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俗ノ花怪異談X【完結】

175話「喧嘩商店街 鴨肉そば&マジカルピザ」

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「1」

 この商店街は昔から住人同士喧嘩が絶えないと噂の喧嘩商店街。
 そんな場所にわざわざ京都からはるばるお越しになられた商売人の鉢巻青年がその噂を聞きつけてそこで喧嘩を売り込む。
 その鉢巻青年は商売道具を持ち込んだキッチンカーの車内から早速商売を始める。
 その商売とは……。

 ーー「高山蕎麦店内」ーー

 閑古鳥が鳴くほど店内は人気がない。
 俺はぐっすりと客がいない間、客の座敷で仰向けしながらいびきをかいて昼寝している。
 俺の名前は高山太郎。45歳。
 死んだ祖父から親父に受け継いで三代目の蕎麦店主の俺。
 以前この商店街は喧嘩するほど活気ついていたがある日の境に誰も寄り付けないほど客足は途絶えたままだった。
 俺の店も煽りを受けて誰一人来なしない。
 だから、俺は腕を余して毎日同じ昼間にいつも昼寝をしていたが店の外から漏れる住人の騒ぎの声により目を覚ましてしまう。
「ん?なんだなんだこの騒ぎは」
 俺はそのまま身体起こして店の外に出た。

「2」

「なんなんだ?この人だかりは?」

 店の外に出ると老若男女の行列の人だかりが出来ていた。
 その最前列には白のキッチンカーが止まっており、売られていたのはどうやら俺の店の定番メニュー鴨肉蕎麦だった。利用客はありがたく立ちながら鴨肉蕎麦を啜っておりご丁寧にも一杯ワンコインで買える品物だった。
 (チッ!俺の承諾おろか挨拶もせずに勝手に商売を始めるとな)
 俺は憤り感じていたが腹が鳴り空くのである。
 ちょうど昼前なので俺は人だかりの行列の最後尾に大人しく並んだ。

「3」

「おう!いらっしゃい」
 1時間の行列の末に最前列でようやく並びキッチンカーの店主は活気のいい鉢巻青年だった。
「鴨肉蕎麦一杯頼む」
「まいどあり!」
 早速、俺は売られてる鴨肉蕎麦を注文した。
 車内の調理器具や食材も別段珍しいモノはなかった。
「へい!おまち」
 注文してから、わずか数分経過してもう鴨肉蕎麦が出来たみたいだ。
 そこで俺は金を支払って注文を受け取り早速近くの場所に腰を据えてありつけることにする。
 まず匂いは一見普通だ。
 そして次に蕎麦の麺を箸で掴もうとするとすぐ切れてしまった。
 (なんだこれは?)
 俺は不安になりながらも汁を啜ると咳き込んでしまった。
 当然蕎麦の麺はまだ製粉しきれてなかった。
 鴨肉もまだ火が通ってない。

 俺はふと切れそうになった。

 蕎麦もすでに切れてるがな。

「おい!!店主はなんなんだ!?これは」

 俺は店主に怒鳴ったが相変わらず無視しやがる。
 さらに客足は増えるばかりだ。
 (クソ!!このど素人が作った鴨肉蕎麦が俺の店よりも繁盛するなんておかしい!!)
 俺はこの鴨肉蕎麦をすべて平らげて早足で店に戻りギャフンと言わせようと対策を練ることにした。

 ーー「????」ーー

「あー。汚いなこれは」
 鉢巻青年は客が食べ残しした食事跡を清掃する。
 念願のターゲットが現れたことを確認すると、本業である喧嘩商売を実行することにした。

「4」

「ふふふ♪ようやく念願の限定レア物ゲットした♫」
「よかったわね」

 休日の日曜日昼間に八木楓と永木桜はとある商店街に訪れて桜の付き添いでゲームショップの帰り道だった。
 そこに桜のお腹がギューと鳴いた。
「あーあ。私お腹空いちゃったな」
「そうね。この辺でお昼にしましょう」

 と、楓の提案に桜は青ざめてしまった。

「い、いや!八木さん。もう少し商店街抜けた所に美味しいハンバーガー屋さんあるから!そこにしようよ?」
 と、楓は首を左右に振り、否定する。
「桜さんが言う場所はかなり遠いし、それにチェーン店でしょ?私はそれよりも本格的な手打ちが食べたいわ。ちょうどそこにありましたね♪私の推し蕎麦屋さん」
「ひっ!?」
 ちょうど偶然にも寂れた鴨肉蕎麦屋があった。
 そこで楓は気軽に中へと入るが桜は恐る恐ると楓の後ろのそばに隠れて入店した。

「5」

「ごめんください」
「おじゃま……し、ます」
 楓達が入店すると店内は昼間だというのに薄暗かった。
「おう。好きな席に座って注文してくれ」
 と、厨房の中から厳つい店主が現れるとビクッと桜は楓の背中に隠れて縮まる。
「ん?どうした」
「なんでもありません!」
 店主の疑念に桜は否定する。
 楓達は店主の言われた通りに適当な座敷に座ると同時に定番メニューの鴨肉蕎麦を2杯注文した。
 注文を受けた店主は早速厨房に向かった。
 注文が来る間は楓と桜はヒソヒソと会話する。
「ねぇー。八木さんどうしてここにしたのよ」
「えー。だってここは隠れた名店だから、ひいきにしてるのよ」
 それを聞いた桜はため息を吐いた。
 桜はこの商店街の人達に苦手意識を持っており、できれば利用したくなかった。
 しかしながら、乙女ゲームの期間限定レアモノが溢れてるのでそれはこれである。
「へい!おまち鴨肉蕎麦」
 早速、注文の鴨肉蕎麦が来ると楓達は舌鼓を打ちながら味わい、麺つゆを飲み干すほど完食した。

「6」

「クソ!?何で客は来ないんだよ!!」

 本日女子高生2人組しか客は来なかった。
 俺は店の宣伝チラシに電柱をいくつか貼り付けたり、味付けのリニューアルも行ったがそれでも客足は好んで寄り付けない。
 客はあのズブど素人の鴨肉蕎麦が、いいのだろうかと自問自答を繰り返してると久々に客が入店したので俺は悩むのやめて応対するがーーその客坊主青年は、

「あの!!僕を弟子にしてください」

「は?」

 突然、俺の店に弟子入り志願してなんの因果かわからないが俺は受け入れることにした。

 ーー「半月後」ーー

「もっと腰を入れろ!」
「はい、師匠」
 俺は弟子に早速蕎麦打ちを指導する。
 弟子の名前は吉田。
 実家の家業を辞めて突然俺の店に弟子入りした。
 吉田はなかなかの腕がいいし、素直でなんでもこなしてくれる。
「師匠どうですか?」
「ああ、その調子だぞ」
 こいつにアレを任せていい頃だな。
 と、俺は久しぶり高揚感が溢れていた。

 ーー「現在」ーー

「いらっしゃいませ」
 楓と桜は久しぶりに高山蕎麦店を訪れると店内は明るく老若男女の利用客でほぼ満席だった。
 店内には見慣れた店主がいなかったので現店主を尋ねると、

「先代は私の腕を見て安心したのか地元の國へ帰郷しましたよ」

 回答を得られたので楓は少し残念がっていた。楓達は店内の席の空きが来るの待ち並び約10分後に席が空いて久々の鴨肉蕎麦を堪能した。

「7」

 ーー「田村ピザ専門店」ーー

「ただいま~」
 気力ない私はチラシ配り終える。
「おう!お帰り」
 パパは相変わらずピザ生地を作ってるが私にとっては無駄の足掻きだと思う。
 あの京都からやってきた鉢巻青年のせいで売り上げが愕然と落ち込んでるのがパパの主張だけど、それ以前アレのせいである。
「パパ」
「ん?なんだ真樹」
 面と向かって正直言わなくてはならない。だから言った。
「パパあの「スミマセン。ワタシヲヤトッテクダサイ」えと」
 突然の異国金髪青年の来訪により、タイミングがズレてしまった。
 なんだかんだでその異国金髪青年がパパが気に入り、店で雇うことになったけど大丈夫かしら?

 ーー「半月後」ーー

「そうだ生地しっかりやれ!」
「ハイ」
 新しく雇われたジャックさんは筋がいいのかパパの言いつけにきちんとこなしてくれる。久々にパパに満足気の笑顔が見られたから、もうこの店は大丈夫だろう。そこでジャックさんはーー。

 ーー「現在」ーー

「いらっしゃいませ♪あ、楓、星夏ちゃんよく来たね♪」
 楓と星田星夏は友人の田村真樹の店に訪れることになった。
「雰囲気変わりましたね」
 店内は若い男女の客で溢れていた。
「そうですわね。真樹どうしてですの」
 すると、真樹は自慢気に語ってくれた。
「それはね~新しく雇ってくれたジャックさんのおかげでパパは國へ隠居したの!」
 真樹はそういうと父親のつぶ壇を見せてくれた。
「よかったわね。真樹」
「うん♪」
 楓達は早速店の定番メニューのマジカルピザを注文してテーブル席で食べた。


「8」

 ~♪
 車内にスマホの着信が鳴り鉢巻青年鉄児が応対する。
「はい、こちら喧嘩商売社鉄児でございます。はい。いつもお世話になってます。ええ。依頼先の店主は先程旅立ちさせましたよーー」
 住職生まれの鉄児は商業営むほかにお祓いの心得があった。自身の喧嘩商売にはアチラ系の関係者に対しては大好評を得ていた。今日も追加でお祓い依頼先に向かい喧嘩商売を行い人材派遣もお手のモノである。今日も本業は忙しいのであった。

 ーー「石山県花咲市花沢町花咲商店街」ーー

「楓さん?この怪異談にも似たような話ありませんでしたか?」
「そういえばありましたね。あれは」
 八木楓、永木桜、星田星夏はこの活気ついた喧嘩商店街改め花咲商店街に訪れて怪異談を披露する。その以前披露した怪異談も語って楓達は懐かしく咲かせていた。

 喧嘩商店街  鴨肉そば&マジカルピザ   完


俗ノ花怪異談   完結
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