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蜂黒須怪異談∞X∞

0004話「余命観察」

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「1」

 ーー「????」ーー

 嘘だ。

「……」

 早すぎだろ。

「……」

 こんなに冷たくなってな。

「……」

 なんとか言ってくれよ。

「……」

 うううわああああああああ!!!!〇〇!!

「……」

 ーー「八木家」ーー

 居候してる梅田虫男の家族である身内が亡くなった。悲しみに明け暮れる中、八木家はそんな虫男のためにわざわざ葬式を取りはからうことにした。そしてお通夜前に大勢の弔問客ちょうもんきゃくが八木家に訪れる。そこには北臓や黒田ジョージもいる。そして星田美冬や北臓の付き添いで北山正夢もいて深い悲しみをお互い共有も出来ていた。と、ここで初めて美冬や正夢が対面するとき正夢は美冬に惚れてしまう場面があり、美冬に執拗に食事の誘いを迫ることから、虫男と正夢の激しい対立が生まれてこれ以降犬猿の仲になるとは時間がかからなかった。そして八木家からお通夜の日程取り決めて虫男は亡くなった身内を葬式屋に頼んで運ばせた。

 ーー「葬式会場」ーー

 お通夜で八木家と梅田家が参列した。虫男以外参列者も複雑な気分だった。ただ虫男はその亡くなった家族同然に一緒に過ごしていたので彼にとっては大事な我が子のような存在だったから。そしてお通夜も終わりそこで虫男はねずの番で泊まり込み、他はそのまま帰宅した。

 ーー「お葬式会場」ーー

 つぶ僧がつぶ経を唱えてる。焼香行各自終えて、つぶ経を唱えるのを終えるとここからは石山県の葬儀風習のひとつに怪異談黄泉送りというのもある。これは死者があの世に送り届けるために語る怪異談であり、通常の怪異談語りとはほぼ変わらなかったので、いつものように変わらず披露した。

「2」

 ーー「五谷の自宅」ーー

 わしの名前は五谷吉郎。67歳。
 わしは不治の病により寝たきり状態なり、医者から余命宣告を受けていた。もう少し生きたかったが仕方ない。
 わしには知人や友人と呼べる者はいなく身寄りは介護してる妻くらい。そして木造建ての一軒家に訪れる客人は訪問介護くらいだろう。
「あなた。そろそろ私は行きますからね」
「ああ。行ってらっしゃい」
 と、妻はそのまま仕事先に向かった。
 この後、訪問介護がやってくる時間だろう。
 (ピンポン)
 と、どうやら来たみたいだな。
 わしはパソコンテレビで開き玄関先に設置してある監視カメラを確認する。わしはあまり手が使えないが目は使えるのでそのパソコンテレビを操作する特殊なメガネを使う。このメガネの目の動きや瞬きでセンサーが反応する仕組みだ。
 映像には見慣れない黒スーツを着込んだ青年のようだった。
 わしはふと思い、何かの弁護士かなと思って玄関先の鍵をパソコンテレビで施錠を解除した。

 ーーーーーー

「……」
「……あのなぁ」
「……」
「はぁ」とわしはため息を吐いた。
 一体なんなんだろうか?
 さっきから、この青年はずっとわしの前で座り無言でじっと見つめている。
 怒りたいのは山々じゃが、この身体じゃ追い払うことは出来なかった。
 警察を呼ぼうと思ったがあまり大事すれば妻に迷惑がかかるし、おまけに青年が逆上してわしに危害を加えるかもしれないからな。
 困ったのぅ。
 (ピンポン)
 と、どうやら訪問介護が来たようだあがらせてもらおう。
 と、わしは自宅玄関先の施錠を解除した。
「遅くなってすみません五谷さん」
 と訪問介護の女性の猿蟹さんが寝たきりのわしがいる居間にやってきた。
「ああ。大丈夫ですよ。ところですまないですが」
「はい。なんでしょう?」
「この青年ですが追い出してくれませんか?わし気になっての」
 と、猿蟹さんはにっこり笑って否定した。
「いえ。大丈夫ですよ。彼はそのままにしてください。もし気になるのでしたら、移動させて気にならない場所に誘導しますので」
「は、はぁ」と猿蟹さんは大丈夫という確信はどこにあるのだろうか?しかし、猿蟹さんは彼の事を知っていたようだ。一体彼は何者なんだろうか?
 わしは彼の方を見るがずっと無言無表情でわしの方を見つめていた。

 ーーーーー

 猿蟹さんはわしの昼食チャーハンを作るがなぜかその観察する青年も昼食を用意してわしと青年は食事する。そこで青年は冷や汗を掻いてるようだがトイレを我慢していたようで猿蟹さんに耳打ちしたあと急いでトイレに向かった。その間に猿蟹さんはじっとわしの方へ観察するのは不思議な光景なんだがな。すると急いで戻ってきた青年は猿蟹さんから耳打ちすると安堵したようだ。
 とりあえず気になったのでわしは猿蟹さんに質問してみた。
「猿蟹さんや。彼は一体、わしを何を観察してるのですかの?」
「ああ。彼はですね。余命宣告する方の最期の瞬間を観察してるのですよ」
「え?わしの最期の瞬間を?なんのために?」
「話は長くなるのですが、彼は余命宣告者と会話してるうちに生きてる実感を最期まで見届けたいというのが彼の使命でしてね。あ、そうそう。あなたの奥様には事前に許可を得てますよ。奥様から何か言われませんでしたか?」
 はぁ、とため息がまた出た。
 妻は一体わしに黙って許可を出したのだろうか。
 そして猿蟹さんは昼食終えたわしを皿洗い流してわしの着替えを替えたりして風呂を入れさせてもらう間はずっとまじまじに観察する青年が気になってしょうがなかった。
 この先最期は青年に看取るのだろうかと思っていた。

 ーーーーー

 しばらくして数ヶ月経過した。
    今、妻は買い物に出掛けて、わしと青年2人だけでお留守番だ。
 相変わらず青年はずっとわしを観察していた。
 トイレ、食事、仮眠、風呂や着替え以外はずっと観察しているが、、、

「(コクン、コクン)」

 どうやら観察疲れで居眠りしてるようだ。
 そのままにしてもよかったじゃが彼に悪いと思って呼び起こした。

「おまえさん!」

「ビクッ!?」

「観察するんだろ?寝てはいかんだろ」

「コクン」

 青年は姿勢を正して彼はずっとわしを観察してる。
 なんだか、彼を見てるとわしは息子のように見えていた。
 あの子が生きていたら、青年と同じ年くらいだろう。
 と、わしが感傷に浸っていると青年は急に胸を抑えて苦しみ出した。

「大丈夫か!?青年!しっかりしろ!?」

 わしはその時緊急通話をかけて救急車を呼んだ時、わしも青年と同じように胸が苦しくなったのだ。
 どうやら、わしも迎えが来たようだ。
 青年、どうやら最期は看取れなさそうだ。すまない。
 ……。

 ーー「????」ーー

 青年は病室で目を覚ましたが身体が思うように動けなかった。
 どうやら五谷と同じように不治の病にかかり、余命宣告を医者から説明受けていた。気がかりなのは五谷を最期まで看取れなかったのが悔やみだった。彼は生きる気力がなかった。そんな時に病室に彼が現れた。
「……!?」
「久しぶりだな。青年。おまえさんを最期を看取りに来た。ははは立場が逆になったけどな」
 青年は五谷を見てお互い笑う。
 その青年の前に五谷が現れて彼を看取るまで病室に立った。
 青年は快く五谷の余命観察を受け入れて五谷は青年の最期を看取ったあと、彼も一緒にあの世の國へ旅立ちした。

 ーー「火葬場」ーー

「ああ!カブちゃんこんな姿になっても綺麗な砂になって」

 虫男は焼いたカブト虫を骨壺ならぬ虫壺に入れる。
 そう、虫男の身内が亡くなったのは彼が飼ってるカブト虫だったから。
 それを真面目に葬式を取り仕切る八木家は今後、怪異談黄泉送りの予習も兼ねてやっているのでカブト虫の葬儀はついでであり、葬儀費用は虫男が全額負担である。
 そして虫男と八木家一同はその虫壺をとある墓に入れて帰宅する準備したところについてきた星田美冬と北山正夢が楽しげに談笑してるの見て雰囲気も満更ない美冬に対して無視できない虫男は急いで向かう。その時に楓も無視できずその場で乱入する。この恋の四角関係の展開は一体どうなるかはまた別のお話で。

 余命観察   完
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