70 / 268
野花怪異談N③巻【完結】
35話「最恐自動販売機」
しおりを挟む
「1」
ーー「18時02分」ーー
人通りが静まった夜道に蛍光灯の光を出すドラッグストア店の前に設置された自動販売機。
『ありがとうございました』
機械のアナウンスが流れてガタンと自動販売機から無糖の缶コーヒーを取り出す緑の着物着た青年梅田虫男。
「梅田先生」
自分の名前を呼ばれた方向に振り向く。
「おう。こんな遅くに奇遇だな楓、それと八枝か」
黒髪おさげ白粉少女八木楓と同じく黒髪おかっぱ白粉太眉少女穴本八枝は軽くお辞儀する。
「先生も飲み物を買いに来たんですか?」
「そうだなー。この自動販売機は最近滅多に見かけない珍しい新商品が売られてるからな」
虫男は缶のタブを開けて一気に中身がなくなるまで飲み干すと、そこから若い青年がやってきて自動販売機にお金を入れて見ると、
「チッ。売り切れかよ!」
目当ての商品がなく、青年はイラついたのか、何度も自動販売機を叩き蹴った。
そのあと、飲み物を買って何処かへ去っていった。
「やれやれ。何も自動販売機に当たらなくてもいいものを」
「そうですね」
虫男と八枝は自動販売機を眺めて呟いた。
「そのうち復讐されると思いますよ。自動販売機に」
と、楓の一言に虫男はツッコミ入れる。
「はぁ。まさか流石に自動販売機も移動出来て意思があるとか言うじゃないだろうな?」
「ええ。そのまさかですよ。私が聞いた最恐自動販売機はね」
楓はクスクスと微笑んでいた。
「ほう、聞かせてもらおうか」
と、虫男の問いに楓は静かに語りだした。
「2」
ーー「田屋タバコ酒店前」ーー
「喉が渇いたな。何かこの辺りに飲み物売ってないかな?」
僕の名前は酒山純。
地元の大学生2年。
歳は今年で20になったばかり。
僕が住む場所は山奥で滅多にコンビニやスーパーがあまりない超田舎。
僕はバスで出向き、本屋で購入ついでに飲み物ないか探してる。
と、ちょうどその辺りのタバコ屋さんに置かれてる自動販売機で飲み物を購入することにした。
自動販売機に近づき小銭を入れてコーラを購入する。
『にいちゃん♪ありがとうな。またご利用してな♪』
「へ?」
僕は周囲の状況を確認する。
誰もいない……気のせいか。
『にいちゃーん。大丈夫か?ぬるくならないうちに飲みなよ』
今、自動販売機が僕の事を向かってしゃべったぞ?しかも僕の事を分かってるような感じだった。
「も、もしかして僕のことがわかるのですか?」
恐る恐る尋ねると、
『おうよ。さっきにいちゃんコーラ買っただろ?そして茶髪で服装は地味の緑だな』
やっぱり、僕の事がわかるらしい。
『さ。それよりも早く飲みなよ』
僕は少し驚いてコーラ缶のタブを開けて飲む。
「美味しい!今まで飲んだコーラと違う……」
僕はこのコーラをすごく気に入ってしまった。そして予定しなかった2本目を購入する。
『ありがとうさん♪にいちゃん。あまり飲み過ぎるなよ』
このフレンドリーな自動販売機はなんだろうか?僕は興味本位で話しかけてた。
「へー。最恐さんて、新型最恐人工AIを搭載した自動販売機なんですか」
『そうやで。もっと褒めてもいいで♪』
僕はこの自動販売機の最恐さんと意気投合した。何よりも誰とも親しくフレンドリーで接してくれる。
そして何より最恐さんはこの町の住人を頼れる兄貴分らしい。
僕も頼ってもらうかな?て、思ったくらいだ。
『お、いらっしゃいませ。いつもすまんな。骨の髄まで飲んどけよ♪」
うぉっ!?なんか骸骨頭の人も来た。
一部の石山県民も噂で来てこの自動販売機目当てでよく飲み物を購入してくれる。売り上げの一部分は最恐さんのマネーとして入るらしい。自動販売機だよね?
「また、来て話しかけても大丈夫ですか?」
『おう!にいちゃん相手なら、いつでも歓迎やで♪こっちは突っ立ってるだけだから暇や』
新しく親友ができたことに満足した僕は明日も来ることを決めた。
「3」
ーー「次の日」ーー
「最恐さん。こんにちわ」
「最恐さん。こんにちわ♪」
僕は昨日の夜、付き合ってる彼女香美と電話で話したら、ぜひ会って見たいと言われたので彼女と一緒にこのタバコ屋に来た。
『おー。にいちゃんのガールフレンドか♪にくいね。この、この♪』
僕たちは照れ臭そうだった。
「へー。最恐の人工AIを搭載してるんだー。普通の自動販売機にしか見えないだけど」
『あ♡…あ♡…あっ♡』
香美は最恐さんをペタペタと触りまくる時、最恐さんが変な声を出してるのは、少し裏山けしからんと思った。
『あー。良いにおいする。お、ねーちゃん。すまん、客だわ。いらっしゃいませ』
香美は気がついたのか、最恐さんから離れる。
客はガラが悪そうなサングラスをかけたヤンキー青年だった。
ヤンキー青年は小銭を乱暴に入れると拳でジュースを買った。そしてタブを開けてジュースを飲むと、道路の道端で吐いた。
「なんだ?これ?ぬるくてクソまじい」
青年は缶ジュースを道路に叩きつけた。
『……あ、ヤベー。冷やすの忘れてた』
どうやら最恐さんは自動販売機なのに冷やすのは手動らしい。
『すみません。わいのミスです。すみません』
ヤンキー青年は最恐さんに睨んで近づき、拳で殴った。
「すまんで済むと思うのか?ああん?」
ヤンキー青年は何度も叩く。
見かけた香美はヤンキー青年に文句を言った。
「ちょっと!!あなた。そこまで当たらなくてもいいじゃない?」
『ね、ねーちゃん』
ヤンキー青年は香美は睨みつけて、
「部外者はすっこんでろ!」
「きゃっ!」
香美を突き飛ばした。
「香美!」
僕は突き飛ばされた彼女の身体を起こした。
『……………』
僕はぷっつんとキレた。
「おまえ!!」
「チッ。なんだよ?」
「たかがミスしただけでそこまで叩いて責めなくてもいいじゃないか?」
ヤンキー青年は面倒くさそうに言った。
「何言ってやがる。こいつは自動販売機だぞ?人でもねーし。俺が叩こうが責めようが俺の自由だろ?」
僕は軽く首を左右振って。
「たしかに最恐さん……この自動販売機は人でもない。でも人の心よりも誰にも分かる自動販売機だよ。だってミスしたこと謝罪したじゃないか?それでもわからないのか?」
『……にいちゃん』
「ケッ。こいつに人の心がわかるかよ!試しに仕返しこいよ。このポンコツ!!」
ヤンキー青年は何度も最恐さんに蹴っていく。
「や、やめろ!?」
僕はヤンキー青年の足をしがみつく。
「は、離せよ!?こいつとお前は何があるんだよ!」
「関係あるさ!僕と最恐さんは共にここで分かり合えた親友だもの」
僕はヤンキー青年ともみ合いになったところで、
『待ちな!』
最恐さんが呼び止めた。最恐さんの中から缶の飲み物が出てくる。
『……にいさんほんとうにすまんな。これはわいのリップサービスや。払ったお金返しますんでほんとうにポンコツですみません』
最恐さんの小銭口から、ヤンキー青年が払った小銭が出てくる音がする。
ヤンキー青年は小銭と缶の飲み物を受け取る。
「ケッ。最初から素直にそうしてればいいんだよ」
『ありがとうございました』
ヤンキー青年は最後に最恐さんを蹴った後、何処かへ去っていった。
「最恐さん……」
香美は心配そうに言った。
『大丈夫やこれくらい慣れてるもんや。みんなには悪いけど、今日はこの辺でおかえり……にいちゃんとねーちゃんもありがとうな』
僕たちは気まずいながらも帰った。
「4」
「ケッ!今日は気分が悪いぜ」
ヤンキー青年はわざわざ1キロ離れたこの自動販売機を噂にして試しに買ってみようと、この町に訪れた。
ヤンキー青年は手に持ってた缶ジュースのタブを開けると、ブシャと勢いよく噴出した。
「ぶふへぇ。ゲホッ、ゲホッ」
ヤンキー青年は思わず鼻の穴に炭酸ジュースが入ったみたいでむせていた。
ヤンキー青年は缶を投げ捨てるとその目の前に自動販売機がたっていた。
思わずうしろに振り返ると自動販売機がたっていた。
キョロキョロしても自動販売機が周りにたっていた。
「な、なんだよ!?」
ヤンキー青年は逃げ場なく自動販売機に囲まれていた。
と、自動販売機の中から熱いブラック缶コーヒーがどんどん溢れてくる。
「~!?」
ヤンキー青年はこの熱さと大量のブラック缶コーヒーに濁流の川のように流れていく。
千本、一万本、百、千万本を軽く超えて徐々に身体ごと缶に埋もれていき、彼の声が聞こえなくなるまで続いた。
「5」
ーー「数年後」ーー
『ありがとうさーん♪』
最恐はいつものように自動販売機をしてた。
そこに懐かしきカップルが訪ねてくる
『お?にいちゃんら久しぶりやな』
酒山達は最恐とは数年ぶりである。
「最恐さんもお元気そうで」
酒山達と最恐は楽しく雑談してる時に酒山の彼女である香美に何やら薬指から何か光ってるのを気づく。
『お、おま。おまえら、もしかして!』
酒山達は照れ臭そうに笑った。そして酒山は言った。
「はい、僕たち結婚するんです」
かーーーー!!と最恐は何かを叫んでいた。
『そ、そうか……幸せに達者で暮らせよ』
最恐は何か落ち込んだ様子なアナウンスだった。
「そう言えば、風の噂で最恐さん引っ越すて本当ですか?」
『そうや。ここのタバコ屋の店主が店を閉めるから、わい転勤することになったんや』
酒山は寂しそうに俯く。
『気にするな。ま、仕方ないことや。にいちゃん……これはワイからの餞別や』
最恐の中から、一本の缶が出てくる。酒山は取り出そうとすると、思わず掴んだ缶を落とす。
「熱!?」
おしるこの缶ジュースだった。
『で、奥さんにもどうぞ』
香美も同じくおしるこの缶ジュースだった。
「ありがとう」
酒山は止めようとしたが彼女は平気だった。
『お二人さんあつあつでお幸せにな』
酒山達はクスと笑った。
「6」
「最恐の自動販売機か……。そんなもんあるだろうか?」
「そうですね。あら?」
楓は自動販売機で飲み物を買おうとすると先程、そこにあった自動販売機が忽然と姿を消した。
「あれ?そこにあった自動販売機何処へいった?」
「変ですね?」
虫男と八枝はドラッグストア店の周辺を確認しに行った。
「もしかしたら彼も意思はあるかもしれませんね」
そこにあった自動販売機跡を眺めて楓は言った。
ーー「????」ーー
どこか遠吠えする犬。
暗くふけたある道路の脇に大量に山のように積もれてる缶。そこから一本の腕が生えてかき分けようとするがしばらく尽きてしまう。埋もれてある缶から漏れ出した大量の何か混ざった異色の飲み物液体が流れていき血溜まりのようになる。
そして陰から見守る自動販売機の消えていた電灯がパチッとついた。
最恐自動販売機 缶(完)
ーー「18時02分」ーー
人通りが静まった夜道に蛍光灯の光を出すドラッグストア店の前に設置された自動販売機。
『ありがとうございました』
機械のアナウンスが流れてガタンと自動販売機から無糖の缶コーヒーを取り出す緑の着物着た青年梅田虫男。
「梅田先生」
自分の名前を呼ばれた方向に振り向く。
「おう。こんな遅くに奇遇だな楓、それと八枝か」
黒髪おさげ白粉少女八木楓と同じく黒髪おかっぱ白粉太眉少女穴本八枝は軽くお辞儀する。
「先生も飲み物を買いに来たんですか?」
「そうだなー。この自動販売機は最近滅多に見かけない珍しい新商品が売られてるからな」
虫男は缶のタブを開けて一気に中身がなくなるまで飲み干すと、そこから若い青年がやってきて自動販売機にお金を入れて見ると、
「チッ。売り切れかよ!」
目当ての商品がなく、青年はイラついたのか、何度も自動販売機を叩き蹴った。
そのあと、飲み物を買って何処かへ去っていった。
「やれやれ。何も自動販売機に当たらなくてもいいものを」
「そうですね」
虫男と八枝は自動販売機を眺めて呟いた。
「そのうち復讐されると思いますよ。自動販売機に」
と、楓の一言に虫男はツッコミ入れる。
「はぁ。まさか流石に自動販売機も移動出来て意思があるとか言うじゃないだろうな?」
「ええ。そのまさかですよ。私が聞いた最恐自動販売機はね」
楓はクスクスと微笑んでいた。
「ほう、聞かせてもらおうか」
と、虫男の問いに楓は静かに語りだした。
「2」
ーー「田屋タバコ酒店前」ーー
「喉が渇いたな。何かこの辺りに飲み物売ってないかな?」
僕の名前は酒山純。
地元の大学生2年。
歳は今年で20になったばかり。
僕が住む場所は山奥で滅多にコンビニやスーパーがあまりない超田舎。
僕はバスで出向き、本屋で購入ついでに飲み物ないか探してる。
と、ちょうどその辺りのタバコ屋さんに置かれてる自動販売機で飲み物を購入することにした。
自動販売機に近づき小銭を入れてコーラを購入する。
『にいちゃん♪ありがとうな。またご利用してな♪』
「へ?」
僕は周囲の状況を確認する。
誰もいない……気のせいか。
『にいちゃーん。大丈夫か?ぬるくならないうちに飲みなよ』
今、自動販売機が僕の事を向かってしゃべったぞ?しかも僕の事を分かってるような感じだった。
「も、もしかして僕のことがわかるのですか?」
恐る恐る尋ねると、
『おうよ。さっきにいちゃんコーラ買っただろ?そして茶髪で服装は地味の緑だな』
やっぱり、僕の事がわかるらしい。
『さ。それよりも早く飲みなよ』
僕は少し驚いてコーラ缶のタブを開けて飲む。
「美味しい!今まで飲んだコーラと違う……」
僕はこのコーラをすごく気に入ってしまった。そして予定しなかった2本目を購入する。
『ありがとうさん♪にいちゃん。あまり飲み過ぎるなよ』
このフレンドリーな自動販売機はなんだろうか?僕は興味本位で話しかけてた。
「へー。最恐さんて、新型最恐人工AIを搭載した自動販売機なんですか」
『そうやで。もっと褒めてもいいで♪』
僕はこの自動販売機の最恐さんと意気投合した。何よりも誰とも親しくフレンドリーで接してくれる。
そして何より最恐さんはこの町の住人を頼れる兄貴分らしい。
僕も頼ってもらうかな?て、思ったくらいだ。
『お、いらっしゃいませ。いつもすまんな。骨の髄まで飲んどけよ♪」
うぉっ!?なんか骸骨頭の人も来た。
一部の石山県民も噂で来てこの自動販売機目当てでよく飲み物を購入してくれる。売り上げの一部分は最恐さんのマネーとして入るらしい。自動販売機だよね?
「また、来て話しかけても大丈夫ですか?」
『おう!にいちゃん相手なら、いつでも歓迎やで♪こっちは突っ立ってるだけだから暇や』
新しく親友ができたことに満足した僕は明日も来ることを決めた。
「3」
ーー「次の日」ーー
「最恐さん。こんにちわ」
「最恐さん。こんにちわ♪」
僕は昨日の夜、付き合ってる彼女香美と電話で話したら、ぜひ会って見たいと言われたので彼女と一緒にこのタバコ屋に来た。
『おー。にいちゃんのガールフレンドか♪にくいね。この、この♪』
僕たちは照れ臭そうだった。
「へー。最恐の人工AIを搭載してるんだー。普通の自動販売機にしか見えないだけど」
『あ♡…あ♡…あっ♡』
香美は最恐さんをペタペタと触りまくる時、最恐さんが変な声を出してるのは、少し裏山けしからんと思った。
『あー。良いにおいする。お、ねーちゃん。すまん、客だわ。いらっしゃいませ』
香美は気がついたのか、最恐さんから離れる。
客はガラが悪そうなサングラスをかけたヤンキー青年だった。
ヤンキー青年は小銭を乱暴に入れると拳でジュースを買った。そしてタブを開けてジュースを飲むと、道路の道端で吐いた。
「なんだ?これ?ぬるくてクソまじい」
青年は缶ジュースを道路に叩きつけた。
『……あ、ヤベー。冷やすの忘れてた』
どうやら最恐さんは自動販売機なのに冷やすのは手動らしい。
『すみません。わいのミスです。すみません』
ヤンキー青年は最恐さんに睨んで近づき、拳で殴った。
「すまんで済むと思うのか?ああん?」
ヤンキー青年は何度も叩く。
見かけた香美はヤンキー青年に文句を言った。
「ちょっと!!あなた。そこまで当たらなくてもいいじゃない?」
『ね、ねーちゃん』
ヤンキー青年は香美は睨みつけて、
「部外者はすっこんでろ!」
「きゃっ!」
香美を突き飛ばした。
「香美!」
僕は突き飛ばされた彼女の身体を起こした。
『……………』
僕はぷっつんとキレた。
「おまえ!!」
「チッ。なんだよ?」
「たかがミスしただけでそこまで叩いて責めなくてもいいじゃないか?」
ヤンキー青年は面倒くさそうに言った。
「何言ってやがる。こいつは自動販売機だぞ?人でもねーし。俺が叩こうが責めようが俺の自由だろ?」
僕は軽く首を左右振って。
「たしかに最恐さん……この自動販売機は人でもない。でも人の心よりも誰にも分かる自動販売機だよ。だってミスしたこと謝罪したじゃないか?それでもわからないのか?」
『……にいちゃん』
「ケッ。こいつに人の心がわかるかよ!試しに仕返しこいよ。このポンコツ!!」
ヤンキー青年は何度も最恐さんに蹴っていく。
「や、やめろ!?」
僕はヤンキー青年の足をしがみつく。
「は、離せよ!?こいつとお前は何があるんだよ!」
「関係あるさ!僕と最恐さんは共にここで分かり合えた親友だもの」
僕はヤンキー青年ともみ合いになったところで、
『待ちな!』
最恐さんが呼び止めた。最恐さんの中から缶の飲み物が出てくる。
『……にいさんほんとうにすまんな。これはわいのリップサービスや。払ったお金返しますんでほんとうにポンコツですみません』
最恐さんの小銭口から、ヤンキー青年が払った小銭が出てくる音がする。
ヤンキー青年は小銭と缶の飲み物を受け取る。
「ケッ。最初から素直にそうしてればいいんだよ」
『ありがとうございました』
ヤンキー青年は最後に最恐さんを蹴った後、何処かへ去っていった。
「最恐さん……」
香美は心配そうに言った。
