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野薔薇怪異談M【完結】
95話「ポカポカ怪異談」
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「1」「ホットケーキ」
幼い頃からおばあさまの作るホットケーキが大好きだった。
すでに物心つく頃から両親がいなかった私。
唯一、家族といえば、ご意見番の黒岩とおばあさま。そして去年亡くなったおじいさまだ。
おじいさまはおばあさまが作るホットケーキは大好物だったから。
最期まで亡くなる直前までホットケーキ食べたいとつぶやいていたからね。
そんなお盆の月の日、墓参りの帰りにおばあさまが久しぶりホットケーキを焼いてくれた。
私がいる居間にはおじいさまの遺影が飾ってある。居間には私とおばあさましかいない。黒岩は里帰りしていて石山県にはいない。
「友紀!さぁ出来たわよ」
丁度2枚分出来上がった所だった。
そこで私は丁度お手洗いしたく席を外しておばあさまも次のホットケーキを焼く準備していた。
しばらくして数分後のこと、私が居間に戻る頃にはホットケーキが1枚減っていた。
「おばあさま?」
当然おばあさまを疑うがホットケーキを自分のを焼いてるので意地汚いことを嫌うおばあさまがそんなはずはなかった。
と、しばらく周囲を見渡すと私はあ!と驚く。
おじいさまの写る遺影の顔にホットケーキのような残りかすのような物がついていたからである。
私はそれを見てクスクスと笑った。
「友紀?どうしたの?」
おばあさまが何事かと出来上がったホットケーキを持ってきた。
私はおばあさまに教えてあげた。
「おばあさま。あれ」
「まぁ。いじきたないわねぇ」
それを見たおばあさまも笑った。
その時におじいさまの頬が赤くなってる気がした。
ホットケーキ 終
「2」「ホットミルク」
幼い私は牛乳が好きで毎日欠かさず飲んでいる。
寒くなると冷え性の私はホットミルクにして飲む。
一応電子レンジで温めるのは慣れたモノである。
そんな時に彼女がやってくるのもあの日だった。
あれは寒い冬の頃、おばあさまと黒岩が外出して出かけている時私は家でお留守番していた。
その時、私は電気こたつに入り暖房を入れていた。
そんな時に玄関にチャイムが鳴ったので私は応対した。
「どちらさま?」
その時に玄関の扉の戸を開けると一気に寒い吹雪のような風が吹いていたことは覚えている。
そこの目の前に立っていたのは、私と同じ白い髪と白い肌、そして眼は赤く染めてピンク色の唇に白い着物を着ていた女の人だったわ。
「……あなたひとり?」
女はそう言われたので私はうなずいた。
女はそのまま黙って立ち去ろうとしたから、私はつい引き止めた。
「もしかして。おばあさまに用事があるでしょう?よかったら中に入って。外は寒いからね」
「……でもわたしは」
「いいからいいから」
私は無理矢理引き止めたようだから、そのお姉さんはどう感じたかしらね。
私はお姉さんを居間にあがらせた。
お姉さんはかなり汗がかいていたので私は慌てて暖房を下げた。
「ねー?よかったら、何を飲む。寒いから温かいモノを作ろうか?」
「……そうね。甘えていただこうかしら」
私はお姉さんのためにホットミルクを作った。砂糖は少し多めに入れておいた。
「どうぞ。温かいうちにね♪」
女の人はカップを掴み黙って飲んだ。
「……おいしいわ」
「本当?よかった」
「ええ」
「お姉さんもあの寒い吹雪の中で1人だったから、私心配したよ。そうそう私たまにこのホットミルク飲んでいると気持ちがホッとするの。嫌なときや悲しいときもこれを飲んだらすっかりポカポカな気持ちが出るから……お姉さん?」
その時、お姉さんが泣いてることに気がついた。
私は慌てて洗面所からのタンスからタオルを持ってこようと席を立った。そして戻るとお姉さんは忽然と姿を消した。
「お姉さん?」
お姉さんがいた場所は着ていた着物と何故か水のような溜まり場で濡れていた。
そしてお姉さんが飲んでいたカップのホットミルクは飲み干してあった。
ホットミルク 終
「3」「ゲームボウズ」
大晦日、幼い私とおばあさまと黒岩は大掃除していた。
そんな時に私はゲーム機を見つける。
古い携帯ゲーム機だったがおばあさまの許可をいただきカセットもいくつかあったので正月の時に思いっきり楽しんでいた。
その時にやっていたのが猿賀である。猿の忍者がお供に連れて旅に出かけるという王道RPGである。私はがっつりやり、暇さえあればやりこんでいた。
ちょうど飽きてしばらくして中学生の頃、私は猿賀をやりたくて再びゲームをしようとしたがなぜかつかなかったので黒岩に尋ねると乾電池切れじゃないかと私はこの時乾電池が初めているものだと気づいた。
そしてコンビニで単3乾電池を購入して早速ゲーム機の蓋を取り外すと電池は全くなかった。
幼い頃私はガッツリ遊んでいたが妙に軽かった記憶があったのだ。
そこで私は乾電池をセットしてゲーム機の電源を入れると記録も当時のままの猿賀だったがそこにキャラクターが「アリガトウ」と台詞が表示された。
もしかしてこの子は私と遊んで嬉しかっただろう。
今でも私は猿賀を時たまにプレイして遊んでいる。
ゲームボウズ 終
「4」「ケンカ商売」
幼い私とおばあさまは鐘技にある魚市場に来ていた。
ここでは新鮮な魚などが売られている。
「はいよ。いらっしゃい魚安いよ安いよ」
「おい!こっちは魚安いうえに大きいぞ。ほら買った買った」
「なにおー。くそ俺の方が味はしっかりしてるアジだぞ!」
「なに寝ぼけてやがる。こちはサバをよんでないぞ!なにおー」
「ああん?」
「やるか?」
と、彼らの馴染みのあるケンカ商売が始まる。
この辺では名物であり、彼らは昔からの幼馴染だったから、ケンカした後は仲良く酒を飲むらしい。
しかし、そんな彼らにもお別れがやってくる。
私が高校生になった頃、再びこの市場に訪れた。
その時、ケンカ商売でいた片割れの店主は客寄せしてるが何か元気なさそうだった。
「おじさん。元気なさそうだべな」
「ん?そんなことはないぞ。うん」
声をかけてもうわの空だったそんな時である。
「おうおうどうした?そんな女々しい感じしちゃってさ」
「おまえ!」
その店主のケンカ幼馴染が現れたのである。
「俺がいないうちにどーしてるかと思えばそんな腑抜けた感じじゃ潰れるな。俺と代われよ」
「うっせーよ!おまえなんかいなくてもやっていけるさ。さっさと寝てろ!商売の邪魔だからな」
「言うようになったじゃねーか?その調子だぞ……」
するとそのおじさんはスゥーと身体ごと消えた。
その時、営業終えた店主は消えたおじさんのいた店の前で献花した。
ケンカ商売 終
ポカポカ怪異談 完
幼い頃からおばあさまの作るホットケーキが大好きだった。
すでに物心つく頃から両親がいなかった私。
唯一、家族といえば、ご意見番の黒岩とおばあさま。そして去年亡くなったおじいさまだ。
おじいさまはおばあさまが作るホットケーキは大好物だったから。
最期まで亡くなる直前までホットケーキ食べたいとつぶやいていたからね。
そんなお盆の月の日、墓参りの帰りにおばあさまが久しぶりホットケーキを焼いてくれた。
私がいる居間にはおじいさまの遺影が飾ってある。居間には私とおばあさましかいない。黒岩は里帰りしていて石山県にはいない。
「友紀!さぁ出来たわよ」
丁度2枚分出来上がった所だった。
そこで私は丁度お手洗いしたく席を外しておばあさまも次のホットケーキを焼く準備していた。
しばらくして数分後のこと、私が居間に戻る頃にはホットケーキが1枚減っていた。
「おばあさま?」
当然おばあさまを疑うがホットケーキを自分のを焼いてるので意地汚いことを嫌うおばあさまがそんなはずはなかった。
と、しばらく周囲を見渡すと私はあ!と驚く。
おじいさまの写る遺影の顔にホットケーキのような残りかすのような物がついていたからである。
私はそれを見てクスクスと笑った。
「友紀?どうしたの?」
おばあさまが何事かと出来上がったホットケーキを持ってきた。
私はおばあさまに教えてあげた。
「おばあさま。あれ」
「まぁ。いじきたないわねぇ」
それを見たおばあさまも笑った。
その時におじいさまの頬が赤くなってる気がした。
ホットケーキ 終
「2」「ホットミルク」
幼い私は牛乳が好きで毎日欠かさず飲んでいる。
寒くなると冷え性の私はホットミルクにして飲む。
一応電子レンジで温めるのは慣れたモノである。
そんな時に彼女がやってくるのもあの日だった。
あれは寒い冬の頃、おばあさまと黒岩が外出して出かけている時私は家でお留守番していた。
その時、私は電気こたつに入り暖房を入れていた。
そんな時に玄関にチャイムが鳴ったので私は応対した。
「どちらさま?」
その時に玄関の扉の戸を開けると一気に寒い吹雪のような風が吹いていたことは覚えている。
そこの目の前に立っていたのは、私と同じ白い髪と白い肌、そして眼は赤く染めてピンク色の唇に白い着物を着ていた女の人だったわ。
「……あなたひとり?」
女はそう言われたので私はうなずいた。
女はそのまま黙って立ち去ろうとしたから、私はつい引き止めた。
「もしかして。おばあさまに用事があるでしょう?よかったら中に入って。外は寒いからね」
「……でもわたしは」
「いいからいいから」
私は無理矢理引き止めたようだから、そのお姉さんはどう感じたかしらね。
私はお姉さんを居間にあがらせた。
お姉さんはかなり汗がかいていたので私は慌てて暖房を下げた。
「ねー?よかったら、何を飲む。寒いから温かいモノを作ろうか?」
「……そうね。甘えていただこうかしら」
私はお姉さんのためにホットミルクを作った。砂糖は少し多めに入れておいた。
「どうぞ。温かいうちにね♪」
女の人はカップを掴み黙って飲んだ。
「……おいしいわ」
「本当?よかった」
「ええ」
「お姉さんもあの寒い吹雪の中で1人だったから、私心配したよ。そうそう私たまにこのホットミルク飲んでいると気持ちがホッとするの。嫌なときや悲しいときもこれを飲んだらすっかりポカポカな気持ちが出るから……お姉さん?」
その時、お姉さんが泣いてることに気がついた。
私は慌てて洗面所からのタンスからタオルを持ってこようと席を立った。そして戻るとお姉さんは忽然と姿を消した。
「お姉さん?」
お姉さんがいた場所は着ていた着物と何故か水のような溜まり場で濡れていた。
そしてお姉さんが飲んでいたカップのホットミルクは飲み干してあった。
ホットミルク 終
「3」「ゲームボウズ」
大晦日、幼い私とおばあさまと黒岩は大掃除していた。
そんな時に私はゲーム機を見つける。
古い携帯ゲーム機だったがおばあさまの許可をいただきカセットもいくつかあったので正月の時に思いっきり楽しんでいた。
その時にやっていたのが猿賀である。猿の忍者がお供に連れて旅に出かけるという王道RPGである。私はがっつりやり、暇さえあればやりこんでいた。
ちょうど飽きてしばらくして中学生の頃、私は猿賀をやりたくて再びゲームをしようとしたがなぜかつかなかったので黒岩に尋ねると乾電池切れじゃないかと私はこの時乾電池が初めているものだと気づいた。
そしてコンビニで単3乾電池を購入して早速ゲーム機の蓋を取り外すと電池は全くなかった。
幼い頃私はガッツリ遊んでいたが妙に軽かった記憶があったのだ。
そこで私は乾電池をセットしてゲーム機の電源を入れると記録も当時のままの猿賀だったがそこにキャラクターが「アリガトウ」と台詞が表示された。
もしかしてこの子は私と遊んで嬉しかっただろう。
今でも私は猿賀を時たまにプレイして遊んでいる。
ゲームボウズ 終
「4」「ケンカ商売」
幼い私とおばあさまは鐘技にある魚市場に来ていた。
ここでは新鮮な魚などが売られている。
「はいよ。いらっしゃい魚安いよ安いよ」
「おい!こっちは魚安いうえに大きいぞ。ほら買った買った」
「なにおー。くそ俺の方が味はしっかりしてるアジだぞ!」
「なに寝ぼけてやがる。こちはサバをよんでないぞ!なにおー」
「ああん?」
「やるか?」
と、彼らの馴染みのあるケンカ商売が始まる。
この辺では名物であり、彼らは昔からの幼馴染だったから、ケンカした後は仲良く酒を飲むらしい。
しかし、そんな彼らにもお別れがやってくる。
私が高校生になった頃、再びこの市場に訪れた。
その時、ケンカ商売でいた片割れの店主は客寄せしてるが何か元気なさそうだった。
「おじさん。元気なさそうだべな」
「ん?そんなことはないぞ。うん」
声をかけてもうわの空だったそんな時である。
「おうおうどうした?そんな女々しい感じしちゃってさ」
「おまえ!」
その店主のケンカ幼馴染が現れたのである。
「俺がいないうちにどーしてるかと思えばそんな腑抜けた感じじゃ潰れるな。俺と代われよ」
「うっせーよ!おまえなんかいなくてもやっていけるさ。さっさと寝てろ!商売の邪魔だからな」
「言うようになったじゃねーか?その調子だぞ……」
するとそのおじさんはスゥーと身体ごと消えた。
その時、営業終えた店主は消えたおじさんのいた店の前で献花した。
ケンカ商売 終
ポカポカ怪異談 完
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