[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

文字の大きさ
上 下
241 / 268
天ノ鐘怪異談K 【完結】

194話「起床転(半)ケツ」

しおりを挟む
 

「はぁ。アレン如きが、何うちの団長を語ってるの?片腹痛いよね」
 おーーーい。急にどうした兄さん???
「何が如きだ!言っておくが、俺の方が歳上で、騎士としても先輩に当たる!そんな俺に対する態度がそれで良いと思っているのか?!」

「いいんじゃないの?尊敬に値出来る人なら、自然と敬うんだけどね」
「クラ!」
 ギャーギャーと言い争いを始めるクラとアレン。

 そんな2人を、呆然と見つめるキリアに、隣でニコニコと微笑みながら見ているカトレア。
「あーーの、これは、いつもの事ですか?」
 恐る恐る尋ねてみる。
「そうですね。通常の光景です」
 クラ兄さんーー!!!お城に来て何してるの?!いや、カトレアとかに対する態度は正解になったのかもしれないけど、大好きな団長さんの事で喧嘩するの止めてーー!?!?


「キリア、カトレア様の専属魔法使いになったとの事だけど」

 暫く喧嘩を続けた後、やっと一段落ついたクラ兄さんから、話し掛けられる。

「もし何か困った事があったら、すぐ俺に言うんだよ?カトレア様の専属魔法使いが嫌になったとかなら、すぐに家に帰ってもいいんだからね?」

 あ。根本的な部分は変わって無いんだね。でも駄目だよ?王子様の前でそんな事言ったら。

「大丈夫だよクラ兄さん。クラ兄さんも、騎士団の人達と仲良く!仲良くしてね」
 念を押して、2回同じ事を言う。大切だからね。
 それから暫く騎士団の練習を見学し、また、城の案内に戻る。
 余談だが、ラット騎士団長も途中練習に参加し、愛しい妹と弟が見ているとあって、クラとラットのやる気は倍増し、いつも以上に他の騎士達はボコボコにされたらしい。


「後はーーー」
 丁寧にお城の中を案内してくれるカトレア。カトレアは、最初から、ずっと、優しい。
 クラ兄さんもいて、頼りになるアレンもいて、何とか、お城での生活もやって行けそう。そう、思った矢先だったーーー

「あら、ゴミ屑じゃない」
「!!!」

 その声に、体がビクッと反応する。聞き覚えのある声。
 ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには、聞き覚えのあった声の主がいた。

「……サウィルンさん」
 私の元・家族の1人、姉のサウィルン・ラナン。

「あはっ。姉様、だなんて呼ばれなくて良かったー!あんたなんかうちの子じゃないもんね」
 それは、こちらも同じ。私の家族は貴女達じゃない。だから、姉だなんて二度と呼びたくない。

「サウィルン。貴女がお城に何の用ですか?」
 サッと、私の前に出て、姉から隠してくれるカトレア。アレンも、その隣で、1歩前に出た。そのアレンの表情は険しくて、サウィルンを警戒しているのが伺える。
 カトレア、ユーリさんーー元・兄とも面識があったけど、サウィルンさんとも面識があるんですね。


「貴方に会いに来たのよ、ダーリン♡」

 ーーーは?ダーリン?王族に向かって??

「サウィルン様!幾ら貴族であろうと、第7王子であるカトレア様に向かって、なんて口の利き方をーー!!」
 ほら、アレンさんが1発で激ギレしてるじゃないですか。
「うっさいわねー。いーの、私とカトレアは婚約者同士なんだから♡」
「貴女の婚約者になった覚えは一切有りません。お引き取り下さい」
 動揺する前に一瞬でカトレアが否定した。
「やだ。照れてるの?かぁわぁいー♡」
 ……元とは言え、実の姉の阿呆さ加減に頭が痛くなりますね。大丈夫?王族相手に、虚偽の婚約者名乗ってるの?ヤバくない?

「……不思議なのですが、この前から、どういった心境の変化なのですか?留学先で一緒だった時には、そのような態度では無かったですよね?それどころか、ニケが命を狙ってるから、精々怯えて過ごせば?と、笑いながら言ってきたじゃ有りませんか」

 サウィルンさんとはどこの知り合いなのかと思えば、留学先の学校?あの飛び級したやつの?最初に、カトレアが私達に依頼したーーー。
 そう言えば、私の事をニケさん(阿呆テスト男)に話したのは、サウィルンでしたね。成程。皆さん、同じクラスメイトだったんですね。

「やだーそんな過去の事!あれは、命が狙われてるから気を付けて!って意味だったの♡そのお陰で、命が助かったでしょ?」
 よく言いますね。カトレア殺人の容疑を、私に被せるためにニケに助言までしといて。

「僕の命が助かったのは、紅の魔法使いーーキリア達のお陰です」
「!」
「そこのゴミ屑がー?」

 不満そうな目を、カトレアの背中に守られている私に向ける。
「兄さんから聞いてたけど、あんたホントに生きてたのね」
 貴女達元・家族に、森に捨てられましたからね。ケイ先生が拾ってくれなきゃ、死んでましたよ。
「あはは!あそこで野垂れ死んでくれてれば良かったのに!そしたら、あんたの不細工で辛気臭い顔見なくて済んだんだから!」
 大きな声で笑いながら、人が傷付く事を、平気で言う。昔と何も変わらない。変わらないーーーけど。

「……サウィルンさん、随分、体型がーー変わりました。ね」
 母親譲りの緑の髪に、緑の瞳は変わっていないが、体型が、ぽっちゃりした、お相撲さんの体型になっている。昔はもっと痩せてたのに……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...