[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

文字の大きさ
上 下
216 / 268
俗ノ花怪異談X【完結】

169話「霊歌」

しおりを挟む
「1」

 ーー「八木家」ーー

 ~♫
 八木家のご老中である八木沙凪さなぎ68歳。
 時たまにご意見番として八木家に家を空けているが普段は八木家に在宅してる。
 彼女が趣味としてるのは昔買ったレコード盤で洋楽を聴きながらレモンティーで古椅子に座りながら一服嗜むことである。無論好物であるおかきのあられをひとつまみ食べるのはかかせない。
 ふと眠気を感じた沙凪はそのまま瞼を閉じてゆっくりと眠りにつく。
 その時に聴こえてくる歌詞に耳を傾けていた。

 ーー「50年前野原高校3年B組クラス内」ーー

「……さ……沙凪聞いてるの?」
「ふぇ!?あ、うん聞いてるよ」
 友人美琴の退屈な惚気話に断じて寝てない私である……少し目を瞑ったままだ。
「それが居眠りしてたということよ!!」
「そんな!?心を読まれた!あなたはエスパー美琴!人類に対抗する悪の「あーあ!!そこまでよ!!……やっぱり寝てたのね?」」
 グゥの音も出ず。
 いや、グゥの音は美琴から聴こえたね。
「沙凪に強く当たってもしょうがないでしょ?」
「由梨恵さんわかる?」
 おー心の眠り友よ。
「退屈だけどそこまでは眠くならないわよ?」
 前言撤回。私の味方ではなかった。
「退屈は余計よ!!……ところであの例の場所行ってみない?」
 例の場所というのは今流行りの喫茶店である。もちろん私達の返事はYESである。
「決まりね。じゃあ学校終わったら寄りましょう♪」
 放課後すぐ私達は例の喫茶店へ立ち寄った。

「2」

 ーー「猫山喫茶店内」ーー

「いらっしゃいませ」
 店内はモダンティストな雰囲気でジャズの曲が流れる。
 私たちも洒落た雰囲気で楽しめるから好んでよく訪れる。
 私たちテーブル席に着席して各自コーヒーなど頼む。
 その時、私はとある見慣れない真紅のドレスの妙齢な中年女性が1人寂しく離れたテーブル席に座っていた。
 (……?)
 彼女の紅い太い唇が印象的だった。
 その時である。
 彼女が突然オペラ調で歌うと私の視界が暗転して霧がかかる。
 近くにいた友人達や店員やオペラ歌う女性客以外忽然と姿を消してしまった。
 その場に歌う女性客の周囲にはボヤけて青白くモヤがかかる。

 ーーそして私の周囲には青白いモヤが取り囲む。

 オペラの曲調に合わせて青白いモヤが歪んでいた。

 ーーーーーー。

「……さ。……ぎさ!」
「ううん……?」

 私が目を覚ますと何故か教室にいた。
 友人達に聞くにはまだ学校へ終わってなくてちょうど美琴が放課後、あの喫茶店に立ち寄るつもりだったらしく、私はあの夢が気になり、パスをした。

 ーーその時、私は嫌な感じがしていた。

 その日、美琴達はその喫茶店で火事に遭い亡くなったから。


「3」

 私はハッと目を覚ました。
 どうやら永く寝てしまったようだ。
 座る私に毛布がかけられていることから家族がかけたんだろうと。
 つい、昔が懐かしく感じてしまった。
 もう、友人達の死から数十年経過していた。
 その時、彼女達の死を悼み毎年あの場所に訪れて手を添えている。
 その時、死んだ友人達が私のことをずっと見つめている。
 そう……今でも私の近くのそばに見守っているから。
 教えてくれないかい?私はあの時どうすればいいのかとーー、終始無言である美琴達に私は今でも問いかけていた。

 霊歌   完

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...