66 / 205
野花怪異談N④巻【完結】
47話「自転車2」
しおりを挟む
ー1ー
ーー????ーー
真っ暗な車道。
かすかに電柱や住宅の明かりで照らす場所に悲惨な交通事故が起きた。
その激しい衝突があっだだろう自家用車はフロントガラスにヒビが割れているがもっと悲惨なのは衝突した無残な自転車である。
その車輪は激しく折れ曲がっており、ペダルはグネグネと曲がっている。
そしてそこに横たわるのは少女の遺体。
そして遠く影から見守るその遺体であるはずの少女と自転車はーー。
ーー安東はるかの自宅先ーー
「行ってきまーす!」
ドタバタな慌ただしい日常である私、安東はるか、15歳。
今日も通学のために愛用のママチャリ自転車を漕ぐ。
漕いで漕いで漕ぎまくる。
何故なら人生最大ピンチの大遅刻であるから!!
「ああああああもう!!!?」
そう、私は絶対死守しなければならない。これ以上遅刻すれば留年に近づくという秋の季節。
そんな私でも先日ちょうど手頃価格の中古自転車を買ったのだ。
いやいや。それ以前に買うべきだろうというドケチの節約思考の私の後の祭りである。
はぁー。あの鬼河原先生にまた絞られるるるると私は必死になって漕ぎまくったのだ。
ーーその時、自転車が急に傾き出した。
「はわわわ!?」
その時、私は自転車が盛大にガーシャンと転げ落ちた。
「いったーい!」と痛みに嘆く私。
しかし、その前方に急激に猛スピードで走り去るバイクがあった。
あと一歩の所で盛大な事故に繋がっていた私。
その時はあまり気づかずにそのまま再度自転車に乗り込み漕いだ。
ー2ー
ーー花咲高校職員室前ーー
「……で?あなたなんで寝坊するというより、呆れてモノが言えないわね。その格好見れば」
「うう。すみません」
鬼河原先生にこっぴどく絞られる私。
そして私はなんとか遅刻は防げたモノの、いくつか自転車が何度も転倒してあちこち擦り傷や転倒したあとの傷によりいくつか絆創膏や包帯を巻かれているほどの痛々しい姿になっている。
「ま、今日は免じて許すけど。あなたも寝坊しないよう、しっかりと早めに寝なさい」
「……はい」
ぐぅーの音もでなかった。
いや、ぐぅーの音は私の空き腹である。
その音を聴いた他の先生からもクスクスと笑ったの見て少し恥ずかしかった。
ーー体育館ーー
私はバトミントン部に所属してる。
「はるか!いったわよ!」
私はパートナーのサヤカと組んで相手の飛ばしたシャトルをそこで跳ねてスマッシュを決める。
見事決まり得点が入った。
「お?はるかケガのわりには調子がいいな。次の県大会がんばれよ」
と、犬丸コーチの激励コメントに私は満更でもなかった。
ーーーーーー
部活が終わり夕暮れ帰宅時にいつものアレがくるのだ。
「ふえ!?」
強く何かが引っ張られる強いチカラが。
ガッシャーンと盛大な音を出しながら自転車ごと転ける私。
決まっていつものように前方スレスレで通り過ぎる自家用車。
「……もしかして私、呪われた!?」
その時の異常さに私は気づいてしまう。
そう、この自転車が私に事故を誘っていると……。
そして私の離れてる所から、謎の少女の人影と乗り込んでる自転車が私を見ていたが目を離した隙にいつのまにか姿を消した。
ー3ー
ーー鳥河大軌の自宅ーー
「……という怪異談というより相談なんだけど」
私は従兄弟の鳥河大軌こと無視家に診てもらったが。
「特に何も感じないな。俺はまだ見習い無視家だからあんまり期待しないでくれ。この場合に餅は餅屋に任せた方がいいだろう」
というわけでその手の人にわざわざきてもらった。
「どうですか?」
「……そうですね」
彼女は神木童心神社の巫女見習いの神木命さんである。彼女の家はお祓いの心得があるからね。
そして体質持ちの八木楓さんもわざわざ来てもらった。彼女は家柄のしきたりで白粉肌を身につけて普段着は和服を着込んでいる。あの石山県で有名人なので私はびびっていたがそのままフランクでいいわよと言われたので普通に接している。
「……私はうっすらと大軌になんらかのつかれてるかは感じたけどこの自転車からは私には何も感じないわね」
と、楓さんからのコメント。
「ええ……」
残念だがまだ命さんがある。
そして、命さんも意外なことを言った。
「……これは死霊の仕業ですね」
「死……霊?なんですか??それ!?」
命さんは目を閉じて静かに語ってくれた。
ー4ー
死霊とは、人が死んで間もない頃に生前の記憶を持ち人々になんらかの害をもたらす存在です。
もっとも生き霊とは似ていますね。
しかし、この死霊は変ですよ。
なぜならこうして生きてるのに死霊として生まれるのは辻褄が合わないですよ。
そう、この死霊は安東はるかさんの死霊なんですよ。
ーーーーーー
「わ、私の!?ちょっと!?待って?なんで私が死んでることになるわけ??いや?死霊はわかったけど生霊じゃないの?というかその私自身はなんか恨みを買うような場面あったわけ?」
私の脳内には混乱していた。
そして命さんはさらに霊視してみると言ってそして意外な事を言った。
「安東さん。あなた生死をさまよう事故にあってませんか?」
「え……まぁ、中学生の頃、一度自転車の交通事故であったけど。も、もしや!?」
そんな。私は……。
「あなた、魔界の者と契約しましたね」
私はうなずいた。
「はるかさん。あなたにとって二択あります。まずひとつ目はどちらか死を受けいれること。つまりあなたが死霊と身体の魂と交換することですね。そのときあなたは死霊になり成仏される」
「いや!?絶対にいやだわ!!私、まだ生きたいし。やることいっぱいあるもん」
「では二つ目は死霊と決別することですね。しかし、魂は半分削られるのでもしかしたら生前生きられるのは半分以下の寿命になりますがよろしいですか?」
「……仕方ないわ。やって頂戴」
「わかりました」
私はしぶしぶ承諾した。
「……」
ー5ー
「いってきまーす♪」
私はいつものように通学のママチャリを漕いで行く。
そう、私は先週魂を半分にした。
普段あまり変わらないけどこの生きてる実感を大事にしたい。
そう、これからの人生がーー。
だけど私には来なかった人生が。
何故なら跳ねられたからたったいま。
勢いよく衝突するダンプカーに走馬灯が見えてゆっくり落ちるとき、私は見てしまった。
そこに私と似た幼い少女がーー。
そっか。うろ覚えだけど幼い頃も契約してたんだっけ。
はははは……。
は……。
……。
ー6ー
俺は何も助けることはできなかった。
そう、無視できることができなかった。
いや、あれは無視どうにもならなかったことはわかってる。
なのになのに俺は!!
「たーちゃん」
そっとあいつは俺に声をかけて優しくなだめてくれた。
「俺絶対無視家になるよ!!ムシすらできない無視家を」
「そう。あなたならできるわ」
俺はあいつの墓に好きなシャトルを供えた。
そして今でもかーちゃんとあーちゃんで3人でバトミントンをたまにしてる。
自転車2 完
ーー????ーー
真っ暗な車道。
かすかに電柱や住宅の明かりで照らす場所に悲惨な交通事故が起きた。
その激しい衝突があっだだろう自家用車はフロントガラスにヒビが割れているがもっと悲惨なのは衝突した無残な自転車である。
その車輪は激しく折れ曲がっており、ペダルはグネグネと曲がっている。
そしてそこに横たわるのは少女の遺体。
そして遠く影から見守るその遺体であるはずの少女と自転車はーー。
ーー安東はるかの自宅先ーー
「行ってきまーす!」
ドタバタな慌ただしい日常である私、安東はるか、15歳。
今日も通学のために愛用のママチャリ自転車を漕ぐ。
漕いで漕いで漕ぎまくる。
何故なら人生最大ピンチの大遅刻であるから!!
「ああああああもう!!!?」
そう、私は絶対死守しなければならない。これ以上遅刻すれば留年に近づくという秋の季節。
そんな私でも先日ちょうど手頃価格の中古自転車を買ったのだ。
いやいや。それ以前に買うべきだろうというドケチの節約思考の私の後の祭りである。
はぁー。あの鬼河原先生にまた絞られるるるると私は必死になって漕ぎまくったのだ。
ーーその時、自転車が急に傾き出した。
「はわわわ!?」
その時、私は自転車が盛大にガーシャンと転げ落ちた。
「いったーい!」と痛みに嘆く私。
しかし、その前方に急激に猛スピードで走り去るバイクがあった。
あと一歩の所で盛大な事故に繋がっていた私。
その時はあまり気づかずにそのまま再度自転車に乗り込み漕いだ。
ー2ー
ーー花咲高校職員室前ーー
「……で?あなたなんで寝坊するというより、呆れてモノが言えないわね。その格好見れば」
「うう。すみません」
鬼河原先生にこっぴどく絞られる私。
そして私はなんとか遅刻は防げたモノの、いくつか自転車が何度も転倒してあちこち擦り傷や転倒したあとの傷によりいくつか絆創膏や包帯を巻かれているほどの痛々しい姿になっている。
「ま、今日は免じて許すけど。あなたも寝坊しないよう、しっかりと早めに寝なさい」
「……はい」
ぐぅーの音もでなかった。
いや、ぐぅーの音は私の空き腹である。
その音を聴いた他の先生からもクスクスと笑ったの見て少し恥ずかしかった。
ーー体育館ーー
私はバトミントン部に所属してる。
「はるか!いったわよ!」
私はパートナーのサヤカと組んで相手の飛ばしたシャトルをそこで跳ねてスマッシュを決める。
見事決まり得点が入った。
「お?はるかケガのわりには調子がいいな。次の県大会がんばれよ」
と、犬丸コーチの激励コメントに私は満更でもなかった。
ーーーーーー
部活が終わり夕暮れ帰宅時にいつものアレがくるのだ。
「ふえ!?」
強く何かが引っ張られる強いチカラが。
ガッシャーンと盛大な音を出しながら自転車ごと転ける私。
決まっていつものように前方スレスレで通り過ぎる自家用車。
「……もしかして私、呪われた!?」
その時の異常さに私は気づいてしまう。
そう、この自転車が私に事故を誘っていると……。
そして私の離れてる所から、謎の少女の人影と乗り込んでる自転車が私を見ていたが目を離した隙にいつのまにか姿を消した。
ー3ー
ーー鳥河大軌の自宅ーー
「……という怪異談というより相談なんだけど」
私は従兄弟の鳥河大軌こと無視家に診てもらったが。
「特に何も感じないな。俺はまだ見習い無視家だからあんまり期待しないでくれ。この場合に餅は餅屋に任せた方がいいだろう」
というわけでその手の人にわざわざきてもらった。
「どうですか?」
「……そうですね」
彼女は神木童心神社の巫女見習いの神木命さんである。彼女の家はお祓いの心得があるからね。
そして体質持ちの八木楓さんもわざわざ来てもらった。彼女は家柄のしきたりで白粉肌を身につけて普段着は和服を着込んでいる。あの石山県で有名人なので私はびびっていたがそのままフランクでいいわよと言われたので普通に接している。
「……私はうっすらと大軌になんらかのつかれてるかは感じたけどこの自転車からは私には何も感じないわね」
と、楓さんからのコメント。
「ええ……」
残念だがまだ命さんがある。
そして、命さんも意外なことを言った。
「……これは死霊の仕業ですね」
「死……霊?なんですか??それ!?」
命さんは目を閉じて静かに語ってくれた。
ー4ー
死霊とは、人が死んで間もない頃に生前の記憶を持ち人々になんらかの害をもたらす存在です。
もっとも生き霊とは似ていますね。
しかし、この死霊は変ですよ。
なぜならこうして生きてるのに死霊として生まれるのは辻褄が合わないですよ。
そう、この死霊は安東はるかさんの死霊なんですよ。
ーーーーーー
「わ、私の!?ちょっと!?待って?なんで私が死んでることになるわけ??いや?死霊はわかったけど生霊じゃないの?というかその私自身はなんか恨みを買うような場面あったわけ?」
私の脳内には混乱していた。
そして命さんはさらに霊視してみると言ってそして意外な事を言った。
「安東さん。あなた生死をさまよう事故にあってませんか?」
「え……まぁ、中学生の頃、一度自転車の交通事故であったけど。も、もしや!?」
そんな。私は……。
「あなた、魔界の者と契約しましたね」
私はうなずいた。
「はるかさん。あなたにとって二択あります。まずひとつ目はどちらか死を受けいれること。つまりあなたが死霊と身体の魂と交換することですね。そのときあなたは死霊になり成仏される」
「いや!?絶対にいやだわ!!私、まだ生きたいし。やることいっぱいあるもん」
「では二つ目は死霊と決別することですね。しかし、魂は半分削られるのでもしかしたら生前生きられるのは半分以下の寿命になりますがよろしいですか?」
「……仕方ないわ。やって頂戴」
「わかりました」
私はしぶしぶ承諾した。
「……」
ー5ー
「いってきまーす♪」
私はいつものように通学のママチャリを漕いで行く。
そう、私は先週魂を半分にした。
普段あまり変わらないけどこの生きてる実感を大事にしたい。
そう、これからの人生がーー。
だけど私には来なかった人生が。
何故なら跳ねられたからたったいま。
勢いよく衝突するダンプカーに走馬灯が見えてゆっくり落ちるとき、私は見てしまった。
そこに私と似た幼い少女がーー。
そっか。うろ覚えだけど幼い頃も契約してたんだっけ。
はははは……。
は……。
……。
ー6ー
俺は何も助けることはできなかった。
そう、無視できることができなかった。
いや、あれは無視どうにもならなかったことはわかってる。
なのになのに俺は!!
「たーちゃん」
そっとあいつは俺に声をかけて優しくなだめてくれた。
「俺絶対無視家になるよ!!ムシすらできない無視家を」
「そう。あなたならできるわ」
俺はあいつの墓に好きなシャトルを供えた。
そして今でもかーちゃんとあーちゃんで3人でバトミントンをたまにしてる。
自転車2 完
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる