上 下
154 / 268
鐘技怪異談W❷巻【完結】

111話「吸穴(きゅうけつ)」

しおりを挟む
「1」

 ーー「????」ーー

 灰色の曇り空。
 ジメジメとした地面のぬかるみ。
 そこに黒のレインコートを身につけた若い女性がスコップで地面を掘り出している。
 目的意図は不明だが掘らなきゃいけないと使命感があった。
 そして大人1人分サイズの穴まで掘り出すとそこでやめて女はそこに座り込む。
 女の表情はどこか安らかであり、ずっと空き腹が空いてもそこに座り続ける。まるで取り憑かれるように穴にまでーー。

 ーーーーーー

 ポツポツと降ってくる雨音。
 カエルの合唱団が騒がしい。
 そんな中、草壁草美は機嫌がよかった。
 そう、雨は彼女の好きな雑草の生命の恵みである。
 その濡れた雑草の感触は彼女自身しかわからないフィットした馴染みがある。
 そんな彼女は休日の日曜日にいつものように黄緑のレインコートを身につけながらハンドスコップと軍手を持ち馴染みの公園に向かう。
 そこでいくつか雑草の感触を楽しむのである。
 そこで彼女は奇妙な恐怖体験をするのである。

「2」

 ーー「野薔薇公園」ーー

 ここの公園は旧野薔薇市が設置した公園であり、そこそこ野球場の広さを持つ。そんな中、草美は適度の雑草を見つけると軍手をはめてバンドスコップで根っこまで綺麗に地面掘って雑草を引き抜いて感触を確かめるのである。ふと、彼女の目線に黒のレインコート着た男性が穴にすっぽりハマってることに気がついた。草美はふと気になり、手にした雑草置いて彼に呼びかける。
「草おじさん。そこにいると風邪をひかない?」
「……」
 その彼は何も答えない。
 もっとも草美は親切に呼びかけただけであり、彼が何しようと勝手であるし、草美も勝手に雑草の感触を楽しんでるだけだ。しかし無視をしたのはいただけなかった彼女はそのまま無視して雑草を楽しむの再開するとドシャと崩れる音がしたので先程の黒のレインコート男性に振り返ると彼自身ミイラのように肉体ごと崩れかけていたからだ。
「あわわわわ!?」
 彼女はそのまま怖くなって逃げ出した。
 どこまでも遠くに逃げ続けていた。
 そう、頭の中がパニックになり正常な反応が取れないほどだった。
 そして公園が出た後で少し身体を休めた。
 たしかに見たのはミイラだった。
 しかし、最初見たのは普通の男性だったのだ。
 しかし、一気にミイラになるのはどういうことだろうか?
 そこで頭の中を整理してもう一度あの場所へ確認してみようと再び公園の中に入った。

「3」

 草美が公園の中全体をくまなく探したがあの黒レインコートを着た男性おろか、先程すっぽりハマるほどの穴は見つからなかった。
 見間違いだろうか?という疑念があるがたしかに穴は存在して先程の黒のレインコート着た男性は存在したのだ。なので見逃してないかくまなく探して数時間後、心配になった母親からの帰りを促すSNS通知で慌てて彼女はそのまま帰宅した。

 ーー「草美の自宅」ーー

『クサイほどハマる草納豆発売』
 実のお兄さんの芸人がやるCMに耳が入らないほどのぼんやりしてる草美。
 食事中に、母親が苦言を申すと慌て食事再開するとき頭の中にあるのはあの穴だけが気になっていた。


「4」

 次の日、登校しても草美はまだ穴のことが気になっていた。
 クラスの友人達に話しかけても上の空であいまいに返事するだけだった。そんな中、友紀が彼女のもとにやってきた。
「どうした?草美。悪いもん食っただべか?」
「……ん。そうじゃないけど」
「何か気になる案件でも」
「い……や。ただ穴が」
「穴?」
 友紀はそれ以上は追求しなかった。
 今日は部活あるがその日、草美は欠席してそのまま帰宅した。
 草美はもはやあの穴だけが頭の中になかったから。

「5」

 日に日に経過するごとに穴に対する思いが強くなっていく。
 そんな時に雨曇り日に草美はいつもの馴染みの公園で黒のレインコートの若い女性を目撃する。
 その女性の手には業務用1メートル長さのスコップが握られていた。
 彼女は気になり跡をつけてみた。
 そしてその女性は手頃な場所を見つけると地面を掘り出していく。
 そして手頃なすっぽりの穴ができるとその女性はすっぽりハマって目を離した隙にそのまま姿を消した。
 草美もその女性の後を追いかけるように先程と女性と同じようにその場にあったスコップで地面を掘っていく。1時間経過した頃でようやくそれらしい形が出来ていた。
 満足感の笑みを浮かべた草美はそのまま穴に入ろうとした時に誰かに肩が掴まる。

 そこに掴まれた相手は灰色のレインコートを着たミイラ姿の男性だった。

「あわわわわわ!?」
 草美はパニックなり必死に逃げようとするが肩はがっしりと捕まれて身動きは取れず逃げられることはできなかった。
 その時、必死に呼びかける男性の馴染みの声がした。
「草美くん!草美くん僕だよ!」
「え……猿谷さん?」
 以前、友紀の家にお会いした顔見知りの猿谷だった。
 ふと、草美は掘った穴を再度見ると完全に閉じていつのまにか塞がれていた。

「6」

「そうか。君はどうやら体質のようだ。ここの公園にはしばらく近づかないように。いいね」
「……はい」

 草美の様子で心配していた友紀達が猿谷さんに頼んで彼女の後をつけていたのこと。案の定、草美は穴にハマる所を救い出した所である。この後猿谷はオカルトや悪霊犯罪など取り締まるオカルト専門の礼察に通報してここの公園を封鎖した。

「7」

 しばらくして草美は以前のような振る舞いを取り戻した。後日分かっていたがあの彼らが着込んでいた黒のレインコートはいわくつきのモノであり、回収騒ぎが起きていた。実際草美が着ていたレインコートにもあの黒のレインコートがあったから着なくてよかったと安堵していた。

 ーー「????」ーー

 とある空き地にすっぽり穴にハマるほどの深みがある場所にそこにリードが引きずる子犬が魅入られて穴にハマる。そこに飼い主が後を追いかけてその場所に向かう時魅入られてーー。


吸穴(きゅうけつ)  完
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

サクッと読める♪短めの意味がわかると怖い話

レオン
ホラー
サクッとお手軽に読めちゃう意味がわかると怖い話集です! 前作オリジナル!(な、はず!) 思い付いたらどんどん更新します!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...