10 / 10
茜色の飲み物
しおりを挟む
今日はまた、いつにもまして濃厚な茜色が、マジックテープで貼り付けたように、夕空に映えている。
よくよく観察すれば、ピンク、オレンジ、赤、紫、といった暖色系の集積のようにも見える。
感触を確かめる。
スベスベの表面から急に刺々しい飛沫が飛散したかと思えば、熱を持ち始め、最後には滑らかで柔らかな感触に落ち着いた。
音を聞いてみよう。
私はいつも、濡れた指先でグラスの縁に軽く触れ、慎重にその上を這わす、というやり方と同じ要領で音を反響させている。そうすると、鼓膜を通して、脳内、体内へと隈なく音を浸透させることができる。
さっそく反響が始まった。
柔らかで甘美な音色、明るくて活気に満ちた音色、力強くて熱狂的な音色、そして深く神秘的な音色。
スライドを織り交ぜながらベースラインを辿る四本の太い弦の音色が、耳に優しく心地よく鼓膜から浸透していく。カッティングを挟んだリズムギターの明るい音色が、エネルギッシュで活気よく脳内を駆け巡る。キックとスネアの力強い衝撃と、ハイハットのオープンクローズが交互に弾け、身体中に熱狂的な広がりを起こす。
最後はリバーブとエコーの掛かったギターが、落とすようにコードを掻き鳴らし、幻想的で神秘的な感覚をもたらすと共に、細部の隙間にまで行き渡るように音を揺れ動かす。
スカやレゲエに近しいものを感じる。
次に、香りを楽しむ。
ブルゴーニュ・グラスに三分の一ほど注ぎ込み、ゆっくりとスワリングをして香りを広げる。
金魚鉢のように膨らんだボウル一杯に溜め込んだ香りが、小さく窄んだリムから溢れ出た。それを鼻腔で吸い上げる。
甘く華やかな香り。爽やかでフレッシュな香り。力のあるスパイシーな香り。優雅でフローラルな香り。
桜。レモン。シナモン。ラベンダー。
私は、鼻先まで近づけたグラスをそのまま唇に当て、天を仰ぐ角度へと傾けた。
トロッとしたオリーブオイルのような舌触りの液体が、絡みつくように口内へと流れ込む。
甘みのある優しい味。みずみずしく爽やかな味。スパイシーな辛味。上品で繊細な苦味
桃。グレープフルーツ。僅かなchili pepper。ジャスミン。
それぞれの味覚を舌全体で転がすと、感情が湧いてきた。
優しさと愛情。活力と楽観。情熱と怒り。神秘と創造性。
その感情を喉の奥へと落とし込む。
ピンク、オレンジ、赤、紫
よくよく観察すれば、ピンク、オレンジ、赤、紫、といった暖色系の集積のようにも見える。
感触を確かめる。
スベスベの表面から急に刺々しい飛沫が飛散したかと思えば、熱を持ち始め、最後には滑らかで柔らかな感触に落ち着いた。
音を聞いてみよう。
私はいつも、濡れた指先でグラスの縁に軽く触れ、慎重にその上を這わす、というやり方と同じ要領で音を反響させている。そうすると、鼓膜を通して、脳内、体内へと隈なく音を浸透させることができる。
さっそく反響が始まった。
柔らかで甘美な音色、明るくて活気に満ちた音色、力強くて熱狂的な音色、そして深く神秘的な音色。
スライドを織り交ぜながらベースラインを辿る四本の太い弦の音色が、耳に優しく心地よく鼓膜から浸透していく。カッティングを挟んだリズムギターの明るい音色が、エネルギッシュで活気よく脳内を駆け巡る。キックとスネアの力強い衝撃と、ハイハットのオープンクローズが交互に弾け、身体中に熱狂的な広がりを起こす。
最後はリバーブとエコーの掛かったギターが、落とすようにコードを掻き鳴らし、幻想的で神秘的な感覚をもたらすと共に、細部の隙間にまで行き渡るように音を揺れ動かす。
スカやレゲエに近しいものを感じる。
次に、香りを楽しむ。
ブルゴーニュ・グラスに三分の一ほど注ぎ込み、ゆっくりとスワリングをして香りを広げる。
金魚鉢のように膨らんだボウル一杯に溜め込んだ香りが、小さく窄んだリムから溢れ出た。それを鼻腔で吸い上げる。
甘く華やかな香り。爽やかでフレッシュな香り。力のあるスパイシーな香り。優雅でフローラルな香り。
桜。レモン。シナモン。ラベンダー。
私は、鼻先まで近づけたグラスをそのまま唇に当て、天を仰ぐ角度へと傾けた。
トロッとしたオリーブオイルのような舌触りの液体が、絡みつくように口内へと流れ込む。
甘みのある優しい味。みずみずしく爽やかな味。スパイシーな辛味。上品で繊細な苦味
桃。グレープフルーツ。僅かなchili pepper。ジャスミン。
それぞれの味覚を舌全体で転がすと、感情が湧いてきた。
優しさと愛情。活力と楽観。情熱と怒り。神秘と創造性。
その感情を喉の奥へと落とし込む。
ピンク、オレンジ、赤、紫
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……
紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz
徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ!
望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。
刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる