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幕間.レガファー

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 俺、大森葉が学園ここの権力者四人組『REGAL4』のリーダー俺様くんを怒らせてから、早くも二ヶ月が経った。

 最初は、俺に関わるなという命令を下されたもんだから、カフェを利用するのは無理かなって半ば諦めてたんだけど……。試しに入ってみたら、意外にも無事利用できてます! やったぜ!!
 勿論、レガフォーのメンバーがいたら店内には入れないし、他に利用する生徒がいたらオーダーとか後回しにされることもあるけど、全然問題ない。だってちゃんと好きなもの頼めて、好きなものを食べられるんだから!

 本日は、学園に併設されているカフェ『Gleam & Delight Cafe』に季節限定スイーツを食べに来たぞ。今月のメニューは、目にも鮮やかな『初夏のフルーツタルト』だ。
 サクサクとしたアーモンドのタルト生地に、濃厚だけど軽やかなマスカルポーネクリームが敷き詰められている。旬の白桃、ブルーベリー、さくらんぼをふんだんに盛り付けられ、その上にはキラキラと輝くゼリーが軽くのせられている。さらにその周りにはエディブルフラワーが彩りを添えており、まるで宝石箱のような美しさだ。果実の自然な甘みと酸味が絶妙に調和し、初夏の味覚を贅沢に楽しめる一品。以上ブログより抜粋。

 レガフォーのメンバーは、ショッピングモールの映画館に行くと奴らの親衛隊たちが話してるのを聞いたので、今日はゆっくり出来そうだ。
 店内には、ちらほらと生徒がいるので、注文したタルトが来るまで少し時間かかりそうだな。まぁ、急ぐ用事も別にないし、のんびり待つとしよう。

 俺は制服のポケットからスマホを取り出して、桜白峰学園のホームページを開く。実は学生専用のリンクがあって、レガフォーの詳細な情報もここで見られることを最近知った。各々の親衛隊がまとめたファンサイトみたいで、なんか写真や動画とかも載ってるっぽい。
 いやでもさ、俺、今月限定のビュッフェ料理メニューやカフェのデザートについて以外はあんま興味ねぇの。だから、気付くのが遅くなってもしゃーないだろ?

 ……ってな訳で、今更ながらレガフォーのページを開いてみた。どれどれ、リーダーである俺様くんのプロフィールから見てみるか。


 レガフォーのリーダーで『俺様』担当こと一条貴春いちじょう たかはる
 一条グループ総帥の一人息子で、プラチナブロンドの髪と鮮やかなブルーの瞳を持つ。クォーターなので自前らしい。あまり認めたくはないが……まぁ、イケメンではある。一人称俺様で、子供ぽいけど。
 親衛隊の中で、顔が良い奴はこいつの部屋に『お呼ばれ』されるそうだ。彼らは皆、うっとりとした表情で「一条様のお身体はダビデ像が霞む程の美しさだった。それに素敵な男根をお持ちで、思わずうっとりと眺めてしまったよ。一条様は貞淑な方だから、残念なことにキスも出来ず抱いてはもらうことはないけれど、抜くお手伝いを出来るだけで光栄なことなんだ。ハァ、出来るならこの手を洗いたくなかった……」とか言ってるけど、自慰を手伝わせておいて貞淑とは? あと手は洗って正解な。
 ちなみに俺様くんの唇を奪おうとしたり、無理やり体を繋げようとした奴は、側に控えていた親衛隊に粛清されて学院を追い出されるらしい。
 数人に見られながら自慰とか……緊張で勃ちが悪くなったりしないんだろうか。見られて喜ぶ変態かよ。
 なんにせよ暴君ではある。

 次はレガフォーメンバーの『クール敬語眼鏡』担当、二上夏澄ふたがみ かすみ
 二上財閥の四人兄弟の三男で、艶やかな黒髪と、目元と口元にある黒子がチャームポイントな眼鏡をかけた美人系イケメンだ。
 誰に対しても敬語を崩さず、一歩引いた距離感と外見の美しさが近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、俺様くんとは幼稚園の頃からの仲でよく一緒にいるらしい。
 学年トップの成績を誇り、生徒会には入っていないものの、忙しくない時は頼むと雑用を引き受けてくれるからと、教師陣からの信頼も厚い。
 ちなみに、こいつは気に入った親衛隊から誘われたら、ベッドインする程度に性に対してはフッ軽。抱かれた親衛隊曰く、普段の雰囲気とは違ってかなり淡白な態度で、そのギャップに興奮していたら冷たい眼で見下ろされてゾクゾクしたとのこと。
 クールってより、腹黒眼鏡だろ絶対。姉ちゃんや友人から借りた漫画で知識を蓄えた俺の勘がそう言っている。

 ほんで、同じメンバーで『爽やかワンコ』担当の三ノ宮千秋さんのみや ちあき
 三ノ宮グループの傍系に産まれた一人っ子で、俺様くん達より一学年下だが、もう一人のメンバーであるぶりっ子とは幼馴染みなので、このグループに入ってるらしい。
 バスケ部に所属していて運動神経は抜群。体格もスポーツマンらしく引き締まって筋肉もしっかりあるし、背も俺より15cm程高いのが、なんかちょっとムカつく。
 明るいアッシュブロンドの刈り上げショートヘアがどこかチャラく、爽やかな笑顔と人懐っこい性格が人気だそうだ。
 見た目だけなら少女漫画のヒーロー役でも通用しそうだけど、下半身の緩さはヒーロー大失格。少女漫画出禁レベル。
 誰かと付き合う気はなく、親衛隊を含めて同じ人とは寝ないという謎のこだわりがあるっぽくて、たまに廊下で「また抱いてほしい」と泣きつく生徒を、笑顔でバッサリ断っているのを見たことがある。
 爽やかと見せかけて……実はこいつも何か腹に一物抱えてそう。

 最後は『ぶりっ子』担当の四十万冬哉しじま とうや
 食品や玩具を取り扱う四十万家の長男で、俺たち庶民も日常的にお世話になっている加工食品やお菓子など様々な商品を販売している。更に格安チェーン店から高級レストランまでと顧客層は広い。チェーン店は友達とよく行ったし、我が家でも四十万家の商品には大変お世話になってるぞ! かりんとうがカリッと香ばしくてめっちゃうまいんだ……って、俺の推し商品紹介は置いといて。
 こいつは小柄で細身の体型に、大きなぱっちりとした瞳をしている。ミルクティーベージュ色の少し短めなウルフカットは毛先がふわっとしているのが特徴的で、見るからに可愛らしい。語尾を伸ばす話し方と、無邪気な笑顔を浮かべているのもあり、彼を女の子の代わりにしようとフラフラ近寄っていく男が多くいるけど……。まぁ、俺がなんでぶりっ子って呼んでるのかが答えだ。
 可愛いのは外見だけで、実は女王様のような性格でタチ専。いかついヤツばかりで構成されている親衛隊を「子ブタちゃん」なんて呼んで従わせているし、四つん這いになった男の背を椅子代わりとして使っているのを見たことがある。
 悪いけど、こういうアブノーマルな趣味は俺にはないから、近寄らんとこ。


 プロフィールを読み終えて、スマホを机に伏せた。
 四人ともすげー家の生まれで確かにイケメン揃いだけど、クセが強すぎてあまり仲良くなりたいとは思えねぇ……。ちょろっと写真も見てみたけど、こいつらをアイドル扱いするのも俺には無理。同性に好意を持つのは、顔よりも性格が大事なんだって事をこの学園に来て実感したわ。きゃーきゃー言える親衛隊がすごい。やっぱ男は金と顔なのか……?
 まあ、俺様くんにハブ宣言をされた俺が、こいつらと関わる機会なんてもうないんだから、どうでもいいんだけど。

 そうこうしている内に待っていた初夏のフルーツタルトが届き、俺はいそいそとフォークを手に取った。さっきのレガファーの情報なんか一瞬で忘れて、今はタルトのことで頭がいっぱいだ。

 あー、タルトうめぇ!


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