182 / 268
鐘技怪異談W❺巻【完結】
137話「うしろ」
しおりを挟む
「1」
ーーそいつは立っている。
「…………」
ーーそいつは何も答えない。
「…………………………」
ーーその人はうしろにいる。
うしろ。
うしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろにいる。
あなたも大丈夫かしら?
ほら、うしろに……。
ーーーーーーーー。
「かーんーぱーい♪」
賑やかな人だかり。
私たち晩遅くに仕事帰りで立ち寄る。
ここの居酒屋は珍しく立ち飲み食いができる。
なんでも駅前にあるからお客さんが電車が乗り遅れないよう配慮もあるが私たちにとっては気軽に立ち寄りやすい場合もあるからね。
そんな私たちは仕事の上司をディスったり他愛もない恋愛話を聴かせるのだった。
「ウィー。あたし酔っ払ってきたぜー」
「ちょっと!?飲み過ぎよ」
そんな酒飲みである仕事の同僚でもある友人サチに嗜めながら私も飲んでいた。
「2」
「うげぇぇ」
「飲み過ぎよ」と電柱の近くで吐き気をするサチの背中をさする。
残りの友人達はそのままハシゴに向かい私とサチ2人はそのまま帰路に向かう最中だ。
ーーそんな時にブルっとくる重い縛りつけるような感覚が私に来たのだ。
なにか金縛りの感じによく似ていた。
身体が身動き取れないような痺れがやってくる。
(はぁ……はぁ……はぁ……)
私の呼吸が苦しくなり身体の熱がこもり汗が出る。
(はぁ……はぁ……はぁ……)
私は必死に呼吸を整えようとするとき私の耳元から、
ぞわりとするような誰かの息遣いがしたから。
思わずハッとして背後に振り向くのだが誰もいない。
いや、サチがいるのだが突如いなくなったのだ。
私はその場の周囲を確認したが私以外の通行人は誰もいなかった。
(もしかしてサチは先に帰ったのかしら?)
私は平静に呼吸を取り戻すと駅前近くに停車したタクシーを乗り込んだ。
「3」
タクシーで自宅のマンションで降りてそこでも何か誰かの気配をするのだ。
「…………」
私が歩くと靴音がダブり重なるのだ。
ーーもしかしてストーカー!?
私は再び呼吸が苦しくなり急いで自分のマンション自室に向かおうとする同時に「ねぇ」と誰かが呼びかける馴染みの女性の声がした。
「!?……なんだサチか」
呼びかけたのはサチだったがどこもいなかった。
しかし、私の背後に誰かがいることわかっている。
でも、感覚としては振り向いてはいけないと直感がするのだ。
なぜなら背後にたくさんの息遣いが聴こえてくる。
(はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……)
徐々に息遣いが大きく聴こえてくる。
こわくてこわくてこわくて振り向くことができない。
ガクガクと腰が震えてくるのがわかる。
誰かの助けを呼ぶほどの声が出ないのだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
私は恐怖でいっぱいだった。
その時、誰かが呼びかけた。
「……ねぇ、……うしろ」
ふと背後にいた息遣いが全てなくなったので私は恐る恐る背後に振り向いた。
するとガッと腕に掴まれた。
そこで私は身体ごと一気に引きずり込まれた。
私がいた場所は踏切内でありそのまますぐ電車が通過した。
「なにやってんの!?あんた死ぬ気なの!!」
掴まれた腕はサチだった。
あと一歩遅かったら私は電車に轢かれていた。
「4」
この駅前には戦時下において大量の住人達が空襲で亡くなった人たちがいたから。
私もこの場所に来るときに彼らの息遣いが聴こえてくる。
でも安心してあなたにもうしろにいるから。
ほら、うしろ。
うしろ 完
ーーそいつは立っている。
「…………」
ーーそいつは何も答えない。
「…………………………」
ーーその人はうしろにいる。
うしろ。
うしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろうしろにいる。
あなたも大丈夫かしら?
ほら、うしろに……。
ーーーーーーーー。
「かーんーぱーい♪」
賑やかな人だかり。
私たち晩遅くに仕事帰りで立ち寄る。
ここの居酒屋は珍しく立ち飲み食いができる。
なんでも駅前にあるからお客さんが電車が乗り遅れないよう配慮もあるが私たちにとっては気軽に立ち寄りやすい場合もあるからね。
そんな私たちは仕事の上司をディスったり他愛もない恋愛話を聴かせるのだった。
「ウィー。あたし酔っ払ってきたぜー」
「ちょっと!?飲み過ぎよ」
そんな酒飲みである仕事の同僚でもある友人サチに嗜めながら私も飲んでいた。
「2」
「うげぇぇ」
「飲み過ぎよ」と電柱の近くで吐き気をするサチの背中をさする。
残りの友人達はそのままハシゴに向かい私とサチ2人はそのまま帰路に向かう最中だ。
ーーそんな時にブルっとくる重い縛りつけるような感覚が私に来たのだ。
なにか金縛りの感じによく似ていた。
身体が身動き取れないような痺れがやってくる。
(はぁ……はぁ……はぁ……)
私の呼吸が苦しくなり身体の熱がこもり汗が出る。
(はぁ……はぁ……はぁ……)
私は必死に呼吸を整えようとするとき私の耳元から、
ぞわりとするような誰かの息遣いがしたから。
思わずハッとして背後に振り向くのだが誰もいない。
いや、サチがいるのだが突如いなくなったのだ。
私はその場の周囲を確認したが私以外の通行人は誰もいなかった。
(もしかしてサチは先に帰ったのかしら?)
私は平静に呼吸を取り戻すと駅前近くに停車したタクシーを乗り込んだ。
「3」
タクシーで自宅のマンションで降りてそこでも何か誰かの気配をするのだ。
「…………」
私が歩くと靴音がダブり重なるのだ。
ーーもしかしてストーカー!?
私は再び呼吸が苦しくなり急いで自分のマンション自室に向かおうとする同時に「ねぇ」と誰かが呼びかける馴染みの女性の声がした。
「!?……なんだサチか」
呼びかけたのはサチだったがどこもいなかった。
しかし、私の背後に誰かがいることわかっている。
でも、感覚としては振り向いてはいけないと直感がするのだ。
なぜなら背後にたくさんの息遣いが聴こえてくる。
(はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……)
徐々に息遣いが大きく聴こえてくる。
こわくてこわくてこわくて振り向くことができない。
ガクガクと腰が震えてくるのがわかる。
誰かの助けを呼ぶほどの声が出ないのだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
私は恐怖でいっぱいだった。
その時、誰かが呼びかけた。
「……ねぇ、……うしろ」
ふと背後にいた息遣いが全てなくなったので私は恐る恐る背後に振り向いた。
するとガッと腕に掴まれた。
そこで私は身体ごと一気に引きずり込まれた。
私がいた場所は踏切内でありそのまますぐ電車が通過した。
「なにやってんの!?あんた死ぬ気なの!!」
掴まれた腕はサチだった。
あと一歩遅かったら私は電車に轢かれていた。
「4」
この駅前には戦時下において大量の住人達が空襲で亡くなった人たちがいたから。
私もこの場所に来るときに彼らの息遣いが聴こえてくる。
でも安心してあなたにもうしろにいるから。
ほら、うしろ。
うしろ 完
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【全64話完結済】彼女ノ怪異談ハ不気味ナ野薔薇ヲ鳴カセルPrologue
野花マリオ
ホラー
石山県野薔薇市に住む彼女達は新たなホラーを広めようと仲間を増やしてそこで怪異談を語る。
前作から20年前の200X年の舞台となってます。
※この作品はフィクションです。実在する人物、事件、団体、企業、名称などは一切関係ありません。
完結しました。
表紙イラストは生成AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる