[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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野花怪異談N⑥巻【完結】

64話「通話友人」

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「1」

「もしもし。陽子?今出たところよ。うん。あのね」
 八木凪が大学生の頃、大学セミナーで知り合った友人の彼女がいる。
 彼女は昔から電話が好きでよく友人達と通話をかける。
 その彼女も1人暮らしのマンションで住みそこに通話をかけながら凪が訪ねてくる。
 その時、彼女は恐怖体験をすることになる。

 ーーーーーーー。

「うん。味付けはこんなもんか」
 
 僕は本日の夕食の献立を作る。
 僕の名前は木堂誠一。35歳。
 今晩の夕食は五目ご飯、なすびの味噌汁、野菜炒め、デザートにきゅうりと人参を細く切った野菜スティックだ。
 料理の献立を見るかぎり僕は生粋のベジタリアンだが少し肉や卵も食べるので料理に混ぜてある。
 そして料理が出来たところでスマホに彼女からの通話がかかってくる。

「どうした彩花?」

『また侵入してきたの!!私怖くて……』

「そうか。わかったよ。少し手が離せないから、それまで待てるかい?」

『うん。私いくらまでも待てるから。あなたが1番頼りになるから』

「うん。それじゃあ。また」

 彼女はよく僕を頼りに電話をかけてくる。
 なんでも声が聴けないと不安定になるからしい。
 そこで僕は早めに夕飯を平らげて彼女のもとへ急いだ。

 ーー「数ヶ月前」ーー

 ここは僕が経営する個人探偵事務所だ。
 去年、大手の探偵事務所から独立した。
 主の依頼内容は浮気調査が多いが今日は珍しく違っていた。
 事務所のドアがノックするので僕は「どうぞ」とあがらせる。

「すみません。先日電話で相談した野原彩花です」

「ああ。例のストーカーの件だったね。どうぞ」

 僕は彼女にソファーを座らせる。
 そこで僕はインスタントコーヒーを淹れると彼女は一口飲んだ。
 僕は依頼主彩花さんに内容を再確認した。

「先月から野原さんの住むマンションは1人暮らしでその自室から何か私物などを荒らされたり被害を受けてるだよね?」

「はい。私は水商売するかたわら、男の人に言い寄られたりことはありましたが、まさかストーカーに遭うなんて思いもしませんでしたわ」

「ふむふむ。警察には伝えたんだよね?」

「はい。もちろんです。でも警察が言うにはマンションに設置してある監視カメラには誰も怪しい人物は映ってはないていうし……」

「……そうか。大体事情はつかめたよ。では案内してくれるかな?君のマンションに」

 僕と彩花さんはその現場に向かうことにした。

 ーー「マンションの管理人室」ーー

「どうですか?怪しい人物はいませんでしょ?」

「たしかに……」

 マンション管理人吉岡さんに同意する。
 このマンションは女性にも安心して住める完全オートロックマンションである。
 防犯カメラ24時間体制で稼働してあるから、怪しい人物は弾かれるのだ。

「とりあえず建物外はそれらしき怪しい人物は映ってないようだ。野原さん、中の防犯カメラを見せてくれるかな?」

「あ、はいどうぞ。一応、私のスマホからでも見れますけど……」

「へぇー。最近の防犯カメラは便利だねぇ」

 吉岡さんにも同意だが僕は彼女のスマホから映る防犯カメラ映像を確認する。
 真っ暗だがガタガタと私物が落ちるが誰もいない。
 ふむ。これはひょっとすると……?

「どうかしたんですか?メガネをかけて」

「ああ。これはねちょっとしたものだよ。うん。やっぱり映ってるな」

 そう、このメガネをかけるとばっちりわかるのだ。

「どうですか?まさか幽霊なのですか?」

「そんなもんだね。あと君のことも」

 僕が語られる事実に彩花さん達は驚愕していた。

 ーー「????」ーー

 真夜中の真っ暗な部屋内で寝静まる晩。
 犯人はこの部屋に侵入した。
 そして私物を漁っているところを僕は捕まえた。
 そこで彩花さんが部屋の明かりをつけると驚いていた。

「もう、逃げられないぞ?もう1人の彩花さん」

「こ、これがもう1人の私!?」

 そう、彼女は彩花さんの生霊だったから。
 そこで捕まえた生霊をムシキラーの芳香剤を吹きかけると生霊は苦しみながら浄化して成仏した。


 ーーーーーー。

 と、まぁその後、彩花は僕に頼られていつのまにか親友以上の関係になったわけだ。
 彩花は体質であるから、幽霊絡みの犯罪に巻き込まれやすいので僕がこうして彩花のマンションに出向いてる。
 ちょうど家に出るときに彼女から通話がかかる。

「もしもし」

『すみません。私ご飯まだなので途中、〇〇付近の〇〇コンビニで適当に弁当買ってくれませんか?もちろん温めで』

「わかったよ。適当に買ってくるね。それじゃあ」

 僕は家の近くに駐車場に停めてるワゴン車に乗り込んだ

 ーーーーーー。

 ーー〇〇コンビニーー

「ありがとうございました」

 僕はパーカーの男性にぶつかったがそのまま会釈してなんとかシャケ弁当を買うことができてそのまま停めてあるワゴン車に乗り込んだ。

「ふぅー。汗だくだなぁ」

 中は暑かったのでガンガンクーラーを冷やして彼女のマンションへと向かった。


 ーー「野原彩花の住むマンション自室」ーー

 ちょうど彼からチャット通知が来る。

 誠一:きたよ、彩花。オートロックを解除してくれ。

 彩花:うん。少し待っててね♪

 そして私は彼をマンションのオートロックを解除させて入らせた。

 その時、彼から通話がかかってくる。
 直接チャットでもよかったが私にとっては彼の声が聴きたかった。

「もしもしー。なんなの?けっこう遅かったじゃない?ねー?聴いてるの?」

「……」

 彼はずっと黙ったままだった。そこで私は玄関先からチャイムが鳴るので当然彼だと思いロックを解除した。

 そこに彼が立っていた。

 血だらけのパーカー姿に犬のマスクを被った男性がーー。

 そして、犬マスクの男が手提げている袋から切断された男性らしきの頭が玄関先まで転がり落ちたから。


『という怪異談なの』

「そ、そうなんだ。結構ゾクとしたよ」

『今、私はあなたのマンション自室前にいるの』

「え?」と思い私はドアロックを解除する。

 そこに犬マスクを被ったパーカーの人が立っていたから。

 私はそのまま気絶した。
 後の祭りだが凪が変装したよるものであり怖がらせるためにやったようだ。

 しばらく、私は電話かけることはできなかったがその代わりに凪からパフェを奢ってもらいチャラにした。

「おいしい~♪」

「……」

 何故か見知らぬ女子高生達もいるが凪の知り合いだろうか?ま、1人白粉肌を身につけてある限り凪の関係者であることはわかる。
 しかし、もう1人の子は美味しそうに食べるなぁ。持ち帰りたいなぁ。

「……!?」

「どうしたの?あかねさん」

「いや、な、なんかぞわりとした感覚が」

「あらあら。まさか幽霊か何かしらね」

「……たぶん。違うと思うけど」

 あの耳たぶ美味しそう。

 じゅるり。

 私はずっとその子を見つめていた。

 じゅるり。

 通話友人   完



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