[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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野花怪異談N④巻【完結】

50話「つぶやきボクシング2」

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「1」

 ーー「紙野だいご自宅」ーー

「今日こそぶっとばしてあげますわ」
「望むところだぜ」
 八木楓、星田星夏、鳥河大軌の3人は紙野だいごの自宅に遊びにきた。
「うふふ。負けませんわ」
「……勝つ……」
 彼らがやってるの最新作のケリ魔将軍シリーズのケリ魔ショウタイムという4人プレイ対戦格闘ゲームである。
 紙野だいごは根っからのゲームマニアであり、掘り出し物やゲームマニアを唸りだすものには目利きはある。
 永木桜や翼と違って当たりばったり買わないので財布の中身は余裕がある。また、だいごの両親はゲーム会社を経営してるので新作ゲームがだいごの自宅に届けられるという物があるが。
「なぁ、楓。ゲームの怪異談なんかないか?」
 だいごはゲームプレイしながら、楓に問いかける。
「そうですね……丁度いいものありますよっと!」
 楓は巧みに高度なアクション操作を披露する。
「ふわぁ!?なんなんですの!お返しですわ」
 と、星夏も際どいアクション操作を披露する。
「無視」
 鳥河大軌は高度なアクション操作を披露するが無視されて封じられる。
「おまえらもなかなかやるな!と。楓よかったら、その怪異談を披露してくれないかな」
 だいごも負けじと高度なアクション操作披露するのについ身体も動く癖がある。
「そうですねと!では聞かせてあげましょう!と」
 楓もつい身体が動くほどゲームに熱中して怪異談を語ってくれた。

「2」

 ーー「石山県粒山市粒竹町」ーー

 よっ!また会ったな。
 え?誰だかわからないって?
 俺の名前は桂山粒壱。
 そしてとなりでつぶつぶとつぶやいてるのは俺の相方でもあり、弟の桂山粒時だ。
 俺たちは今、粒願寺というお寺を目指している。
「粒時!今日は思いっきりぶつけていいからな!」
「つぶ!」
 粒時も今回やる気まんまんだ。
 粒願寺では毎年ある開催をされている。
 この日のために俺たちは猛特訓してきた。
 そして粒山駅から徒歩で15分の距離でついた。



 ーー「粒願寺」ーー

「では、全員そろった所で始めようかな」
 つぶ住職はさっそく準備に取り掛かった。
 周囲の参加者達は緊張が走る。
 つぶ住職はマイクを取り出してとなりにいるつぶ尼僧に手渡した。
「つっっぶぅぅぅナァァァァァァルゥゥィィィァァァァー。つっっぶぅぅぅラァァァァァァンンンントゥゥゥゥ」
 よくあれだ。格闘技で開催される号令をかけるやつに似ていた。
 そしてつぶ尼僧はつぶ住職にマイクを返す。
「まことにお待たせしました。第八回つぶ大乱闘の開催を行います。今回歴戦で勝ち抜いたつぶつぶ王者選手の入場です」
 観客はこの日を待ってたかのようにカチカチと鳴らす。
 ちなみに観客はつぶつぶ人形(何かに取り憑かれた人形)である。
 早速俺たちは用意したつぶつぶ人形を取り出して専用コントローラーとつぶつぶマスクをつぶつぶ人形にドッキングする。途中つぶつぶ人形が変な喘ぎ声を漏らしたのはいつものことだから気にしない。
 選手達が準備するとつぶ住職は巨大なタブレット端末を取り出してつぶ人形のケーブルにドッキングする。ここでも興奮する特殊な性癖のつぶ人形がちらほらいるがいつものことなので気にしない。
 そしてタブレット端末のモニター画面が映し出されてつぶ住職は手慣れた手つきで画面操作してアプリつぶつぶ大乱闘をタップしてゲームアプリ画面を開いた。
 ふふふと思わず笑みが溢れた。
 つぶつぶ大乱闘とは世界つぶ教信者たちために作られた対戦つぶ格闘ゲームであり、全世界100万ダウンロードしたヒットゲームアプリである。公式大会が開かれるほどつぶ教信者の熱中になるゲームである。
 キャラクター選択画面を出ると俺たちはいつも使い慣れたキャラを選択する。
 そしてつぶ対戦者が選択終えるとつぶ住職をマイクを使う。

「3」

「では、これより対戦開始のカウントを行います」
 いよいよだなと俺は思わず唾を呑み込んだ。
 4!
 3!
 2!
 1!
 粒乱!とつぶ住職はタブレット端末画面にスタートタップする。
 ゲーム画面に粒乱とまんま表示されたあと、対戦が始まった。
 ここで先手必勝と俺と粒時は1人の対戦相手に粒コンビネーションを仕掛ける。粒コンビネーションとは、俺が対戦相手を場外に投げた後、粒時が下にぶつけるという高度な戦術でありテクニックを要するためタイミングが少しズレると失敗する。
 俺たちはこのテクニックを要するため1日1時間に60回こなして60回中58回というほぼマスターしたのだ。
 そして1人また1人と次々とぶつけ落としていく。そして対戦相手の残機ライフ0になると同時に「ぐげっ」と変なうめき声を漏らしてつぶ人形の頭がボンと吹き飛んだ。
 つぶ人形の身体には白い湯気が出ている。対戦相手は悔しそうながらつぶつぶとつぶやいてた。
「つーぶめくそうリタイア」
 つぶ住職は対戦相手の脱落者を発表する。
 ようやく1人リタイアさせた。この調子で1人また1人脱落させていく。だが俺たちの快進撃はここで終わる。なぜなら奴らが動き出したからだ。
「!?」
 やつらは集中的に俺を狙いうちにしていく。
 そしてみるみるうちに残機ライフ0なり、俺のつぶ人形は「ぐはっ」と明らかに悪逆魔王のセリフが飛び出してきて静かに倒れた。
「朝子ーーー!?」
 俺のつぶ人形を何度も呼びかけるが応答しても応えない。
 返事がないただ安らかに眠ってるようだった。
「くそー!!粒時!俺の朝子の仇をとってくれ!」
「つぶ!」
 粒時はやる気満ちた目で奴等を対峙した。

「4」

 ここでやつらとはなにか?
 やつらとは世界公式粒乱トップランカー上位4位を独占したやつら四天王である。
 まず四天王の1人目ガル尾、彼の噛みつきするつぶやきは噛みつかれたらなかなか外せない。
 2人目ギチ子、ギチギチと嚙み鳴らすつぶやきは相手に恐怖のどん底にたたきぶつける。
 3人目ジリアン、彼の舌触りの歯茎をジリリと鳴らすつぶやきは相手の危険を呼び起こす警報である。
 4人目べらん郎、べらん口調の独特なつぶやきは時に対戦相手を惑わす長いベロが特徴である。
 以上やつら四天王の紹介だ。やつらはなかなか強いが粒時も負けてない。やつらにとっておきの必殺技を持ってる。
「粒時!アレをぶつけろ!」
「つぶ!」
 俺はかけ声をともに粒時に必殺技を使うよう指示をした。
 そして四天王たちはとっさに粒時を封じ込めようとした。
 だがもう遅い。
 粒時はもうすでにぶつける準備をしている。
「つぶつぶ……」
 俺は息を呑んだ。やつらの動きがまるでスローモーションかのように遅く感じた。これもプロの領域がなせる技である。
 そして粒時の細い目が見開き必殺技が発動した。
「ぶつがん」
 キャラクターの大きな渦の玉がやつらを巻き込む。そして耐えきれないつぶつぶ人形は何かよんではいけない叫び声を出しながら爆発する。そして俺たちを巻き込みあられもない方向で飛ぶ俺たち参加者。
「つぶ……♪」
 粒時は満足したのか、頭が真っ白に燃え尽きた。まぁ、髪はないので眉毛は白くなっているが。
 そして観客のつぶつぶ人形はガチガチと怯えて鳴らし続けていた。

「5」

「あー。負けた」
「あらあら」
「勝ちましたですわ!」
「無念」
 楓達は充分ゲームを堪能して、星夏が見事対戦を優勝した。
「そう言えば怪異談の内容なんだっけ?」
「なんでしたけ?」
 彼らはあまりゲームに熱中するほど怪異談の内容を忘れたようだった。
「あらあら。たしか……私も忘れちゃいましたわ」
 楓も語る内容を忘れたようだった。
「あはは。まぁ。ゲームに集中すぎると完全に頭が入ってこないよな」
 と、だいごのスマホの着信音が入る。
「はい。もしもし。え?あ、いや?それは!その?いやいや?忘れてない……すみません。それだけは許してください!」
 だいごが必死に弁解する。
「あら?そう言えばこの後、咲夜さんとお買い物するのではなかったのですかね?熱中するほど大事な用事さえもすっかり抜け落ちましたか?」
 クスクスと楓達は笑った。
 そして鳥河大軌は怪異談の内容を覚えて披露しようとしたがタイミングを失って無視されていた。

 つぶやきボクシング2    完
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