[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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俗ノ花怪異談X【完結】

167話「窓ガラス」

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 「1」

     ーー????ーー

 ーーどうして。

「…………」

 ーー受け入れてたのに。

「…………」

 ーー教えてくれない?

「…………」

 カエデ。

 ーーーーーー。

 ーー「野花小学校6年2組」ーー

「みなさんの中にすでに知ってますが八木楓さんが先日うすのろ魔女にかかりお亡くなりました」

 クラス一同みんなの雰囲気は暗くなる。
 中には泣いてる子もいた。
 でも知ってる。
 これは全て僕のせいなんだと。
 だけどみんなは僕に責めない。
 わかってる。
 わかってるんだけど。
 みんなが僕に責めても彼女が帰ってこないことはわかる。
 僕はこの場の空気が全て嫌だった。
 この時は僕はずっと何もない窓際を眺めていた。

「2」

 ジメジメとした梅雨の時期到来。
 その日でも1人で帰宅下校していた。
 初めて出来た友人達も僕を腫れ物扱うようにして避けられていた。
 いじめはなくても他のクラスメイトはどこかよそよそしかった。

 ーーでも、そんな時に限ってあいつが現れてくる。

 (ぼわん)
「……!!」
 そう、うすのろ魔女あいつである。
 あいつはまるで僕を小馬鹿にしたように出てくる。
 僕は腹立ち、掲げているカバンの中からリコーダーを取り出してあいつをぶつけるがすり抜けてしまうのモノはわかっている。
 何度も何度もぶつけるが虚しさはどこかにある。
 結局消えなかったが僕は諦めてそのまま素通りするしかなかった。

 ーー「野花家」ーー

 帰宅すると僕はそのまま自分の部屋に引き篭もった。
 このジメジメとした空間は僕を慰めてはくれない。
 何もかも嫌になっているが登校拒否するほどでもなくどこか中途半端だった。
 何故ならまだ楓が死んだという実感が得られてなかったから。

 ーーそんな感じだから、僕の前に雨クジオンナが現れたのも必然的にだったかもしれない。

 そいつは僕がいる部屋の窓際に立っていた。
「………………」

「3」

 雨クジオンナとは、このいつもジメジメとした梅雨の時期に現れるらしい。
 害があると言えばないとも言えなくてそいつに限ってはいつもどんよりとした暗い感じ雰囲気なる。
 なので僕はとうとう学校へは行かず不登校拒否になり、部屋で引きこもりになった。
 そして常に窓際のガラスか映る雨クジオンナが僕に苛立ちさせるのである。
 (こんこん)
 と、僕の部屋のドアにノック音がする。
 おそらく母親だろうから対応する。
「……何?ご飯なら食べる気ない」
 と、伝えると、
「あなたにお客様よ」
「失礼する」と母親の案内元につがつがと無理矢理入ってきたのは無視家と言われる所以の梅田虫男だった。

 ーーーーーー。

 僕は彼にいろいろと想いをぶつけていた。
 彼は黙ってうなずくだけだった。
 彼は僕の全てを理解して受け入れてくれる。
 そしてそこで僕は泣いてることに気づいた。
 その時、雨クジオンナも消えてくれたから。

「4」

「という怪異談よ」
 私が怪異談披露するとみんなは静かに拍手する。
「よかったよ。さん」
「ありがとう桜さん」
 親友にも褒め称えてくれる。
 私の名前は野花手鞠。
 趣味として石山県に伝聞する怪異談語りを披露する。
 そして怪異談を披露する時に私の名前が有名になったのか、あの有名な八木家から養子縁組の誘いがあった。
 だから、私は喜んでそれを応じてーー、


 両眼の黒いカエデに取り憑かれて私は大型トレーラーに轢かれた。


 全てはやっと吹っ切れたと思ったのに。


 私は幼少頃から、両眼の黒い人たちに悩まされていた。
 私はその両眼の黒い人たちが視えるから。
 そう、楓も例外なく視えていたのだ。
 私が前日、その窓ガラスにカエデが立っていたから。
 もう二度と現れると思ってなかったのに彼女が現れたから。
 私はどうすることも出来なかったから。
 そう、八木楓という自身になりきれなかった私自身も……。
 私の最期の映る瞳には彼女が微笑んでいた。

 窓ガラス   完
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