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タヌキの王国

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1.
このタヌキの王国は、王族や貴族ばかりが優遇される王国でした。
庶民は、寝る暇もないぐらいに働かされた上に、安月給だし、税金も高いし、不満で爆発しそうでした。

ある時、笑わせることがとても上手な、二匹のタヌキが現れ、大変な噂になりました。
二匹は、仕事の僅かな休憩時間を利用し、ネタを披露し、沢山のタヌキ達を笑わせたのでした。
二匹は、これを生き甲斐のように感じるようになり、観衆のタヌキ達も二匹のステージをとても楽しみにするようになりました。
やがて、二匹のネタはブームになり、あちこちで真似するタヌキが目に付くようになりました。

しばらくして事件が起きました。
あるタヌキが、友達を殺してしまったのです。
死因は撲殺でした。
「あの二匹のタヌキのネタを真似した」と、取り締まりで彼は言いました。
最もウケていた二匹のネタの中に、相手をドつき回すという部分があり、彼は、その部分の真似をしたのでした。
これは、とても大きな問題になり、二匹のタヌキは捕らえられ、公開処刑の台に立つことになってしまいました。
二匹のネタを観て腹を抱えて笑っていた観衆達も、その時は「死ね死ね!」とか「恥を知れ!」等と罵声を飛ばしました。
二匹に向かって、石が一つ投げつけられました。
それをかわぎりに、色んな、硬いモノや、汚いモノが二匹に投げつけられました。
二匹が死ぬのを待ってから、ようやく死刑執行人は止めに入りました。

凄惨な公開処刑後、再び、不満で爆発しそうな毎日が始まりました。
そこには、あの二匹のいた時の笑いはありません。

やがて、この王国は革命によって滅びました。


2.『二匹のタヌキが存在しなかった場合』
このタヌキの王国は、王族や貴族ばかりが優遇される王国でした。
庶民は、寝る暇もないぐらいに働かされた上に、安月給だし、税金も高いし、不満で爆発しそうでした。

ある時、事件が起きました。
一匹のタヌキが発狂し、他のタヌキを何匹も殺してしまったのです。
捕らえられたタヌキは、とても取り締まりができるような精神状態ではなく、王族や貴族の間で、これを「狐憑き」と診断することにしました。
また、狐憑きは感染症と仮定され、これを根絶させる計画が立てられました。

狐憑きの診断は、主に、王族や貴族が行いました。
見つけ次第ハリツケにし、石をみんなでぶつけたり、時には、生きたまま火をつけて燃やしたりしました。
感染の疑いを掛けられたタヌキも、ハリツケにされ、石をぶつけられ、狐憑きと認めれば火を付けられ、そうでない場合も、やはり石によって死ぬのでした。
観衆達は「死ね死ね!」や「悪は滅びろ!」等と罵声を飛ばしました。

そして、凄惨な公開処刑後、再び、不満で爆発しそうな毎日が始まるのでした。

やがて、この王国は革命によって滅びました。
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