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野花怪異談N⑤巻【完結】

60話「イシヤマリサーチ株式会社[お買い物編2]ー②ー」

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「5」

 私たちが服屋に向かう途中スマホの着信音が鳴った。

「あ、私だ。もしもしリーダー?」

 どうやら相手はリーダーからだった。

『おう。どうやら、迷子になったみたいだ和田鍋が』

「ええ!?だ、大丈夫なの?」

『今、俺と加奈守で探してる。音成悪いがお前も探すのを手伝ってくれ』

「わかったわ。今すぐ探しに行くわ」
 私はスマホ着信を切った。

「どうしたんですか?」

 安良田君が心配そうに尋ねた。

「あのね。和田鍋君がどうやら迷子になったみたいのよ」

「あらら。それは大変ね。幽霊で迷子になるとは前途多難ね」

 幽霊で迷子になることは実は大変な事である。実際、幽霊が迷子になった方が悪霊犯罪に巻き込まれたり、霊媒師が悪霊と間違えてお祓い浄化することもあり得るからだ。ただここのイシヤマデパートはそう言った類の事件が巻きこまれるのは0に近いが万が一のこともあり早く見つけ出さないといけなかった。

「僕も探しに行きますよ」

「私も行くわよ。もう靴でお腹いっぱいだし」

 (パチパチ)

 どうやら安良田君達も探しについてくるらしい。

「そう。ありがたいわ。落ち合う場所は一階のフードコーナーね。じゃあ二手に分かれるわよ。谷中さんと私で一階から上りで、安良田君と真鍋さんは最上階の5階の下りで攻めて行きましょう」

 私たちは手分けして探すことにした。

 ーー「1階ラウンジ10時47分」ーー

 私と姉御はいそうな場所探してみた。

「姉御いた?」

「いなさそうね。ここは気配が複数点在するから、私でも掴みとれないわね」

 和田鍋君は私でも微かに気配がする程度である。今、和田鍋君がバッチリ視える社員はリーダーと加奈守さんと姉御と同じ幽霊社員の真鍋さんである。

「ここはあらかたみたし、次は2階に行くわよ。最悪館内アナウンスに呼びかけるしかないわね」

 ーー「2階ラウンジ11時37分」ーー


「いた?」

「いないわ。縞模様の服、縞模様の服」

 和田鍋君の着ている服は青の縞模様のシャツである。
 幽霊が着用する服装は特殊な素材が出来ており、一般人が見ることはできない服である。

「いたわ!」

「えっ!?どこ?」

 姉御が指をさすと私はそれを見てガックリした。

「ねー。姉御、それマネキンよ」

「あれー?ごめん」

 体質や幽霊しか視えない服を着たマネキンである。一般人からみれば何も着てない裸に視えるらしい。

「ここはいなさそうね。次にいきましょ」

 私たちは次の階移った。

「6」

 ーー「3階ラウンジ11時38分」ーー

 私たちが3階に着くと、安良田君達と合流した。

「見つかった?」

「いや?全然だよ。どこに行ったんだろう」

「そう。ところでリーダーは?」

「さぁ。音成さんも見かけなかったの」

 まさか、リーダーまでもが迷子になったんじゃあなかろうかと疑ったときに館内アナウンスが流れた。
 ~♪

『館内放送のお知らせです。イシヤマリサーチ株式会社の音成茜様と他お連れ様至急、1階の迷子センターまでお願いします』

「あちゃ~。見つかったらしいわね。恥ずかしい」

「私も」

 (パチパチ)

 私たち女性陣は恥ずかしさのあまり穴の中があったら入りたい気分である。

「どうしたの?行かないの」

 安良田君は平然としていた。
 私たち重い足取りの中1階へ向かうことにした。

 ーー「????」ーー


「あら?今のアナウンス安良田さんのいる会社じゃないかしら?」

「どうしたの楓?」

「なんでもないわ。じゃあそろそろお食事にしましょう」

「わたしもうぺこぺこだよ~」

「亜華葉と同じく私も」

「おなかすいた」

「あらあら」

 クスクスと笑い声がした。

 ーー「1階迷子センター12時07分」ーー

 私たちはその場所にやってきた。
 と、そこに手を振るリーダーの手。

「あ、リーダー和田鍋君見つかりましたか?」

「おう。そこのこどもとされるがままにやられてるぞ」

 と、そこに体質、幽霊、キ族の子ども達になすがままにされてる和田鍋君。

「無事なら、よかったわ。なんではぐれたのかしら」

「あー。なんでも迷子の幽霊こどもを見つけてここに連れてくる間に懐かれたらしいな。ここの子ども達に」

「へー。和田鍋って意外な子煩悩ところあるのねー」

 和田鍋君を見ると満更ない顔をしてるわね。

「笠田さん。そろそろお昼しないと映画が始まってしまいますよ」

 と、六山さんの指摘通り時間は丁度お昼だった。

「そうだな。全員そろったしお昼するぞ。全く誰かさんのせいで買い物ろくに出来なかったぞ」

「私は少しハプニングが見れて楽しかったです」

 クスクスと加奈守さんは笑った。

「おい。和田鍋は行くぞ!」

 (パチパチ)

 和田鍋君は別れを惜しんで子ども達にお別れした。中には泣いてる子もいるし、よほど懐かれたみたいね。
 と、そこに呆然としたままの安良田君がどこか明後日の方向を見ていた。

「どうしたの?安良田君」

「あ、いや、なんでもないよ。じゃあお昼に向かおう」

「う、うん」

 この時の安良田君は少し様子がおかしかったが私はこの時は気にしなかった。
 でも、まさかあんな事が起きるなんて。

 ーー「1階フードコーナー12時30分」ーー

 私たちはここで軽く昼食を取った。
 笠田さんと六山さんはカレーうどん。
 加奈守さんと真鍋さんはハムレタスサンドイッチ。
 和田鍋君は笠間さんから罰としてお子様ランチ。
 私と安良田君は醤油ラーメンにした。
 真鍋さんと和田鍋さんが完食したので残した物をみんなで分けて食べた。……というより、私たちが和田鍋さんが食べたやつを食べるてなんの罰ゲームだろ?
 休憩時間ないまま私たちはそのまま映画館に向かった。

 ーー「2階イシヤマムービーシアターフロア13時15分」ーー

 ここの映画館内では一般フロアと私たちみたいな体質、幽霊、キ族フロアの二つに別れている。一応体質の方は一般フロアには入れるのだが暗黙の了解の元、ほとんどの方は後者を選ぶその理由としては、

「よし。お前ら体質障がい手帳持ってきてあるか?」

「持ってます」

 体質の方は体質障がい手帳を持って館内スタッフに提示すると映画館チケット代が半額なるのである。また幽霊の方は1割チケットや館内売られてる飲食が安くなる特典もついてる。ただしキ族は一般の方と同様な扱いなるのはなんか不公平なんだけどね。
 そして私たちは適当に飲み物やポップコーンを買って映画館に入った。

 ーー「映画館内」ーー

 私たちここで二手のチームに分かれて鑑賞する。
 私、安良田君、加奈守さん、谷中姉御は、あのブイブイ言わせたベストセラー作家の梅田虫男の原作「僕は虫になった君へ」の実写ラブストーリー映画である。この映画はヒロインの虫がある主人公に恩返しするために人間になって恋をする映画である。
 そしてリーダー、和田鍋君、真鍋さん、六山さんはクサウッドの主演名作アクション草映画「たくさん草にしろ!」を鑑賞する。セリフも草だらけであり、アドリブ草演出が実物である。
 本当は私は後者が見たかっただけど安良田君が前者を選んだので私は迷わずそれにした。
 しばらくしたら1人でネットレンタルビデオで見ようと思う。
 席の隣は安良田君だった。
 思わず私は心の中でガッツポーズした。
 スクリーン内は暗くなった。
 どうやら始まるみたいね。

「楽しみねー。楓さん」

「しっ。亜華葉始まるわよ」

「ムッシーの純情ラブコメどんなもんかな。グフフ」

「久しぶりの映画だわ」

 女子高生や若いカップル方もちらほらいるみたいね。
 私は映画を視聴した。


 中盤なると急展開になった。
 虫から人間になったヒロインが虫使いのおばあさまが恩返しが完了すると虫に戻ってしまうと言われて彼女は激しく葛藤してるの見て思わず感情移入する。
 そして彼女が恩返しする場面の終盤の時、そっと手を握ってくれる。

 (え!?安良田君!)

 その手は安良田君の手だった。
 私の心拍数は急上昇に上がっていて心臓がバクバクしてる。

「ねー!音成!?あんた霊魂出てるわよ。何をやってんのよ!」

 何やら姉御が言ってるけど私の耳は入らず無視をする。

「音成さん……」

「はい♡」

 チャンスよ。いけいけゴーゴー私。

「……胸が苦しい」

「はい♡私も……て、そんなに苦しくないけど」

 と、安良田君は突然胸を押さえながら苦しみ出した。

「安良田君!?だ、大丈夫なの?」

 と、みんなは何事なのか騒然とする。

『ア、ラ、タ、ア、ラ、タ、ハ、ワ、タ、サ、ナ、イ』

 どこかからか、不気味な声が反響して聞こえてくる。
 すると突然、映画スクリーンから、気味悪い骸骨ミイラが現れて複数の頭のドクロミイラが館内を飛び回った。
 ほかの観客はパニック騒然となり逃げまどう。

「なんなのあれ!?」

 姉御は怯えてしまってうずくまる。

『ア、ラ、タ、』

「音成さん、危ない!」

「え?」

 蠢くモノが私の方へ向かう。

 (カシャ)

 もうダメだと思ったとき、スマホのスクショが鳴る。

「あれ?先程いた化け物は?」

 と、目の前にいたのは堂々とスマホを片手に携える白粉肌の和服を着た少女。
 スマホの画面には先程の化け物があった。

「デリート」

 スマホに撮られた中の化け物は何やら電子分解されて消滅した。

「大丈夫。あなた」

 彼女の問いかけに私はうなずく。

『ジャ、マ、ヲ、ス、ル、ナ』

 化け物の本体が子分の群れがその白粉少女に向かう。
 白粉少女も動じてなく。たくみに誘導をこなして身軽でかわして浮遊してる化け物に向かってスクショを撮りまくり化け物を捕らえてくる。

「やだ。かっこいい」

 姉御はどうやら見惚れている。
 次々と出てくるミイラドクロに対して白粉少女は言った。

「きりないわね。こうなったら奥の手手段ね。亜華葉!お願い」

「バッチグー。みなさい化け物達。私の人差し指を」

 と、レトロワンピースを着用した少女が何やら片手に人差し指を突き出す。
 すると彼女の人差し指から何やら白いモヤの渦が出て何やらすごい引力で物凄い音を出しながら吸い込んでいく。そして周囲の浮遊してるミイラドクロが彼女の人差し指に吸い込まれていった。

『オ、オ、オ』

 本体の化け物は分が悪いと思ったのだろうかフッと消えた。

「もういいわよ。亜華葉」

「ふぃー」

 人差し指を突き出すの辞めるとあのすごいモヤの渦は消えた。

「楓、大丈夫?」

 楓という連れの少女達がやってきた。
 どうやら、一難去ったみたいね。

「ううぐぁあああ」

「安良田君!!大丈夫!?」

 安良田君は突然悶え苦しみ出した。

「大変!今すぐ人霊呼吸しないと!」

 と、ショートボブヘアーの少女が言った。

「え?え?ちょっ!?ちょっと!」

 楓とやら少女は安良田君の口に近づき接吻した。

「~~っ!!」

 すると吸われた安良田君は苦しみから表情から和らいだ。

「これでもう大丈夫」

 私はその光景を見て思わずとっさに動いた。

「あなた!」

「え?」

 館内にパァン!と乾いた音がした。
 私は頭の中真っ白になりいつの間にか楓とやらに平手打ちをした。
 彼女は叩かれてる頬を触れながら私を見つめていた。

 イシヤマリサーチ株式会社[お買い物編2]  完
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