[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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野花怪異談N⑦巻【完結】

75話「デュラハンストーカー」

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「1」

 ーー「25年前」ーー

「ジョージや誕生日プレゼントは何するかい?」

「僕はあのカッコいい車が欲しい」

「ははは。まだジョージには早いな」

「ええー!?いつになったら、もらえるの?」

「そうだな。ジョージが立派な大人になってからだな。それまでに待つんだな。ははは」

 ーーーーーーー。

「……」

 俺は外で愛車デュラハンストーカーにホースで洗車をする。
 こいつとは長年連れ添ってきた相棒というより恋人だろうか……。
 まぁ、俺よりも繊細だから、扱いには充分メンテナンスを施したがもう一緒に走ることはできない。

 ーーこいつは来年から廃車スクラップになるから。

 俺はこれ以上のパートナーは知らないし、それ以外の車を乗るつもりはなかったからな。

「ジョージさん。こんにちわ」

「お、楓か。こんにちわ」

 楓が俺の元に訪ねてきた。
 ふむいつぶり以来かな。

「これ。こないだ座談怪に参加したお礼です。サボテンフルーツです」

「悪いな。家族と一緒に召し上がるよ」

「それはそうとなにかあったんですか?元気がありませんし。そのままずっとホースを持って洗車してるみたいですが、水出てませんよ?」

「……あ、本当だな」

 楓の指摘通りに俺は深く思い詰めていたようだった。

「2」

「そうなんですか……でも、この子も充分感謝してますよ」

「はは。ありがとう」

 俺はこのデュラハンストーカーを眺めて見る。
 キズや汚れもない美しいボディ。名前の由来通りにデュラハンストーカーはその乗り手を執拗に追い求める。
 俺もそんな1人だった。

「楓」

「なんですか?ジョージさん」

「そのデュラハンストーカーに関する怪異談をひとつあるんだ。聴いてくか?」

「……ええ。聴かせてください」

 俺は怪異談を披露した。

「3」

 ーー「205X年08月08日ノバナシティタウン」ーー

 近未来都市ノバナシティタウン。
 この時代になると、環境に配慮してガソリン車から電気自動車、そして霊力で走る霊気自動車がほぼ多数に占める。
 霊気自動車が代表的な國産メーカーはクロワッサン社のデュラハン2050STRである。
 いくつか性能をアップデートしてきた最新式霊気自動車である。
 その運転する彼、坂田ジョニーも愛用してる1人である。

「リア。しばらく自動運転に切り替えてくれ」

『自動運転AI操作に切り替えます』

 リアはデュラハンに搭載してる人工AIである。リアは命令ひとつでルール範囲内ならなんでも命令を聞いてくれる。
 手動運転から自動運転を切り替える時彼はゆっくりと立体4D映像型スマホンを眺める。
 彼が閲覧するのはニュースサイトや投資バンクレートを読んでいた。運転の目的地は自宅先へと帰宅した。

「4」

 ーー「坂田ジョニーの自宅」ーー

 ジョニーの自宅は3Dプリンターで建てた家である。
 この時代になると建築費用も安く仕上げることができるし、解体も自分でできるようになる。
 ジョニーもいくつか、自分でリフォームを3Dプリンターで行ってきたから。
 それ以上金がかかるのは、コンピュータ防犯設備と食料品や生活用品だけである。
 防犯設備は毎年一、二回はアップデートしないとハッカー達にセキュリティを解いてしまうので必要になる。
 ジョニーも当たり前のように指紋認証で自宅にかけられてるドアをロックを解除して入室する。
 自宅の中に入るとジョニーは郵便データを確認する。
 この時代になると環境の配慮から郵便と宅配便が廃止されるが代わりに資材便というモノができるようになる。
 資材便とは3Dプリンターでほとんど自分で賄えるため必要な原料をそこで供給するのである。
 当然ながら、この近場で店は少ないのである。
 しかしながら、近年ではアナログブームにより、デジタルを使わないやり方が流行っていた。
 そんな代表なのが料理であり、ジョニーが住む近辺でも料理店が増えてきた。
 ジョニーも趣味の一環として料理を作るのだ。
 大抵は自動料理プリンターで賄えるが最近では料理がトレンドである。
 今夜の夕飯献立は軽いパスタを作って食べた。
 そして使い終えた皿も洗い流して一服に新聞を読む。
 新聞の紙はデジタル紙と呼ばれる特殊な電子紙であり、その紙一枚で一カ月分の新聞の内容を読めるのである。
 そこにヒットニュース一覧を新聞紙にタップすると車の映像が流れていた。
「巷で走るゴーストカーが出没か……」
 青白い車が走る映像は気になっていた。
 そこで彼は眠気を感じてそのまま寝室に向かい就寝した。

 ーー「????トンネル内」ーー

 ジョニーは休日の日曜日、山奥でドライブに出かけた。
 自動運転ではなく手動運転であり、その運転を楽しんでいる。
 しかし、最近では手動運転による、交通事故が多発しているのである。
 ジョニーも注意しながら手動運転をするが事故が起きてしまった。

『交通事故が起きました。至急然るべき場所に通報してください』

 車の警報アナウンスが鳴り響く。
 ジョニーは青ざめてしまった。
 運転するときかなり衝撃があったがジョニー自身無事だった。
 よりによって交通事故が起きてしまうとは。
 周囲には車がなかったのでおそらく人身事故だと思い車に降りて確認したが誰もいなかった。
 自分の周囲をよく隅々まで確認したが見つからなかった。
 この辺では走る車いなかった。
 それどころか、人気もない場所で冷たい風が吹いていた。
 ジョニーは一旦車に戻ろうとするときに跳ねられてしまった。
 勢いよく身体が跳ねられる。
 その時いくつか肋骨が折れてしまった。
 彼は何が起こったのか分からなかった。
 しかし、痛む身体抑えて立ち上がると周囲には車らしきはなかった。
 その嘲笑うかのようにまた跳ねられるジョニー。
 何度も何度も何度も無造作に跳ねられていく。
 彼が息が絶えるまでに……。
 最期の瞬間までその跳ねたモノを確認することはできなかった。


「5」

 ーー「野花海浜」ーー

 俺は夕日が沈む中デュラハンと海浜に来ていた。
 ちょうど海が見たくなっていたからな。
 そんな流れる波を眺めていると、遠くから呼びかける声がした。

 ーーその停めてあるデュラハンストーカーに黒服を着た女性が手を振っていたから。

 そして目を離した隙に彼女は消えていた。
 その時思ったんだ、あいつも別れをしに現れてきたんだと。

 ーーーーーー。

「あれ?ジョージさんじゃない?おー」

「まって、手鞠そっとしときましょう」

 そこに沈む夕陽を眺めているジョージさんとデュラハンストーカー相棒がいたから。

「あ、うん」

 私と手鞠もこの海浜に訪れていた。その海に眺めているデュラハンストーカーとジョージさんは彼らにしかわからないモノがあったから、彼らのみぞ知る。

 デュラハンストーカー   完

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