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鐘技怪異談W❷巻【完結】
112話「痛がるおばあさん」
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「1」
ーー「鐘技家」ーー
私だってまだ動けるんだからね。
よいしょ。よいしょ。
ハッ!ハッ!
ふむふむ身体は丈夫ね。
よいしょ。グギッ!
「結局無理して動いたのですね」
「ふん。大したことないよ。あたたた痛い痛い」
「当主。ほらほら無理しちゃって」
「く。ざまぁないね。そんなわけで私怪異談思いついたんだよ。聞いてくれないかね?」
「はいはい。聞いてあげますよ」
私は寝たきりのまま怪異談を披露してあげた。
「2」
暗い住宅路。
僕は夜分遅くに自分のアパートの帰宅最中の時だった。
そこの電柱そばにうずくまくるおばあさんがいた。
「どうしましたか?大丈夫ですか?」
僕は親切心からおばあさんに尋ねたのだ。
するとおばあさんは、
「イタイ、イタイ、イタイ」とつぶやくのである。
「どこが痛いのですか?」と言っても先程からイタイ、イタイしか伝わらなかった。
僕は痛そうだったので救急車を呼ぼうと目を離した隙に痛がるおばあさんの姿を消していた。
僕はアパートに帰宅すると、かいた汗を流すため浴室でシャワーを浴びた。
あのおばあさんは一体なんだったろうか?と僕は少し気になっていた。
ふと、少し髪を洗っていると何かが聞こえてくる。
「イタイ、イタイ、イタイ」
僕が道中に出会ったおばあさんの痛がるあの声である。
しかも、頭の中に耳障りするほど残るから、僕は不快感を感じていた。
今日も寝静まる晩、日に日に増して聞こえてくる。
あの痛がるおばあさんの声がする。
僕の両耳を防いでも聞こえてくる。
しかし、この声はどこから聞こえてくるのだろうか?
そこで眠れない僕は声の頼りに耳を澄ませてみたら、どうやら隣の薄い壁からはっきりと聞こえてくるのだ。
「ここかな?」
「イタイ!イタイ!イタイ!」
まるで僕の声に反応するかのように大きな声で言うのだ。
あまりにもうるさかったから、隣の部屋まで向かった。
ーー「隣の自室」ーー
僕はチャイムの呼び鈴を鳴らしたが返事はこなかった。隣の部屋はほとんど付き合いはなかった。たしか、息子さんと母親の2人暮らしと聞いていたが最近顔合わせもなかった。
「イタイ!イタイ!イタイ!」
先程のおばあさんの叫び声がした。
僕は何かあった違いないと勝手にその部屋をあがるときつい異臭がしてくるのだ。僕は鼻をつまみながら居間へあがるとたしかにいた。
息子さんとおばあさんの遺体が。
僕はこの後すぐ警察に通報した。
どうやら、無理心中を図ったらしい。
おばあさんは僕に教えたかったかもしれない。
自分がイタイであることにーー。
「3」
「おばあさま。腰はもう大丈夫ですか?」
「なーに。一晩寝れば大丈夫さ。ほっほっほっグギ!あたたたた」
「もう。おばあさま無理しないでくださいよ」
「ははは。これが本当に痛がるおばあさんですね」
黒岩は他人事で余所見してそのまま足の小指にタンスの角をぶつかり痛がる。
「イタイモノ知らずね」
友紀はそんな彼らの行動を見てそう感じた。
痛がるおばあさん 完
ーー「鐘技家」ーー
私だってまだ動けるんだからね。
よいしょ。よいしょ。
ハッ!ハッ!
ふむふむ身体は丈夫ね。
よいしょ。グギッ!
「結局無理して動いたのですね」
「ふん。大したことないよ。あたたた痛い痛い」
「当主。ほらほら無理しちゃって」
「く。ざまぁないね。そんなわけで私怪異談思いついたんだよ。聞いてくれないかね?」
「はいはい。聞いてあげますよ」
私は寝たきりのまま怪異談を披露してあげた。
「2」
暗い住宅路。
僕は夜分遅くに自分のアパートの帰宅最中の時だった。
そこの電柱そばにうずくまくるおばあさんがいた。
「どうしましたか?大丈夫ですか?」
僕は親切心からおばあさんに尋ねたのだ。
するとおばあさんは、
「イタイ、イタイ、イタイ」とつぶやくのである。
「どこが痛いのですか?」と言っても先程からイタイ、イタイしか伝わらなかった。
僕は痛そうだったので救急車を呼ぼうと目を離した隙に痛がるおばあさんの姿を消していた。
僕はアパートに帰宅すると、かいた汗を流すため浴室でシャワーを浴びた。
あのおばあさんは一体なんだったろうか?と僕は少し気になっていた。
ふと、少し髪を洗っていると何かが聞こえてくる。
「イタイ、イタイ、イタイ」
僕が道中に出会ったおばあさんの痛がるあの声である。
しかも、頭の中に耳障りするほど残るから、僕は不快感を感じていた。
今日も寝静まる晩、日に日に増して聞こえてくる。
あの痛がるおばあさんの声がする。
僕の両耳を防いでも聞こえてくる。
しかし、この声はどこから聞こえてくるのだろうか?
そこで眠れない僕は声の頼りに耳を澄ませてみたら、どうやら隣の薄い壁からはっきりと聞こえてくるのだ。
「ここかな?」
「イタイ!イタイ!イタイ!」
まるで僕の声に反応するかのように大きな声で言うのだ。
あまりにもうるさかったから、隣の部屋まで向かった。
ーー「隣の自室」ーー
僕はチャイムの呼び鈴を鳴らしたが返事はこなかった。隣の部屋はほとんど付き合いはなかった。たしか、息子さんと母親の2人暮らしと聞いていたが最近顔合わせもなかった。
「イタイ!イタイ!イタイ!」
先程のおばあさんの叫び声がした。
僕は何かあった違いないと勝手にその部屋をあがるときつい異臭がしてくるのだ。僕は鼻をつまみながら居間へあがるとたしかにいた。
息子さんとおばあさんの遺体が。
僕はこの後すぐ警察に通報した。
どうやら、無理心中を図ったらしい。
おばあさんは僕に教えたかったかもしれない。
自分がイタイであることにーー。
「3」
「おばあさま。腰はもう大丈夫ですか?」
「なーに。一晩寝れば大丈夫さ。ほっほっほっグギ!あたたたた」
「もう。おばあさま無理しないでくださいよ」
「ははは。これが本当に痛がるおばあさんですね」
黒岩は他人事で余所見してそのまま足の小指にタンスの角をぶつかり痛がる。
「イタイモノ知らずね」
友紀はそんな彼らの行動を見てそう感じた。
痛がるおばあさん 完
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