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野花怪異談N⑦巻【完結】
76話「視生蟲」
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「1」
ーー「北臓の自宅玄関前」ーー
八木楓、鳴沢栞、鳴沢朱音、榊原羅奈、黒木あかね以下5名は去年、蜂蜜をおそ分けしたのを受けて八木家当主代行の楓がお礼しようとわざわざ出向いてきた。楓以外は付き添いである。
「ようこそいらっしゃいました。ささ、お上がりください」
「お邪魔します」
鳴沢栞は車椅子なので玄関先に上がるときは北臓が玄関先まで担ぎ車椅子をあげた。
その鍛え上げた肉体は朱音が感心するほどだった。
ーーーーーーーー。
「ささ。こんなもんでよかったらどうぞ。……お嬢ちゃんの嫌いな虫は入ってないからの。ほほほ」
北臓から茶菓子が用意されたのは草山名物コオロギ煎餅と草茶である。
栞は顔が出ていたのか申し訳そうに煎餅を手に取る。
あかねは煎餅をたくさん摘み次々と頬張る。
そして朱音は草茶をドレイ達に嗅がせてクササを確認した。
羅奈はそのコオロギ煎餅の絵柄が気に入ったのかSNSでスクショしてフォロワーにあげていた。
「北臓さん。つまらない物ですが火室のからし饅頭です」
「おお!これはわしの大好物です。わざわざすみません」
つまらない物というのは大抵喜ばれることが多い。
火室のからし饅頭とは、真夏日に石山藩から将軍に献上された物である。火室のからし饅頭には練りわさびやからしが入っており、暑い日に食べるとスッキリするのである。フライパンに油で熱して饅頭を炒めて食べるのも通である。あかねはそれを手を差し出そうとするが楓から手を叩かれる。
「楓、あたしさー、怪異談聞きたくなってきたわ。ちょうど試験終わったからなんかない?」
「私もお姉様と同じ聞きたいです」
と、楓はうーんと悩んでいると北臓が言った。
「怪異談というよりあるぞ。わしが知人から聞いた話だけどな」
北臓は草茶を一口飲む。
「北臓さんから怪異談は楽しみですね。よかったら聞かせてもらいませんか?」
「ああ、わしでよければな。その知人は夢山病院に入院したんだがその方はーー視えるらしいじゃよーーそれは」
「2」
ーー「夢山大学病院」ーー
「肩山さん。回診ですよ」
女性看護師から呼ばれた私はベッドからゆっくりと身体を起こした。
私の名前は肩山佑月。64歳。
私はあるモノが目に入り視えるようになり、先週この病院に入院した。
「どうですか?肩山さん」
「はい。今でもばっちり視えます」
診察する担当医師からもばっちり視えるそれはーー黒い蟲達である。
その種類は様々であり、病室内にどこでもいるのだった。
「まー、害はないと思いますが生活に支障がおありと思いますので明日から頭の中のレイトゲン撮りましょう」
「わかりました。よろしくお願いします」
レイトゲンとは幽霊や蟲を撮ることができるレントゲンのことである。
私はこの一刻も早く視える蟲を取り除きたかった。
「3」
「肩山さん。お食事ですよ」
ちょうど夕食の時間になった。
私の病室に運ばれてくる食事に蟲達が溢れて見ると食欲がなくす。
しかし、どうも腹が減るので我慢して食べる。
今日の食事は白ご飯、豆腐の味噌汁、オランダ煮、ポテトサラダである。夢山病院ではよく地元名産のナスビを使った料理がよく出されるので私もナスビは好きだが、蟲達のせいで嫌いになりそうだった。
まず白ご飯を先に食べるが米粒に蟲が混じってるので我慢して食べる。次に豆腐の味噌汁の入った茶碗でゆっくりと飲むが味噌汁に泳ぐ蟲達が気になってしょうがない。そしてポテトサラダにまとわりつくムカデのような蟲を取って食べる。最後は私の大好きなオランダ煮だが肉そぼろに混じる蟲達と一緒に食べるので美味しいとは感じなかった。
蟲達は無味無臭であり、直接、掴んだり潰したり千切ったりもできる。うじゃうじゃと突如溢れたりするので私にとってはウザいしかなかった。
食欲はなかったので半分残してそのまま食事を片付けた後はそのまま就寝した。
「4」
「……さん。肩山さん」
「……ひゃあ!?」
私は呼びかける声がしたので目をうっすら開けると思わずハッと驚いてしまった。
「肩山さん。日中は寝ないでください。生活リズム崩れますよ?」
「……ああ、すみません」
その呼びかけた声は女性看護師だった。
私が驚いた理由は彼女の顔に草履蟲に似た蟲達が顔にこびりついてたからだ。
とりあえずオチオチと昼寝も出来なかった私は起きて何かやることにした。
ーーーーーーー。
私はまず病院内のコンビニで雑誌類を購入して病室内で読書するが肝心な部分に蟲達がこびりついて見られなかったのでちぎっては投げてちぎっては投げたがなかなか落ちついて読書が出来なかったので諦めてテレビを見ることにした。
しかし、ちょうどメジャーリーグ戦試合に肝心な所で蟲がこびりつくのである。テレビ画面に張り付く巨大なムカデは私でさえも取り除くことはできなかった。結局夜まで張り付いていた。
なので私は病院内で散歩することになった。
「5」
病院内は、患者や病院関係者が多く混雑しているがそこでも蟲達が溢れていた。
そんな時にふと柱の前に子猫サイズのイモムシのようなモノを見かけた。
「ふむ。かわいいな」
そのイモムシを撫でてみると人懐っこくて私に懐いたのでそのイモムシを私の病室まで連れてくことにした。
そのイモムシの名前をハナと名付けた。
「6」
私は蟲を見る目が変わった。
ハナを可愛がるうちに蟲達が愛おしく感じていたから。
ハナはよく甘えん坊であり、林檎が好きのようだった。
そして常に私のそばにいて寝室を共にしていた。
だがそんな日常にもお別れがやってくる。
と、私の元に担当医師が訪ねてきた。
「肩山さん」
「はい」
「来週月曜日、頭の寄生蟲を取り除く呪術室があります。それとその寄生蟲を珍しいのでサンプルとして我々の研究室にお預かりしたいのですがよろしいですか?」
「はい。お任せします」
来週月曜日にはこの蟲達やハナもお別れになるのは寂しかった。
だから、その日まではハナとよく遊ぼうと思っていた。
でも、まさかあんな目に遭うとは……。
ーーーーーー。
次の早朝、私は目を覚ますとそばにいたハナが忽然と姿を消した。
心配なった私はハナを病院内を探し回った。
そして案の定いた。
そこで無残にも蟲達が喰われたハナが。
「ああ。ハナ……」
私はゆっくりとハナのそばに近づきハナに群がる蟲達を取り除く。
ハナ、聞いてるかい?
ハナ、起きてくれよ。
大好きな林檎をあげるからさ。
だから、元気よく私の元へ懐いてくれ。
お願い、ハナ。
何度もハナに呼びかけたが全く動かなかった。
「7」
「これより呪術室行います」
私は呪術を受けて寄生蟲を取り除いてその1週間後に退院した。
あのウザかった蟲たちも視えることはなくなったが私にとってはぽっかりとした空虚感の穴が出来ていた。
その数週間後に私のスマホから夢山病院から連絡があった。
内容を聞いて私はすぐ夢山病院に向かった。
ーー「夢山病院研究所」ーー
「ああ、ハナ!」
そこに以前と変わりのないハナがいたから。
なんでも私の寄生蟲が投影したよるモノだったと教えられていたが別物であってもハナで変わることはなかったから。
「肩山さん。あなたにお願いあります。この子に名付け親になってくれませんか?」
当然、私はすでに名前は決まっている。
「ハナです。私は書類にサインしましたがどうかこの子をしばらくいられるようにしたいです。お願いします!」
「ええ。我々もそのつもりですからね」
私はずっとハナと一緒にいられるようになった。
ーーーーーー
「そうして、肩山さんはハナと一緒にいられる夢山蟲公園の管理者となったんじゃよ」
「うわーん。ハナちゃーんよがっだ」
朱音も思わず大泣きしてドレイ達が慰めていた。
「そうじゃ。おまえさん達もよければその場所にいかんかの?元気なハナが見られるからの」
と、楓達はうなずいた。
彼女達から蟲に対する偏見は少し消えていた。
ーー「夢山蟲公園」ーー
ここは蟲達が集まる公園である。
そこにサナギ姿のハナがいた。
「所長。ついにきましたね。ハナが」
「肩山さん。我々も驚いてますよ。お、もうすぐかえりますよ」
と、サナギから綺麗な蝶が来ると思っていたが実際は違っていた。
「パパ、お腹空いた」
「え?ハナなのかい!?」
サナギがかえったのは蝶ではなく妖精だった。
「ふむ。これは新種の蟲のようだな」
「そうですか。でもハナには変わりません。ハナ!おいで美味しい林檎があるから食べよう」
と、ハナは肩山のそばに近づき、そこで肩山が剥いた林檎を残さず平らげていた。
視生蟲 完
ーー「北臓の自宅玄関前」ーー
八木楓、鳴沢栞、鳴沢朱音、榊原羅奈、黒木あかね以下5名は去年、蜂蜜をおそ分けしたのを受けて八木家当主代行の楓がお礼しようとわざわざ出向いてきた。楓以外は付き添いである。
「ようこそいらっしゃいました。ささ、お上がりください」
「お邪魔します」
鳴沢栞は車椅子なので玄関先に上がるときは北臓が玄関先まで担ぎ車椅子をあげた。
その鍛え上げた肉体は朱音が感心するほどだった。
ーーーーーーーー。
「ささ。こんなもんでよかったらどうぞ。……お嬢ちゃんの嫌いな虫は入ってないからの。ほほほ」
北臓から茶菓子が用意されたのは草山名物コオロギ煎餅と草茶である。
栞は顔が出ていたのか申し訳そうに煎餅を手に取る。
あかねは煎餅をたくさん摘み次々と頬張る。
そして朱音は草茶をドレイ達に嗅がせてクササを確認した。
羅奈はそのコオロギ煎餅の絵柄が気に入ったのかSNSでスクショしてフォロワーにあげていた。
「北臓さん。つまらない物ですが火室のからし饅頭です」
「おお!これはわしの大好物です。わざわざすみません」
つまらない物というのは大抵喜ばれることが多い。
火室のからし饅頭とは、真夏日に石山藩から将軍に献上された物である。火室のからし饅頭には練りわさびやからしが入っており、暑い日に食べるとスッキリするのである。フライパンに油で熱して饅頭を炒めて食べるのも通である。あかねはそれを手を差し出そうとするが楓から手を叩かれる。
「楓、あたしさー、怪異談聞きたくなってきたわ。ちょうど試験終わったからなんかない?」
「私もお姉様と同じ聞きたいです」
と、楓はうーんと悩んでいると北臓が言った。
「怪異談というよりあるぞ。わしが知人から聞いた話だけどな」
北臓は草茶を一口飲む。
「北臓さんから怪異談は楽しみですね。よかったら聞かせてもらいませんか?」
「ああ、わしでよければな。その知人は夢山病院に入院したんだがその方はーー視えるらしいじゃよーーそれは」
「2」
ーー「夢山大学病院」ーー
「肩山さん。回診ですよ」
女性看護師から呼ばれた私はベッドからゆっくりと身体を起こした。
私の名前は肩山佑月。64歳。
私はあるモノが目に入り視えるようになり、先週この病院に入院した。
「どうですか?肩山さん」
「はい。今でもばっちり視えます」
診察する担当医師からもばっちり視えるそれはーー黒い蟲達である。
その種類は様々であり、病室内にどこでもいるのだった。
「まー、害はないと思いますが生活に支障がおありと思いますので明日から頭の中のレイトゲン撮りましょう」
「わかりました。よろしくお願いします」
レイトゲンとは幽霊や蟲を撮ることができるレントゲンのことである。
私はこの一刻も早く視える蟲を取り除きたかった。
「3」
「肩山さん。お食事ですよ」
ちょうど夕食の時間になった。
私の病室に運ばれてくる食事に蟲達が溢れて見ると食欲がなくす。
しかし、どうも腹が減るので我慢して食べる。
今日の食事は白ご飯、豆腐の味噌汁、オランダ煮、ポテトサラダである。夢山病院ではよく地元名産のナスビを使った料理がよく出されるので私もナスビは好きだが、蟲達のせいで嫌いになりそうだった。
まず白ご飯を先に食べるが米粒に蟲が混じってるので我慢して食べる。次に豆腐の味噌汁の入った茶碗でゆっくりと飲むが味噌汁に泳ぐ蟲達が気になってしょうがない。そしてポテトサラダにまとわりつくムカデのような蟲を取って食べる。最後は私の大好きなオランダ煮だが肉そぼろに混じる蟲達と一緒に食べるので美味しいとは感じなかった。
蟲達は無味無臭であり、直接、掴んだり潰したり千切ったりもできる。うじゃうじゃと突如溢れたりするので私にとってはウザいしかなかった。
食欲はなかったので半分残してそのまま食事を片付けた後はそのまま就寝した。
「4」
「……さん。肩山さん」
「……ひゃあ!?」
私は呼びかける声がしたので目をうっすら開けると思わずハッと驚いてしまった。
「肩山さん。日中は寝ないでください。生活リズム崩れますよ?」
「……ああ、すみません」
その呼びかけた声は女性看護師だった。
私が驚いた理由は彼女の顔に草履蟲に似た蟲達が顔にこびりついてたからだ。
とりあえずオチオチと昼寝も出来なかった私は起きて何かやることにした。
ーーーーーーー。
私はまず病院内のコンビニで雑誌類を購入して病室内で読書するが肝心な部分に蟲達がこびりついて見られなかったのでちぎっては投げてちぎっては投げたがなかなか落ちついて読書が出来なかったので諦めてテレビを見ることにした。
しかし、ちょうどメジャーリーグ戦試合に肝心な所で蟲がこびりつくのである。テレビ画面に張り付く巨大なムカデは私でさえも取り除くことはできなかった。結局夜まで張り付いていた。
なので私は病院内で散歩することになった。
「5」
病院内は、患者や病院関係者が多く混雑しているがそこでも蟲達が溢れていた。
そんな時にふと柱の前に子猫サイズのイモムシのようなモノを見かけた。
「ふむ。かわいいな」
そのイモムシを撫でてみると人懐っこくて私に懐いたのでそのイモムシを私の病室まで連れてくことにした。
そのイモムシの名前をハナと名付けた。
「6」
私は蟲を見る目が変わった。
ハナを可愛がるうちに蟲達が愛おしく感じていたから。
ハナはよく甘えん坊であり、林檎が好きのようだった。
そして常に私のそばにいて寝室を共にしていた。
だがそんな日常にもお別れがやってくる。
と、私の元に担当医師が訪ねてきた。
「肩山さん」
「はい」
「来週月曜日、頭の寄生蟲を取り除く呪術室があります。それとその寄生蟲を珍しいのでサンプルとして我々の研究室にお預かりしたいのですがよろしいですか?」
「はい。お任せします」
来週月曜日にはこの蟲達やハナもお別れになるのは寂しかった。
だから、その日まではハナとよく遊ぼうと思っていた。
でも、まさかあんな目に遭うとは……。
ーーーーーー。
次の早朝、私は目を覚ますとそばにいたハナが忽然と姿を消した。
心配なった私はハナを病院内を探し回った。
そして案の定いた。
そこで無残にも蟲達が喰われたハナが。
「ああ。ハナ……」
私はゆっくりとハナのそばに近づきハナに群がる蟲達を取り除く。
ハナ、聞いてるかい?
ハナ、起きてくれよ。
大好きな林檎をあげるからさ。
だから、元気よく私の元へ懐いてくれ。
お願い、ハナ。
何度もハナに呼びかけたが全く動かなかった。
「7」
「これより呪術室行います」
私は呪術を受けて寄生蟲を取り除いてその1週間後に退院した。
あのウザかった蟲たちも視えることはなくなったが私にとってはぽっかりとした空虚感の穴が出来ていた。
その数週間後に私のスマホから夢山病院から連絡があった。
内容を聞いて私はすぐ夢山病院に向かった。
ーー「夢山病院研究所」ーー
「ああ、ハナ!」
そこに以前と変わりのないハナがいたから。
なんでも私の寄生蟲が投影したよるモノだったと教えられていたが別物であってもハナで変わることはなかったから。
「肩山さん。あなたにお願いあります。この子に名付け親になってくれませんか?」
当然、私はすでに名前は決まっている。
「ハナです。私は書類にサインしましたがどうかこの子をしばらくいられるようにしたいです。お願いします!」
「ええ。我々もそのつもりですからね」
私はずっとハナと一緒にいられるようになった。
ーーーーーー
「そうして、肩山さんはハナと一緒にいられる夢山蟲公園の管理者となったんじゃよ」
「うわーん。ハナちゃーんよがっだ」
朱音も思わず大泣きしてドレイ達が慰めていた。
「そうじゃ。おまえさん達もよければその場所にいかんかの?元気なハナが見られるからの」
と、楓達はうなずいた。
彼女達から蟲に対する偏見は少し消えていた。
ーー「夢山蟲公園」ーー
ここは蟲達が集まる公園である。
そこにサナギ姿のハナがいた。
「所長。ついにきましたね。ハナが」
「肩山さん。我々も驚いてますよ。お、もうすぐかえりますよ」
と、サナギから綺麗な蝶が来ると思っていたが実際は違っていた。
「パパ、お腹空いた」
「え?ハナなのかい!?」
サナギがかえったのは蝶ではなく妖精だった。
「ふむ。これは新種の蟲のようだな」
「そうですか。でもハナには変わりません。ハナ!おいで美味しい林檎があるから食べよう」
と、ハナは肩山のそばに近づき、そこで肩山が剥いた林檎を残さず平らげていた。
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