[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる

野花マリオ

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野花怪異談N④巻【完結】

44話「最京家族」

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「1」

    ーー「八木家」ーー

「いただきます♪」
 八木家一同夕飯を共にする食卓。
 グツグツと煮込む鍋。
 その鍋にはバリエーション溢れる野菜と鶏肉。
 その香りに漂う肉と野菜と味噌が充満する。
 八木家の本日の夕飯はとり野菜味噌であった。
「さぁ。たくさん食べてね寺郎君」
「はい。いただきます」
 八木家の母親から客人の小5にもなる少年寺郎に器を盛り付ける。
「いっぱい食べて大きくなるんだぞ」
「おじさん。一体どういう関係なの?」
 堂々と居候も慣れて住み着いてる梅田虫男にツッコミする寺郎。
「いっぱい食べて大きくなってくださいね」
「……うん。いっぱい食べるよ」
 八木楓からの勧めでどんどん食が進む寺郎に対して無視された虫男は泣きながらとり野菜味噌を食べる。
「寺郎さん家はもうすぐ引っ越しするんでしたね」
「うん。そうだよ」
「ここの近くに去年引っ越したばかりなのになんでかしら?」
「……それはね。ぼくんち家族は安住の地を求めているんだ。だれも邪魔されない居場所へ」
「そう。寺郎さんの家は最強家族と呼ばれる由縁でしたね。誰かに狙われてるのかしらね」
 クスクスと楓は笑う。
「ぼくんちは全然最強じゃないよ。ちょっとほかのところと抜けておかしいだけだから」
「あら、詳しく聞かせてくれるかしら」
「いいよ。僕のおうちではーー」
 寺郎は自分の家族の事を語った。

「2」

 ーー「最京家」ーー

 休日の朝。
 彼ら一家団欒過ごす。
 家族構成は六人家族であり、家長である父親に母親、祖父、祖母、中学3年生の姉、そして小5にもなる弟である。
 父親は居間のテーブルに新聞を読んでくつろぎ、祖父は趣味の盆栽いじり。そのほか家族は居間でテレビを観て朝食を食べている。
 と、そこに新聞を読み終えた父親はふとリモコンを取りチャンネルを変えるとニュースが流れた。
『石山県〇〇市に熊が出没しています。熊を見かけても絶対に近づかないようにしてください』
 そのニュースを観た家族達(弟は除く)は信じられない顔をしていて、祖母は思わず入れ歯が外れてしまう。
「おまえたち最京会議だ!」
 父親の号令の元、家族達は朝食を急いで食べ終えて、祖父は盆栽いじりを辞めてテキパキと居間のテーブル片付け終えた。
 ここで最京家族は1時間の会議をした。激しい討論であり熱く語り父親と祖父の激しく揉み合いながらもなんとか結論出した。
「母さんとおふくろ達は気をつけて買い出しに向かってくれ。籠城戦にも備えて食料揃えてくれ!」
「わかったわ」
 母親と祖母は早速買い出しに向かった。
「幸恵と寺郎は防犯用ブザーを取り付けてくれ!」
「わかった」
 幸恵は急いで向かい、寺郎はいやいやと向かった。
「親父はプロの警備員とプロの凄腕暗殺スナイパーを雇う調達してくれ!」
「了解じゃ」
 祖父は電話にかけにいった。
「わしは防犯カメラとサイバーセキュリティを強化してくる」
 父親は倉庫に向かいそこにマル秘ボタンを押すと防犯カメラとサイバーセキュリティ全体が強化されて24時間常に監視するようになった。
 数時間後、最京家の周辺には要塞ともいえる過剰な警備と防犯が出されて24時間常に監視されていた。
「さー。熊野郎共いつでもかかってこい!」
 家族達は過剰な武装を身に纏いながらいつでも臨戦態勢は整えた。
 寺郎は相変わらずため息を吐く。
 と、そこに警報ブザーがかかる。
「かかったな!おまえたち外へ出るぞ!」
 最京家族は充分警戒しながら外に出た。


(ミィー。ミィー)
「なんだ猫か。驚かせやがって」
 庭に出ると仕掛けた檻は熊ではなかった。
 早速父親は仕掛けた罠を取り外し猫を逃がそうとする。
「お父さん……」
「なんだ寺郎」
「その猫……」
 寺郎が指摘する猫は普通の猫とは違い髪が長い人の頭をつけた気味が悪い猫だった。
「大丈夫よ。ただ珍しい猫だけだし。熊じゃなくてよかったわ」
 幸恵の指摘に寺郎以外家族一同はうなずく。
 この後、熊は山の方へ帰ったとニュースが流れて最京家族は安堵して厳重警戒令を解いて普段の日常生活に戻った。
「…………」

「3」

 ーー「1ヶ月後」ーー

「回覧板置いてきまーす」
 夕方母親は洗い物から中断して玄関先に置かれてある回覧板を取りに向かう。
「えーと。なになに?えっ!?」
 母親はその回覧板のある項目の紙を読んで目を開かせ驚いてしまう。
「あなたたち!最京会議よ!お義母さん。お父さんにすぐ来るよう電話お願い!」
「わかったわ!」
 祖母は父親にスマホに連絡を入れる。
 1時間後、仕事を切り上げた父親が母親に問題の回覧板を見せると重く事態をあげて最京会議をした。
「どうやら、この付近にオレオレ詐欺や振り込め詐欺、訪問詐欺などの詐欺が多発してるみたいだ!」
 父親の言葉に最京家族一同ざわつく(寺郎は除く)。
「わしらは簡単に詐欺に引っかかるかもしれん一体どうすれば」
「相手も巧みに言葉を誘導してくれるだろうおまえたち何か案を出してくれ」
 父親の号令の元、最京家族達(寺郎は除く)は真剣に案を出してきた。ここで思わぬトラブルにより祖父が行きつけのバーである若い女性と浮気して祖母からジャーマンスープレックスかけられるなどあったが1時間熱い討論の末に結論は決まった。
「よし!母さんとお袋は詐欺対策の防犯グッズと教材を買い出しに向かってくれ!」
「わかったわ!」
 母親と祖母は早速買い出しに向かった。
「親父は警備会社と探偵事務所に向かって依頼してくれ」
「わかった!」
 顔がボコボコに膨れあがってる祖父は早速目的地に向かった。
「幸恵と寺郎はネットから、詐欺に関する資料を調べてくれ!」
「わかったわ!」
 いやいやと嫌がる寺郎と積極的にやる幸恵と早速スマホや複数のパソコンを使用して調べた。
「わしは早速、防犯カメラとサーバーセキュリティを強化した上にあるものを始動させる」
 早速父親は倉庫に出向きマル秘ボタンを押して防犯カメラやサーバーセキュリティを強化した後、あるモノを玄関先に取り付ける。
 それは全身体認証システムである。これをつけることにより前科ある犯罪者を全て見分けられることができる。さらにボディチェックや金属探知機もかかせない。
「さぁ。いつでもかかってこい!わしらは逃げも隠れもせんぞ」
 最京家族はいつでも臨戦態勢を整えていた。

 ーー「数週間後」ーー

 最京家族は常に警戒をしていた。そして家族が出かけるにも常にSPがつき怪しい人物など厳重にチェックした。
 そして家族一同に玄関先に呼び鈴のインターホンが鳴る。
 家族一同はとっさに反応してまず家長である父親が玄関口に仕掛けてあるカメラを確認する。
 映っていたのは青年だった。
「ふむ。特に怪しい者ではなさそうだな。わしが出よう」
 それを聞いた家族一同(寺郎は除く)ざわつく。
「そんな!危険すぎるわ。あなたせめて2人組でいきましょ!」
 母親は異論を唱えるが父親は、
「大丈夫だ。かえって過剰に警戒すれば相手もスキを見せなくなる。ここは穏便で行こう」
 父親は充分警戒しながら応対した。
「どちら様ですか?」
 と、青年は言った。
「あ、新聞配達の者です。今月の新聞代徴収に参りました♪」
 ハッと父親は恐ろしい顔をした。
「母さん!今すぐ新聞配達の所に連絡して今日の新聞代徴収する人を確認してくれ!」
 母親は慌てて新聞配達先に電話して確認した。結局あれこれで数時間かかり、相手の青年は文句を垂れながら帰った。


 と、天候も悪くなり土砂降りで降っていた。
「ふー。こうも落ちつかないな。やはりまた引っ越しだな」
「そうね。ここも落ちついた所だと思ってたけど」
「…………」
 と、玄関先にインターホン鳴る。
「ん?こんな時間になんのようだ。寺郎見てこい」
「はい。わかったよ」
 寺郎は玄関先に向かう。
 すると、すぐ寺郎が戻ってきた。
「……お父さん。ちょっと」
「どうした?」
「あれ」
 寺郎は玄関先に指をさす。
「ん?なんだ。脅かすなよ。はははは」
 暗い雨雲の雷光が照らし出す時、寺郎が指す玄関先方向には鋭い睨みつける生首を片手に携えた青白い若い女性が立っていた。

「4」

 家財用具積んだ引っ越しトラックが最京家に停車する。
「ふー。これで全てかな?」
「はい。これで全部ですよ最京さん」
 八木楓と梅田虫男は最京家の引っ越しの手伝いをしていた。
「ありがとうございます。楓さん。何もお礼できなくてすみません」
 母親は深い一礼する。
「いえいえ。私は好きでお手伝いやってるので……」
「ははは。俺も手伝いましたよ。ははは」
 虫男は手伝ったアピール感をするが無視される。
「じゃあ。わしらももう行きますんでありがとうごさいました」
 と、引っ越しトラックも出発して最京家族が乗る自家用車も走り出していった。
 楓と虫男は彼らが見えなくなるまで手を振った。


 ーー「????」ーー

「いただきます♪」
 最京家族の一家団欒とした食卓風景である。
「………」
 そこに浮かない寺郎。
 家の周辺の灯りは蝋燭のみ。
「どうした。寺郎?おまえの大好きなハンバーグだぞ?」
 寺郎以外家族は平然として食事をしている。
「……あれ。どうにかならない?」
「ははは。あれは別に大したことないぞ?こちらからは無害だしな。……たぶん」
 寺郎がチラ見する方向には無数の青白い首吊りがたくさん並んでいた。
 最京家族が引っ越した場所は最果て山奥の樹海だった。

 最京家族  完
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