51 / 200
50話、夜長はお預け
しおりを挟む
「ふあぁ~っ……」
今の声は、メリーさんがあくびをしたのかな? 眠ったフリをしているから、何も見えないんだよね。薄目にしようと思ったけれども、色々とリスクを伴いそうなのでやめた。
見えた情報で、思わず笑ったり何かしらの反応をしちゃいそうだしね。なので、渾身の狸寝入りをかましている訳だ。マジで眠いから、下手したら本当に寝ちゃいそうだけど。
起きている理由は単純明快。メリーさんは一人になると、何をしているのか気になっただけ。悪趣味だけど、好奇心に抗えなかった。
とりあえず、メリーさんの動向観察はこれっきりにしておこう。寝込みは襲わないとハッキリ約束されたし、私もこの約束を信じている。
いや、信じざるを得なかった。そこで疑い深く詮索しようもならば、心の距離が遠ざかってしまう。メリーさんを家に泊めたのは、親交を深めていき、互いに心から信用出来る仲になる為。
だからこそ、私からメリーさんを信用しなければならない。この人間なら、心を許しても大丈夫だろうという存在になりたいのであれば。……道なりは険しく、難しい話だね。
メリーさんのあくびを最後に、聞こえてくるのはリンゴを齧る音のみ。さっき聞こえた『楽しみだなぁ』という独り言は、タブレットで動画やテレビを観る事に対してだろう。
夜長が暇にならないよう、メリーさんにはテレビの視聴、タブレットの操作、イヤホンの貸出を事前に許可している。もちろん、タブレットはフルで充電済み。抜かりは無い。
まあ、私が襲われる事は無いでしょう。メリーさんからの電話に出て、『私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの』と言われない限りは。
「この塩水、飲んでも平気かしら?」
喉が渇いたんだろうか、メリーさんがヤバい事を言っている。飲んだら、もっと喉が渇いちゃうよ? と言いたい。めちゃくちゃ言いたい。
明日の夜は、飲み物も用意しておかないと。あと、夜分に冷蔵庫を漁る許可も。全部確認したつもりだったけど、全然足らなかったや。
「……ちょっとしょっぱいわね」
マジで? 飲んじゃったの? まずい。思っていたより、一人で居る時のメリーさんが面白いぞ。これは、早く寝た方がよかったな。このままだと、本当に笑いかねない。
「リンゴ、もっと食べたかったなぁ」
どうやら、もう完食してしまったらしい。二個切ったんだけど、体感的に三十分持たなかったか。それにしても、今の声。ずいぶん寂しそうにしていたなぁ。
ウィンナーの試食の時も、そうだったけど。メリーさんって、食べ物に対しての感情は正直に出してくる。それはもう、剥き出しにね。
だからこそ、私が作った料理をメリーさんが食べて、『美味しい』と言いながら微笑んでくれる顔と感想は、噓偽りの無い本音なんだと心の底から思えてくるんだ。
メリーさんには、まだ言わないけど。最近あの顔を見るのが、一つの楽しみになっている。料理の腕が上がったんだと自信がつくし、何よりも嬉しい。
まあ、夕方に一回でも変な料理を出すと、私はそこで死んじゃうんだけども。しかし、今日行った回転寿司屋を境に、その危機感はだいぶ薄れた。
メリーさんは、意外となんでも食べられるらしい。まさか、ウニやイクラまで食べられるとは思ってもみなかった。なんなら美味しいとまで言っていたし、ウニの方は気に入っている。
私ですら、子供の頃はウニとイクラが苦手だったっていうのに。メリーさんってば、めちゃくちゃ美味そうに食べていたっけ。そこは素直に、すごいと思ったや。
「さてと」
少し弾んだメリーさんの声を追う、だんだんと近づいては遠ざかっていく足音。空き皿を、台所へ持っていったのかな?
っと、また足音が近づいて来て───。……あれ? 私の前で、足音が止まった様な気がするんだけど? 気配もするし……。もしかして、何かされちゃう感じ?
「よし、ちゃんと寝てるわね」
私の寝顔を確認した? 一体何の目的で? これは、ちゃんと探った方がいいかもしれないな。再び足音が鳴り出したけど、どこへ行ったんだろう?
場所的に、さっき居た所の近くだな。……ん? なんか、ガサゴソ鳴り始めたぞ。この音は、羽毛布団を動かした時に出る音っぽいけど?
