140 / 199
138話、第二の勝負
しおりを挟む
「ふぅ~っ、やっと興奮が収まってきたわ」
「へっへへへっ……。流石っス、メリーお嬢様。あんな土壇場で百円の当たりを引くなんて、やっぱ持ってる人はちげえっス!」
私が見事百円の当たりを引き、バカ騒ぎを始めて二分ぐらいしてからかしら。打ち倒したはずのハルが、急に立ち上がり。
なんとも小物臭が漂ういやらしい謙りをし、手でゴマをすりながら近寄って来て、私を敬い始めたのは。
「言ったでしょ? あれが私の実力だって」
「マジかっけぇっス、メリーお嬢様! 肩揉ませて下さい!」
「え? いや、別にそこまでしなくて……。おっ、おぉうっ……」
テンションがおかしな方向へ行ったハルが、おもむろに私の両肩に手を添えて、揉み出したかと思えば……。
なに、この意識が吹っ飛んでしまいそうな気持ち良さは? 僅か一秒足らずで、全身をハルに委ねてしまった。
揉みほぐされる度に、肩にほんのりとした熱を帯びて、楽になっていく。
「いやぁ~、肩ギンギンに凝ってるっスねぇ! どうっスか? メリーお嬢様」
「……ああっ、そこそこ。もっと強めでいい、おぉぉ~……」
「メリーお姉さん、ヨダレまで垂らしちゃってるや。すごく気持ち良さそうにしてるね」
「なー、俺もやってもらいてー」
嘘? 私、ヨダレを垂らしちゃっているの? でも、駄目だ。この気持ち良さに抗えず、体がまったく動かせない。
「よーし! じゃあ次は、わたしの勝負を始めるね! 勝負に使うお菓子を買ってくるから、ちょっと待ってて!」
「ふぇ……、しょーぶぅ?」
「おっ、待ってました!」
意識が心地よいまどろみに包まれて、失いかけた最中。カオリちゃんの、ハキハキとした声に呼び戻されて、いつの間にか閉じていた目を開ける。
しかし、視界の先にカオリちゃんは居らず。おばちゃんが居る方へ顔を向けてみると、片手に何か持っているカオリちゃんが、おばちゃんにお金を払っている姿が見えた。
「買ってきたよー!」
ニコニコ顔の絶えないカオリちゃんが、会計を済ませ。購入した物を後ろに隠しつつ、私達の所に戻って来た。
「んじゃ、そろそろ本調子に戻るかな。メリーさん、肩揉み止めるねー」
「ええ? もうちょっとやってて欲しかったけど、仕方ないわね」
いつもの喋り方になったハルが、私の両肩から手を離す。正直、あと十分ぐらいは揉んでいて欲しかったわ。
「で、カオリ。お前は、なんの勝負を考えたんだ?」
「ふっふっふっ。私が考えた勝負はね……、じゃーん! これだよ!」
どこか可愛らしくも不敵な笑みを浮かべたカオリちゃんが、後ろに隠していた物を露にさせる。
手に持っていた物は、『超すっぱいレモンにご用心』という名前で、細長い梱包の右側に、個性ある三つの丸い顔が描かれていた。
見た感じ、一袋三つ入りのようだけれども。カオリちゃんは、なぜか四袋も持っている───。
あれ? ちょっと待って。顔が三つ描かれた絵の上に、なにやら不穏を煽る警告文らしき物が見えるような?
「げっ……。それ、私とめちゃくちゃ相性が悪いやつじゃん」
「一袋だけでもヤバいってのに……。なんでお前、四つも買ってんだよ?」
「相性? 一袋でもヤバい?」
両隣から、怯えた風にも聞こえる二人の声が聞こえてきたので、コータロー君とハルの顔を見返していく。
「ほら、私って引きが強いじゃん? でもね……? あの『超すっぱいレモンにご用心』って、当たりを引いたらヤバい駄菓子なんだよねぇ」
「そうそう。三つある内の一つに、当たりがあるんだけどさ。それがとんでもなくすっぱいんだ」
「え? そうなの?」
「わたし達って、今四人いるでしょ? だから、みんなが均等に食べられるように、十二個買ってきたんだ!」
どこか無邪気ながらも、まるで勝負師のような鋭い目つきになったカオリちゃんが、ニヤリと笑う。
二人の情報が正しければ、ヤッタァメンで百円の当たりを引いた私も、ハル同様まずいのでは?
一袋につき、当たりが一つ含まれているんでしょ? それでカオリちゃんは、四袋も購入した。一袋三つ入りなので、計十二個。
そして私達は、四人居る。つまりよ? 私達が均等に『超すっぱいレモンにご用心』を食べるとなると、一人三回引かなければならなくなってしまう計算に……。
「ねぇ、カオリちゃん? もしかしてこれ、一人三回引くってこと?」
「うんっ、そうだよ!」
「ああ、やっぱり……」
下手すれば、私とハルに当たりが集中する可能性だってある。もしくは、私とハル、どちらかが三回全て当たりを引くとかね。
ここに来て、引きの強さが仇になる勝負を仕掛けてくるとは。カオリちゃん、ついさっきまで仲間だったっていうのに。今は、二代目魔王にしか見えないわ。
しかも、今度の勝負は共闘すら出来ない。正真正銘、完全個人戦のバトルロワイアル。強者が死に、弱者が生き残る戦いだ。
「ハル? ちなみに、当たりってどれだけ酸っぱいの?」
「実はあれ、私も知らないリニューアル版っぽいんだよね。だから、どれだけ酸っぱいのか分かんないや」
「え? そうなの?」
「ほら。上の方に、『すっぱさUP』って書いてあるじゃん? あの文字、私が買ってた時には無かったんだよね」
声が若干震え気味なハルが、さっき私も着目した警告文に指を差す。まさか、ハルも知らないリニューアル版だなんて。
なので、当たりの酸っぱさを知っているのは、この時代の駄菓子を頻繁に購入している、コータロー君とカオリちゃんだけになってしまう。
「こ、コータロー君? あれって、どのぐらい酸っぱいの?」
「もう、顔がギュッってなるぐらい、めっちゃくちゃすっぱいよ」
「へ、へぇ、そんなに……」
顔がギュッってなるぐらいの酸っぱさ。これは、ハルがおにぎりを作ってくれた時に、具に入れてくれている梅干しレベルの酸っぱさぐらいだと、思っておいた方がいいかもしれないわね。
「それじゃあ、全部袋から出すね!」
戦慄している私達には、お構い無しにと、カオリちゃんが袋を開けていく。
仕方ない。覚悟を決めるのよ、私。なるべく当たりを引かないよう、強く祈っておこう。
「へっへへへっ……。流石っス、メリーお嬢様。あんな土壇場で百円の当たりを引くなんて、やっぱ持ってる人はちげえっス!」
私が見事百円の当たりを引き、バカ騒ぎを始めて二分ぐらいしてからかしら。打ち倒したはずのハルが、急に立ち上がり。
なんとも小物臭が漂ういやらしい謙りをし、手でゴマをすりながら近寄って来て、私を敬い始めたのは。
「言ったでしょ? あれが私の実力だって」
「マジかっけぇっス、メリーお嬢様! 肩揉ませて下さい!」
「え? いや、別にそこまでしなくて……。おっ、おぉうっ……」
テンションがおかしな方向へ行ったハルが、おもむろに私の両肩に手を添えて、揉み出したかと思えば……。
なに、この意識が吹っ飛んでしまいそうな気持ち良さは? 僅か一秒足らずで、全身をハルに委ねてしまった。
揉みほぐされる度に、肩にほんのりとした熱を帯びて、楽になっていく。
「いやぁ~、肩ギンギンに凝ってるっスねぇ! どうっスか? メリーお嬢様」
「……ああっ、そこそこ。もっと強めでいい、おぉぉ~……」
「メリーお姉さん、ヨダレまで垂らしちゃってるや。すごく気持ち良さそうにしてるね」
「なー、俺もやってもらいてー」
嘘? 私、ヨダレを垂らしちゃっているの? でも、駄目だ。この気持ち良さに抗えず、体がまったく動かせない。
「よーし! じゃあ次は、わたしの勝負を始めるね! 勝負に使うお菓子を買ってくるから、ちょっと待ってて!」
「ふぇ……、しょーぶぅ?」
「おっ、待ってました!」
意識が心地よいまどろみに包まれて、失いかけた最中。カオリちゃんの、ハキハキとした声に呼び戻されて、いつの間にか閉じていた目を開ける。
しかし、視界の先にカオリちゃんは居らず。おばちゃんが居る方へ顔を向けてみると、片手に何か持っているカオリちゃんが、おばちゃんにお金を払っている姿が見えた。
「買ってきたよー!」
ニコニコ顔の絶えないカオリちゃんが、会計を済ませ。購入した物を後ろに隠しつつ、私達の所に戻って来た。
「んじゃ、そろそろ本調子に戻るかな。メリーさん、肩揉み止めるねー」
「ええ? もうちょっとやってて欲しかったけど、仕方ないわね」
いつもの喋り方になったハルが、私の両肩から手を離す。正直、あと十分ぐらいは揉んでいて欲しかったわ。
「で、カオリ。お前は、なんの勝負を考えたんだ?」
「ふっふっふっ。私が考えた勝負はね……、じゃーん! これだよ!」
どこか可愛らしくも不敵な笑みを浮かべたカオリちゃんが、後ろに隠していた物を露にさせる。
手に持っていた物は、『超すっぱいレモンにご用心』という名前で、細長い梱包の右側に、個性ある三つの丸い顔が描かれていた。
見た感じ、一袋三つ入りのようだけれども。カオリちゃんは、なぜか四袋も持っている───。
あれ? ちょっと待って。顔が三つ描かれた絵の上に、なにやら不穏を煽る警告文らしき物が見えるような?
「げっ……。それ、私とめちゃくちゃ相性が悪いやつじゃん」
「一袋だけでもヤバいってのに……。なんでお前、四つも買ってんだよ?」
「相性? 一袋でもヤバい?」
両隣から、怯えた風にも聞こえる二人の声が聞こえてきたので、コータロー君とハルの顔を見返していく。
「ほら、私って引きが強いじゃん? でもね……? あの『超すっぱいレモンにご用心』って、当たりを引いたらヤバい駄菓子なんだよねぇ」
「そうそう。三つある内の一つに、当たりがあるんだけどさ。それがとんでもなくすっぱいんだ」
「え? そうなの?」
「わたし達って、今四人いるでしょ? だから、みんなが均等に食べられるように、十二個買ってきたんだ!」
どこか無邪気ながらも、まるで勝負師のような鋭い目つきになったカオリちゃんが、ニヤリと笑う。
二人の情報が正しければ、ヤッタァメンで百円の当たりを引いた私も、ハル同様まずいのでは?
一袋につき、当たりが一つ含まれているんでしょ? それでカオリちゃんは、四袋も購入した。一袋三つ入りなので、計十二個。
そして私達は、四人居る。つまりよ? 私達が均等に『超すっぱいレモンにご用心』を食べるとなると、一人三回引かなければならなくなってしまう計算に……。
「ねぇ、カオリちゃん? もしかしてこれ、一人三回引くってこと?」
「うんっ、そうだよ!」
「ああ、やっぱり……」
下手すれば、私とハルに当たりが集中する可能性だってある。もしくは、私とハル、どちらかが三回全て当たりを引くとかね。
ここに来て、引きの強さが仇になる勝負を仕掛けてくるとは。カオリちゃん、ついさっきまで仲間だったっていうのに。今は、二代目魔王にしか見えないわ。
しかも、今度の勝負は共闘すら出来ない。正真正銘、完全個人戦のバトルロワイアル。強者が死に、弱者が生き残る戦いだ。
「ハル? ちなみに、当たりってどれだけ酸っぱいの?」
「実はあれ、私も知らないリニューアル版っぽいんだよね。だから、どれだけ酸っぱいのか分かんないや」
「え? そうなの?」
「ほら。上の方に、『すっぱさUP』って書いてあるじゃん? あの文字、私が買ってた時には無かったんだよね」
声が若干震え気味なハルが、さっき私も着目した警告文に指を差す。まさか、ハルも知らないリニューアル版だなんて。
なので、当たりの酸っぱさを知っているのは、この時代の駄菓子を頻繁に購入している、コータロー君とカオリちゃんだけになってしまう。
「こ、コータロー君? あれって、どのぐらい酸っぱいの?」
「もう、顔がギュッってなるぐらい、めっちゃくちゃすっぱいよ」
「へ、へぇ、そんなに……」
顔がギュッってなるぐらいの酸っぱさ。これは、ハルがおにぎりを作ってくれた時に、具に入れてくれている梅干しレベルの酸っぱさぐらいだと、思っておいた方がいいかもしれないわね。
「それじゃあ、全部袋から出すね!」
戦慄している私達には、お構い無しにと、カオリちゃんが袋を開けていく。
仕方ない。覚悟を決めるのよ、私。なるべく当たりを引かないよう、強く祈っておこう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる