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野花怪異談N③巻【完結】

31話「つぶやきボクシング」

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「1」

 ーー「八木家」ーー

「ただいま~♪」
 猫柄の和服着たツインテール白粉少女瑠奈が帰宅した。
「おう。おかえり♪」
 と、八木家に堂々と居候してる梅田虫男は草山イナゴが草を食べる映像のテレビ解説に夢中なってる。
「そうか、草山イナゴはそれぞれ好みあるんだ。ふむふむ」
 虫男はつぶつぶとつぶやきながら独り言を言っていた。
「あ、ムッシーまたつぶつぶつぶやいてる」
「え?俺つぶやいてたのか?」
 つぶやいてる本人は自覚はないようだ。
「ただいま帰りました」
 と、丁度よくおさげ白粉少女楓が夕飯献立のお買い物から帰ってきた。
「おう!楓、おかいも♪」
「おかえりー♪おねーちゃん」
 と、虫男と瑠奈はわざわざ楓のいる玄関先まで迎えに来た。
「今から夕飯の支度しますので瑠奈は洗濯物取り込んでください。先生は居間のテーブルを片付けて取り皿を出して並べて下さい」
「りょーかい」
「オーケー♪」
 と、虫男はチャンネルを適当に変えた。
『ギャハハ!僕はギャハハザウルス。ギャハ』
 コミカルなアニメーションの恐竜の絵が動き回り、番組のオープニングテーマが流れる。
「あら、この番組は星夏さんと先生のお兄さんがやってる生放送番組じゃなかったかしら?」
 と、夕飯を準備を取り掛かってる楓が番組の音楽で気がついた。
「あ、今日は星バカと兄貴の番組か。すっかり忘れるところだったぜ」
 と、虫男はテーブルの置かれてる本を片付けて見てる。
「ムッシー。またお兄さんにつぶつぶ小言、言われるよ」
 瑠奈は屋根付きの洗濯場所で洗濯物を取り込んで虫男に面と向かって言った。
「兄貴のつぶやきはしつこいからな。たまには見とくか」
 虫男はテーブルに雑巾で拭いて戸棚から取り皿を出して言った。
『ギャハハ』

「2」

 ーー「石山テレビ局内ギャハハザウルススタジオ19時00分ーー

「本番いきまーす5秒前」
 ひと気もない真っ暗なスタジオで何処からかADスタッフの開始カウントが始まる。
 5!
 4!
 3!
 2!
 と、カウントがゼロになった同時に観客席から拍手される。この番組ギャハハザウルス司会進行役の銀のタキシードを決めた中年男性がお茶の間に立つ。
「どうも、司会進行役の梅田花郎です」
 と、テロップに『梅田花郎』とテレビ画面に表示される。
 そして花郎の右隣にぴょんと飛び跳ねる黒の修道服を着込んだ少女。
「同じく、副司会進行役の星田星夏です♪」
 続けてテロップに『星田星夏』とテレビ画面に表示される。
 そして2人はハイタッチしてイェーイ♪と言って両手にグッジョブという合図をした。
 と、花郎は咳を出して仕切りに入った。
 梅田花郎、52歳。元大物有名演歌歌手。今は地元の石山県のテレビ局でいくつかレギュラー数本を持つ。花郎の趣味は珍しい花と売れない歌謡曲収集。虫男の実のお兄さんである。代表演歌曲は『俺のおし花』。
 星田星夏、16歳。ミスイシヤマに選ばれた事がある現役タレント歌手。初デビュー曲は『この星まで届け』。地元石山県拠点にして活動している。彼女は幼少期の赤ん坊ころ、自宅に隕石が落ちて無事だったとこから一部の熱狂的ファンから星女と慕われている。またテコンドーやサッカー等の蹴りスポーツならとことん極める。八木楓とは同じ野花高校に通うクラスメイトの親友である。
「では、観客が満足して笑わせるまで帰れないギャハハコーナーに参りましょう。今夜参加されるお笑い芸人達はこの方たちになります」
 と、参加するお笑い芸人2組が真っ暗なスタジオにスポットライトが当たった。
 1組目は畳椅子に座りながら男女のコンビが両手にピースサインをかざしてアピールしてる。テロップには『この草はよしな!』と表示されてる。
 2組目は定番のノリのはしゃぎながら自分達をアピールする坊主の男コンビ。テロップには『つぶつぶ』と表示されている。
「では番組はたっぷり2時間構成になります。では最初はこの草はよしな!どうぞ」
「どうぞ♪」
 ♪~。
 音楽が流れるとこの草はよしな!コンビは表舞台に立ちコントを披露する。
「コント、草タクシーよしな!」
 と男女コンビは掛け声を同時に出す。
「ガチャ!草」
 男性がタクシーの客で女性が運転手を勤める。
「どちらまで?」
「えーと草山で」
「わかりました」
 と、しばらく運転してると。
「お客さんクサイですね」
「クサイですよ。まったく草」
「いや、あんたがクサイですよ」
「えークサ。俺のクサイ足かぐ?」
「よしな!」
 と、観客席からギャハハという笑い声が聞こえてくる。
 この草はよしな!の持ちネタは草セリフを連発して、ツッコミ担当女性がセリフの流れでよしな!とツッコミする。今期待の新人コンビ芸人である。
「もう草山につきましたよクサイな」
「じゃあもう一度俺のクサイ足かぐ?」
「もうよしな!ありがとうございました♪」
 と、この草はよしな!とコントが終わったらしい。
 と観客は拍手喝采になった。
「それでは満足点数をどうぞ」
 スタジオにあるモニターパネルが採点点数が計算される。
 そして採点点数が100点と表示された。
「やったー!!草奈やったぞ!」
「やったよー!!草吉。えーん!」
 この草はよしなコンビはとても嬉しかったのか泣きながら抱いている。
「では、次のコンビに参ります。つぶつぶどうぞ」
「どうぞ♪」
 つぶつぶコンビは緊張してるのか、足はぎこちなく舞台に立った。

「3」

 ーー「つぶつぶ桂山粒壱視点」ーー

「コント、つぶやきラーメン屋」
 俺たちは久しぶりのテレビ番組のお茶の間でコントを披露することになった。
 俺の名前は桂山粒壱、28歳。
 そして相方の桂山粒時、同じく28歳。
 俺たちは実の一卵性双子だ。
 そして俺たちの持ちネタはつぶつぶつぶやくというコントだ。
 相方の粒時がつぶつぶとつぶやき、俺がつぶやきにツッコミを入れる。ちなみに相方はつぶつぶしか言わない。
「で、おまえさっきから何をつぶやいてんだよ?」
 と、俺のツッコミに対して、
「つぶつぶ」
 と言う流れだ。
 うん。今日も客は全くウケてないところが無言で無表情だ。
「……………」
 司会進行役も無言である。
「つぶつぶしか言ってねーじゃんか?」
「つぶつぶつぶつぶ」
「…………」
 今日も駄目かな。

 ーー「30分経過」ーー

「つぶつぶ」
 相変わらず、俺たちの持ちネタはまったく受けてない。
 観客も一部退席している。
「つぶつぶつぶつぶ」
 相方はつぶつぶしか言ってない。
 司会進行役の方たちを横目でチラ見すると、花郎さんは何故か花占いしてるよ。
 なんでだよ!?
 なんかたくさん花占いした後いっぱいあるんだけど?
 で、星田さんは脚の素振りしてるよ。
 そう言えば彼女、物を遠くまで蹴り飛ばして星にさせる夢があるらしいな。
 というか目つき怖いだが。
「つぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶ」
 で、相方はつぶつぶしか言ってないな。
 俺は必死にツッコミを入れた。


 ーー「1時間経過」ーー

 ヤバい声が枯れそうなんだけど。
 前の吉奈奴らはウケたのでわずか数分で終わってそのまま帰ったんだけど。このままだと居残りそうだな。
 相方もなんかイラついてる。
 まずいな。アレを言うじゃないだろうな?
 観客もほとんど退席。司会者達はゲーム機カネワザストームでレースゲームしてるし。
「ぶつん!」
 それを見た相方はぶつん切れてぶつぶつ唱えた。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」
 相方の口から小さな煙の拳が観客に向かっていくつか放った。観客達にヒットしてノックアウトされる。
「おい!やめろ!ぶつぶつ唱えるな!って、あれほど言っただろ!」
「つぶつぶ……」
 どうやら相方はぶつぶつを辞めてくれたらしい。
 観客達もフラフラだ。
 そして俺たちはコント仕切り直した。

「4」

 ーー「番組終了」ーー

「今回つぶつぶは残念ながら15点の採点でした。ではまたつぶつぶのコントを来週まで持ち越しになります。ではまたさよなら」
「またねー♪」
 本番オーケーですと言うADの声の元、花郎さんはそのままスタジオ出た。
 星田さんはいらつき俺たちの座っていた畳椅子を蹴り飛ばした。
 観客達は無表情のまま動かず座ったままだ。
 俺たちは楽屋に戻る。

 ーー「楽屋」ーー

 楽屋に着くと俺たちはそのまま楽屋で敷いた布団で床についた。
「あー、眠れない。相方は相変わらずつぶつぶしか言ってない」
「つぶつぶ」
 相方はつぶつぶしか言わない。
 俺は眠れないので〇〇さんを数えて気を紛らわすことにした。
「〇〇さん。1人」
 すると俺たちが寝てる右壁の方から青白い人影が現れて左壁に通過した。そして2人目を数えるとまた右壁から左壁に通過する。
「〇〇さん。658人」
 俺が数える間はどんどん通過していた。
「つぶつぶ」
 こうして俺たち来週まで楽屋に過ごした。

「5」

 ーー「1週間目番組開始」ーー

「さー。今回もつぶつぶコントです。どうぞ」
「どうぞ♪」
 と、観客は満員だ。俺たちはつぶつぶコントをする。
「つぶつぶ」
 俺は相方につぶつぶをツッコミする。
 観客はうん、無表情&無言である。
 で、司会者達はというと。
「おしい花~♪俺の押し込んだ花柄♪」
 花郎さんの歌う演歌に拍手する星田さん。
 梅田さんはカラオケ機材持ち込んで持ちネタの曲を披露してるよ。
「次、わたしね♪」
 ♪~。
 星田さんも自分の曲を披露するみたいだ。
「ずっと、ずっと届け~♪わたしの蹴り飛ばしたあなたの星♪」
 俺はため息吐いた。だが、
 (ええ!?なんで泣いてるの?)
 彼女の曲を聴いた観客達は思わず急いで席を立って去っていた。
 (おいおい。このまま行くと観客席はゼロになるぞ?)
「つぶイラつぶイラ」
 相方もイラついて我慢していた。

 ーー「1時間経過」ーー

 ほとんど観客はいなくなってしまった。
「つぶつぶ」
 しかし、やる気が出ないな。
 と、何やら俺たちの舞台にゴミが投げつけられる。
 なんなんだと思えばいつのまにか数人の観客からゴミが投げつけられるのも多少理解するが星田さんも参加してるよ!?
「つぶつぶギリ!」
 相方よこらえてくれよな。


 ーー「番組終了」ーー

「今日もつぶつぶコントは残念ながら15点でした。ではまた来週さよなら」
「まったねー♪」
 舞台上ゴミだらけだよ。ほとんどはペットボトルだけどな。
 番組終了すると、花郎さんはまっすぐ帰った。
 一方の星田さんは空き缶をどこから出して向かって軽く蹴った。彼女は笑顔だが目は笑ってなかった。

 ーー「楽屋」ーー

 俺たちはいつものように布団を敷いて床についた。
「つぶつぶ」
 相方も相変わらずである。
 俺は眠れないので自分の好きなメロディを歌う。
 ~♪
 すると俺たちのまわりには青白い人たちが手を繋いで輪になり、ぐるぐるゆっくりブレて回転する。
「つぶつぶ」
 ~♪
 来週までメロディを口ずさんだ。

