[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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野花怪異談N①巻 【完結】

18話「お題怪異談『カフェ・オレの新聞』」

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 ※この怪異談はお題怪異談「新聞」を題材にした作話です。

 「1」

 今月中に僕はお題決めごとで新しい怪異談を公開することになった。
 とりあえずネタがないか早速ネットサーフィンしたがなかなかいいネタがなかったし。僕にとって扱いきれるネタではなかった。
 そして締め切りが来週に迫って何も手をつかない所で彼女に声がかけられる。
「手鞠、一緒に喫茶店行かない?」
 楓さんだった。
 当然じっとしてもネタが出ないので僕も気分転換として喜んでお誘いを受けた。

 ーー「野花カフェ・オ・レ喫茶店」ーー

「いただきまーす♪」

 僕はホットサンドとカフェ・オ・レを注文する。楓達も同じである。
 ちなみにカフェ・オ・レのミルクは牛乳が使われてなく山羊のミルクを使われてるから僕も安心して飲めるがその分割高である。
 そんな時に助っ人として草……ムッシーの奢りだから僕達も気軽に飲める。何故かムッシーは財布の中身を確認していたが大丈夫だよね?とゆでたまごを何個も食べる楓さん。あなたは遠慮はないのだろうか?そんな楓さんの母親もご馳走になっているのは親子なんだろうな。関係ないけどあかねさんもちゃっかりとご馳走になってるな。
 ふと、そんな光景観察してると、新聞を読んでる中年のおじさんが目についていて僕はあっと何か思いついた。
 そう、カフェ・オ・レと新聞で組み合わせることで何か出来そうな気がすると。
 僕は早速、ホットサンドを頬張りスマホンを開いて執筆する。
 楓達が食べ終わった後は、ようやくそれらしき形が出来てこの後帰宅して怪異談内容まとめて完成する。
 そして期限当日に僕はこの怪異談を披露することになった。

 「2」

 ~♪
 昔馴染みの洋楽のギターが流れる。
 まるで異世界のギルドの酒場をモチーフした喫茶店がオープンしたと聴いて俺も早速この喫茶店を利用する。
 俺の名前は吉高拓三、64歳。
 去年定年退職してセカンドライフを満喫してる野郎だぜ。
 そしていつも決まって喫茶店で注文するのは軽いトーストサンドとカフェ・オレだ。
 そしてカフェ・オレを飲みながら新聞を読むのが醍醐味である。
 早速新聞を読んでみると喫茶店のおじさんの特集していたな。
 ふむふむなかなかイケメンだが俺ほどではないな。今後とも地元で特集するらしいな。
 ふふふ。俺の決めてる姿を見たら、若い子猫ちゃんたちはメロメロだぜ。
 しばらく喫茶店でたむろするか……。

 ーー「とある喫茶店場所同上」ーー

 おかしいな。
 俺はこの場所でずっとたむろしても声をかける案件もなかった。
 しかも俺が以前行きつけだった場所から撮られるという始末だ。
 俺は思わず舌打ちしながらカフェ・オレを飲み干して2杯目のお代わりをする。こうなったらやけだな。
 意地でも取り上げるまでとことんやるからな。
「お待たせしました。カフェ・オレになります」
「ああ。ありがとう」
 俺は注文した2杯目のカフェ・オレの口につけ新聞を畳んだ。

 「3」

「クソー。マジか……」
 俺は先に越されてしまった。
 なんと俺が店を出た後にすぐマスコミに取り上げられるほど殺到したらしい。なんでも超大物クサウッドスターが来店したとはな。
 俺はさらにカフェ・オレ3杯を飲み干す。
 こうなれば目立つような事をしなければならないな。
 そうだな。ブログでも立ち上げてメディアに取り上げる算段を仕込むか。
 そうと決まれば善は急げだ。
 俺は早速会計をした後、帰宅してブログを立ち上げた。
 なーに。俺がかかればあっという間に注目するのに間違いないさ。
 そう、俺はかなり意気込んでいた。

 「4」

「クソ!なんだってんだ!」
 たしかに俺はブログを立ち上げて話題になったが誰も俺に気にかけるどころか取材すら来なかった。しかも俺と同様のブログを立ち上げた方が取り上げられる始末だった。
 俺はイラつきさらにカフェ・オレ8杯飲み干して9杯目のお代わりを注文すると店員も顰めつらするほど飲んでいたようだ。
 やはり、深く考えずにシンプルだな。
 そう、誰もやらない境地でやり遂げればいやでも無視できないだろうな。
 そう、目指すは全喫茶店制覇だった。
 そして、俺はあと一歩のところで邪魔が入る。そうあいつは……。

 「5」

「……」
 とうとう、全国行脚して全喫茶店制覇目前の所だった。
 そしてこの喫茶店で入店前にあいつが邪魔をする。
『あなた……あなた……あなた』
 そう奴は俺がいくつか喫茶店に出会った異形なやつらだった。
「や、やめろ!まだ俺を連れて来る前に制覇してからにしてくれ!ク!や、やめろーー!!!?」
『あなた……あなた……あなた』
 俺はあいつから襲われそうになった時に意識を失った。

 「6」

「みません……すみません」
 俺はハッと誰かが呼ばれた気がして俺はうつ伏せになっていた所で目を覚ました。
「あー。よかった。私こういう者です。ええ。よかったら写真一枚撮らせてもいいですか?」
 どうやら、新聞記者だった。だから俺は喜んで承諾した。
「ああ。いいぞ。遠慮なく使ってくれ」
 俺はこの時ようやく記事に取り上げられた。
 見事に一面記事を飾ってくれた。
 さて、俺はもう行くぜ。あばよ。


 ーー「????」ーー

 とある新聞記事にある怪異談特集に喫茶店を彷徨い続ける中年男性が載せてあった。そして現在でもその男性がたびたび目撃者が跡をたたないと書かれていた。

「という怪異談だけど」

 僕は部活で初めて創作怪異談を披露した。
 反応はぼちぼちだが楓さんは褒めてくれたし、あかねさんも指摘はあったモノの褒めてくれるところもあった。
 
 ーー「野花カフェ・オ・レ喫茶店」ーー

「いらっしゃいませ」

 僕たちは怪異談カフェ・オ・レの新聞のきっかけとなった喫茶店に再度訪れた。もちろん割り勘だが、あかねさんの場合は財布を何度もチェックしてるのは手持ちはあるのだろうか?
 と、そこに怪異談のモデルとなった中年のおじさんがいた。すると楓とあかねさんがじっと見ている。

「どうしたの?」と尋ねるとあかねさんが言った。

「あの人、彷徨っているわね」

「え?」

「すでに死者なのよ。あの人は。まさかあの怪異談は実話だったとはね。あんたもやるわね」

「……」

 僕はこの日以降、しばらくこの喫茶店に訪れることはなかった。

 カフェ・オレの新聞   完
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