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22.金属製の下穿き

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 気だるさと共に、ステファニアは目を開けた。
 窓から差し込む朝日と、心配そうに見守るリナの姿がステファニアの目に入ってくる。

「おはようございます、ステファニア様」

「……おはよう」

 挨拶を返しながら、ステファニアは嫌な夢を見ていたと身を震わせる。やけに生々しく、痛みすら感じるような夢だった。
 しかし、上体を起こしたところで、ステファニアは愕然としてしまう。寝る前には身につけていたはずの寝衣が脱げ落ちている。むき出しのままの乳房には、うっすらと赤い指の痕が残っていた。

「夢……じゃなかったの……?」

 呆然と呟きながら、ステファニアは下穿きも確かめる。
 絹の下穿きは無残に破かれていて、血がにじんでいた。シーツにも赤い染みができている。
 ただ、もうひとつの下穿きは何事もなかったかのように、ステファニアを包んでいた。
 金属製の頑丈な下穿きである。秘所を覆う部分は完全に塞がれているわけではなく、中心がわずかに開いており、そこに向かって左右から棘がびっしりと生えるような形になっている。不用意に指など突っ込もうものなら、肉を抉られてしまうだろう。

 夢だと思っていた侵入者は確かに存在していて、ステファニアの身体を蹂躙しようとしていたのだ。金属製の下穿きに阻まれて逃げていったので、ステファニアの純潔は保たれたものの、体中の血が凍りつくような恐怖がわきおこってくる。

「ど……どうして……私……ここは、どうして……」

 混乱したまま、ステファニアは恐怖をごまかすように己の身を両腕でかき抱き、とりとめのない言葉を呟く。

「ステファニア様……」

 リナが痛ましそうにステファニアを見つめ、ステファニアの裸体を隠すようにガウンを重ねた。

「……ねえ、リナ? リナは何か知っていたの……?」

 虚ろな目を向け、ステファニアは尋ねる。
 金属製の下穿きのおかげで助かったが、それをステファニアに身に着けさせたのはリナだ。
 通常はこのような特殊な下穿きを身に着けることなど、考えられないだろう。ステファニアも、身に着けるどころか、見たのも初めてだった。性行為を不可能にするという目的のための下穿きなど、使いどころが限られる。
 つまり、リナは少なくともステファニアに性行為をしようとする者がいることを予想し、対策を取ったのだ。

「……ご気分もすぐれないでしょうし、まずは湯浴みをしてはいかがでしょうか。すぐに支度をいたします」

 しかしリナはステファニアの問いに答えることはなく、逃げるように部屋を出て行ってしまった。
 一人取り残されたステファニアは、リナが出て行った扉を眺めながら、抜け殻のように寝台の上にたたずむ。
 つつ、とステファニアの頬に涙が伝っていった。
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