18 / 77
18.許可
しおりを挟む
二か月ほど前、一度だけゴドフレードがドロテアの部屋で一夜を過ごしたことがあった。しかし、その後はドロテアの部屋に渡ることはあっても、朝まで過ごすことはなく、以前と同じようにゴドフレードはほぼ毎日、ステファニアの部屋で朝を迎えている。
ゴドフレードに安眠を提供するのが自分の役割であるとステファニアは思っているが、ほんのわずか、たとえ一日だけでもよいから母を見舞うことを許してほしかった。
この日の夜もゴドフレードが渡ってくるという知らせがあり、ステファニアは直接訴えてみようと、そわそわとしながら待つ。
リナが気がかりそうな視線をステファニアに向けていたが、己の思いに沈み込んでいるステファニアは、気に留めることもなかった。
長い退屈な時間が過ぎ、ようやくゴドフレードがステファニアの部屋に渡ってくると、ステファニアは抱きつきたくなるくらいの喜びを持って迎えた。いつも以上の歓迎ぶりに、ゴドフレードも首を傾げる。
ただ、ゴドフレードは何か思うところがあったらしく、すぐに疑問が解けたように納得の呻きを漏らして苦笑した。
「……里帰りをしたい、というのだな?」
「はい。でも、どうしてそれを……?」
ゴドフレードから話を切り出され、ステファニアはきょとんとしてゴドフレードを見つめる。
「エルドナートから、妻の体調が思わしくないという話を聞いた。そなたに会いたがっている、ともな」
「まあ……父上様が。陛下、どうかお願いいたします。私の里帰りをお許しくださいませ。ほんの数日……いえ、一日でもよいのです。母上様にお会いして、元気づけてさしあげたいのです」
ステファニアは必死に訴えるが、ゴドフレードは渋面を浮かべて腕を組む。じっと目を閉じて、唸り声を漏らしながら考え込む姿を、ステファニアははらはらとしながら見守る。
「そうだな……そなたは、余によく尽くしてくれている。余の身体のせいで、いわれのない非難を浴びていることも知っている。ならば……縛り付けておくのは、余の身勝手なのだろうな……わかった。里帰りを許そう」
やがてゴドフレードは目を開けると、うっすらと微笑みながらステファニアの願いに応えた。
「陛下、ありがとうございます! 心から感謝いたします」
許しを得て、ステファニアの心は弾み、自然と笑顔が浮かび上がってくる。
無邪気にはしゃぐステファニアをじっと見つめるゴドフレードの微笑みは、消えてしまいそうなほど儚げで、瞳には諦念の光が宿っていた。
彼がどのような思いを抱えているかなど、ステファニアは気づくことも、想像することもなかった。
ゴドフレードに安眠を提供するのが自分の役割であるとステファニアは思っているが、ほんのわずか、たとえ一日だけでもよいから母を見舞うことを許してほしかった。
この日の夜もゴドフレードが渡ってくるという知らせがあり、ステファニアは直接訴えてみようと、そわそわとしながら待つ。
リナが気がかりそうな視線をステファニアに向けていたが、己の思いに沈み込んでいるステファニアは、気に留めることもなかった。
長い退屈な時間が過ぎ、ようやくゴドフレードがステファニアの部屋に渡ってくると、ステファニアは抱きつきたくなるくらいの喜びを持って迎えた。いつも以上の歓迎ぶりに、ゴドフレードも首を傾げる。
ただ、ゴドフレードは何か思うところがあったらしく、すぐに疑問が解けたように納得の呻きを漏らして苦笑した。
「……里帰りをしたい、というのだな?」
「はい。でも、どうしてそれを……?」
ゴドフレードから話を切り出され、ステファニアはきょとんとしてゴドフレードを見つめる。
「エルドナートから、妻の体調が思わしくないという話を聞いた。そなたに会いたがっている、ともな」
「まあ……父上様が。陛下、どうかお願いいたします。私の里帰りをお許しくださいませ。ほんの数日……いえ、一日でもよいのです。母上様にお会いして、元気づけてさしあげたいのです」
ステファニアは必死に訴えるが、ゴドフレードは渋面を浮かべて腕を組む。じっと目を閉じて、唸り声を漏らしながら考え込む姿を、ステファニアははらはらとしながら見守る。
「そうだな……そなたは、余によく尽くしてくれている。余の身体のせいで、いわれのない非難を浴びていることも知っている。ならば……縛り付けておくのは、余の身勝手なのだろうな……わかった。里帰りを許そう」
やがてゴドフレードは目を開けると、うっすらと微笑みながらステファニアの願いに応えた。
「陛下、ありがとうございます! 心から感謝いたします」
許しを得て、ステファニアの心は弾み、自然と笑顔が浮かび上がってくる。
無邪気にはしゃぐステファニアをじっと見つめるゴドフレードの微笑みは、消えてしまいそうなほど儚げで、瞳には諦念の光が宿っていた。
彼がどのような思いを抱えているかなど、ステファニアは気づくことも、想像することもなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
66
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる