性癖短編集

くろ

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保険の勧誘を装う女

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平日の夕方、帰宅ラッシュの駅前は人が行き来して混雑気味だった。
みんな目的地が決まっているといった足取りで、無関心に、眼も合わすこともなく人々がすれ違う連続の中に私はいた。
当然、私も目的地は決まっている。今から家に帰るのだ。10分程歩けばその目的地へと到着する。

前方から女性が接近してきた。年齢は20代前半ぐらいだろうか。身長は160㎝以上ありそうだが、ヒールで底上げされていたので実際はもっと低いはずだ。
やや茶色掛かったショートヘアー。頭部は小さく8~9頭身ぐらいはありそうだ。整った目鼻立ちからは媚びたような笑顔が浮かんでいる。丸顔の柔らかさは男受けしそうだった。
紺のスカートスーツがやや窮屈そうに見える。下衿が大きく広がって眩しい胸元を開放的に露出させていたが、谷間を強調させるような白のインナーキャミソールが全体のアクセントとして映え、そのくせ見せてはならない部分を隠していた。恐らくE~Fカップぐらいと見た。みぞおち辺りで止められたフロントボタンでウエストはキュッと締まり。短めの上着は、あと10㎝程上半身を覆ってその役目を終えていた。
腰から太ももを締め付けるように巻きつくスカートも短めで、普通に歩く分には問題はなさそうだが、少しでも大股開きになれば見えてしまいそうだ。股下から伸びる太ももは健康的で程よい肉感と、若々しい張りと艶を帯びている。柔らかくて美味しそうだ。下へと向かっていく毎に脚は段々と細くなっていき、脹脛で一旦その柔らかさを思い出させたかと思えば、また再度、翻弄させるかのように細くなっていく。そして、最も細い足元のハイヒールに行き着くと、その不安定がこちらの庇護心をくすぐった。

彼女は白のブリーフケースを左手にし、明らかに私に向かって視線を送って来ていた。しかし、歩き方が不自然だ。
やや中腰気味で、腰をクネクネさせながら、内股気味で、ブリーフケースを持った左手で股間を守るように押さえながら、何というか、“艶めかしく”歩いて私に近づいてきたのだ。
約一メートル手前ぐらいまで距離が狭まったところで、彼女は右手で耳に髪を掛ける仕草をしながら、笑顔で私に挨拶をした。
近くで見る彼女は、つい、歩みを止めてデレデレせずにはいられなくなるほど綺麗だった。

「すみません、少しお時間よろしいですか?」

こんな美人からそんなお願いされたら迷ってしまう。
少し立ち止まると、彼女はブリーフケースからクリアファイルを取り出し、期待の表情を浮かべながら、更に私に近づいてきて保険の説明を始めた。
フルーツ系の甘い良い香りがした。香りの成分の中に、男をダメにするフェロモンでも入っているのではないかと疑ってしまうぐらい、下半身が反応を示してしまった。
彼女の声の中に、不自然な震えが小刻みに混ざっている感じがした。ブリーフケースを持った左手は、やはり、内股の股間を隠すように添えられている。
このまま話を聞いていると契約を結んでしまいそうだ。今日は娘の誕生日だから早く帰らねばならない。非常に残念ではあるが、私は事情を説明し、謝ってその場を後にする事にした。下半身の諸事情の関係で、私の歩き方も不自然になってしまっていた。

彼女は懲りずに次のターゲットを探すように周囲を見渡していた。何を基準に選定をしたのか不明だが、ガラの悪そうな図体のでかいデブ二人が次のターゲットとして選ばれた。私は少し心配になって、帰る足を止めて、その様子を伺う事にした。
デブ二人も彼女の美貌に思わず足を止めてしまったようだ。そして、そのクネクネした艶めかしい動きを指摘し、それを大っぴらに口に出して、下品に笑っていた。
彼女は少し恥ずかしそうに愛想笑いを浮かべながら、クリアファイルの資料を手にして説明を始めた。
片方のデブが唐突に彼女の肩に手を回した。一瞬身体をビクつかせ、彼女は保険の説明を止めて戸惑う様子を見せた。デブはその手で肩を撫でまわしながら、苛立ちの混ざった命令口調で保険の説明を続けるよう彼女に促す。少し怯えた表情をみせつつも、促されるままに、彼女は顔を赤くしながら保険の説明を再開した。

デブの手の動きは次に彼女の豊満な胸元へと伸びた。ハイヒールがアスファルトを踏み鳴らす音と共に、驚きと恐怖の混ざった小さな悲鳴が上がる。それをかき消すように、デブの体重を乗せたスニーカーと、アスファルトが擦れる音が空間を引っ搔いた。
彼女は身をよじって胸元を逃がそうとする。デブは覆いかぶさるようにして谷間に向かって手を伸ばす。揉み合いの実況中継をするかのようにアスファルトが踏み鳴らされる。
デブの手は強引に押し進み、谷間を経由して、あっさりとインナーキャミソールの内部へと隠れた。

「あっ、そんな・・・」

彼女の声色には、戸惑いと絶望が表面に表れていたが、錯乱している様子からは、隠れた“何らかに対する期待”が伺えた。

デブは上機嫌に叫ぶ。

「ノーブラかよお姉ちゃん!たまんねえなあ!乳首コロコロしちゃうぞぉ!」

彼女は何かをごまかそうとするように、声を発しているようだったが、その内容までは聞き取れなかった。ただ、慌てて恥ずかしそうにしながら、体裁だけで抵抗の意を示しているように、私には見えた。その中で彼女は、時折、身体を痙攣させるような反応を見せた。
デブの行動は更にエスカレートし、その手はお尻に伸びた。
反射的にガードしようとして伸ばされた手は、もう一人のデブの手に押さえられてしまった。
そんな、女性が一方的に男二人に嫌がらせを受けているというのに、帰宅ラッシュの人々は見て見ぬ振りをして無関心に通り過ぎていく。
この公衆の面前で、彼女のお尻はデブの気が済むまで撫で回された。
手の動きは更にエスカレートし、遂にスカートの中へと侵入していった。

「あ!だめ・・・」

彼女の上げるその声は、恐怖と驚きと嫌悪の入り混じった抵抗の色が見えたが、表情からは諦めと期待が息をひそめているようだった。

デブが驚きの声を張り上げた。

「こいつマ○コにバイブ仕込んでやがる!」

彼女は、顔を真っ赤にして、焦った様子で、何か言い訳のような言葉を震える声で口にしながら、スカートの裾を引っ張って中が見えないように隠そうとした。

なるほど、クネクネの原因はこれだったのか・・・

スカートの中に手を忍ばせた男が何かを企んでいるかのようにニヤニヤしながら、その手を蠢かせた。
すすり泣くような声を上げながら震える彼女は、何でもいいから何かにすがり付かねばならないといった感じで、目の前のデブのみっともない身体にしがみついた。それが、この恥ずかしい状況にまで自分自身を追い込んだ当の本人の身体であることもお構いなしに。
デブの腕の動きと連動するように、スカートはヒラヒラとはためきながら震えた。
やがて、恥部を隠すために引っ張って伸ばされたスカートの裾の下から、透明な液体が流れ落ちてきた。
公衆の面前で痴態を晒してしまった事による恥ずかしさと罪悪感と後ろめたさによって、咄嗟に漏れ出された「ごめんなさい!」の声は震えていた。その震えの奥には、恐怖、嫌悪、そして悦びの感情が複雑に入り組んでいた。
足取りのおぼつかなくなった彼女を両脇で抱えるようにして、デブ二人は下品に笑いながら人気の無い路地へと消えていった。

無関心な人の行き来は、まだ続いている。
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