『大丈夫やこれくらい慣れてるもんや。みんなには悪いけど、今日はこの辺でおかえり……にいちゃんとねーちゃんもありがとうな』
僕たちは気まずいながらも帰った。
「4」
「ケッ!今日は気分が悪いぜ」
ヤンキー青年はわざわざ1キロ離れたこの自動販売機を噂にして試しに買ってみようと、この町に訪れた。
ヤンキー青年は手に持ってた缶ジュースのタブを開けると、ブシャと勢いよく噴出した。
「ぶふへぇ。ゲホッ、ゲホッ」
ヤンキー青年は思わず鼻の穴に炭酸ジュースが入ったみたいでむせていた。
ヤンキー青年は缶を投げ捨てるとその目の前に自動販売機がたっていた。
思わずうしろに振り返ると自動販売機がたっていた。
キョロキョロしても自動販売機が周りにたっていた。
「な、なんだよ!?」
ヤンキー青年は逃げ場なく自動販売機に囲まれていた。
と、自動販売機の中から熱いブラック缶コーヒーがどんどん溢れてくる。
「~!?」
ヤンキー青年はこの熱さと大量のブラック缶コーヒーに濁流の川のように流れていく。
千本、一万本、百、千万本を軽く超えて徐々に身体ごと缶に埋もれていき、彼の声が聞こえなくなるまで続いた。
「5」
ーー「数年後」ーー
『ありがとうさーん♪』
最恐はいつものように自動販売機をしてた。
そこに懐かしきカップルが訪ねてくる
『お?にいちゃんら久しぶりやな』
酒山達は最恐とは数年ぶりである。
「最恐さんもお元気そうで」
酒山達と最恐は楽しく雑談してる時に酒山の彼女である香美に何やら薬指から何か光ってるのを気づく。
『お、おま。おまえら、もしかして!』
酒山達は照れ臭そうに笑った。そして酒山は言った。
「はい、僕たち結婚するんです」
かーーーー!!と最恐は何かを叫んでいた。
『そ、そうか……幸せに達者で暮らせよ』
最恐は何か落ち込んだ様子なアナウンスだった。
「そう言えば、風の噂で最恐さん引っ越すて本当ですか?」
『そうや。ここのタバコ屋の店主が店を閉めるから、わい転勤することになったんや』
酒山は寂しそうに俯く。
『気にするな。ま、仕方ないことや。にいちゃん……これはワイからの餞別や』
最恐の中から、一本の缶が出てくる。酒山は取り出そうとすると、思わず掴んだ缶を落とす。
「熱!?」
おしるこの缶ジュースだった。
『で、奥さんにもどうぞ』
香美も同じくおしるこの缶ジュースだった。
「ありがとう」
酒山は止めようとしたが彼女は平気だった。
『お二人さんあつあつでお幸せにな』
酒山達はクスと笑った。
「6」
「最恐の自動販売機か……。そんなもんあるだろうか?」
「そうですね。あら?」
楓は自動販売機で飲み物を買おうとすると先程、そこにあった自動販売機が忽然と姿を消した。
「あれ?そこにあった自動販売機何処へいった?」
「変ですね?」
虫男と八枝はドラッグストア店の周辺を確認しに行った。
「もしかしたら彼も意思はあるかもしれませんね」
そこにあった自動販売機跡を眺めて楓は言った。
ーー「????」ーー
どこか遠吠えする犬。
暗くふけたある道路の脇に大量に山のように積もれてる缶。そこから一本の腕が生えてかき分けようとするがしばらく尽きてしまう。埋もれてある缶から漏れ出した大量の何か混ざった異色の飲み物液体が流れていき血溜まりのようになる。
そして陰から見守る自動販売機の消えていた電灯がパチッとついた。
最恐自動販売機 缶(完)
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる