純潔の寵姫と傀儡の騎士

四葉 翠花

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15.招かれざる来訪者

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 宴の日から数日が過ぎ、里帰りをしていた寵姫のドロテアが後宮に戻ってきた。
 ゴドフレードはドロテアの部屋に渡るという連絡がきたが、念のためにステファニアはいつゴドフレードが訪れてもよいように準備をしておく。

 ほぼ毎日のようにステファニアの部屋で夜を明かすゴドフレードだが、他の寵姫の部屋に渡ることも多い。寵姫たちを完全に放置するわけではなく、いちおう顔を見せているのだ。
 ただ、本当に顔を見せるだけで終わることが多く、その後はステファニアの部屋を訪れることになるのだが。

 しかし、この日はとうとうゴドフレードがステファニアの部屋に顔を現すことはなかった。一人で眠りについたステファニアが目覚めても、誰かが来たような気配はない。

 後宮の中でも広い一画を与えられているステファニアは、普段は自らに与えられた一画から出ることはない。その一画には、色とりどりの花が咲き乱れる中庭があり、日よけとなるあずまやも置かれている。
 暖かい日にはあずまやで読書をしたり、侍女たちと共にお茶を楽しんだりするのが、ステファニアのお気に入りだった。
 今日は天気が良いので、ステファニアはあずまやで本を読んで過ごすことにした。リナを始めとした侍女たちが控えているが、ステファニアの読書を妨げることはない。彼女らはおとなしく黙ったまま、いつでも主の命令に応えられるよう、待機していた。

 ステファニアが後宮入りした最初の頃こそ、他の寵姫たちからの嫌がらせが多かったものの、ゴドフレードの寵愛が揺るがないことが明らかになるにつれて次第に減っていき、今ではほとんど表面化することはなくなっている。
 養家であるエルドナート侯爵家が、名門の上級貴族だったこともあるだろう。
 元の男爵家のままでは後宮に上がることも不可能だっただろうし、仮にどうにか潜り込んだとしても、身分を理由に虐げられていたはずだ。
 しかし、今のステファニアの身分は侯爵令嬢であり、エルドナート侯爵家が後ろ盾である以上、他の寵姫たちも大それたことはできない。

 自らの一画からなかなか出ないステファニアは、他の寵姫たちと顔を合わせる機会も少ない。侍女たちはそうもいかないが、頭の回転が速く、口もたつリナがうまくあしらっていた。
 たまに顔を合わせれば嫌そうな目で見られたり、ひそひそと嫌味を囁かれたりすることはあるが、その程度だ。
 何だかんだといっても国王の寵愛が深いステファニアは、後宮一の女性であり、正面からたてつく者はいない。

 ――ただ一名を除いては。

「ごきげんよう、ステファニア様。良いお天気ですこと」

「……ごきげんよう、ドロテア様」

 わざわざステファニアの住まう一画まで、数名の侍女を率いてドロテアがやってきたのだ。
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