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野花怪異談N③巻【完結】

30話「北臓さんには敵わない」

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「1」

 ピーンポーンパーンポーン♪
 梅田虫男からの虫注意無視アナウンスです。
 この話では虫を扱うための虫食などの虫描写があります。虫が苦手な方は無視して虫からお逃げ戻りください。
 以上、梅田虫男からの虫注意無視アナウンスでした。
 ポーンパーンピーンプーン
 虫男「あ、虫!」
 ハエ「プーン」
 虫男「パチ」
 ハエ「プーン」
 虫男「では、北臓さんは敵わないどうぞ」
 クサイ「ブーン」

 ーー「石山県虫守市虫野町ムシマーケット」ーー

 賑やかな歓声する市場。
 ここでは石山県唯一の昆虫食材を扱う最大マーケットである。
 この虫達が出す匂いなど惹かれて虫好き達が集まる。
 そんな中珍しい虫食もあり。
 アリが入った蟻お赤飯。
 ムカデのゴーヤ風ムカデチャンプル。
 ミミズのミミズハンバーグ。
 イナゴの大学芋風味大学イナゴ。
 などなど取り揃えていた。
 混雑する人だかりにそこへ彼らがやってきた。
 この怪異談を語ってぜひやらせて欲しいと嘆願した梅田虫男ことムッシー。
 職業は教師、趣味は昆虫採集と売れてない無視本収集。
 今回は怪異談のアナウンスも引き受けてくれた。
 で、最近イケメン枠で出番増えてきそうなムシイケメン茶髪少年永木翼。永木財閥グループの会長の孫のおぼっちゃま。虫男の付き合いでここに訪れてきた。
 最近こんなやついたっけ?というか読者どころか作者も忘れさられてるムシ肉体を持つ鳥河大軌。本来ならば少女夢見亜華葉か野花手鞠が来る予定だったが途中急遽来られなくなり彼が代わりに来たのである。虫食に惚れ込みゲテモノ有志を見せてモテようとするがこの後ひかれることに気がついてない。
 最後は貴重なヒロイン枠おさげ白粉少女八木楓、今回は虫男のために目立たないように地味な無地の和服を着て接している。
「いろいろあるな」
 虫男はこの虫の独特な匂いと味に惹かれていろいろつまんでいた。
「ムムム……」
 大軌はタガメの串焼きで男意義見せようと食べようとする。
「楓と翼は食べないのか?」
 と、虫男は尋ねると、
「私はいいですわ。うふふ♪」
「俺も遠慮するかな」
 と、やんわり断っていた。
「そうか。まぁ、来ただけでもありがたいよ」
 彼らは好んでついてきたのではなく興味本意で来たのである。
 また永木桜と八木瑠奈や賢木理奈にも誘ってみたが3人共、口揃えてムシイヤヤで吹きかけられて拒否された。
 神木命は父親のお祓いの手伝いで星田星夏は次回の怪異談ドラマ出演調整ため、黒木あかねはバイトの理由づけで断られた。
 虫男がいろいろ虫を見て廻ると顔見知りが虫惣菜を買っていたので声をかけた。
「あのー。もしかして北臓さんじゃないですか?」
 北臓と呼ばれた銀の長髪である茶色の小麦肌の老人は振り返り、虫男を見るとにこやかになり、挨拶した。
「おや?梅田さんじゃないですか。先週の虫OFF会どうも」
 北臓は虫男主催の石山県いる虫達無視による虫好き会OFF会をマムシちゃんねるの呼びかけで先週の日曜日第一回開催に出向き、彼と知り会った仲である。
「北臓さんのイシヤマカマクワガタの怪我の応急処置はとてもためになります。虫だけじゃなくいろいろな博識ありますね」
 北臓は虫の知識を精通してるだけでなく、ほかの知識も詳しく専門家レベルまで達していた。
「なぁに、大したことはありませんよ」
 北臓はふふふと笑っていた。
「いやいや、あそこまでいけるのありませんよ。北臓さんの知識量を見て、俺はと思いました」
 と、北臓は一瞬悲しくなる。
「そうか。まぁ、わしにとっては大したことないよ。ただ人より学習欲、知識欲あり、今での積み重ねだけだからの」
 と、北臓はこのあと、用事あるのか何処かへ去っていた。
「先生、今の方は?」
 と、楓は尋ねる。
「俺のOFF会友だよ」
 と、虫男は少し頭をかいた。
「そうですか。例の方ですね」
「そうだ。北臓さんは常に勝ち続ける勝ち組だな。でも実際にはそうじゃないのさ。彼の抱える闇をな」
「……詳しく聞かせてもよろしいですか?」
「いいぞ。あまり言いふらすじゃないぞ?そう。あの人はーー」
 虫男は北臓について語った。

「2」

 ーー「石山県草山市仲間野村」ーー

「北臓さーん。次は何をすればいいですか?」
 俺は収穫の草を刈り取り袋に入れてまとめている。
「そうだな。次はあそこのエリアで刈り取りだ」
 と、次の草の刈り取りする畑のエリアを指示して人よりも手慣れた手つきで俺よりも早く刈り取りこなす北臓さん。
 俺は収穫した草を軽トラックに積み込む。
 俺の名前は南田太一。25歳。
 北臓さんの元で働いてるまだ新人一年だ。といっても会社は北臓さんと俺で2人しかいない。
 で、軽々と刈り取りするのが北山宗臓さん、略して北臓さんだ。
 今年で65歳で今も現役だ。
 北臓さんはいつも頼りしてる。
 武道や勉強も宝くじ等も全てにおいて勝ち続けている。
 彼に挑んで誰もかってる所をみたことない。
 だからみんなは口を揃えて言う。
『北臓さんには敵わない』とよく言われるらしい。俺も北臓さんには敵わないと思っている口の1人だ。
 俺と北臓さんはいくつか業務こなして昼休憩を取った。
 俺たちは依頼主から草山市で取れるイナゴの佃煮とイナゴおにぎりをご馳走してもらった。
 ちなみに俺は小さい頃から虫食に慣れてるから大丈夫だ。
 で、北臓さんも虫好きなので毎日自分の虫を使った料理をよくするほど虫を食べる。自分の健康秘訣は虫食であると公言している。
「北臓さん。ちょっと来てみてもらっていいか?」
 と、依頼主が北臓さんに尋ねてきた。
 北臓さんは残りのイナゴおにぎりを食べてはみ出たイナゴの片足をひょいと口に入れて手を舐めてから依頼主と一緒に連れてかれる。
 俺も急いでイナゴおにぎりを平らげて北臓さんの後を追った。


「ふむ結構喰われてるの」
「そうなんだよ。なんとかならんかね」
 と、俺は北臓さんの後を追いかけると、同業者達が依頼主と話しあっていた。
 かなりの草畑が草山イナゴに喰われていた。
 そして俺たちみたいな同業者も集まっており対応苦慮してるみたいだ。
「わしらも無理じゃな。この規模の草畑でしらみつぶしでイナゴ退治は農薬を撒かない限り無理じゃろな」
 と。1人の同業者が言った。
 この草畑は東京ドームの3個分くらいあった。
「うちの草畑は無農薬が売りでの。そうはいかんのじゃ」
 と、依頼主は口を酸っぱくして言った。
 北臓さんは喰われてる草畑をみて、草畑をかき分けてイナゴの一匹を捕まえてじっくりと観察した。
「柳山さん。なんとかなるぞ」
 柳山さんは俺たちの依頼主の名前だ。
 柳山さんは北臓さんに近づいて詰め寄った。
「本当か!?この規模の草畑じゃが、人手はどれくらい足りるかの?」
 北臓さんは手に持ってたイナゴを逃して言った。
「わし1人で十分じゃ。ほかのやつらでは足手まといじゃからな。明日の朝までなんとかなるぞ」
 その場にいた同業者達は驚いてた。
「北臓さん!この規模の草畑じゃ。いくら北臓さんでも明日までは……」
 同業者1人は異論を唱えるが、
「大丈夫だ。わし1人で全責任全て負う。なのでわしは準備があるので今日のところ帰るのでまた」
 と、北臓さんは俺の肩を叩き、一緒に帰宅することになった。
「北臓さん。あんな啖呵を切って大丈夫なんですか?」
 と、俺の心配よそに北臓さんは、
「心配いらんよ。今日じっくりと寝れば事が済んでるよ」
 俺たちは軽トラックに乗り込み、宿泊する民泊に戻り北臓さんは軽い食事をして早めに就寝した。
(本当に大丈夫なんだろうか?)

「3」

 ーー「????」ーー

 深夜の明かりがついてない真っ暗な夜道。
 そこに暗闇を照らすライトを走らせる軽トラック一台はある草畑に到着する。
 到着した同時に男性運転手は降りると、片手に懐中電灯を持ち、光に照らし周囲に誰もいないことを確認すると男性は懐中電灯の光を消す。
「誰もいないな。じゃあ、お前たち美味しい夜食の時間だよ」
 ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ。
 男性の周囲から得体の知れないモノが鳴り響いてる。
 男性からの呼びかけで無数の小さな群れの大群が草畑に集まる。
 そして数時間経たないうちに大群は帰っていた。

「4」

 ーー「次の日」ーー

 俺は朝から目を覚まして、先に起きてた北臓さんと朝食を取り、問題のある草畑に向かった。
 問題のある草畑に向かうと、同業者達は何やらざわついていた。
(もしかして北臓さんすっぽかしたの?)
 と、北臓さんの顔を見てるといつものニコニコした仏顔である。
 俺たちは軽トラに降りて見ると、同業者の1人が真剣な目つきで北臓さんを詰め寄った。
「北臓さん!もしかしてこれ、全部あんたがやったのか!?」
 と、何やら揉めそうな予感がする。
 北臓さんは大したことなさそうに、
「そうだ。わし1人でやったぞ」
 同業者の1人は口を開いてポカンとしていた。
「ま、まさか1日でこの広い草畑にいるイナゴ全部退治したのか!ありえない」
(え?北臓さん。あの草畑にいるイナゴ全部退治したの?)
「わしらも北臓さん1人じゃ無理そうだと思い手伝いしようかと思って人手を頼んで置いたのじゃが北臓さんの言う通り足手まといじゃったな」
 同業者達は笑みを浮かべていた。
 やっぱり!すごいな北臓さん。
 北臓さんには敵わないな。
 と俺はふと思った。
 俺達は依頼主から感謝の意を示して依頼料の金額を多めにもらい、あと草山名物草山イナゴせんべいをもらった。
 依頼をこなした俺達は帰り道と一緒である同業者と帰宅することになった。


 俺達は仲間野村から出発してしばらく道路を走ってると、大型トラックが横転して通行止めになっていた。北臓さんはエンジン止めて停止して俺たちは軽トラから降りて現場に向かった。
「あ、北臓さん。わし達もすぐ引き返しますんで」
 と、同業者も興味本位で見学していた。
 ここの道は一本道しかなくここから引き返して別ルートから遠回りしないといけない。
 問題の大型トラックにはパトカー等が停めていて現場検証や交通誘導している。
 警察が言うには大型レッカーが現場到着には数時間かかるらしいのことだった。
「北臓さん。ここは引き返しましょう」
 と、俺の提案に対して北臓さんは俺のことを無視して事故を起きたトラックに近づいた。
「すみません。もう現場検証は済みましたか?」
 と、北臓さんは警察官達に言うと。
「ん?ああ。もう済んだところだ。あぶないから、ここは離れてください。あ!おい?ちょっと?ちょっと!?」
 北臓さんは警察官達の静止を振り切り問題のトラックに近づいてトラックの隙間から掴んで、
「ふん!」
 一気に持ち上げた。その時北臓さんの口から大量のイナゴ消化した物体が溢れてきた。
 大型トラックをドスンと音を立てて軽々と元に戻した。
 警官隊や同業者も口がポカンとして驚いていてる。
 北臓さんは俺に近づいて言った。
「じゃあ、どかしたしもう行くぞ」
 北臓さんの口元から、ポロっと消化されたイナゴらしき物体の片脚が地面に落ちた。
(やっぱり、すごいよ!北臓さんは)
 北臓さんには敵わないな。
 俺はふと思った。
 俺達が自分のトラックに乗り込むと同業者も乗り込み走り去った。

「5」

 ーー「石山県海山市宝乃町田山港」ーー

 俺達と同業者はここで一緒に食事することになった。
 この近くで美味しい新鮮な魚介類を食べられる。俺と北臓さんも魚はよく食べる。北臓さんはなんでも虫に合うらしい。
「いやー。北臓さんは頼りになるよ。うちの社員になって欲しいくらいだよ」
 同業者の社長さんは北臓さんにお酌する。もちろん北臓さんは運転なのでアルコールじゃなくて草山名物草サイダーだ。
 北臓さんは同業者の社長さんと雑談している。ただ少し距離を置いてる。
 ほかの同業者から聞いたことあるんだけど、北臓さんは勝ち組でよくかってるため周囲から嫌悪感や嫉妬をよく買われたため友人と呼ばれる人はいないらしい。あと、かなりムシ好きなたため北臓さんの理解者は少ない。
 なので会社は北臓さんがやって社員は俺しかいない。
 俺は草サイダーを一気飲みしてゲップする。
「北臓さん。一緒に海でも眺めていきませんか?」
 と、俺の提案誘いに対して。
「ああ、いいぞ。出発にはまだ時間あるしな」


 昼食終えた俺と北臓さん。そして同業者達も海を眺めていた。
 海の塩気の匂いが感じていた時に、
「誰かー!!私の息子が!!」
 壮年女性らしき人が何やら助けを呼んでいた。
 と、俺達が現場に向かうと、そこの港の近くで海に幼い少年がバタつかさせて溺れていた。そして力を無くしたのか深い海へと沈む込む。
 突然、北臓さんが海へ潜った。
 北臓さんは海が苦手らしいがただ泳げないことではない。
 俺たちは彼らの無事を祈ることだけであった。

「6」

 ーー「????」ーー

 少年は意識がある中、深い海の底へと沈んでいく。
「がぼっがぼっ」
 かすかに漏れていく空気の泡が意識を薄れていく。
「……?」
 突如、少年の方から勢いよく向かってくる謎の物体。
「!!」
 その物体は無数のヒルのようなまとわりつき人の形を形成していた。そしてヒルの中から長いヒルの舌ようなモノで少年を捕らえる。
 少年はあまりの衝撃に意識を失った。

「7」

 ーー「田山港」ーー

「……?」
「ほ、よかったな坊主」
 少年は息を吹き返した。
 ふー。人工呼吸した甲斐があった。
 でも、そこに飛び跳ねてるヒルみたいな虫。
 北臓さんがかってることをみんなにバレてしまったな。
「大丈夫か?少年」
 北臓さんは少年に顔を覗くと。
「ひぃぃぃー!?」
 北臓さんを見ると怯えてしまった。
 母親が心配かけまいと少年に宥める。
「………」
 北臓さんは怯えた少年を見るとすぐ立ち去ろうとする。
 俺はそんな北臓さんを引き止めた。
「北臓さん!あなたの行為は勇敢であり無視できないものでした!北臓さんはかっこいいムシでした!」
 同業者達も俺も!わしも!と周囲に人だかりにいる人たちは北臓さんを激励をしている。
 北臓さんはそんな彼らを見てにこやかに答えた。
「わしはおまえらの好意ムシしたことは一度もないぞ。南田、おまえみたいな余計なおせっかい虫はわしから追い払ったことあるかな?」
 俺はそれを聞いて笑ってしまった。
 そして周囲の同業者達も釣られて笑う。
 やっぱり、北臓さんには敵わないな。
 俺はふと思った。

「8」

「あの出来事以来、北臓さんの元に少しずつだが会社に集まるようなったんだ。で、その南田も北臓さんの直属の右腕として今でも働いてるらしい」
「素晴らしい方じゃないですか?ただかってるから、誤解されやすいかもしれませんね」
「そうだな。北臓さんも少し人と接するようになったがまた少し距離はあるみたいだな」
 梅田はふと思った。



 ーー「神木童心神社」ーー

「どうですか?北臓さん。まだ痛みますから?」
「あー。少しは楽になってきたわ」
 北臓はいつものように命から肩揉みやマッサージしてる。
 北臓と神木はしばらく犬猿の仲だったが、すでに和解して仲は持たれつつ良好である。命の関係は孫のような関係まで築いてる。
「あまりかいすぎはよくありませんよ。無理しちゃうのは身体に毒ですからね」
「……そうじゃな。命ちゃんの言う通りにするよう心がけするよ」
 しばらく命がマッサージすると北臓は身体が楽になったのか、命にお礼を言って帰宅した。

 ーー「北臓の自宅」ーー

 北臓は自宅に着くとつぶ壇にお線香あげた。顔写真には妙齢の美しい女性が写っていた。
 軽く手を合わせるとまっすぐ倉庫の部屋に向かい謎の和紙で包んだ壺の封を開けて蠢いてる蟲を箸でひょいとつまみ咀嚼する。
「ふむ。結構な味が滲み出てるな」
 北臓は新たに虫かごから蟲を新たに壺を投入して封をしたあと、たくさん並ぶ壺に置く。
 そして居間に向かいテーブル席に座り、自分の上着のシャツを脱ぐ。北臓の胸に謎の記号で描かれた文字を透けた心臓に囲むように刻まれている。
 そこに心臓の鼓動するたびに白光が点滅する。北臓の両眼にはカメレオンのようにギョロギョロと動く。そして口を開けて中から中型のタコのように皮膚を持ち血管が浮かんだ蜘蛛が飛び出して彼の周りをちょこまか動き回る。
 そして彼の家の中はギチギチギチギチギチギチギチギチと鳴り響いてた。

「9」

「お母さん気持ち悪い」
「あら、どうしましょう」
北臓達が救助された少年と母親は車で帰路につくところだった。
「うっぷ」
「ちょっと!こんなところで吐かないで」
母親は車を停めて、外で吐かせようとする
「うげぇ」
吐いた吐瀉物散乱する。そこに。
「え?きゃああああ」
少年が吐いたのは小さな身体持つヒトだった。そのヒトのようなモノはそそくさとその場から立ち去っていた。

ーー「とあるアパートの南田の自宅」ーー

南田の口から小さなヒトがピョコと顔をだして次々と出てくる。
「あれ?一匹たりない?まさか草畑に置いてきたのかな?」
南田は首を傾げた。

北臓さんには敵わない   完
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