「6」

 ーー「2週目番組開始」ーー

「じゃあお願いします」
「どうぞ♪」
 花郎さんは面倒くさくなったのか、手抜き紹介した。
 星田さんも笑顔だが目が笑ってない。
 関係ないけど、前回の投げつけたペットボトルまだそのままにしてるぞ?誰か片付けろや。
 で、俺は横目で司会者達となりにいるゲストを見る。
 番組の持ち直しにプロデューサーがゲストとして呼ばれたんだが。
 何故か星田さんが学校に通う生徒達を呼んだらしい。
 一応ゲストには4人の女子生徒である。
 1人目は夢見亜華葉さん。彼女の夢は早くとべること。彼女の祖母は超有名な夢想詩人家夢見飛鳥の孫である。俺も少し彼女の詩は大ファンである。
 2人目は穴本八枝さん。八木家の分家でありいつも白粉肌をしていて普段着の服装は袴なんだが、彼女の家柄のしきたりの特徴では眉毛を濃くしてゲジゲジであり太くしてる。彼女は放送部員に所属していて将来の夢はアナウンサーになりたいとか。
 で、最後に2人紹介するのは、鳴沢姉妹である。彼女達には足がないのが特徴である。なので妹は車椅子で姉は下から下半身は透けているのである。鳴沢姉妹はブラックシスターと呼ばれるほど腹黒くていつも付き添ってるドレイ達にはコキを使い潰すというほどであるから個人的にはえぐい。早速花郎さん達にお茶菓子を用意させられるドレイ。ちなみにドレイ達たちは身体が青白く透けていてどこか生気がない。
 ん?というか紹介する彼女達はほぼ石山県で有名な人達ではないか?気のせいかな。
「つぶゅん」
 どうやら相方は風邪をひいたらしい。
 俺たちはそこでもつぶつぶコントやる。
「つぶゅん」

 ーー「10分経過」ーー

「つぶちゅん」
 相方は鼻水だらけだった。
 で、司会者達やゲストは何をしてるかというと。
 トランプで大富豪やっていた。
 観客達は相変わらず無表情&無言である。
「つぶちゅん。ズズズ」
 はぁー。

 ーー「50分経過」ーー

 鳴沢姉妹はこの後用事あるのか、帰ってしまった。
「ぜぇぜぇ」
 相方の風邪が悪化してる。
「な、粒時もうつらいならやめようぜ」
 と俺の提案に相方は首を縦にふらない。
「つぶぜぇつぶぜぇ」
「粒時……」
 相方は最後までやり遂げるらしい。
「そうか…最後までやろうぜ」
「つぶぜぇ!」
 俺達はあきらめずやることにした。
 司会者達はというと、なんでだよ!?
 花郎さんは夢見さんに散髪してるよ。
 そう言えば彼女の家は理髪店やってたんだっけ?
 で、残り星田さん達はというと、おい!
 なんか星についての真面目にマジ解説してるよ。
 へぇー。ミツバチは絶滅すると困るのか。地球の環境にとっては欠かせないものなんだな。あと2050年問題は切実近づいてるんだな。俺も他人事ではないな。
 観客達も真剣に耳を傾けている。中にはメモとってるし。
「へ、へ、へ、ぶつちゅん!」
 と、相方から思わずでかいくしゃみで花郎さんとこにぶつけた。思わず彼にモロ鼻水だらけにかかった。夢見さんは思わず花郎さんの陰に隠れて無事だった。
 しかし彼はプロである。何事もなかったかのように平然としている。
「ぶつちゅん!ぶつちゅん!」
 お、おい!星田さんとこに来たぞ?
 モロ喰らってる。
 花郎さんと同じくプロ意識はある。
 穴本さんは上手いことくしゃみから避けて無事だった。
 なんかあとがこわいな。
「ズズズ」

 「7」

 ーー「番組終了」ーー

「残念ながらつぶつぶコントは15点でした。ではまた来週。グッバイ」
「バイバイ♪」
 花郎さんと星田さんは鼻水まみれだった。かというと俺も近いので鼻水だらけである。番組終了すると、夢見さんと穴本さんは軽く会釈して帰った。花郎さんはまっすぐ俺の所に向かい肩を軽く叩いて去った。
 そして星田さんはまず俺の所を向かい目の前に立った。
「………」
 そして俺の顔をジロジロと見て近づきガン飛ばしする。俺は抵抗せずに黙って耐えた。
 彼女は舌打ちしながら何もせずに去っていた。

 ーー「楽屋」ーー

 俺たちはテレビ局のシャワー室で鼻水だらけ落としてマネージャーから、マスクと薬もらい粒時に与えた。
 そしていつものように布団敷いて床につく。
「つぶちゅん!ゼェ、ゼェ」
「あー。今日も眠れないな。詩でもつぶやくか」
「つぶちゅん」
 俺は自作の詩でつぶやくことにした。
「夢想家の粒へ、たったひとつのつぶやきでもいいじゃないか、だって俺たちは米粒みたいなもんだろ?夢想家の粒へ」
 すると、壁から青白い人が浮遊して周囲を泳いでいる。俺が詩を唱えるごとに次々とどんどん増えていく。
「つぶちゅん」
 俺は来週まで詩をつぶやきながら時間をつぶした。

 「8」

 ーー「7週目番組開始」ーー

 俺たちはほぼ2ヶ月もこのテレビ局に泊まり込みで自宅に1度も帰ってない。
「つぶー」
「ケッ」
 花郎さんはもう投げやりな紹介だった。星田さんは、俺たち見るとすごく睨んでいた。
「つぶつぶ」
 俺たちはつぶつぶコントやっていた。もちろんネタは変えてない。
 そして司会者達はノリ牛のステーキを喰っていた。いくらなんでも気を緩みすぎないか?
「ぶつん!」
 と、相方が切れた。
「ぶつーーーーーー!!」
 相方の口から巨大な煙の拳が観客席にぶつけた。大きな衝撃音でスタジオが揺れて機材がいくつか落ちる。観客達はパニックになり騒然となる。ぶつけた後はクレーターになっていた。
「やったー!!ぶつけた♪」
「やりましたね!」
 花郎さん達は何故か喜んでる。
 観客達はザワザワと怯えていた。

 「9」

 

 ーー「番組終了間際」ーー

「それでは採点の方お願いします」
 相方はぶっつけぱなっしで観客席の後、いくつかはクレーターだらけだった。
「つぶー♪」
 相方は満足気な顔になってる。
「出ました……0点です」
 終わった。また来週かな?
 (パチパチ)
 と、どこから拍手音がする。
 見て見ると観客席の老人1人が立ち上がって拍手してる。次第に観客も立ち上がり拍手が増えていき拍手喝采になる。
 俺たちコンビは微笑んでみんなに手を振った。
 司会者達はそのまま帰った。
 でも変わった拍手だった。
 逆手の甲に合わせて何度も必死に叩いていた。

 ーー「八木家」ーー

「終わったな。どうやらギャハハザウルス打ち切りみたいだな」
「そうみたいですね。は高かったみたいですけどね」
 と、楓は食後のお茶でひと息つく。
「ま、彼らも必死みたいだったからな」
「この場を何がなんでもはしたかったでしょうね」
「おねーちゃん。星田さんの次のコンサートは何処でやるの?わたしいきたいな」
「教会の近くでやるみたいですよ。彼女も信者ですからね」
「兄貴も歌やればいいのにな」
 と、虫男がつぶやくと、
「彼も体質ですからね」
 楓はつぶやき返した。

 「10」

 ーー「????」ーー

 ギャハハザウルスの観客達はとある場所に集められた。
「ようこそ。おまえたちこれより公開処刑することになる」
 謎のサングラスをかけて黒服を来た男性は彼らに向かって言った。
 すると1人の男性観客がスキを見て逃げた、が。パシャという音で一瞬で消えてしまう。
 そしてサングラスをかけた謎の黒服を着たエージェントがやってくる。手にはスマホを持っている。
「24時間内に我々の手から逃げた場合は自由の身にしよう。ではスタート」
 ブゥンとゲーム開始音が鳴ると同時に観客達は一斉に逃げ出す。
 エージェントはスマホを手に彼らに向かって狙いを定めてスクショを撮りまくる。
 1人の観客の女性が撮られると、スマホの中に閉じ込められて、画面が電子分解されてその女性も電子分解されて消えてしまう。
 そして次々と撮られてそれを逃げまどう人たちの恐怖の鬼ごっこが始まった。

 ーー「番組企画会議」ーー

「で、こんな番組ならどうでしょうか?花郎さん」
「うーん。悪くないね。ただ前のギャハハザウルスみたいな泊まり込みは勘弁してもらいたいなぁ」
 ギャハハザウルスの番組で自宅で帰れなかったのは、桂山達だけでなく梅田花郎と星田星夏もそうだった。ただし彼らは他の番組出演や星田は学校があるのでテレビ局から出社して目的地に向かっていた。
「大丈夫ですよ。前のギャハハザウルスで花郎さんが呼んできた人達のストックはありますので。しばらくは泊まり込みしなくても大丈夫ですよ」
 と、プロデューサーは説明する。
「そうか。なら一安心だね」
 花郎はスタッフが用意されたお茶を飲んだ。
 花郎とつぶつぶの楽屋は隣同士だった。

 つぶやきボクシング  完
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