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蒼薔薇怪異談Main story05

38話「ワラワラワラワラ人形」

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「①」

 ーー????神社ーー

 カーン、カーンと木にくさびを何度も打ち込む私。

 その木に貼り付けてあるのは人形である。

 普通の藁人形ではなく曰く付きのワラ人形である。

 これを使って丑の刻参りをすると相手にーー。

 ーーーーーー。

「おはニャー♪部長」
「おっ……おはよう猫見」

 あたしは猫見蜜柑。
 あたしも部長もこの野薔薇市内で住んでるから、通学路も部長や和馬にゃんも出会うにゃ。
 でも、今日は和馬にゃんは来てないにゃ。

「部長。和馬にゃんはどうしたにゃ?」
「あー、和……鼻木ならあそこにいるぞ」
 と、部長の指をさす方向に遠くの電柱にコソコソと怪しげに見張る和馬にゃんがいた。
 うーむ。見てるだけでも怪しすぎるにゃ。あ、途中に見廻りに来た交番のお巡りさんに職務質問されたぽい。この後和馬にゃんは連れてかれたにゃ。

「ははは。可笑しな奴だなぁ」
「部長でも笑うんですね」
「ふぇわ!?ち、ま、まぁそうだな」
 と、部長は照れ隠しで笑ったけどまるで和馬にゃんみたいだにゃ。
 あたしはそのように感じていた。

「②」

 ーー野薔薇高校校庭内ーー

「ん?なんだか騒がしいな」
 部長の指摘通りに男女生徒達が校庭内で集まってるにゃ。
 なんだにゃろか?
 みんなは校庭の木に貼り付けてあるモノを眺めてるにゃ。
「なー?この騒ぎはなんだ真理亜」
 と、そこに真理亜たんがいたので聞いてみる部長。
「あー。あそこにな。藁人形が貼り付けてあったんだよ。くくく。あはははははははは」
「わ、藁人形!?おい。笑えねーよ?今のご時世!!」
 あたしも部長に同意にゃ。
 この平静時代にオカルトや幽霊がたびたび発生する石山県では呪いやオカルト魔術は犯罪であり、罪になる時代であるにゃ。当然藁人形を使った丑の刻参りはオカルト犯罪は洒落にならないのにゃ。
「あははは。わるーい。わるーい。でも普通の藁人形ならばな。ただあのなら大丈夫だぞ?あははは。おかしい」
「は?笑人形だと?なるほどな。たしかに笑えるな」
「へ?それってなんだにゃ?」
 と、無知なあたしであるが部長が教えてくれたにゃ。
「笑人形はな。相手を笑わしたいときに笑かすための藁人形だな。一応藁人形よりかは笑う呪いだから大したことはないな。ま、相手にとっちゃありがた迷惑だな。ほらよく見ろよ」
「あ、本当だにゃ……」
 たしかに笑ってる藁人形だけど。なんだかあたしにゃとっては不気味にニヤついて見えるけどにゃ。
 そしてしばらくすると生活指導横山先生がやってきてその貼り付けてる笑人形を取り外すとその場にいた生徒たちは解散したにゃ。
 あたしたちも教室内に入るがこの時まだ異常性に気づくことになるとにゃまだわかってなかったにゃ。

「③」

 ーー部室内ーー

「じゃあ次、鼻木」
「……」
「鼻木聞いてるのか?」
「あ、う……おう、聞いてるぜ!じゃあ披露するぞ、そのえーと。鼻プレスを」
 最近部室で変わってることがあるにゃ。
 部長はなんだか怪異談怖くなって面白くなってるし。
 和馬にゃんはなんだかスランプ?で怪異談も今ひとつ。
「なんだかお互い入れ替わってるみたいだにゃあ?」
 その時、あたしはつぶやくと和馬にゃんと部長がすごく椅子から転げ落ちそうになったけどどうかしたにゃあ?
「な、何を言ってるんだ?猫見。悪い冗談はよしてくれよ。ははは」
「そ、そうだぞ!わ、俺は断じて鼻木和馬だぞ?正真正銘のモノホンだぞ。あはははは」
 部員一同は首を傾げていたがあたしは怪しいと感づいたがこの時は気にしなかった。
「…………」

 ーー????神社ーー

「なによ!?あいつふざけやがって!?」

 私は憤りを感じていた。

 私は笑人形を使ってあの人の笑顔が見たいだけなのに。

「……あいつ邪魔ね」

 そう、私はをーー。

 排除をする。

 …………。


 ーー次の日ーー

「ふぇ!?な、なんだにゃ!?」

 あたしが登校するとあたしの下駄箱に大量の笑人形があった。
 それだけじゃなく私のロッカーにもあたしの机にも全部笑人形があった。

「クスクス」

 と、誰かが笑っている彼女の声がした。

「……!?」

 その方は馴染みのある人だった。

 まさか彼女が!?

 大笑いする野薔薇真理亜その人だったから。

「④」

 あたしは笑えないほど怖くなってしまった。他のクラスメイトは私のことを笑ってるように感じた。
 そんな時に和馬……いや、部長が心配して尋ねてくる。
「どうした?蜜柑」
「部長……」
 あたしは部長に打ち明ける時迷っていたが全て打ち明けた。
 その時、部長は黙っていたが最後は頷いてくれた。

「……俺がなんとかしてやるからな」
「え?」
「大丈夫だ。悪くしないからな。お前はわるくない」

 部長の言葉は男勝りな発言にあたしの胸の高鳴りが止まらなかった……にゃあ。

 次の日、野薔薇新聞に横山先生が捕まったという記事があったにゃ。笑人形を使った呪いの犯罪容疑である。どうやら、部長はあの後夜な夜な晩遅くに張り付いてたらしい。そこに笑人形をあたしの机に貼り付けようとしたところを部長が捕まえたらしいにゃあ。
 そっか。真犯人捕まってよかったにゃあ。
 この時あたしは気が晴れた感じだった。

 ーーーーーー。

「という怪異談にゃあ」

 と、部員一同は拍手するが真理亜は大笑いする。

「ははは。マジ笑えるぜ。俺が蜜柑に笑人形どんだけ。あはははは」

 真理亜は若干他の部員が引くほど笑っていた。

「…………」

「どうかしたか?虫男」

「いや……なんでもねぇ」

 ーー1時間前ーー

「あー。やばかったな。まさか捕まるなんて」

 私は笑人形を改良したワラワラワラワラ人形で相手を笑人形にして操っていた。
 これも彼女夜尻真夜の笑う姿を見るためである。
 で、少し蜜柑が邪魔だったので彼女を怖がらせて彼女と距離を置かせようとしたのが私の運のツキね。
 部室に入るとそこに真理亜が立っていた。

「あら?あなた1人なの?」

 とは言ってもそこに南原がいるけど……。


「ああ。そうだぜ。みんなには悪いけどあんたをサシで話たかったぜ。笑えないさん」

「な?なんなの!?わ、私は毒川里美よ。ふ、ふざけにもほどがありますですよ?」

 すると真理亜は大笑いした。

「バカだな。お前すでに魔法解けてるぞ?……本物の毒川里美は和馬達の所へいるからな」

「そ、そんなバカな!?」

 と、私は手鏡を取り出すと確かに里美じゃなく。私だ。

 ドロドロに溶けた私自身の姿が。

「あははは。笑えるな。その顔が」
「ッ!?」

 私は急いで部室内に出た。
 するとその場にいた先生や生徒たちは私のことを見て笑う。

「あははははははは」

「きゃはははははは」

 みんな笑って手を叩くほど笑い続ける。
 私はこの頭の中に笑い続ける人達に次第に私自身笑うようになって意識が遠のいていた。

 ーー????ーー

「ねー?この近くで気味悪い人形落ちてたけど?」

「また笑人形かな?」

「ははは。まさか。この人形、俺が貰っていいか?」

「わちもいらん」

「ま、お前の好きにしな」

 その場で部活を披露した真理亜はその人形を野薔薇家の庭で焚き火して燃やした。そして噂でクラスメイトの空き机が2席ある(1席は高波美衣子)がその在籍した片原早苗という人物は誰も知らされず記憶ごと抹消されていた。

 ワラワラワラワラ人形   完
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