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野花怪異談N④巻【完結】

48話「独裁行進曲♪」

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 ーー石山武道館会場ーー

 たくさんの人だかり会場。
 人々は世間をにぎわかすカリスマのシキを見ようとネット販売の前売りチケット完売してSNS上で高額転売するほど人気である。 
 ここに黒のタキシードで決まり黒の蝶ネクタイの梅田虫男と黄色のタキシードで右ポケットに向日葵のさした梅田花郎が現れる。

「兄貴、俺たちの席はどこだ?」

「えっと……あ、あそこだね」

 と、梅田兄弟は予約した席を行く。
 そして楓達と合流する。

「お!おまえ達もきたか」

「ええ。先生たちもこんばんは」

 八木楓、永木桜、永木翼の3人組だった。
 楓は真紅のドレスを着込んで口紅にはやや赤く塗っており少し濃い。桜はピンクのドレスに少し厚化粧している。翼は銀のタキシードに鳥の羽を身につけている。

「あれ?瑠奈と命それに理奈はどうした?」

 と、楓に問いかけると。

「瑠奈は風邪熱でネコんでいます。命さんはどうじんそくばいかいで忙しいみたいです。理奈さんは母親の漫画のお手伝いに行かれました」

 と、楓は残念そうに言う。

「そっか。瑠奈のやつも星バカの友情出演に楽しみしてたからな。俺たちだけでも楽しもうぜ」

「そうですね」

 と、花郎と翼はうなずく。

「あ、もうすぐ始まるよ」

 桜の指す方向にスライドカーテンが徐々に上がってくる。

「僕、ワクワクしてます」

「星夏ちゃんどこにいるのかなー?」

 楓達はこのコンサートを今かと待ちわびていた。

「あれ?なんか忘れてるような?」

 虫男はふと周囲を確認したが気のせいかと思いコンサートに集中した。

 ーー鶏河の自宅ーー


「へっくしゅん」

 亜華葉はくしゃみをする。
 大軌は腕立て伏せでムシ肉体を鍛え続けている。
   手鞠は漫画を読んでいた。

「99…100…101」

    亜華葉は大軌の鍛えてる回数をむなしく数えている。

「へっくしゅん!ムシかぜかな?」

 2度目のくしゃみを亜華葉はした。

 ーー武道館ステージーー

 シキ者は中心の台に立ち一礼する。
 会場は拍手喝采で熱狂に包まれており演奏者も演劇者も緊張して強張っている。
 今回シキをとるのは世の中を圧倒するカリスマシキ者、またの名を独裁シキ者。
 このコンサートの売りは、オペラもあり演劇もあり喜劇もあり悲劇もあり衝撃ありのエンターテイメントをお届けする。
 早速彼のシキが始まるので見ることにする。
 まず母親役のオペラ女性歌手がちゃぶ台の机に座ってテレビを見る。
 と、そのとなりに父親役のオペラ男性歌手が新聞紙を広げてあぐらを書いて読んでる。
 最後に男女の子供劇団員がクルマのおもちゃを使って遊ぶ。
 と、ここでシキ者は力を込めてシキする。
 ステージの上から突然死んだイナゴの大群が降ってくる。その舞台の演じてる家族達は傘を広げてその場を凌ぐ。
 さらにシキ者はシキに力をこめる。シキ者の肩に誰かが指でトントンするが気づかない。
 ステージ上に鬼相撲張り手軍団が舞台上にある物を破壊しつくして演奏者はパニックなり逃げ惑い追い詰められる。
 さらにさらにシキ者は力こめるとシキ者の肩に誰かが肩をたたくが気づかない。
 その演じてる家族は相撲軍団から逃げようとするが落とし穴に一家ごとはまる。そして生えてる無数の腕から引っ張っられて沈みかける。
 さらにさらにさらにシキ者は力をこめる。ここでもシキ者の肩を強くゆさぶるがムシする。
 その一家はなんとか妻と女の子を先に引きあげるが別の劇団員の青年がフンコロガシみたく器用に無数にある開いた口の大玉を転がして夫と男の子の穴を塞いで閉じてしまう。
 シキ者はここでも強くこめる。もはや彼のシキに止める者はいなかった。
 生き延びた未亡人と女の子の目の前にチョビ髭を生やした幽霊青年劇団員にちゃぶ台のテーブルを真っ二つに壊す。
 とさらに思いっきりシキ者は力を込めようとするが思いっきり誰かの肩をつかまれ「おい!」と叫ぶ男性がいたので思わずシキ者は文句を言った。

「なんだよ!?」

 と、シキ者は男性の顔を見て青ざめてしまう。

「交代の時間だぞ」

 なぜならそこにもう1人の自分自身の姿がいて自分と同じ顔の風船を持っていた。
 シキ者達の周囲には炎上する建物や瓦礫の山でありサイレンや老若男女の悲鳴が鳴り響いてた。
 風船持ったシキ者は青ざめてるシキ者をゆっくりと行進させて薄暗い建物の中に入り彼らが見えなくなるとそこに『パァン!』と乾いた大きな音がした。
 薄暗い建物の中からシキ者1人だけ現れて代わりにシキをとる。
 そこで彼は軽快なシキをとり、演奏者と劇団員を使ってステージ上に落ちてるゴミや瓦礫を撤去して壊れた建物を修復して別の家族がちゃぶ台を持って最初から演じて繰り返す。以上これが独裁行進曲の流れである。

 ーー石山県独歳市狂交町ーー

 人だかりで鑑賞する観客達。彼らはゴーストタウンとなったこの町にいる。
 特等席を見た楓達は満足感で笑みを浮かべていた。

「星田さん決まってたね」

「ああ、そうだな。まさしく迫真の演技だったぜ」

 アー、アーとここで花郎は喉の調整を図る。

「やっぱいいもんですね~。僕もなんだか歌いたくなっちゃいます。俺の~♪押し花~♪」

 と、花郎が演歌が歌いだすと空の宙に紙切れみたいなものが集まりだす。

「あらあら、スイッチが入っちゃいましたか?」

 楓はクスクスと笑う。

「ここでは独占仕放題だからな。兄貴も下手したら毒菜で裁かれるぞ?」

 と花郎はゾクっと感じたので歌うのやめる。

「おっといけませんね。じゃあみんなで歌いましょうか♪」

 みんなは賛同して歌った。そのゴーストタウンの地面には青白い透明な野花畑が咲かせた。



 ーーとある独裁者がいる国の総統室ーー

「総統!わたしは反対です考え直してください!」

「連れて行け」

 独裁者の政策に反発する者達を次々と粛正していく。
 独裁者はしばらく席に立ちトイレに向かう。そこで用を足した後、そこに洗面台の鏡を見て顔を洗う。そこにふと背後から気配がした。



 ふと振り向くと自分と同じ服装着た骸骨姿が立っていた。



「交代の時間だぞ」




 独裁行進曲♪   完
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