る寸前まで換気をしておいたから、万が一もあり得ないわ。
「メリーさーん。軽くてスッと食べられる夕食が出来たよー」
「ふぇ……。あっ、そうめんだ」
ハルに呼ばれ、テーブルにくっ付きそうな勢いで突っ伏していた体を起こし、顔を前へやってみれば。控えめな量で収まっている、そうめんが視界に映った。
その横には、濃いめのめんつゆが入った容器があり。刻みネギと、ワサビが添えられた小皿もある。
「いえすっ。夏と言えば、やっぱそうめんでしょ。あっ、茹でるのは失敗してないから、そこら辺は安心してちょうだい」
「そういえば、昼に言ってたわね」
私が、レタスチャーハンを作った際に、味見を忘れてミスをしたと報告した後。ハルも赤裸々に、失敗談を教えてくれた。
それが、このそうめんだ。確か、何回か茹でるのに失敗したと言っていたわね。
「ははっ……。今思うと、なんで失敗したのか分からないぐらい、酷い有り様だったよ」
外の空気のように、カラッと乾いたから笑いをするハル。デロンデロンで、喉越しは皆無、食感はぐっちゃぐっちゃのそうめん。字面だけで不味そうだわ。あと───。
「なんか、色違いのそうめんがあるわね」
目に見えるだけで、緑とピンクの色違いがある。全体のほとんどが白いから、異色のそうめんが余計に目立つわ。
「それさ、なんだか最後まで取っておきたくならない?」
「……言われてみれば、そういう気分になってきたかも」
色違いだからこそ、なんだか妙な特別感があるように思えてきた。色が違うって事は、たぶん味も違うのよね?
「ちなみに、あんたは最後まで取っておくの?」
「もちろんっ。間違えて食べないよう、バッチリ端に寄せときますぜ」
「や、やっぱりね」
ならば、私も色違いは端に寄せておこう。そして、なるべくなら、ハルと同じタイミングで食べよっと。
「ちなみに、足らなかった言ってちょうだい。五分ぐらいで茹で上がるから、パパッと作っちゃうよ」
「あら、いいの? じゃあ、足らなくなったら言うわね」
そうめんって、五分ぐらいで完成するんだ。インスタントラーメンは、三分でしょ? うどんは、十分ぐらいだったかしら? ならば、そうめんの茹で時間は、その二つの中間ぐらいになるわね。
けど、今日はたぶん、おかわりはしないと思う。だって、消化出来ない罪悪感と後悔で、お腹はいっぱいになってしまっているのだから。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる