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39話、ツルツルと山盛りのサッパリ
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「私、メリーさん。今、タブレットで料理を作っている動画を観ているの」
『おっ、動画を観れるようになったんだ。どんな料理を作ってる動画なの?』
「窯を使った本格的なピザよ。ピザを焼く窯って、かなり大きいのね」
『窯を使ったガチのピザか。そうだね。庭付きの一戸建てぐらいしか置けないかなー』
マンションだって、室内だったら置ける場所はありそうだけども。煙が充満しそうだし、間違いなく騒ぎになる。
レンガを使った簡易的なピザ窯もあるけど、組み立てるのが億劫ね。ちゃんとしたピザを作ろうとすると、前準備をするだけで一日が終わってしまいそうだわ。
料理を作るのって、大変な労力を要するのね。少し興味が湧いてきたし、ハルが料理を作っている所を覗いてみようかしら?
「お待たせ―」
「あら、今日は早いわね」
そう考えて、立ち上がろうとした矢先。先に料理を作り終えたハルが、白い湯気を昇らせたお盆を両手で持ちながら、部屋に来てしまった。
「そう? いつもぐらいの時間だと思うけど」
「え? あ、本当だ」
ハルが不思議そうな反応を示したので、タブレットに表示されている時間を確認してみれば、もう六時ちょうどになっていた。
私が動画を観始めたのは、確か五時ぐらいだったはず。どうやら、時間の流れを忘れるぐらい、夢中になって動画を観ていたようね。
恐ろしいわね、動画って。最早、時間泥棒の域じゃない。動画を観終わると、すぐに新しいオススメの動画が表示されるから、キリがないのよ。
とりあえず、ハルが料理を作っている様を覗くのは、次の機会に取っておくとして。今は、これから食べる料理を覗いてみよう。
まずは、深皿に並々盛られたワンタンスープ。スープは透き通った琥珀色をしているので、たぶん中華スープね。強い光沢があるから、とろみもありそう。
そのワンタンの上には、彩りが生える万能ネギと、ゴマが散りばめられている。昇っていく湯気に、ほのかにゴマの香りがするわ。この香ばしい匂いが、食欲をそそっていく。
春雨サラダは、サラダというよりも麺類に近い見た目だ。具材はシンプルに、千切りされたキュウリとハムのみ。そして、春雨サラダの上にも、ゴマが散りばめられている。
全体的に中華スープと似た色合いをしているけど、こっちは酸味が利いた匂いもするわね。ゴマ油の豊かな匂いも混ざっている事だし、ワンタンスープとは異なった味付けだと予想出来る。
一応、ご飯とお味噌汁があるけれども。このサッパリとしていそうな二品、ご飯と合いそうなイメージが湧いてこない。
しかし私は、お味噌汁さえあれば、ご飯を完食出来る自信がある。なので、今回も残さずちゃんと全部食べるわよ。
「おいしそうだけど。ハルにとっては、油分が少ない料理ね。本当に大丈夫なの?」
「あのー、メリーさん? 私に対するそのイメージから、そろそろ離れてくれませんかね?」
「当分無理ね。あんたが野菜しか食べたくないって言い出したら、私は本気で心配するわ」
「そ、そこまでなんスか……? よかったぁ、ワンタンにギリギリ肉が入ってて」
唯一の肉類に感謝したハルが、レンゲを手に持った。どうやらハルは、ワンタンスープから食べるつもりね。なら私も、そっちから食べよう。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
食事の挨拶を交わしてから、レンゲをスープに沈め、ワンタンを一つすくった。このワンタン、一枚が大きい。レンゲに収まり切らず、はみ出しちゃっている。
きっとハルの事だから、皮は大判の物だろう。中身の具が小さいので、際立って大きく見えるわ。
「ふーっ、ふーーっ……。んっ、チュルンってしてる」
ラーメンの様に吸い込む要領ですすってみたら、チュルンと面白いように口の中へ入っていった。あんを纏った皮がツルツルしているので、口当たりも軽く、喉越しも気持ちがいい。
皮は、思っていたより厚くてモチモチしているわね。なので柔らかいながらも、若干のコシがある。味は、小麦粉に近い素朴で豊かな風味を、ダイレクトに感じるわ。
スープのベースは、主に鶏ガラと醤油かしら? 全体の味付けとワンタンが薄味なので、小さな肉の味までよく分かる。
肉の中にも、何かが入っていそうね。噛み進めていく内に、芳香でピリッとした辛味が滲み出てきたけど……。この辛味、初めて感じる味だ。一体、肉の中に何が入っているんだろう? それに───。
「なんだか、体が温まってきたような?」
「おっ、早速ショウガが効いてきたみたいだね。多めに入れてみたんだけど、どう? 美味しい?」
「あ、これ、ショウガの味なんだ」
体の内側から、優しくじんわりと温まっていくような、この感じ。なんだか、とても落ち着く。
「うん、おいしいわ。一口が軽いし、何個でもいけちゃいそう」
「そっか、よしよし。メリーさんの口にも合ってくれて、何よりだよ。おかわりもあるから、欲しくなったら言ってね」
「そう、分かったわ」
おかわりもあるんだ、よかった。正直、いくらでも食べられそうだったから、足りる気がまったくしなかったのよ。
そして、ショウガのお陰で食欲が刺激されて、それなりにご飯が進む。ワンタンスープをおかわりした頃には、ご飯を完食出来そうね。よし、配分ペースは決まった。ならば!
「次は、春雨サラダをっと」
ずっとワンタンスープを食べるのも悪いので、一旦レンゲを置いて箸に持ち替え。山のように盛られた春雨サラダの山頂をすくい、別皿に移した。
あまり注目していなかったけど。春雨サラダも、なかなか凄まじい量があるわね。ハルの奴、軽くてサッパリした物が食べたいと言っていたのに……。
この、迫力すら感じる量よ。リクエスト通りとは、ちょっと言い難い。これだけ多いと、軽い料理も重くなるような気がするわ。
「ハル? この春雨サラダ、いくらなんでも作り過ぎじゃない?」
「あっはははは……。やっぱり、メリーさんもそう思う? 実は、ほんのちょーっとばかし、目分量を見誤っちゃってさ。春雨って、戻すとめちゃくちゃ増えるんだよね」
後ろめたく白状したハルが、もう一度から笑いをする。
「見誤ったって、量はどれぐらいなの?」
「調理する前は、たったの百五十g分だったんだけどさ? ネットで調べたら春雨って、なんと四倍も膨らむらしいんだよね。なのでそれ、六百g分あります」
「グラムで言われても、いまいちピンと来ないわね。何人前分ぐらいなの?」
「百gで、おおよそ一人前だから~、ざっと六人前かな?」
「ろ、六人前……? ああ、そう。かなりあるわね、それ……」
まさか、そこまでの量があるだなんて。たった今考えた配分ペースが、ものの見事に崩れてしまった。ならば、春雨サラダをメインにするしかない。
それで、まだお腹に余裕があれば、ワンタンスープを少しだけおかわりすると。この配分ペースなら、なんとか食べられるかも。とりあえず、春雨サラダの味を確かめてみよう。
「あっ、冷たくてサッパリしてる」
まず味よりも先に感じたのが、ワンタンスープで温まった口の中を瞬く間に冷やしていく、サッパリと透き通った爽快感。冷蔵庫から出したばかりのように冷えている。
味付けの方は、すごくシンプルね。個々の調味料や具材の味が、ハッキリと分かれているから区別も出来る。
一番強い風味は、お酢のまろやかな酸味。時点でゴマ油。そしてほんのりと、醤油の味が漂ってきた。全体的に冷たいので、特に酸味が利いているように感じる。
けど、食欲がしっかり湧いてくる良い酸味だ。ゴマ油や醤油との相性も悪くない。ご飯の上に盛って一緒にすれば、難なく食べられそう。
それにしても、ハムとキュウリの味の主張が、やたら強いわね。春雨自体の味が、薄いというか無いに等しいから、いつもより強く出ているのかも?
キュウリって、お酢、ゴマ油、醤油、全ての調味料と絶妙に合う。中でも一番合う組み合わせは、お酢かしら? キュウリの青臭さを取っ払ってくれているし、とても食べやすい。
逆にハムは、噛んでいく内に印象が変わっていくわね。食べ始めは、香り豊かなゴマ油と。ハムの旨味と油が出てきたら、それらを程よく中和してくれるお酢と。
最後に、足りないと感じる部分の穴埋めをしてくれる醤油と。なので、いつまで食べても飽きがこないし、サッパリとしているので、食べる口と運ぶ手が止まらないわ。
「うん、おいしい。これぐらいの軽さなら完食出来そうね」
「んっふー。めちゃくちゃ食べたかったから、もんのすごく美味しく感じるや」
あのハルが満面の笑顔をしながら、とんでもない速度で春雨サラダをすすっていく。頬張り過ぎたせいで、頬がバツンバツンに膨れている。まるでリスみたい。
「そ、そんなに食べたかったのね」
あるまじきハルの姿に、若干引き気味で言ってみれば。私の言葉に気付いたハルが、口に含んでいた春雨サラダを一気に飲み込んだ。
「そうだねー。なんだか急に、無性に食べたくなってさ。欲を満たせたから大満足だよ」
「そう。ちなみにハルは、ワンタンスープと春雨サラダ、どっちを多く食べたいの?」
「ん、どっちかと言われると……、春雨サラダかな?」
ワンタンスープと春雨サラダ、これはハルがリクエストを出した料理だけども。どうやらハルは、春雨サラダを多く食べたいようね。
話している間にも、春雨サラダをこれでもかってぐらいに頬張っているし……。だったら、春雨サラダはハルに譲って、私はワンタンスープを多めに食べようかしらね。
「春雨サラダね、分かったわ。なら今ある春雨サラダ、全部ハルが食べてちょうだい」
「え、いいの?」
「ええ。私はどっちかというと、ワンタンスープの方が気に入ったの。だから、こっちを多く食べたいから、春雨サラダはハルに譲るわ」
「ああ、なるほど? ……だったら、お言葉に甘えちゃおうかな。もしまた食べたくなったら、気軽に言ってね」
「分かったわ」
よしよし。これで配分ペースを元に戻せるし、ハルも欲を十分満たせられる。正直な話、もう二口ぐらいは食べたかったのだけれども。
今回は、我慢しておこう。だって今日の料理は、ハルが食べたくて出してきたリクエストなんだしね。
『おっ、動画を観れるようになったんだ。どんな料理を作ってる動画なの?』
「窯を使った本格的なピザよ。ピザを焼く窯って、かなり大きいのね」
『窯を使ったガチのピザか。そうだね。庭付きの一戸建てぐらいしか置けないかなー』
マンションだって、室内だったら置ける場所はありそうだけども。煙が充満しそうだし、間違いなく騒ぎになる。
レンガを使った簡易的なピザ窯もあるけど、組み立てるのが億劫ね。ちゃんとしたピザを作ろうとすると、前準備をするだけで一日が終わってしまいそうだわ。
料理を作るのって、大変な労力を要するのね。少し興味が湧いてきたし、ハルが料理を作っている所を覗いてみようかしら?
「お待たせ―」
「あら、今日は早いわね」
そう考えて、立ち上がろうとした矢先。先に料理を作り終えたハルが、白い湯気を昇らせたお盆を両手で持ちながら、部屋に来てしまった。
「そう? いつもぐらいの時間だと思うけど」
「え? あ、本当だ」
ハルが不思議そうな反応を示したので、タブレットに表示されている時間を確認してみれば、もう六時ちょうどになっていた。
私が動画を観始めたのは、確か五時ぐらいだったはず。どうやら、時間の流れを忘れるぐらい、夢中になって動画を観ていたようね。
恐ろしいわね、動画って。最早、時間泥棒の域じゃない。動画を観終わると、すぐに新しいオススメの動画が表示されるから、キリがないのよ。
とりあえず、ハルが料理を作っている様を覗くのは、次の機会に取っておくとして。今は、これから食べる料理を覗いてみよう。
まずは、深皿に並々盛られたワンタンスープ。スープは透き通った琥珀色をしているので、たぶん中華スープね。強い光沢があるから、とろみもありそう。
そのワンタンの上には、彩りが生える万能ネギと、ゴマが散りばめられている。昇っていく湯気に、ほのかにゴマの香りがするわ。この香ばしい匂いが、食欲をそそっていく。
春雨サラダは、サラダというよりも麺類に近い見た目だ。具材はシンプルに、千切りされたキュウリとハムのみ。そして、春雨サラダの上にも、ゴマが散りばめられている。
全体的に中華スープと似た色合いをしているけど、こっちは酸味が利いた匂いもするわね。ゴマ油の豊かな匂いも混ざっている事だし、ワンタンスープとは異なった味付けだと予想出来る。
一応、ご飯とお味噌汁があるけれども。このサッパリとしていそうな二品、ご飯と合いそうなイメージが湧いてこない。
しかし私は、お味噌汁さえあれば、ご飯を完食出来る自信がある。なので、今回も残さずちゃんと全部食べるわよ。
「おいしそうだけど。ハルにとっては、油分が少ない料理ね。本当に大丈夫なの?」
「あのー、メリーさん? 私に対するそのイメージから、そろそろ離れてくれませんかね?」
「当分無理ね。あんたが野菜しか食べたくないって言い出したら、私は本気で心配するわ」
「そ、そこまでなんスか……? よかったぁ、ワンタンにギリギリ肉が入ってて」
唯一の肉類に感謝したハルが、レンゲを手に持った。どうやらハルは、ワンタンスープから食べるつもりね。なら私も、そっちから食べよう。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
食事の挨拶を交わしてから、レンゲをスープに沈め、ワンタンを一つすくった。このワンタン、一枚が大きい。レンゲに収まり切らず、はみ出しちゃっている。
きっとハルの事だから、皮は大判の物だろう。中身の具が小さいので、際立って大きく見えるわ。
「ふーっ、ふーーっ……。んっ、チュルンってしてる」
ラーメンの様に吸い込む要領ですすってみたら、チュルンと面白いように口の中へ入っていった。あんを纏った皮がツルツルしているので、口当たりも軽く、喉越しも気持ちがいい。
皮は、思っていたより厚くてモチモチしているわね。なので柔らかいながらも、若干のコシがある。味は、小麦粉に近い素朴で豊かな風味を、ダイレクトに感じるわ。
スープのベースは、主に鶏ガラと醤油かしら? 全体の味付けとワンタンが薄味なので、小さな肉の味までよく分かる。
肉の中にも、何かが入っていそうね。噛み進めていく内に、芳香でピリッとした辛味が滲み出てきたけど……。この辛味、初めて感じる味だ。一体、肉の中に何が入っているんだろう? それに───。
「なんだか、体が温まってきたような?」
「おっ、早速ショウガが効いてきたみたいだね。多めに入れてみたんだけど、どう? 美味しい?」
「あ、これ、ショウガの味なんだ」
体の内側から、優しくじんわりと温まっていくような、この感じ。なんだか、とても落ち着く。
「うん、おいしいわ。一口が軽いし、何個でもいけちゃいそう」
「そっか、よしよし。メリーさんの口にも合ってくれて、何よりだよ。おかわりもあるから、欲しくなったら言ってね」
「そう、分かったわ」
おかわりもあるんだ、よかった。正直、いくらでも食べられそうだったから、足りる気がまったくしなかったのよ。
そして、ショウガのお陰で食欲が刺激されて、それなりにご飯が進む。ワンタンスープをおかわりした頃には、ご飯を完食出来そうね。よし、配分ペースは決まった。ならば!
「次は、春雨サラダをっと」
ずっとワンタンスープを食べるのも悪いので、一旦レンゲを置いて箸に持ち替え。山のように盛られた春雨サラダの山頂をすくい、別皿に移した。
あまり注目していなかったけど。春雨サラダも、なかなか凄まじい量があるわね。ハルの奴、軽くてサッパリした物が食べたいと言っていたのに……。
この、迫力すら感じる量よ。リクエスト通りとは、ちょっと言い難い。これだけ多いと、軽い料理も重くなるような気がするわ。
「ハル? この春雨サラダ、いくらなんでも作り過ぎじゃない?」
「あっはははは……。やっぱり、メリーさんもそう思う? 実は、ほんのちょーっとばかし、目分量を見誤っちゃってさ。春雨って、戻すとめちゃくちゃ増えるんだよね」
後ろめたく白状したハルが、もう一度から笑いをする。
「見誤ったって、量はどれぐらいなの?」
「調理する前は、たったの百五十g分だったんだけどさ? ネットで調べたら春雨って、なんと四倍も膨らむらしいんだよね。なのでそれ、六百g分あります」
「グラムで言われても、いまいちピンと来ないわね。何人前分ぐらいなの?」
「百gで、おおよそ一人前だから~、ざっと六人前かな?」
「ろ、六人前……? ああ、そう。かなりあるわね、それ……」
まさか、そこまでの量があるだなんて。たった今考えた配分ペースが、ものの見事に崩れてしまった。ならば、春雨サラダをメインにするしかない。
それで、まだお腹に余裕があれば、ワンタンスープを少しだけおかわりすると。この配分ペースなら、なんとか食べられるかも。とりあえず、春雨サラダの味を確かめてみよう。
「あっ、冷たくてサッパリしてる」
まず味よりも先に感じたのが、ワンタンスープで温まった口の中を瞬く間に冷やしていく、サッパリと透き通った爽快感。冷蔵庫から出したばかりのように冷えている。
味付けの方は、すごくシンプルね。個々の調味料や具材の味が、ハッキリと分かれているから区別も出来る。
一番強い風味は、お酢のまろやかな酸味。時点でゴマ油。そしてほんのりと、醤油の味が漂ってきた。全体的に冷たいので、特に酸味が利いているように感じる。
けど、食欲がしっかり湧いてくる良い酸味だ。ゴマ油や醤油との相性も悪くない。ご飯の上に盛って一緒にすれば、難なく食べられそう。
それにしても、ハムとキュウリの味の主張が、やたら強いわね。春雨自体の味が、薄いというか無いに等しいから、いつもより強く出ているのかも?
キュウリって、お酢、ゴマ油、醤油、全ての調味料と絶妙に合う。中でも一番合う組み合わせは、お酢かしら? キュウリの青臭さを取っ払ってくれているし、とても食べやすい。
逆にハムは、噛んでいく内に印象が変わっていくわね。食べ始めは、香り豊かなゴマ油と。ハムの旨味と油が出てきたら、それらを程よく中和してくれるお酢と。
最後に、足りないと感じる部分の穴埋めをしてくれる醤油と。なので、いつまで食べても飽きがこないし、サッパリとしているので、食べる口と運ぶ手が止まらないわ。
「うん、おいしい。これぐらいの軽さなら完食出来そうね」
「んっふー。めちゃくちゃ食べたかったから、もんのすごく美味しく感じるや」
あのハルが満面の笑顔をしながら、とんでもない速度で春雨サラダをすすっていく。頬張り過ぎたせいで、頬がバツンバツンに膨れている。まるでリスみたい。
「そ、そんなに食べたかったのね」
あるまじきハルの姿に、若干引き気味で言ってみれば。私の言葉に気付いたハルが、口に含んでいた春雨サラダを一気に飲み込んだ。
「そうだねー。なんだか急に、無性に食べたくなってさ。欲を満たせたから大満足だよ」
「そう。ちなみにハルは、ワンタンスープと春雨サラダ、どっちを多く食べたいの?」
「ん、どっちかと言われると……、春雨サラダかな?」
ワンタンスープと春雨サラダ、これはハルがリクエストを出した料理だけども。どうやらハルは、春雨サラダを多く食べたいようね。
話している間にも、春雨サラダをこれでもかってぐらいに頬張っているし……。だったら、春雨サラダはハルに譲って、私はワンタンスープを多めに食べようかしらね。
「春雨サラダね、分かったわ。なら今ある春雨サラダ、全部ハルが食べてちょうだい」
「え、いいの?」
「ええ。私はどっちかというと、ワンタンスープの方が気に入ったの。だから、こっちを多く食べたいから、春雨サラダはハルに譲るわ」
「ああ、なるほど? ……だったら、お言葉に甘えちゃおうかな。もしまた食べたくなったら、気軽に言ってね」
「分かったわ」
よしよし。これで配分ペースを元に戻せるし、ハルも欲を十分満たせられる。正直な話、もう二口ぐらいは食べたかったのだけれども。
今回は、我慢しておこう。だって今日の料理は、ハルが食べたくて出してきたリクエストなんだしね。
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