「わあっ。この布団、ふわふわモコモコしてるぅ」
あっ、マジで羽毛布団の音だったか。つまり、メリーさんは布団に入ったと。じゃあ、さっきの確認は何だったんだろう。
腑抜けた自分を、私に見せたくなかったから? いや。この予想は、おかしいか。風呂に入っている時、十分見聞きしたしね。あの時のメリーさん、マジで幸せそうにしていたなぁ。
「それに、なんだかいい匂いがするわね。これがお日様の匂いってやつなのかしら?」
当たり前じゃん。メリーさんの為に、二日間掛けてバッチリ干したんだからね。シーツと枕カバーも洗ったし、万全の状態よ。
……なんだ。本当に、ただ私が眠っているのか確認しただけっぽいな。メリーさんって一人で居ると、そんな風にしているんだね。そういう所が、マジで人間臭いんだ。
「ふわっ……、なにこれぇ? 中も、すごくふわふわしてるぅ~。気持ちいいし、あたたかぁ~い……」
おっと、布団の中に潜り込んだらしい。なんて、幸せそうな声を出しているんだろう。思わず、口元が緩んじゃったよ。
「ありぇ……、タブレットはぁ? ああ、あったぁ……。これでぇ……、よ、しぃ……」
なんだ? 今の、ずいぶん弱々しくまどろんだ声は? 耳をすませてみても、等間隔で呼吸を繰り返す音しか聞こえてこない。……まさか?
「……ははっ。都市伝説様も、寝落ちするもんなんだね」
恐る恐る開けた視界の先。まず見えたのは、枕元に立っているタブレット。そして、その隣、途中で力尽きてしまったのか。
うつ伏せ状態で枕に突っ伏し、なんとも安心し切った表情で寝ているメリーさんが居た。めちゃくちゃ良い寝顔をしてるじゃん。まるで無警戒だ。
「ねぇ、ずるくない? そんな顔を見せるなんてさ」
これじゃあ、今まで警戒していた私が馬鹿みたいに思えてくる。それ程までに、無垢な寝顔をしているんだ。
今の姿を見て、誰が君をメリーさんだと思うだろうか。マジで、ただの人間にしか見えないよ。
さて、先に寝られてしまったのなら仕方ない。もう考えるのは止めだ。待っていろよ、メリーさん? 私だってすぐに寝て、全力で後を追い掛けてやるからね。
「おやすみ、メリーさん。また明日」
今の声は、メリーさんがあくびをしたのかな? 眠ったフリをしているから、何も見えないんだよね。薄目にしようと思ったけれども、色々とリスクを伴いそうなのでやめた。
見えた情報で、思わず笑ったり何かしらの反応をしちゃいそうだしね。なので、渾身の狸寝入りをかましている訳だ。マジで眠いから、下手したら本当に寝ちゃいそうだけど。
起きている理由は単純明快。メリーさんは一人になると、何をしているのか気になっただけ。悪趣味だけど、好奇心に抗えなかった。
とりあえず、メリーさんの動向観察はこれっきりにしておこう。寝込みは襲わないとハッキリ約束されたし、私もこの約束を信じている。
いや、信じざるを得なかった。そこで疑い深く詮索しようもならば、心の距離が遠ざかってしまう。メリーさんを家に泊めたのは、親交を深めていき、互いに心から信用出来る仲になる為。
だからこそ、私からメリーさんを信用しなければならない。この人間なら、心を許しても大丈夫だろうという存在になりたいのであれば。……道なりは険しく、難しい話だね。
メリーさんのあくびを最後に、聞こえてくるのはリンゴを齧る音のみ。さっき聞こえた『楽しみだなぁ』という独り言は、タブレットで動画やテレビを観る事に対してだろう。
夜長が暇にならないよう、メリーさんにはテレビの視聴、タブレットの操作、イヤホンの貸出を事前に許可している。もちろん、タブレットはフルで充電済み。抜かりは無い。
まあ、私が襲われる事は無いでしょう。メリーさんからの電話に出て、『私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの』と言われない限りは。
「この塩水、飲んでも平気かしら?」
喉が渇いたんだろうか、メリーさんがヤバい事を言っている。飲んだら、もっと喉が渇いちゃうよ? と言いたい。めちゃくちゃ言いたい。
明日の夜は、飲み物も用意しておかないと。あと、夜分に冷蔵庫を漁る許可も。全部確認したつもりだったけど、全然足らなかったや。
「……ちょっとしょっぱいわね」
マジで? 飲んじゃったの? まずい。思っていたより、一人で居る時のメリーさんが面白いぞ。これは、早く寝た方がよかったな。このままだと、本当に笑いかねない。
「リンゴ、もっと食べたかったなぁ」
どうやら、もう完食してしまったらしい。二個切ったんだけど、体感的に三十分持たなかったか。それにしても、今の声。ずいぶん寂しそうにしていたなぁ。
ウィンナーの試食の時も、そうだったけど。メリーさんって、食べ物に対しての感情は正直に出してくる。それはもう、剥き出しにね。
だからこそ、私が作った料理をメリーさんが食べて、『美味しい』と言いながら微笑んでくれる顔と感想は、噓偽りの無い本音なんだと心の底から思えてくるんだ。
メリーさんには、まだ言わないけど。最近あの顔を見るのが、一つの楽しみになっている。料理の腕が上がったんだと自信がつくし、何よりも嬉しい。
まあ、夕方に一回でも変な料理を出すと、私はそこで死んじゃうんだけども。しかし、今日行った回転寿司屋を境に、その危機感はだいぶ薄れた。
メリーさんは、意外となんでも食べられるらしい。まさか、ウニやイクラまで食べられるとは思ってもみなかった。なんなら美味しいとまで言っていたし、ウニの方は気に入っている。
私ですら、子供の頃はウニとイクラが苦手だったっていうのに。メリーさんってば、めちゃくちゃ美味そうに食べていたっけ。そこは素直に、すごいと思ったや。
「さてと」
少し弾んだメリーさんの声を追う、だんだんと近づいては遠ざかっていく足音。空き皿を、台所へ持っていったのかな?
っと、また足音が近づいて来て───。……あれ? 私の前で、足音が止まった様な気がするんだけど? 気配もするし……。もしかして、何かされちゃう感じ?
「よし、ちゃんと寝てるわね」
私の寝顔を確認した? 一体何の目的で? これは、ちゃんと探った方がいいかもしれないな。再び足音が鳴り出したけど、どこへ行ったんだろう?
場所的に、さっき居た所の近くだな。……ん? なんか、ガサゴソ鳴り始めたぞ。この音は、羽毛布団を動かした時に出る音っぽいけど?
「わあっ。この布団、ふわふわモコモコしてるぅ」
あっ、マジで羽毛布団の音だったか。つまり、メリーさんは布団に入ったと。じゃあ、さっきの確認は何だったんだろう。
腑抜けた自分を、私に見せたくなかったから? いや。この予想は、おかしいか。風呂に入っている時、十分見聞きしたしね。あの時のメリーさん、マジで幸せそうにしていたなぁ。
「それに、なんだかいい匂いがするわね。これがお日様の匂いってやつなのかしら?」
当たり前じゃん。メリーさんの為に、二日間掛けてバッチリ干したんだからね。シーツと枕カバーも洗ったし、万全の状態よ。
……なんだ。本当に、ただ私が眠っているのか確認しただけっぽいな。メリーさんって一人で居ると、そんな風にしているんだね。そういう所が、マジで人間臭いんだ。
「ふわっ……、なにこれぇ? 中も、すごくふわふわしてるぅ~。気持ちいいし、あたたかぁ~い……」
おっと、布団の中に潜り込んだらしい。なんて、幸せそうな声を出しているんだろう。思わず、口元が緩んじゃったよ。
「ありぇ……、タブレットはぁ? ああ、あったぁ……。これでぇ……、よ、しぃ……」
なんだ? 今の、ずいぶん弱々しくまどろんだ声は? 耳をすませてみても、等間隔で呼吸を繰り返す音しか聞こえてこない。……まさか?
「……ははっ。都市伝説様も、寝落ちするもんなんだね」
恐る恐る開けた視界の先。まず見えたのは、枕元に立っているタブレット。そして、その隣、途中で力尽きてしまったのか。
うつ伏せ状態で枕に突っ伏し、なんとも安心し切った表情で寝ているメリーさんが居た。めちゃくちゃ良い寝顔をしてるじゃん。まるで無警戒だ。
「ねぇ、ずるくない? そんな顔を見せるなんてさ」
これじゃあ、今まで警戒していた私が馬鹿みたいに思えてくる。それ程までに、無垢な寝顔をしているんだ。
今の姿を見て、誰が君をメリーさんだと思うだろうか。マジで、ただの人間にしか見えないよ。
さて、先に寝られてしまったのなら仕方ない。もう考えるのは止めだ。待っていろよ、メリーさん? 私だってすぐに寝て、全力で後を追い掛けてやるからね。
「おやすみ、メリーさん。また明日」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる