[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

文字の大きさ
上 下
200 / 268
鐘技怪異談W❼巻【完結】

155話「大将デマ暮らし」

しおりを挟む
「1」

 ーー「居酒屋大将テル」ーー

 店に設置してあるテレビから古い歌謡曲が流れる。
 この居酒屋の店主である大将テルはこの店を1人で切り盛りしてる。
 店はそこそこ繁盛してる理由は全て客のアドバイスによるモノである。
 しかし客からのアドバイスをなんでも鵜呑みにしてしまうから。
 そんなエピソードを踏まえて友紀の前に昔話を語ってくれた。

 ーー「20年前」ーー

 俺は大将テル。
 経営する居酒屋もそれなりに軌道が乗ってきたので俺は猫カフェならぬ猫居酒屋をオープンした。
 しかし、客は好んで訪れてこない。
 たしかに猫は揃えた。
 猛獣の猫達をな。
 何がいけなかっただろうか?
 俺は猛獣の猫達をイシヤマ動物園に寄付して元の普通の居酒屋に戻して一から出直した。

 ーー「15年前」ーー

 俺は大将テル。
 最近店もマンネリ気味だったので今流行りのメイド喫茶ならぬ、メイド居酒屋をオープンしたが客は年配しかやってこない。
 なぜだろうか?
 彼女達は昔は絶世の美女だと持て囃されていたがな。

「大将、すみません。今日は腰が痛いので上がらせてください」

 やはり彼女達には無理はできないので全員クビにしたが今までの感謝として温泉旅行のチケットを贈呈した。
 また一から出直しになった。

 ーー「10年前」ーー

「いらっしゃい。おう、あんたか」

「大将久しぶりね」

 俺の居酒屋の常連客の魔寝木根子である。
 彼女はよく店のアドバイスしてくれるのだ。
 こないだは壺を購入を勧められたがネットに安い同じ壺があったから購入できたし。彼女の勧めで空き地を購入したら温泉が湧き上がったりしたからな。
 でも、悔しそうにしてたのはなんでだろうか?

「大将。私、結婚するの」

「お?おめでとうさん。式はいつするんだ?」

「……来週なの。招待するから絶対来てね」

「お安い御用だぜ」

 俺は彼女と約束した。
 しかし、式は来れなかった。
     なぜならーー。


 ーー「5年前」ーー

 外は豪雨であり、客の出入りそこまでじゃなかった。
 そして俺の店にアイツが訪れる。

「……大将」

 そう根子だ。
 根子はずぶ濡れになったままだった。
 だから、俺は黙ってタオルを出して拭いてもらった。

「私、もうつかれたの。なにもかもいやになったの。大将お願い一晩だけ泊めさせて」

「ああ。俺で良ければな」

 俺は黙って根子を一晩泊めさせた。

 そう、彼女はかなりつかれていたのだ。

 恨まれるほどにな。

 次の日の早朝、彼女はそのまま目を見開きながら亡くなっていたから。


 ーー「現在」ーー

「という怪異談だな」

 大将が怪異談を披露すると客が静まり返った。
 そして店の引き戸から女性客がやってくる。

「大将いる?」

 そこに本人が現れてくる。

「おう、根子か。空いてる席に座れ」

 根子は当然のようにメニューを注文する。
 当たり前だが根子は死んでない。
 もちろん創作怪異談を引き合いに根子の名前を使われていた。
 そんなアドバイスを受けたのも彼女根子であった。
 そんな友紀は何事もなかったのように大将の造る料理に舌鼓を打っていた。

 大将デマ暮らし   完


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】夜にも奇妙な怖い話を語ろう

野花マリオ
ホラー
作者が体験(?)した怖い話や聞いた噂話を語ります。 一部創作も含まれますのでご了承ください。 表紙は生成AI

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

ルッキズムデスゲーム

はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』 とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。 知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。

処理中です...